第11話:忠告
「昨日は申し訳ありませんでした」
「……っ」
翌日、俺はいつも通り店に出勤した。
そして昼過ぎにやってきたオーナーに頭を下げるが、予想外に彼は何も言わずに舌打ちするだけだった。
「あれ? 俺、まじで首か?」
怒られているうちが華とはよく言ったもので、無断欠勤で怒りを通り越したのかもしれない。
「ふふ、大丈夫だと思いますよ」
バイト少女曰く、俺が休んでいた穴がどうしても埋まらずオーナーが代わりに出勤したそうだ。 そして最後は倒れ込むくらい疲れ果てていたため、その疲れが残っていて怒る気力もないのではないか、とのことだった。
「聖店長がどれだけ店を支えているのか、ようやく理解できたんじゃないですか? いい気味ですよ」
バイト少女はそう言って楽し気に笑う。
彼女はこの店で唯一俺とまともに会話してくれる、優しい少女だと思っていた。
(意外と黒いのね……)
「とはいえフォローする私も死にそうでしたけど、ね」
「すいませんでした!!!」
どれだけ店が混んでも文句の言わない少女が、恨みのこもった目で見てくるので俺は平謝りするしかなかった。
(さてどうしたもんか……)
俺はようやく日常に戻ってきた。
しかし田中の本題によって俺は選択を迫られていた。
――店を辞めて冒険者になるか。
――それとも掛け持ちで続けていくのか。
冒険者になれる実力があるなら、この店を続ける必要はない。
ただ昨日の帰り際、田中に言われた言葉が頭から離れずにいた――
『私は兼業をオススメします。 冒険者ってのは想像より過酷であり、それはどんなに強者にとっても同じです。 逃げ道はあった方が良いですよ』
それにオーナーや客、馬鹿にしてくるバイト連中もどうでも良いが、こんな自分を慕ってくれる人がいる。 俺が抜けた穴はきっとその優しい人が埋める羽目になるのだ。
(それは嫌だな)
俺は悩んで、そして決めた。
「お世話になっております、聖です。 田中さん、答えが出ました」
『伺いましょう』
――――俺はこの時の選択が、自分の未来を大きく変えることになるとは思いもしなかった。
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