56 女神の降臨した国
さて、フラベーナちゃんはオレの正妻だから、とくにおなかの子を気に掛けているけど、他の子はどうかな。
オレはダイアナのような、子供ができたら放置だなんてひどい父親ではない。
っていうか、やっぱりみんなオレからかってに奪ってかってに身ごもったんだから、かってにしてほしい。
屋敷の庭からデルスピーナちゃんの声が聞こえた。
「見て見て!ファイヤボールを撃つのよ!」
少し膨らんだデルスピーナちゃんのおなかから直径十メートルの火の玉が放たれた…。
「そっちこそ見てくださいまし。どうです、この水量!」
少し膨らんだペルセラのおなかから、滝のような水が発射された…。
オレの腹からあんなものが出てこなくてよかった。見なかったことにしよう。
デルスピーナちゃんたち十一人の子は転生者であることが分かっている。デルスピーナちゃんたちは、今胎めばすごい魔力を秘めた天才児を授かることができるとかたきつけられたのだろう。それが、この子供の魔力自慢大会か?
オレが産んだ子も自分の娘だろうに、やっぱりどっちの腹から生まれるかっていうのは重要なのだろうか。
すでに前世の職業の情報も上がってきている。今立ち上げ中の事業のどれかに割り振るか、新しい事業を立ち上げるか、考えておこう。
一方で、すでに産まれている転生者による事業として、音楽事業、ドラマ事業とアニメ事業を始めようとしている。
ところが、問題に気がついたのだ。男性の歌手やキャストが圧倒的に少ないのだ。
現在、この国には女性、男の娘、永遠の幼児(男児)、男性という四つの種族がいる。あと、男の娘になるべきところを間違って女にされてしまった女の娘…、オレとか一部の成績優秀者がいるけど、それはまあ、たんにちょっと余計に可愛い女の子として扱うことにする。
生物学的には男の娘と永遠の幼児は男性なのだが、男の娘の声はちょっと低めの女の子の声だし、幼児は幼女とあまり区別が付かない。
前世のアニメでも、男の娘という役はたいてい女性声優が担当していたし、声変わり前の少年や幼児も女性声優の領分だった。だから、男の娘と永遠の幼児が声優になっても、女性声優と担当範囲が同じなのだ。
そんなわけで男性の歌手やキャストが足りないのだ。
ところが、このことを問題だと思っているのはオレだけだった。実際にそういう種族配分なら、そういう種族配分の物語を作ればいいだけだと。
白人が多い国の物語なら、わざわざ黄色人種が多い物語を作る必要はない。人間という種族が大半なら、エルフとドワーフの多い物語を作る必要はない。
男と女が半々の物語を作ったら、それはロイドステラ以外の架空の国の物語になってしまうというのだ。
もはや、男性というのは、エルフやドワーフといった、架空の種族になりつつあるのではないだろうか。
四年前から男性の人口減少に歯止めを掛けようとして、成績ポイントのご褒美として、男の娘と永遠の幼児という種族になれるようにしたけど、同時に性転換もできるようにしてしまったものだから、性転換を選ぶ人が多いんだよな…。
というわけで、男性一割、男の娘一割、永遠の幼児一割、女性七割という、この国の種族比率に合わせてキャストも雇ったので、別に男性歌手とキャストが足りないとか、女性歌手とキャストの倍率が高すぎるというようなことは起こらず、その比率のとおりの歌手によるミュージックビデオや動画が作られて配信されることになった。
でも、歌手はこの割合で正解だった…。男性歌手、男の娘歌手、永遠の幼児歌手はそれぞれ、女性歌手の十分の一しか売れないのだ。なぜなら、現在の人口比率は、人々の好みが反映されたものだからだ。今や性別は選べる時代。男性、男の娘、永遠の幼児が好きな女性というのもとても少ないのだ…。女性の大半は女性が好きなのだ。うーん…、やっぱり不遇だなぁ…。
やはりオレは、男性が、エルフとかドワーフとかいう空想上の種族になってしまう前に、男性という種族が存在していたことを物語として残しておきたいと考えた。
しかし!スタッフが誰も協力してくれない…。
以前、アンネリーゼがゲノムアルツハイマーという、遺伝子レベルで男性の存在を忘れて考えることもできなくなるという呪いが国中に蔓延したことがあった。
ゲノムアルツハイマー蔓延中に生まれたのがフラベーナちゃんだ。ダイアナはゲノムアルツハイマーの呪いが解けたと言っていた。しかし、フラベーナちゃんが男というものの存在を理解しているとは思えない。男いうものを知識で知っていても、エルフとかドワーフとか空想上の生き物としてすらイメージできているかあやしい。
オレは治療魔法の一環として性転換させられた。男であることを怪我や病気であると判断されたのだ…。酷い話だ…。それに男の娘化とか脳を若返らせる魔法をフラベーナちゃんに使わせても、かってに性転換させてしまう。
フラベーナちゃんの世代が男というものを理解できないように、今の十歳前後の子は、男というものを理解できないようだ。
はぁ…。なんでオレだけが男を絶滅させないように必死になっているんだろう…。
それから、映画、ドラマ、アニメと事業を分けようと思ったのだけど…。
まず、魔法を使うと、派手でファンタジーなシーンを実写撮影できてしまう。
一方で、エージェント・アンネリーゼの用意しているCGアセットがリアルすぎて実写と区別が付かない。
そのことから、実写撮影とCGの境界がほとんど分からない…。
そこで、実写だけで手間暇かけたり危険を冒したりして撮影するのが映画、実写とCGの両方を使うのがドラマ、CGだけを使うのがアニメという、謎の分類になってしまった。
ちなみに、漫画家のダイプローラの強い押しがあって、二次元アニメというジャンルも作られることになった。
CGの動きも、スマホカメラで人間の動きを撮影すれば、エージェントが適切に動きをCGに当てはめてくれる。
言葉で動きを指示しても、ほとんど期待通りの動きができあがる。
ヘタをすると「剣と魔法のファンタジーもののアニメを作ってほしい」というと、エージェント・アンネリーゼがほとんど全部作ってしまいそうだ…。
エージェント・アンネリーゼって何者なんだ…。ただのスマホアプリじゃないのか…。
ただ、エージェント・アンネリーゼは人間の仕事を全部取らないように、スタッフが自分たちでできるところを自主的にできるように、生暖かい目で見守ってくれていて、スタッフの目の届かない細かいところを修正してくれるに留まっている。
ストーリーや設定についても、矛盾や言葉遣いのおかしいところを指摘してくれたりして、あくまで補佐に徹してくれている。
それに、大勢のエキストラが必要なシーンは、エージェントが合成音声で声を当ててくれたりする。
こうしてあっという間に映画・ドラマ・アニメが作られて、配信されることになった。
どれもまず、映画館に足を運んで視聴することになる。二ヶ月たつと、VODサービスにより、スマホや家庭のテレビで見られるようになる。VODでも新作は有料で、しばらく経つと無料で見られるようになる。
「はい、これがフラママの分で、これがシスママの分ね」
「はーい」
「へっ?」
アンフローネが持ってきたのは冊子。フラベーナちゃんは陽気な返事をした。オレは間抜けな返事をした。
ってか、いつのまにかフラママ、シスママ。フラなんとかは多いから紛らわしくなりそうだ。
「一ヶ月で覚えてね」
「はーい」
「えっ…」
オレは恐る恐る冊子を手に取った。「あなたに見初められて」、作曲クラリチーナ、作詞クラリチーナ、アンフローネ。
それだけで何の冊子なのかは分かったけど…、さらに恐る恐るページをめくると、歌詞の入った楽譜。
何これ…。廊下の曲がり角で出会ってぶつかった女の子に一目惚れ。女の子との結婚を認めてもらうために努力して、ついにゴールインって感じの歌…。あれ…、どっかで聞いたような話…。
「あなたをもう離さない~♪」
「そうそう!さすがフラママ!」
フラベーナちゃんがメロディに乗せて何か歌った…。
フラベーナちゃんの持っている冊子を覗いてみると、やっぱり楽譜だ…。
フラベーナちゃんは楽譜を見ただけでどんどん歌っていく…。アイドル養成科で歌ったりしていたから知っていたけど、初見でこのレベルなんだよな…。
それにしてもフラベーナちゃんの歌声はとても綺麗だ…。一生懸命なあなたを見ていたい…、か弱いあなたを守りたい…、誰にも渡したくない…、あなたをもう離さない!
なんだかちょっと…、独占欲の強い歌だな…。
「スマホで同じ楽譜、見られるよ。一応ガイドメロディあるよ」
「助かった…」
オレもアイドル養成科でちょっとやったけど、楽譜だけ見て歌えるようなレベルではない。
スマホで曲を選択すると、楽譜の現在再生位置を線が流れていき、ガイドメロディ…じゃなくて本格的な声…すごく可愛い声で、しかも楽譜の隣の可愛いCGキャラが歌ってくれている。誰…。
「わー!エージェント・システィナが歌っているよ!」
「えっ…」
あれ?これってオレ?フラベーナちゃんにドレスを着せてもらっていてめったに鏡を見ないから、ちょっと見ない間にわけ分かんないくらい可愛くなっている…。
それに、自分の声ってこんなに可愛いの?マジか…。
最初から再生して、恐る恐る声を出してみる…。
「廊下の角でぶつかった…♪」
「かわいいいいいいい!」「芽が出るうううう!」
「えっ…」
フラベーナちゃんの「かわいいい」はよく聞くけど、アンフローネは今「芽が出る」と言ったような…。
「「続き!」」
「あっ、はい。次に出会ったのは教室…♪ダンスレッスンで胸が高鳴る…♪」
「かわいいいいい!」「ふうっ、ふうっ!」
アンフローネが合いの手を入れているし…。
「この調子なら間に合いそうだね。ママたち、頑張ってね。あなたに見初められてはオープニング、あなたをもう離さないはエンディングなんだ。ホントはアフレコも頼みたかったけど、シスママは忙しいし、フラママ妊娠中だしねー」
「えっ…、アニメの曲だったのか…」
「私、平気だよ。アニメもやる!」
「だーめ!ムリしないの!」
「はーい…」
どっちが親か分かったもんじゃない。そりゃアンフローネは前世で成人していたのだろうけど。
まあ、フラベーナちゃんもおなかの中のアラミスタも頑丈そうだから全然平気そうだけど、大事にしてほしい。
「でも、生まれたらステージやろうね!四人で!」
「うん!」
「えっ…」
フラベーナちゃんは元気よく即答。オレは驚きの声。
ステージ…。フラベーナちゃんと出会ったばかりのころ…八年前か…。フラベーナちゃんとアイドルやりたいって夢みたなぁ…。
一ヶ月の練習ののち、歌を録音した。
フラベーナちゃんの可愛い美声…、着メロにしよう…。
「システィナの可愛すぎる歌、着メロにしちゃった!」
「あっ…オレも…」
夫婦で互いの曲を着メロにするなんて、バカップルだなぁ…。
「じゃあ、アニメもできたら見てね!」
「はーい」「うん」
こうして、次々に音楽と映像が生まれ、コンテンツを一〇〇個作ったところで、サービスを開始することにした。ちなみに音楽も、ミュージックビデオという映像の一部である。
IT社長のクロミカの戦略の元に、まず、一年間は音楽聴き放題、映像見放題だ。それに、オンラインショッピングの配送料無料サービス付き。
一年をすぎると、年額大銀貨十枚…一万円相当だ。
そして、元刑事のホワイティアの協力により、著作権法と著作隣接権を施行した。サイバー犯罪みたいなのも扱ったことがあるらしい?
そもそも再生端末がエージェントの厳しい監視下にあるので、違法コピーなどあり得ない。しかし、コンテンツ購入者が上映会をしたり、レストランのバックミュージックにしたりするには、別途権利の購入が必要になる。そういうこともエージェントが監視しているので、法を犯す前に正規の手順を教えてくれるようになっている。
それから、音楽や映像の合間に挟まれる広告…。これが重要だ…。
国中にスマホが行き渡ったからといって、誰もが自ら情報を得ようとは思わないのだ。
お店が簡単にホームページを作れるような仕組みもスマホには備わっている。しかし、あまり使われていない。オレも、アンネリーゼのドレスショップのホームページくらいしか知らない。かろうじて早くからスマホが普及しているメタゾールのお店がホームページを作っているくらいだ。
そこで、映像の間に広告を挟むのだ。CM製作費は最初無料で、広告掲載費も最初の一年間無料だ。まずは何でも気軽に試してもらわないと、良さが分からないのだ。
しかし、このことが流通革命を起こした。映像を見てCMを見るようになった国民は、オンラインショップの利用が急増。オンラインショップは既存の普通のお店から出荷する。行商人が配達員だ。これにより鉄道の貨物車両やバスの荷台はあっという間に満杯になり、車両の運行数も十倍に増加。国中の経済が十倍活性化したのだ。
音楽と映像サービスは、運送業の餌。まあ、なんとなく分かる。
芸能関係がそんなところに行き着くとは考えていなかった…。オレはただ、国民の生産能力に余裕も出てきたことだし、ここらで少し娯楽に時間を使ってもいいだろうとしか考えてなかったんだけど…。
ダイアナに言われたとおり、IT社長のクロミカをオレの親権にしておいてよかった…。
というか、子供の手柄を奪うようで悪いけど、オレは事業の総まとめをして経済を活性化させた功績をたたえられ、侯爵に陞爵することとなった。
「いこっか」
「うん…、でもフラベーナちゃん、どこ行くの?この部屋は…?」
フラベーナちゃんのおなかはけっこう大きくなってきているけど、胸よりは大きくない。フラベーナちゃんの胸には、オレと同じで、母乳が溜まって張っているようだ。二ヶ月くらい前から母乳が出るようになっていて、すでにアンフローネにあげているのだ。
アンフローネによると、フラベーナちゃんの母乳のほうが美味しくて健康になれる気がするけど、オレの母乳は可愛くなれる味がするとのことだ。どういう味なんだ…。
それでためしに互いに授乳しあったら、互いに美味しくてやめられなくなってしまった。逆に自分の母乳をコップに出して飲んでも美味しくはなかった。なぜだろう。フラベーナちゃんの母乳はフラベーナちゃんの愛を感じる…。フラベーナちゃんもオレの母乳に愛を感じているらしい…。
この大きな胸は赤ちゃんに母乳を与える能力を示すものであり、アンネリーゼなんて最後にフラベーナちゃんを産んでから九年以上経つというのに、まだ母乳が出続けているらしい。あの大きな胸は女神の子を育てるためのものなのだ。母乳が溢れてしまうのを防ぐために、ブラに母乳パッドというのを挟んでいるのだと。
そういえば、オレも母乳が漏れてしまって乳臭いと思っていたんだ…。もう、そういうのはエージェントにあらかじめ教えてくれって言ってあるのに、オレが一回被害に遭ってからじゃないと教えてくれないんだよな…。
そりゃ一回失敗したほうが、その対策のありがたみが分かるってものだけど、エージェントはオレが失敗するのを面白がっているよな…。
いや、フラベーナちゃんのおなかとか胸の話はさておき…、フラベーナちゃんは、玄関ではなくてある部屋に入ろうとしている。
あ、この部屋ってダイアナがいつも突然出没する部屋!ずっと調べるの忘れてた…。
「これね、転移の間っていうんだよ。王城までワープできるんだよ。知らなかったんだね」
「マジで…」
どうりで自分の家と同じような気軽さで第二王妃が出没するわけだわ…。
もう一つ、オレの知らない部屋があるんだよな。しかもどうやっても開かないんだ。あとでダイアナに聞くか。
フラベーナちゃんと転移の間に入った。中には四角い魔道テントのようなものがあり、そこに入ってフラベーナちゃんがスイッチを押すと、テントの扉が閉まって、二秒くらいでまたテントの扉が開いた。
同じような転移の間だが、壁の材質が違うか?
転移の間から出ると、何回か来たことのある王城の廊下だった。
「先に行ってるね」
「うん」
フラベーナちゃんは王座の隣に座って待っているのだろう。
オレは時間になるまで待ってから、謁見の間に赴いた。
「面を上げよ」
王座にはマイア王、その隣にアンネリーゼと、おなかの大きなフラベーナちゃん。
オレは顔を上げてマイア王をまっすぐ見た。
「この国全体の経済活動を活発化させた功績をたたえ、あなたを侯爵に陞爵させます」
「光栄でございます」
「褒美を与えましょう。希望はありますか?」
「フラベーナ王女殿下をいただきたく思います」
言ってしまった。フラベーナちゃんは、手で口を押さえて涙を浮かべている。こんなところで言うなんてキザすぎただろうか。
「まあっ。それはまた大変欲張りな希望ですね」
マイア王はニヤリと微笑んだ。アンネリーゼはただニコニコしている。
これはイケるのでは…。
「フラベーナをあなたに与えることはできません」
「なっ…」
くそっ、まだ足りないのか。それとも、オレみたいな馬の骨じゃどうやってもフラベーナちゃんに届かないのか。
フラベーナちゃんを妊娠させておいて結婚できないだなんて…。結婚もしていないのに妊娠させちゃうって、それってマズいんじゃ…。
フラベーナちゃんは顔を覆って涙を流している。オレではフラベーナちゃんを幸せにしてあげられないのか…。
でもアンネリーゼはまだニコニコしているだけだ。どういうことだ…。
そもそも先に子を産まされたのはオレのほうだ。オレはもうフラベーナちゃんにあられもないことをされて、フラベーナちゃんに娶ってもらうしかないんだった。そうだ!
「では、私をフラベーナ王女殿下が娶ってください!」
って、オレはなんてことを言っているんだ。うわぁ、オレ死ん…
「それなら許しましょう」
「えっ、あはは…」
とんでもないことを言ってしまったが、正解だったようだ…。フラベーナちゃんが目上なんだから、オレが嫁入りするんだった…。
でもこういうときのプロポーズってどうしたらいいんだ?オレは男だったからプロポーズするのはオレだと思っていたけど、フラベーナちゃんからプロポーズしてもらわなきゃいけなかったんだろうか。娶ってくれなんてプロポーズがあるのか?
まあいいや!
「ありがたき幸せ!」
「マイアお母様ぁっ!」
いろいろとお膳立てしてもらったけど、やっとここまで来られた!
フラベーナちゃんはぱあっと明るい表情になって、大粒の涙を流しながら立ち上がって、マイア王のところへ駆け寄った。
「こらこら、これは正式な儀式なのですよ」
「も、申し訳ございません…」
フラベーナちゃんは席に戻り、オレのほうを向いて、涙を浮かべたまま片目を瞑り、「てへっ」と言わんばかりに舌を出して、自分の頭をコツンと叩いた。
女神の娘で王女だけど、普通の女の子なフラベーナちゃんが大好きだ。
「以上です。下がりなさい」
「失礼します!」
オレが謁見の間を出て扉を閉じて歩いていると、
ドガアアアっ!謁見の間の扉がぶち壊されて…、オレはびっくりして後ろを振り向くと、
「システィナぁっ!」
「ちょっ、危ないよ!」
フラベーナちゃんが飛び掛かってきた。十メートルくらい飛んできたと思う。
鋭いハイヒールはよく絨毯に刺さるので路面抵抗が高く、フラベーナちゃんがその気になれば一〇〇メートル以上飛べるんだと思うけど…。
オレはフラベーナちゃんを受け止めたけど、勢いが強すぎる。勢いを徐々に緩めるために、くるくると回りながら回転速度を落としていった。けど、フラベーナちゃんはオレよりも三十センチも背が高いので、最初のうちは遠心力でフラベーナちゃんの足が浮いていたのに、回転速度が落ちるにつれて、フラベーナちゃんの足が床に付きそうになってしまい、オレはフラベーナちゃんの足が床に付かないように手を高く掲げながら減速していった…。
身体強化でフラベーナちゃんの体重くらい余裕で支えられるけど、こういうとき背が低いと様にならない。オレは男だったのに、なぜ可愛くあることを求められているのだろう。今のはどう見てもフラベーナちゃんがお姫様でオレが王子様であるべきだろう。でも、かっこうつかないな…。
「フラベーナちゃんのおなかにはアラミスタがいるんだよ」
「大丈夫だよっ」
「まあ、そうみたいだね…」
オレはかっこ悪い。でも、幸せだ!
そして、オレは十一歳、フラベーナちゃんは九歳になり、
「うぅ…痛い…」
「フラベーナちゃん、陣痛?アンネリーゼ様を呼ぶね」
「待って…。システィナが取り上げて…」
「わ、わかった…」
オレだってヘタなヒーラーガールより治療魔術ができるのだ。
まあ、フラベーナちゃんとその娘には薄緑の精霊が付いているから、何かあっても自動で回復してしまうと思うけど。
オレは個室を予約してフラベーナちゃんをお姫様だっこして連れていった。相変わらず、二人の胸がむにゅむにゅと…。
この日のためにダイアナから魔道御産器を借りていたのだ。前世の和式便器のような形が気に入らないけど、フラベーナちゃんに痛い思いをさせるくらいならたいした問題ではない。
「あのね、私、それを使わないで産みたいの」
「えっ、でも御産は痛いって聞くよ」
「でもいいんだ。おなかを痛めて産むとね、子供が可愛く見えるらしいよ」
「なるほど…」
オレは魔道御産器で産んでしまったからな…。いつのまにか赤ちゃんを抱いているフラベーナちゃんたちがいた。他人の子を抱いてきてオレの子だと言ってもウソか分からないだろう。だからかなぁ、自分の子という実感は薄いんだよな。
いやまあ、転生者ってのが自分の子と思えないいちばんの要因だけど。血は繋がっていても、養子として迎えたって感じが大きい。
「じゃあ、行くね!」
「う、うん…」
フラベーナちゃんの力で息張ったら、中のアラミスタは大砲みたいに発射されてしまうのでは…。
「ふんんん…。はぅあ…」
フラベーナちゃんは痛い思いなんてしたことないんじゃないかな…。顔がこわばっている。痛みに耐えているのだろう。
「髪の毛が見えた。フラベーナちゃんと同じ金色!」
「ふんんんんん…」
どんどん頭が出てきて、オレはその頭に手を添えて、
「けほっ、けほっ…」
これが産声?ただの咳だよね。魔道御産器を使っていたときもこんな感じだったのかな…。
「産まれたよ!」
オレは首を支えるようにずぶ濡れの赤ちゃん…アラミスタを抱き上げた。でもアラミスタの首はしっかり座っているようだ…。
「見せて!」
フラベーナちゃんはすぐに身体を起こして、
「わああああ!びしょびしょ!すぐに乾かしてあげるね」
フラベーナちゃんは羊水を集める魔法でアラミスタに付いた羊水を拭い去って、側に置いてあった便器…魔道御産器に移した。
「けほっ」
喉にもまだ羊水が詰まっていたらしい。フラベーナちゃんの魔法で喉の羊水もしっかり出せたようだ。
「うあべーなおかあしゃま、ごきえんよう」
「アラミスタ!ごきげんよう!さあ、システィナお母様にもご挨拶するのよ!」
「ししゅしなおかあしゃあ、ごきねんよう」
「ご、ごきげんよう」
アンフローネたちと違って、今まさに赤ちゃんがフラベーナちゃんの身体から出てきるのを目の当たりにして、初めてこれが赤ちゃんだと実感したというのに、やっぱり挨拶されたら面食らってしまった。
もう、生まれてすぐしゃべる赤ちゃんには慣れたつもりだったのにな…。
「可愛いいいいっ!」
「くしゅぐったいれしゅ」
フラベーナちゃんはアラミスタに頬ずりしている。
アラミスタも嬉しそうだ。
フラベーナちゃんは自分の腹…というか産道を痛めて産んだおかげで、アラミスタのことをより可愛いと思えるようになったのだろうか。そんなに痛がってはいなかったし、産んだあと疲労感もなくケロッとしていたけど…。
やっぱりどこかで別の人生を歩んできた子じゃなくて、純粋な赤ちゃんって良いなぁ。
アンフローネのことを可愛くないっていっているわけじゃないよ。可愛いけど、やっぱり自分の子っていうより、友達とか養子って感じが強いかもなぁ。でもまあ、本能は自分の子だって言っているんだよな。不思議だな。
「おなかすいたぁ?飲むぅ?」
「はい。ふあえーなおか…ふぐっ…」
アラミスタの返事も待たずに、フラベーナちゃんはドレスから胸をペロンと出して、アラミスタにくわえさせた。相変わらず強引だな。だけど、抱っこしたままフラベーナちゃんの大きな胸でおっぱいをくわえさせるには、手を伸ばしきらなくちゃいけなくて、ちょっとやりにくそうだ。
というかオレは抱っこしたまま授乳したことがなかったな。みんなに寝そべってあげている。
「今度はシスティナお母様のをもらうのよ。はい、システィナ」
「は、はい」
フラベーナちゃんはオレにアラミスタをひょいっと渡した。新生児の扱いじゃないと思うけど、オレより頑丈そうだから大丈夫だろう…。
とはいえ、オレはアラミスタを抱いたまま自分の胸の先端まで腕を伸ばして、アラミスタにくわえさせることはできない。
オレはアラミスタをベッドに寝かせて、自分もアラミスタの左側に寝そべった。
「ししゅしなおかあしゃま、くらしゃい」
「はい、どうぞ」
アラミスタがオレの母乳を飲んでいる…。ああ、この子はオレの子だ…。自分で産んだわけじゃないけど、今本能的に認識した。
「なーんだ。私もそうすればよかった」
「オレは手が届かないから…」
そういえば、転生者たちでも、授乳するたびに自分の子だなぁってしみじみ思うんだよな。
どさっとオレの左側で音がしたと思って振り向いたら、フラベーナちゃんがオレの隣に寝そべっていた。
「ししゅしなおかあしゃま、ちょーらい!」
「えっ、うん」
フラベーナちゃんは上目遣いになり、わざと噛んだ口調でオレにおねだりした。アラミスタも可愛いけど、フラベーナちゃんも可愛い!かるぼしゅって呼んでくれていたときを思い出して和む…。
こうしてオレの母乳を飲んでいるフラベーナちゃんを見ていると、フラベーナちゃんも自分の子供なのではないかと錯覚してしまう…。フラベーナちゃん…。オレが母親として守るんだ!
「はぁ…。可愛い味がする…」
その表現はよく分からないけど…。
「フラベーナちゃんの…ください…」
「かわいいい!はい!」
オレはアイドル養成科仕込みの上目遣いおねだりモードで、フラベーナちゃんの母乳をいただいた。ああ、フラベーナちゃんの愛の味がする…。
「こうしていると、システィナが私の娘みたいでね、いつも守ってあげたくなるんだぁ」
「オレと同じだね」
フラベーナちゃんの母乳が出るようになってから、フラベーナちゃんとはいつも飲みあいしている…。
でも、夫婦で母乳を飲みあいしているなんて、ちょっと恥ずかしい…。
「はぁ…。アンネお母様とマイアお母様は、もう何年も飲みあいしているんだよ。私、ずっとうらやましいと思っていたんだ」
「えっ、そ、そうなんだ…」
女どうしの夫婦がどちらも出産を経験すると、どちらも母乳が出るようになるから、互いに母乳を飲みあうってのは当たり前のことなのか…。やっぱりファンタジー世界は難しい…。でも幸せだ…。
フラベーナちゃんはアラミスタに土魔法で王族のドレスを着せた。新生児の股下ゼロセンチのスカートは、シャンプーハットのようだ。パンツには一応魔道ナプキンを挟んである。
ああ、初めて出会った頃のフラベーナちゃんを思い出す…。
御産の片付けをして、個室を出た。すると、
「私の妹、生まれたの?」
「うん。アラミスタっていうの。ほら!抱いてあげて」
「わー!可愛い!」
アンフローネが仕事から帰ってきて、フラベーナちゃんの抱いている赤ちゃんを見て、「ただいま」も言い忘れて食いついた。
フラベーナちゃんはかがんでアンフローネにアラミスタを渡した。
アンフローネは一歳であり、普通の一歳児よりはでかいと思うけど、だからといって一歳児が新生児を抱くのは、ちょっと見ていて恐ろしい。
「ごきえんよう。あらみしゅたでちゅ」
「よくおはなちできまちたねー!てんしぇいしゃでもないのに、しゅごいでちゅねー!」
アンフローネは声優だからなのか、生まれて真っ先に滑舌の練習を始めて、今ではほとんど噛まないようになっている。一歳でこれだけ口の回る子は他にいない。
だから、今のはわざわざ赤ちゃんに合わせて赤ちゃん言葉でしゃべっただけなのだ。
っていうか、転生者なんて言葉をフラベーナちゃんの前で言わないでほしい。フラベーナちゃんは気にしていないみたいだけど。
「お褒めにあじゅかり、光栄でしゅ」
「私はアンフローネ!よろしくね!」
「よおちくおねがいちまひゅ」
「ねえフラベーナお母様、こんな堅いしゃべり方しないとダメ?」
「おなかの中では貴族の言葉しか教えてくれないんだよ。生まれたあとそういう言葉遣いもあるんだって知って、仲良くなったシスティナとは平民っぽい言葉で話すようにしたんだよ。ねー、システィナ」
「あ、うん。最初は王女モードだけだったね」
やっぱりそうだったんだな。
「なるほど!じゃあ可愛いしゃべり方を教えてあげるね!」
「あいがとごにゃいまちゅ」
「ダメダメ!ありがとっ!だけでいいんだよ」
「ありがとご…」
「ふふっ、一緒に練習していこうね!」
「はい」
幼女と新生児の戯れ…。可愛い…。
「でもね、公式な場で言葉が乱れないように気をつけてね。アラミスタもだよ」
「はい、存じております、お母様」
「まあっ、お上手ですわっ」
フラベーナちゃんに言われて、アラミスタはキリッとした顔になり、王族モードになった。
それに対して、フラベーナちゃんは、お茶会友達モードになった。
「アンフローネ、アラミスタ、三つの顔を持ちなさい。
一つめは、完璧な礼儀作法を備えた王族モード、
二つめは、お茶会で知り合ったばかりの娘とお付き合いするためのお茶会友達モードですわ。
三つめは、ほんとうに親しくなった友達と付き合うために平民モードだよ!」
フラベーナちゃんは硬い表情から始まり、だんだん緩くなって、最後はゆるゆるで閉めた。
「分かったよ!フラベーナお母様!」
「分かり…分かったよ…」
アンフローネがアラミスタに言い聞かせるように言った。アラミスタは王族モードで返事をしようとして、途中でアンフローネの口調を自信なさげにまねた。
「はい、よくできました!」
アンフローネはさすが役者だな。アンフローネもおなかの中で礼儀作法を学んできたのだろうけど、それよりも前世で王女やお嬢様の役をやってきたベテランなのかもしれない。あんまり年齢のこととか知りたくないけど。
「「「あはははっ」」」
親子で団らん。仲睦まじい親子。美人の妻、可愛い娘たち。眺めているだけで幸せだなぁ。
フラベーナちゃんは母体としても優秀なので、アラミスタは成長が速く、予定より少し早く生まれたらしい。
だから、デルスピーナちゃんたちの出産日はフラベーナちゃんの出産の少しあとに訪れた…。よりにもよって、全員一緒に…。
「ねえ、システィナが取り上げて」「私もお願いするわ」
デルスピーナちゃんとパリナが同時に、おなかをさすって少し痛そうにしながら、オレに頼んできた。
「「「「「私も!」」」」」
みんな元気な妊婦だなぁ。今日は十一人の子を取り上げるのか…。
取り上げるってのは、奪うって意味ではないよ。助産師が子供を産む手伝いをするって意味だよ。
オレが産んだ子はアンネリーゼが取り上げて、みんなが最初に抱いてきたのだけど、オレが親権を持っているんだよな。それはダイアナの計らいで、子供の功績がオレに行くようにしてくれたからなんだけど。
だから、今回も親権を奪う形になってしまうのかな。
オレは別に、寝っ転がって母乳を与えているだけで、世話はほとんどメイドに任せている。というか、転生者の世話はほとんどかからない。みんな薄緑の精霊が付いているから、生まれる前からお漏らししないし。
というわけで、魔道御産器を持ってきたのだけど、
「それはいらないわ」
「「「「「私も!」」」」」
デルスピーナちゃん始め、みんなこれは使わないと。みんな腹を痛めて産んだほうが、大事にできると。
オレは二十九人も産みたくないけど、もう一人くらい産んでもいいかもしれない。そのときはおなかを痛めて産んでみようかな。
というわけで、十一人大部屋のベッドの端に並んで、
「「「「「ふんんんんんん!」」」」」
「はぁ…はぁ…。私がいちばんに産むんだから!」
「私だって!」
「私もがんばる!」
「わたくしも負けていられませんわ」
こういうときデルスピーナちゃん、パリナ、プレナ、ペルセラはよく張り合うんだよな…。
イスマイラ、ゾーラ、エレナ、リザベル、ナーラも張り合っている。
プラチナとアルゾナは比較的マイペースのようだ。
っていうか、お産って競争するようなもんじゃないだろ…。
「生まれたわぁ!」
なんと、あまりがんばっているように見えなかったアルゾナがいちばんに産んだ。
「この子、自分でがんばって出てきてくれたのよ~」
そうだった…。薄緑の精霊付きのチート転生者だった。
やっぱり、便器から産まなくてもたいして苦労は変わんなかったんじゃないかな。
「むきいいいい。あなたも自分で出てきなさいよ!」
デルスピーナちゃん…。
まあ、オレは誰がいちばんとかどうでもいい。無事に十一人の転生者がオレの子供として追加されたのであった。
単独で研究をするタイプや、既存の事業に加わるタイプ、施政者などタイプは様々。
オレはもう、功績はいらないのだけど、フラベーナちゃんと結婚した今、オレの功績はフラベーナちゃんの功績にすることができる。だから、まだ転生者の取りまとめ役を続けようと思う。
王位の継承は、王城のバルコニーで王都民に公開される形で行われた。
ドローンによる生中継も行われており、全国民のスマホとタブレットに強制的に表示される。
フラベーナちゃんとオレは、この日のためにティノイカとデザインしたとっておきのペアルックドレスだ。
金糸や宝石でたっぷり飾られたブラジャーには紐が付いておらず、二つのカップが独立しており、不思議な力で胸に張り付いている…。まったく振動を軽減できない代わりに、揺れても脱げそうになる感じがないのは、水着よりいいかも…。
コルセットやビスチェのような部分はなく、代わりに少し幅を持たせたガーターベルトに、たくさんの金糸と宝石をあしらってある。
パンツは紐。紐が長くて、大きな蝶結びがスカートからはみ出ている。引っ張ってくれと言わんばかりである。何かに引っかけたらどうしよう…。自分ではいていると不安でしかないけど、フラベーナちゃんがはいているパンツの紐を見ると、引っ張りたい衝動に駆られてしまう。
スカートはもちろん股下ゼロセンチ。スカートにはひだやレースがたくさん使われているけど、中のパンツや紐がうっすら見えるようになっていて、パンツを活かすタイプのデザインだ。
ストッキングにもたくさんの金糸や宝石で模様が描かれている。模様があるだけで、生地はすごく薄く、ほとんど透明である。
ガーターベルトでつるしているにもかかわらず、ストッキングの縁には強いゴムが入っており、いつもより太ももに食い込んでいる。いつもよりもう一つのお尻が強調されている。
リボンも去年オレが作ったのとは比べものにならないほど金糸や宝石があしらってあって、今日という日にふさわしい仕上がりだ。
それで、リボンを付けていて気が付いたけど、オレの髪はいつのまにかフラベーナちゃんと同じ黄金色になっていた。これが最終形態かな。フラベーナちゃんの色が最強だってことだ!
それから、元化粧品店店員のクロベーナの指導により、初めてお化粧をした。ナチュラルメイクなんだけど、ほんのりアイシャドー、ほんのりチーク、ほんのりピンクで艶のあるリップによって、フラベーナちゃんは直視するのもはばかられるほど美しくなってしまった。
逆にフラベーナちゃんからはオレが直視するのもはばかられるほど可愛く見えるようで、お互い顔を合わせるたびに頬が赤らむようになってしまった…。
ちょっとドレスがゴテゴテしすぎだし、お化粧も大変けど、こういう機会だけなら悪くない。
「フラベーナ・ロイドステラよ。私は王位を退き、あなたに王位を授けるものとします」
「王の任、しかとつかまつりました」
フラベーナちゃんはマイア王の前で跪いた。するとまったく固定されていない胸がたぷたぷと揺れ始めた。
マイア王は、自分の被っていた冠を外し、フラベーナちゃんに被せた。そしてフラベーナちゃんが立ち上がると、まったく固定されていない大きな胸がさらにたぷたぷと揺れ始めた。
「「「「「おおおおおおおおおお!」」」」」
その瞬間、大歓声が湧いた。広場に集まっている国民だけでなく、国中から歓声が響き渡った。
歓声の九割以上が女性の声だ。正確には、声変わりしたネイティブの男性は五パーセントくらいであり、男性の歓声はほとんど聞こえない…。
でも、たしかに永遠と揺れ続けるフラベーナちゃんの胸は良かった。国民がフラベーナちゃんの揺れる胸を賞賛する気持ちはよく分かった。
マイア元王は、バルコニーを退いた。
フラベーナちゃんが前に出るとともに、オレとアンフローネとアラミスタが前に出た。
「こちらは私の生涯の伴侶にして王妃であるカルボシスティナです」
オレはフラベーナちゃんに紹介されたあと一歩前に出て、片足を交差させながら少しかがみ、スカートつまんでめくり上げた。
かがんだときに、まったく固定されていない胸がたぷたぷと揺れ始め、なかなか止まらない。このドレス…、胸が揺れすぎてちょっと痛い…。
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」
オレのパンツを見て大歓声を上げないでほしい…。いや、胸を見たのだろうか…。
フラベーナちゃんの胸が揺れたときより歓声が大きいのではなかろうか…。
オレは顔を火照らせながら一歩下がった。
「そしてこちらが」
フラベーナちゃんはアンフローネを抱きかかえて、
「アンフローネ第一王女です」
「「「「「おおおおおおお!」」」」」
そして、オレがアラミスタを抱きかかえて、
「こちらがアラミスタ第二王女です」
フラベーナちゃんがアラミスタを紹介した。
「「「「「おおおおおおお!」」」」」
「私はシスティナとともに、国民の生活を一人残らず豊かにすることを誓います!」
「「「「「おおおおおおおおおおお!」」」」」
ちなみに、フラベーナちゃんは九歳である。
だけど、身長一七〇センチで十五センチのヒールを履いているので、マイア元王やアンネリーゼと変わらぬ大人である。
だから、国民の誰もフラベーナちゃんが王になることに疑問を持たない。
そして、フラベーナちゃんが九歳であることを知っている者も、史上最年少の一桁代の王が誕生することに疑問を持たない。
かつて二歳で伯爵になったアンネリーゼがいるのだから、九歳にもなればじゅうぶんすぎるというのが公式見解なのだ。
バルコニーから退くと、デルスピーナちゃんたち二十二人と、娘たち三十七人…だっけか…。多すぎて全員いるか分からないけど、出迎えてくれた。
「「「「「王位継承、おめでとう!」」」」」
「ありがとう、みんな…」
みんな平民モードだな。
はぁ…。オレって王妃になっちゃったんだな…。元男のオレが王妃か…。
そして、フラベーナちゃんを除くみんなは王妃の側室と妾だ。
マイア元王が退位する前に王族だった者と貴族だった者が側室で、それ以外が妾だ。
王族というのは王本人とその配偶者と王の子孫であり、貴族というのは貴族当主本人とその配偶者と貴族当主の子孫だ。王位と爵位の継承権を持つ者という位置づけになる。
つまり、デルスピーナちゃん、グリシーラちゃん、パリナ、プレナ、ペルセラ、フラーラ、ティノイカ、プロセーラ、クラリス、フェニラ、ファルナ、レジーナ、そしてアンネリーゼとジフローラ…の十四人が側室。
イスマイラ、ゾーラ、エレナ、リザベル、ナーラ、プラチナ、アルゾナ、コルトラ、エウレカ、アリスの十人が妾。
元ロイドステラ王女のデルスピーナちゃんはもちろん、現ヒストリア王女のクラリスがオレの側室とか恐れ多いんだけど…。
これってアンネリーゼの嫁の娘が全部オレにスライドしてきたってことなのか…。
っていうか、アンネリーゼもオレの側室なの?
ジフローラっておまけで四人も植え付けていったヤツ…。会ったこともないんだけど…。
まあ、オレにはフラベーナちゃんだけいればよい。はっきりいって側室だろうと妾だろうと、どうでもいいのだ。
あ、アンネリーゼだけは、一緒に寝てくれてもいいかも…。あ、でもアンネリーゼはフラベーナちゃんの親だから、オレと嫁姑戦争になったりするのかな…。姑と結婚するってどういうことなんだ…。相変わらずファンタジーすぎる…。
ちなみにファルナもレジーナも、オレが妊娠している間に身長を抜いていった。結局、ここにいる者の中ではオレがいちばん背が低い。そうなるとやっぱり、オレがみんなのお嫁さんというほうがしっくりくるのだろうか…。
ここは女の子同士で結婚するファンタジー世界なんだ。夫と妻とかいう概念とか、夫のほうが背が高いという概念とか、そのうち風化してしまうんだろう。戸惑っているのは今だけだ。
オレとフラベーナちゃんは、そのまま謁見の間へ。
王座に座るフラベーナちゃん。そして、オレは王妃の席に…座らないで、前で跪く。
「カルボシスティナ・ムコサール。あなたを公爵に陞爵させます」
「拝命しました」
これはエスカレーター式の儀式だな。
オレが侯爵本人ではなくて、公爵令嬢だったらこの陞爵は必要なかったのかもしれない。
そして、オレの隣で跪いている、ダイアナと銀髪の誰…?。
「ダイアナ・メタゾール公爵。あなたの公爵位をジフローラに継承し、ジフローラ・メタゾール公爵とします。また、ジフローラ、あなたには私の第二王妃となってもらいます」
『拝命しました』
ジフローラ…初めて見た…。っていうか、これじゃまた、王と第一王妃と第二王妃の魔のトライアングルじゃないか…。
ダイアナがマイア元王の第二王妃をやっていたのは、他国へ嫁がせる政略結婚用の王女を生むためだ。
フラベーナちゃんやデルスピーナちゃんを手放したくないマイア元王の気持ちは分かる。オレだってアンフローネとアラミスタを他国にやりたくない。
「あなたにはダイアナお姉様のようにイヤな役目を押しつけて申し訳ありません」
他国へ売り飛ばすための娘を産むってどんな気持ちだろう。
『気に病む必要はないです。姉のジフラーナも転移ゲートでゾルピデム帝国の通い王妃をやっているように、今やどこに嫁いでもいつでも親と会える次代ですから』
「そうですか、それならよいですが…」
通い王妃…。ジフラーナってそんなことやっていたんだ…。っていうか、ジフローラはジフラーナの妹なんだ…。
ところで、ジフローラは六歳らしいけど、もう少し大きくならないと子供産めないじゃん…。フラベーナちゃんやオレと同じで早熟だから、すでにオレと同じくらいの背丈はあるけど…。
王位継承式の翌日、デビュタントパーティというのがあった。
十歳になる年に参加して、交友関係を深めたり、伴侶となる者を探したりするらしい。
オレはおととし、受胎告知の年に出席すべきだったが、動ける身体ではなかったから存在すら知らなかった。
去年はデルスピーナちゃんたちが、オレから子種を奪っていく前に参加していたらしい。
オレとフラベーナちゃんは、奥の方のひな壇で、挨拶に来るご令嬢を…、あと数少ないご令息を迎えなければならない。
「暇だねー」
「フラベーナちゃ…王、威厳…」
「はいはい」
だらーっとしているフラベーナちゃん。今日は王族モードじゃないとダメだよ…。
「お姉様、ごきげんよう!」
「あらグリシーラ、ごきげんよう!」
オレたちの前で片脚を交差させ少しかがみ、ドレスのスカートをめくり上げたグリシーラちゃん。
グリシーラちゃんはフラベーナちゃんと同い年の姉妹だ。だけど身長は一六〇センチくらいだろうか。十五センチの自立しないハイヒールを履いているけどね。
グリシーラちゃんが参加するということは、本来なら、フラベーナちゃんが参加する年なのだ。でもフラベーナちゃんは王だし、既婚だし、デビュタントとしては欠席だ。九歳で王位を継いでしかも既婚の姫やご令嬢は前代未聞だもんな。
九歳で二十九人妊娠して欠席したオレも前代未聞だったろうな。
「フラベーナ王、ごきげんよう」
「フェニラ様、ごきげんよう!」
フェニラはロイドステラのデビュタントパーティに出て、交流を深めるらしい。
ちなみにヒストリアではデビュタントパーティとは違うシステムがあるらしくダブルブッキングとかになっているわけではない。
そのあと、うっかり転性させちゃった元ご令息がちらほら。すっかり可愛くなって、ご令嬢ライフを満喫しているようだ。可愛くなりすぎて、オレみたいに多重受胎告知されないことを願う。
来年は、フラーラやプロセーラとか銀髪娘が目白押しらしい…。ハプニングの予感…。
「さっ、出番だよ!」
「「「はい!」」」
デビュタントパーティの翌日、新王誕生を祝うライブコンサートが行われた。
フラベーナちゃんのかけ声で、オレとアンフローネとアラミスタは、王城のバルコニーに登場した。
なんで自分たちを自分たちで祝っているんだろう?
「「「「廊下の角でぶつかった…♪次に出会ったのは教室…♪ダンスレッスンで胸が高鳴る…♪」」」」
「「「「「おおおおおおおおおお!」」」」」
「「「「あなたをもう離さない~♪」」」」
「「「「「おおおおおおおおおお!」」」」」
オレたちは家族四人で「あなたに見初められて」と「あなたをもう離さない」を歌った。振り付けも覚えたんだよ。
オレとフラベーナちゃんの衣装は、王位継承式のペアルックドレスと同じタイプで、装飾を王族っぽいものからアイドルっぽいものに変更している。つまり、それほど激しくない振り付けでも、胸がたっぷんたっぷん揺れてしまい、うまく踊れないのである。
オレがバランスを崩すたびに大歓声が湧いた。王位継承式でオレがパンツを見せたときに勝るとも劣らない大歓声であった。
そのあと、アニメの予告編がプロジェクションマッピングで出た…。これって何のイベント…。
そういえば、まだアニメを見ていない。後で見よう。
そして、次はデルスピーナちゃん一家四人。四人というのは、デルスピーナちゃんと、第一子のデルトピーカと、第二子と、そして…オレである…。
デルスピーナちゃんのときは、別のペアルックドレスを着た。でも、紐なしブラなのは変わりなく、オレとデルスピーナちゃんが胸をたっぷんたっぷん揺らして大歓声を得たのには変わりなかった。
衣装のチェンジ自体は、デルスピーナちゃんが土魔法でやってくれたから一瞬だったんだけどね。
そして、次はパリナ一家四人。四人というのは、パリナと第一子のユートメーナと、第二子とそして…オレである…。
衣装は別のペアルックドレスで、紐なしブラなのは変わりない。
そして、次はプレナ一家四人。
そして、次はペルセラ一家四人。
そして、アルゾナのときだけは、ドレスの面積が小さすぎて恥ずかしかった…。そのかわり、歓声はフラベーナちゃんのときよりも大きかったような…。
そして、アンネリーゼとの共演…。アンネリーゼはフラベーナちゃんと同じ身長だけど、胸は圧倒的に大きく、自分の身体に対して大きすぎる胸を持て余している感がとても可愛かった…。
もうおわかりかと思うが、オレは子をもうけたすべてのお嫁さんたちと、ユニットを組んで歌うことになったのである…。
今年十歳になった子たちは第二子を産んだので、四人のユニットだ。
残りの子たちは三人のユニットだ。
あ、ジフローラだけ四人の娘がいるから、六人家族だった…。まあ、ジフローラは俺と同じくらいの背丈なので、六歳でも違和感はないけど…。
でもよくよく考えたら、この世界には永遠の幼児というのがいるので、外見と実際の年齢なんてもはやあまり関係ないな。
でも、永遠の幼女って作っていないんだよな。永遠の少女もオレとダイアナだけの特殊設定なのでは。あ、永遠の幼児にする予定で、フラベーナちゃんたちがうっかり女の子にしちゃった子たちは、永遠の幼女になるのかな?
まあそれはさておき、オレはとにかく、フラベーナちゃんを含め、二十五人の嫁家族とのユニットを組んだのだ。ということは曲も五十曲あったのだ…。曲はもちろん、振り付けまで短期間で覚えるのマジ大変だった…。
オレだってカイロプラクティックによって脳みその血流も増加して、頭の回転速度は前世より格段に速くなっているのである。だけど、フラベーナちゃんや他の転生者と比べてしまうとね…。
そして、このライブビデオは、VODで無料配信されることとなった。そもそもライブ自体が無料なのだから。
ライブの翌日、オレは家族四人でライブビデオを見てみた。ああ、オレはフラベーナちゃんとアイドルやるって夢も叶えられたんだなぁ。いや、それ以上だ。二人の可愛い娘とも出演できるなんて。
アンネリーゼと舞台で立っているとき、アンネリーゼが大きすぎる胸を持て余しているのが可愛いなと思ったのだが、今見たら、その横で踊っているオレも同じように胸を持て余していて可愛かった…。身体の大きさに対する相対的な胸の大きさは、アンネリーゼと同じくらいになっているようだ…。っていうか、アンネリーゼとともに舞台に立ちたいって思ったこともあったなぁ…。それも叶えられてしまったんだ…。
それから、VODで配信されているオレとフラベーナちゃんの曲がオープニングとエンディングになっているアニメを見た。タイトルは「あなたに見初められて」って、オープニングまんまだし。って内容も歌詞のまんまじゃん!
でも、頑張ってちょっと空回り気味な主人公の視点と、それを見守っていてどんどん好きになってしまうもう一人の主人公の視点が切り替わって、二人の思いは一致しているようで微妙にすれ違っていて、なかなかもどかしい展開だった。
そのあと、VODのコンテンツをひととおり確認してみた。全部再生している時間はないので、さわりだけ。
その中に見慣れぬコンテンツを見つけた。「ヘデイカ王国攻略ライブ」…。何それ…。
アンネリーゼとアンネリーゼの奥さんたちのライブだった…。おおお…。ママさんライブだ…。みんな十七歳にしか見えないけど。
「ねえ、システィナ、アンフローネ、アラミスタ、見てて」
「えっ、うん」「「うん」」
フラベーナちゃんに、王城の庭に連れてこられた。
フラベーナちゃんの長い髪の、背中辺りから何かもそもそと……黄金の……翼!
「ええええ!」
「わああ!フラママ、マジ天使!」
「フラベーナおかあしゃまのしぇなかに、ちゅばしゃがあああ!」
フラベーナちゃんは天使ではない。女神だ。ついに、アンネリーゼから女神の地位を受け継いだのだ!
アンネリーゼの翼は白かったけど、フラベーナちゃんは黄金だ。アンネリーゼよりも神々しい!
「すごいよ!フラベーナちゃん!」
「えへへー、よっと」
フラベーナちゃんは軽く羽ばたいて、宙に舞い上がった。
「ほんとうに飛べるんだ…」
オレのフラベーナちゃんはほんとうに女神だった…。
フラベーナちゃんは軽くアクロバットをして、降りてきた。
「こんなのもあるんだー」
フラベーナちゃんの身体がなんだか大きくなって…、ドレスが破れて…、ええええ?
フラベーナちゃんが…黄金に輝く翼を持つ馬……、黄金のペガサスに…。
角まで生えてる…、ユニコーン?天馬?
でも、変身中にフラベーナちゃんの大事なところが一瞬見えちゃったんだけど…。
馬の顔なのに、なんて美人なんだ…。馬なのにフラベーナちゃんだって分かる…。
「えっ……」
「わあああああ!アリコーンだぁ!」
「フラベーナおかあしゃまが、ちゅばしゃをもちゅ馬にいい!」
(どうかな?)
心に直接フラベーナちゃんの声が聞こえた。
「えっ…」
「わー、今のテレパシー?」
「おかあしゃまの声があたまにー!」
(そうそう、テレパシー)
フラベーナちゃんの声が頭に響いた。
マジで?
オレは驚いてばかりなのに、アンフローネは適応力高いな…。さすが二次元と三次元の橋渡しをしてきただけはある…。
「じゃあさ、私の心も読めるの?」
そうそれそれ…。アンフローネが、オレの聞きたいことを聞いてくれた…。
もしそうだとしたら、それじゃ、オレが元男の転生者ってバレちゃうじゃん!
男ってバレたら嫌われちゃうんじゃ…。
(それはやらないよ。アンネお母様がね、大切な人の言葉はその人の口から聞きなさいって)
マジで…。それが本当なら助かる…。もしウソなら、オレはとっくにバラバラにされているのでは…。
「そっかー!私の心を読んだらびっくりすると思うから、たしかにやめておいてくれると助かるぅ」
転生者のことは、そうでない者には特別な知識を授かった者と伝えられているようだ。
アンフローネも前世を持つ他人とは思われたくないよな。その辺のところ、アンフローネははっきりと言うんだなぁ。
あ、もしかしてアンネリーゼも心を読めるのか?それで、いつも的確にオレの考えの先を言ってきたのか…。
あれ…、オレってアンネリーゼのことをぽやぽやだとか変態だとか、ずいぶん失礼なこと考えていたような…。
(それでね、この姿じゃ口がうまく動かないから心の声を使っただけでね、言いたいのはそうじゃなくて、私に乗ってどっかいこー!)
「わーい!」
「フラベーナおかあしゃま、しゅてきぃ!」
この二人、適応力高いなぁ…。
(システィナは、いや?)
「そんなことないよ!フラベーナちゃん、やっぱ女神だったんだね!」
(なにそれー。いいから早く乗って!)
「「はーい!」」「うん!」
オレはジャンプしてフラベーナちゃんの背中にまたがった。パンツが丸見えだけど、今さら気にしない!
アンフローネとアラミスタもジャンプでフラベーナちゃんの背中に乗った。
(空中では声が聞こえないから、話したいことを強く念じてね。それ以外は読まないから安心してね)
「「はーい!」」「うん…」
(いっくよー!)
オレたちはフラベーナちゃんに乗って王都の空を羽ばたいた。
オレは王都を見渡した。これがオレとフラベーナちゃんで守るべき国なんだ!
王城の庭に帰り着いて、フラベーナちゃんが変身を解いたとき、フラベーナちゃんが一糸まとわぬ姿だったのはいうまでもない。
■カルボシスティナ・ロイドステラ王妃、カルボシスティナ・ムコサール公爵(十歳~十一歳)
侯爵に陞爵してフラベーナと正式に結婚し、フラベーナが王となったことから、システィナは王妃となった。
王妃となる場合、自動的に公爵に格上げされるのが慣例となりつつある。
■フラベーナ・ロイドステラ王(八歳~九歳)
カルボシスティナと結婚し、王となった。
■アラミスタ・ロイドステラ第二王女(誕生)
フラベーナの産んだシスティナの娘。転生者ではないが、胎児の魂百まで級。
■アンフローネ・ロイドステラ第一王女(ゼロ歳~一歳)
システィナの産んだフラベーナの娘。前世は声優の転生者。
■デルスピーナの代の娘(誕生)
デルスピーナ、パリナ、プレナ、ペルセラ、イスマイラ、ゾーラ、エレナ、リザベル、ナーラ、プラチナ、アルゾナ、の産んだシスティナの娘。転生者。
■デルスピーナ、パリナ、プレナ、ペルセラ、イスマイラ、ゾーラ、エレナ、リザベル、ナーラ、プラチナ、アルゾナ(十歳)
転生者を出産した。
■マイア(二十六歳)
■アンネリーゼ(二十八歳)




