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54 受胎告知

 転性者システィナが子爵に陞爵してから四年が経った。


 あれから各領地のスラムや個人を調査したり、人身売買の闇取引の監視を強めたりして、全国中の孤児を一〇〇〇人集めた。これによって国の生産能力がわずかに向上した。

 ムコサール領だけでは収容しきれないので、第三から第六までのメタゾールにも引き取ってもらった。結局、いくつかあるメタゾールの学校や孤児たちの管理をオレがすることになった。


 教育の機会を逃してしまっている子たちの脳を、教育に適した年齢まで若返らせる魔法は、フラーラ、プロセーラ、ティノイカ、コルトラの四人にやってもらうことにした。フラベーナちゃんや他の子では、誰彼構わず女の子にしてしまうからだ…。


 それから、年齢に限らず、発達障害についても、フラーラとプロセーラとティノイカに説明したら、三人はすんなり理解してくれて、発達障害を治療する魔法を使ってくれるようになった。これによって、今までなぜか勉強に付いていけなかった者の成績が向上し、国の生産能力が向上した。


 こうして、全国の孤児を救ったり、闇取引を取り締まったり、国の生産能力を向上させたことが、貢献として認められ、オレは伯爵に陞爵した。侯爵まで上り詰めれば、フラベーナちゃんの横に立つのにふさわしいと言えるだろうか。もう一つ大きな功績を挙げなければ!



 オレも九歳になった。だけど、身長は五歳の頃からあまり伸びておらず、一四〇センチ止まりだ。

 一四〇センチというのは、ダイアナと同じ身長だ。ダイアナは永遠の銀髪ロリ巨乳美少女という種族らしい。そして、どうやら一四〇センチというのがアンネリーゼが最も好む身長らしい。キャラメイキングアプリの身長のスライダーと可愛さの数値の関連を見て気が付いた。

 つまり、それがフラベーナちゃんたちの好みでもあり、オレはみんなの好みであるロリ巨乳美少女に変えられてしまったということみたいだ。

 ちなみに銀髪はアプリで選択できるようになっていない。ダイアナ一族の特権だというのか。


 悲しいことに、オレの身長はフラベーナちゃんたちに抜かれてしまった。フラベーナちゃんは七歳なのに一六〇センチあるし、デルスピーナちゃんたち八歳の子たちも一五五センチくらいある。おまけに、七歳のグリシーラちゃんも一五〇センチある。

 六歳のフラーラ、プロセーラ、ティノイカ、コルトラ、エウレカ、アリスだって一四五センチある。

 銀髪娘はダイアナの娘だから、永遠のロリ巨乳美少女ってことで一四〇センチで止まると思っていたのに…。銀髪娘は一四〇センチに到達した後は、身長の伸びがゆっくりにはなったが、オレみたいに止まることはないようだ。

 結局、オレはいちばん背が低くなってしまった…。


 フラベーナちゃんはグリシーラちゃんとほぼ同時に産まれたのだけど、フラベーナちゃんは年上のデルスピーナちゃんよりも大きい。やはり、同じ血を引いていても、女神であるアンネリーゼの腹から生まれたフラベーナちゃんは特別なのだろう。


 そういえば、世間では永遠の幼児と普通の女性のハーフというのがいるけど、そっちも必ず永遠の幼児になるとは限らなくて、身長は両親の平均ってことになるのだろうか。まあ、親の特徴を引き継がなくても、優秀でさえあれば、成績ポイントで好きな容姿になれるのだし、好きにしてくれればいい。



 身長は伸びていないけど、十五センチのハイヒールを履くようになったので、一五五センチくらいには見える。だけど、十五センチのヒールを履いているのはフラベーナちゃんやグリシーラちゃんたちも同じだ。結局、身長の差は埋まらない。


 オレは五歳のときから今まで十センチのヒールを履いていた。五歳のときはヒールが高すぎてよろよろしそうなのを、身体強化を駆使してなんとかまっすぐ立っていた。それも四年間の間に光の魔力を向上させて、安定して履きこなせるようになっていたんだ。

 それなのに、フラベーナちゃんは「そろそろ新しい靴が必要だね」と言って、十五センチの、しかもかかともつま先も鋭くて、まったく自立しないハイヒールを土魔法で作って履かせてくれた…。オレはまた、まっすぐ立っているのがやっとの状態になってしまった。

 そして、オレがよろよろ歩いていたり転びそうになっているのを、まるで、小さい子ががんばってよちよち歩いているのを優しく見守るような目で、みんながオレを見ている…。転びそうになるたびに「大丈夫?」と言って手を差し伸べてくれるみんなの優しさが嬉しい。

 だけど、わざわざ転びそうな靴を与えて、転びそうになったら優しくしてくれるって、マッチポンプもいいところだと思うのだ…。みんな、いったいオレに何を求めているのだろう…。


 ちなみに、十五センチの自立しないハイヒールは、グリシーラちゃんでもよろよろせずにちゃんと履きこなしている。それで思い出したのだけど、アンネリーゼも同じハイヒールを履いていた。

 一方で、マイア王や王宮で見かけるご婦人は五センチのヒールを履いている。

 自立しないハイヒールを履きこなすのは女神の嗜みなのだろうか。でもオレは女神ではないんだけどな。暗に女神の仲間に誘われているってことか。



 身長は伸びないのに、胸は順調に成長している。肩幅や胴の幅はとても狭くて華奢なのに、大きな果実が二つ、所狭しと実っている。そろそろ成長をやめてダイアナと同じくらいの大きさに留まってほしいところだ。

 正直いって邪魔だ。手作業とかできたものではない。昔、エージェント・アンネリーゼが包丁の使い方を見せてくれたとおりになってしまった。胸が邪魔で手元が見えないので、包丁を使うことはできなくなってしまった。四年前に玉子焼きやクレープを食べ過ぎたときからすでに料理がしづらくなっていたけど、今では視界が胸に遮られて、包丁や鍋を扱うのはまったく不可能だ。

 フラベーナちゃんの胸はすでにオレと同じくらいの大きさだけど、フラベーナちゃんは体格が良いので、オレのように大きな胸を持て余していなくて、さまになっている。将来的にはアンネリーゼと同じくらいになるのだろうか。そうなると、胸が大きすぎて持て余し気味になりそうだけど…。



 それと、ガーターストッキングをはくようになった。股下五センチまである長い靴下のようなものを、腰に巻いたベルトでつるすようになっている。

 ベルトは下着みたいにレースやフリルが付いている。オレのお店で、ティノイカの考えた下着を表に出すデザインのドレスでは、コルセットの代わりにガーターベルトだけをつけるようになっているものもあったりするけど、オレのは普通にドレスの下にベルトをしている。

 ベルトは前後二本ずつ左右のストッキングに伸びる紐が付いている。この紐をパンツの裏側に通してストッキングと繋ぐようになっている。紐はあまり伸びない素材でできており、腰を曲げると前の紐がたるむようになっている。逆に後ろの紐はお尻をむにゅっと潰すか、お尻に食い込んだりする。

 スカートの後ろ側に手を回して食い込んだ紐を直していると、フラベーナちゃんたちが顔を赤らめてまじまじと見てきて恥ずかしい…。


 ベルトをしないとすぐにずり落ちてしまうかというとそうでもなくて、ストッキングの裾にはゴムが入っていて、簡単には落ちないのだが、そのゴムが少しきつくて、太ももにむにっと食い込むようになっている。なんだか股下ゼロセンチのスカートの下にもう一つお尻があるように見えなくもないけど、これはお尻ではないので隠す必要はないようだ。隠す必要のない、お尻に見えるようなものをわざと作ったという方が正しいかもしれない。


 ガーターストッキングをはいているのはオレだけじゃない。フラベーナちゃんやグリシーラちゃんもはいている。生脚よりもエッチに見えてそそる…。

 ガーターベルトの紐が食い込んじゃうのはフラベーナちゃんたちも同じだと思うのだけど、なぜかみんなオレにだけ注目してくる…。

 逆に、オレはフラベーナちゃんが紐の食い込みを直しているのに魅入ってしまうんだけど…。


 ロイドステラは最北端に行ってもそれほど寒くないので、生脚でもあまり気にしていなかったが、これは防寒具ではなくて、太ももをむにっとしたり、紐の食い込みを直すのを魅せたりするためのアイテムなのだなと悟った。



 あと、オレの髪の毛は歳を追うごとに明るくなっていて、今ではかなり金色に近くなってしまった。キャラメイキングアプリで髪色はとくに変えようとも思わなかったので茶色のはずだったんだけど。

 まあ、キャラメイキングアプリで作ったキャラ設定なんてほとんど残っていない。残っている設定は、四歳児並の筋肉しかないってことだけじゃないだろうか。もうちょっと筋肉が付けば身体強化の成長と合わせてハイヒールを履きこなせるかもしれないのに、これ以上は筋肉が付かない設定なので、魔力を鍛えて身体強化だけで履きこなせるようになるしかない。

 しかし、キャラメイキングアプリの設定はほとんどの設定は無視されて、フラベーナちゃんたちの好みに改造されてしまっている。あ、ウェーブって設定も生きているな。ウェーブの金髪なんて、フラベーナちゃんみたいで豪胆すぎる。オレは王女様よりも王女らしくなるつもりはないんだが…。



 オレの髪は金色に近くなってしまったが、フラベーナちゃんはそれが嬉しいらしくて、オレとおそろいのリボンを作ろうということになった。

 フラベーナちゃんはずっと髪型自体は弄らずにリボンを付けていたので、オレもそれに従う。

 オレはまさか自分を着飾るのにリボンを付けるとは思わなかった…。まあでも、自分のためにではなくてフラベーナちゃんのために、ドレスに合った金糸や小さな宝石をちりばめたリボンを作ってあげた。フラベーナちゃんの黄金の髪に似合う。

 お店の給料もあるし、ムコサール領の税収もあるから、これくらいは余裕で買えるようになってきた。


 それで、おそろいということだったので、フラベーナちゃんはそれと同じものを作ってオレに付けてくれた。オレがこんな豪華なものを付けてもいいのだろうかと思うけど、俺の髪も金色に近くなっていることもあって、フラベーナちゃんいわくぴったりだと。


 フラベーナちゃんおそろい…。なんだか嬉しい…。




 四年間の間には、新しい仲間も加わった。

 クラリス・ヒストリア第一王女(現在十一歳)と

 フェニラ・ヒストリア第二王女(現在七歳)と

 ファルナ・エッテンザム公爵令嬢(現在五歳)と

 レジーナ・フェナージ侯爵令嬢(現在四歳)と

 リーフ(五歳?)だ。


 ロイドステラ王国のある大陸から海を隔てて南にある、ヒストリア王国から留学してきたらしい。オレが七歳の時にやってきた。


 四人だと聞いていたのに五人いるじゃん、と思ったら、リーフはクラリスの精霊らしい…。よく見たら、普通の見え方をしていなかった…。しかも、葉っぱで作った水着を着ている…。葉っぱブラに葉っぱパンツに葉っぱパレオだ…。いかにも森の精霊という感じだ…。

 アルゾナにかなり似ている。五歳くらいなのに、けっこう胸が大きい…。オレの五歳の頃と同じくらいかな…。ロリ巨乳幼女だ…。

 クラリス以外の三人には、フラベーナちゃんたちと同じ薄緑の精霊が付いている。リーフは薄緑の精霊の一種らしく、光と土の精霊の混合らしい。だけど、リーフだけが精霊の形になれないそうだ。

 精霊は主人から二メートル以上離れられないらしく、クラリスの側には常にロリ巨乳葉っぱ水着幼女がいるのだ。まあ、みんなの服装との違いはへそを出しているかどうかの違いしかないし、ずっと見ているとそれほどおかしい服装でもない。クラリスのメイド見習いくらいに思っておけばいいだろうか。


 今までオレが最年長だったのだが、年上のクラリスが加わって最年長の座を奪われてしまった。べつに、年齢なんてどうでもいいのだけど、問題は身長だ。

 今、六歳以上の子はみんなオレより身長が上だ。


 来たばかりのときはオレの背のほうが高かったのに、結局今では、オレが身長で勝てそうなのは五歳のファルナと四歳のレジーナだけだ。ファルナは同じくらいかな。


 オレがいちばん大きかったのに、最下位から数えた方が早くなってしまって、なんだかちょっと悲しい。

 フラベーナちゃんとかグリシーラちゃんは、小さい子に優しくするみたいにオレの頭をなでてきたりする…。それは逆にちょっと嬉しい…。



 今までの仲間は全員、アンネリーゼの娘かダイアナの娘だった。ダイアナはアンネリーゼの娘だけど、あまりアンネリーゼに似ていないから、実質、アンネリーゼに似ている子とダイアナに似ている子のどちらかだった。

 ここに、他国の留学生が加わって代わり映えするのかと思ったら、なんだ…、四人ともアンネリーゼかダイアナに似ているじゃないか…。


 フェニラとレジーナはアンネリーゼに似ている。二人ともアンネリーゼの娘らしい。


 ファルナはアンネリーゼにもダイアナにも似ている。フラーラにかなり近いかもしれない。ヒストリアのご令嬢じゃないのかと思ったら、アンネリーゼではない方のダイアナの親、カローナ・ヒストリア王妃と、アンネリーゼの娘らしい。あれ、それってダイアナの妹では…。ファルナはダイアナの妹なのに、どちらかというとアンネリーゼとダイアナの娘であるフラーラのほうに似ているのか…。ダメだ…。もう理解不能だ。


 クラリスはダイアナによく似ている。カローナ王妃とセレスタミナ・ヒストリア王の娘らしい。おお!唯一、アンネリーゼの子孫じゃないよ!レアキャラだよ!

 胸の大きさやスタイルも半端ない。オレやフラベーナちゃんのはるか上を行くボンキュっボンだ。




 クラリスたちが留学に理由は交流だ。だいたい、勉強はスマホでできるのだし、実技だってどの学校でも同じ授業を受けられる。それはヒストリア王国でも同じようだ。それなのにムコサールの学校に来るってことは交流が第一目的なのだ。

 そして、他国のゲスト王族なのだから、領主屋敷に泊めるのもアリだろう。だけど、なんで一緒の部屋で寝るかな。

 いや、べつに嫌いとか迷惑ってワケじゃないんだよ。迷惑かどうかでいったら、プロセーラがいちばん迷惑なワケで…。


 それでまあ、百歩譲って一緒に寝るのもいいとして、なんで留学生の子までよってたかって、オレを可愛くするんだろう…。

 エージェント・アンネリーゼとは仕事以外の話をする暇がないので、オレの可愛さは四年前に聞いた二二〇〇からどれだけ上がっているのか見当も付かない。

 オレはもともとスラムにゴミのように捨てられていた馬の骨だというのに、みんなのうっかりで性転換させられて可愛くされてしまった。だから、オレが今可愛いからってオレをよってたかって可愛くするのはおかしくないだろうか。

 もともと最高級素材のフラベーナちゃんをよってたかって可愛くすれば、オレなんか目じゃないほど可愛くなるんじゃなかろうか。

 なぜか、オレが可愛いからもっと可愛くするという、無限ループになってしまっているのではなかろうか。


 というか、フラベーナちゃんたちはとても強い魔力を持っていて、互いに可愛くしあえば、とんでもないことになるのでは。

 以前、ジフラーナがいたときは、ジフラーナのマッサージはとても良かったらしく、みんなジフラーナにやってもらっていた。でもそれ以来、フラベーナちゃんたちが互いにマッサージしているところを見たことがない。というか、いつも真っ先に気持ち良くされてしまって、しばらく気持ち良い以外の感覚がなくなってしまうので、みんながどうしているのかいまいち分からない。


 というか、そもそもマッサージというのは、血行を良くして身体の働きを活発にすることで健康になることで、肌が綺麗になったり、髪が艶めいたりするものらしい。可愛くする魔法は、その上位版である。フラベーナちゃんたちのマッサージは、可愛くするのがメインになっていないだろうか。




 ある日、オレにも大人の仲間入りする…、むしろ女性の仲間入りするイベントが訪れたんだ…。オレはとっくに女性になったと思っていたのに、これはオレが女性であることを知らしめる出来事だった…。


「きゃーっ」

「えっ、どうしたの?」


 朝起きると、オレの下のポジションで寝ていたアルゾナが悲鳴を上げた。

 アルゾナはオレの下と後ろのポジションが好きなんだよな…。下のときは、だいたい上がってきて、オレの股をどんどん開くんだ…。


 だから今日もオレは大股を開かれて寝ていたようなのだけど…。


「どうしたの?きゃーっ」


 オレの前のポジションで寝ていたフラベーナちゃんが起き上がって、自分の足もとにいたアルゾナのところを見て悲鳴を上げた。


 何だろう…。オレの足下に何かあるのだろうか…。

 そういえば、なんだかお尻や太ももの辺りが湿っている気がする…。あれ…。九歳にもなってお漏らししちゃったか…。

 四歳でお漏らししたときはフラベーナちゃんがフォローしてくれたけど、さすがに九歳は恥ずかしい。

 フラベーナちゃんの「きゃー」はオレのみっともなさに呆れる悲鳴だろうか…。


 オレは身体を起こして、アルゾナのいたところ、オレの太ももの辺りを恐る恐る見たら……。


「あら、心配なさらないで。これは女の子には誰しも訪れることなのですわよ」


 なんだ、お漏らしじゃなかった。よかった。

 回りで驚いているみんなとは裏腹、クラリスは落ち着いた様子で、オレを諭そうとしている。


 オレは別に焦っていないよ。オレは何度もバラバラにされているんだ。だいたいその前後の記憶がなくなっているけど、何度もやられていたらときどきは記憶に残るってもんだ。そういうときは、スプラッタな状況だって見たことあるんだ。

 今回も誰かにスプラッタにされたのかもしれないけど、始末し忘れたってことだろ。たまに見るスプラッタに比べれば、この程度の血はたいしたことないさ。


「どうってことないよ」

「どうってことないではありませんわ!皆さん、いいですか?これは……」


 クラリスは魔法で血を集めながら、説明を始めた。フラベーナちゃんは目を輝かせている。何がそんなに嬉しいのかとも思うけど、逆にオレは聞いていくうちに、だんだん青ざめてきた…。

 これはオレが女であることあかし…、生理だ…。


 オレには大きな胸が付いているだけではない。三歳で性転換したときにエージェント・アンネリーゼが見せてくれた(Magic)(Resonance)(Imaging)には子宮と卵巣が映っていた。オレはその意味を分かっていなかった。


 はあ…。オレはこれから毎月血まみれになるのか…。


「システィナ、聞いていますの?」

「えっ、あっ、はい」

「これが月経管理アプリです。周期が近づいてくると、おなかが痛くなったり足がむくんだりする人もいるそうです。この日付になったら、魔道ナプキンを付けるのですよ」

「あれ、魔導ナプキンっておむつ…」

「おむつにもなりますが、本来の使い方はこっちです」

「そうだったんだ…」


 これがエージェント・アンネリーゼが指を口に当てて、妙に色っぽく言っていたおむつの別の使い方…。普通に教えてくれりゃよかったのに…。そうしたら、こんな恥をさらすこともなかったはず…。

 というか、よりにもよって元男であるオレを題材に、生理というものはなんなのか、魔道ナプキンの使い方とかを、クラリスは説明してくれた。なるほど、これなら毎月血まみれならずに済むのか。

 十一のクラリスも、もちろん生理が始まっているらしい。自分の身体で説明してほしい。

 八歳のデルスピーナちゃんたちの代も、みんな生理が来ているらしい。なんだよ。オレはちっこいから遅かったってことかな。

 でも七歳のフラベーナちゃんとグリシーラちゃんにはまだ来ていないらしい。だから、オレをネタにしたクラリスの説明に、かじりついているってことなのか…。デルスピーナちゃんから教えてもらってないのか…。


「ひゃっ、はう…」


 真っ赤に染まっていたオレのパンツはいつの間にか綺麗になっていた。クラリスが魔法で血を取り去ってくれたようだ。でも、普通だったら血はこんなに簡単に取れないよな。魔法があるからこれだけ簡単に取れるのであって、もしそうでなければ、洗濯とか大変だろうな…。女性ってのはほんとうに大変だ…。

 などと考えていると、クラリスはオレのパンツを下げて、魔導ナプキンを挟んで、再びパンツを上げてくれた…。ここは遠征地ではないからか、クラリスは新品をくれたようだ。とくにぬくもりを感じなかったので。


 しかし、なんで人の大事なところを晒すにためらいがないのだろう…。俺たちは裸の付き合いが長いけど、それにしても…。オレが大事だと思っているところは、この世界ではそれほど大事ではないのだろうか…。


 トイレは全国に整備されたし、遠征に行くこともなかったから、魔導ナプキンなんて忘れていた…。それに、大きくなっておむつなんてみっともないと思うだろう…。

 だけど、女性は毎月こうやっているのか…。女性はこういうアイテムを使って初めて、日常生活を送ることができるのか…。ほんとうに女性になってから女性の大変さを思い知らされる…。


 それに、オレはあまり感じていなかったけど、生理のときはおなかや頭が痛くなったり、足がむくんだりする人もいるらしい。毎月そんな病気みたいな症状が出るなんて、ほんとうに女性は大変だ。

 だけどオレは、言われてみればたしかに少しだるいな、という程度だった。それはなぜかというと、毎日お風呂でフラベーナちゃんたちに可愛くしてもらっている…ではなくてマッサージしてもらっているからだ。マッサージには生理の不調を軽減する効果もあり、フラベーナちゃんの神業だからこそ、ほとんど何も感じない程度に抑えられているということだ。


 じゃあ、神業を受けられない下々の者はどうしたらいいのか。魔道ナプキンで血を防ぐことができても、不調に耐えなければならないのか。それとも不調で仕事を休まなければならないのか。

 そうではない。下々の者は治療院でマッサージを受ければいいのだ。フラベーナちゃんたちの神業ほどではなくとも、ヒーラーガールズのマッサージを受ければ、ほとんどの人はポテンシャルを落とさずに活動できるようだ。どうしてもつらい人には生理休暇制度が用意されている。

 生理症状軽減のマッサージサービスは、普通の予約とは別の優先枠で、無料で受けられる。


 魔道ナプキンとそれを付けるためのパンツの普及、そして治療院の設立は、女性が社会進出するための第一歩として、アンネリーゼが二歳の時から取り組んでいる施策らしい…。これにより、女性の労働人口と活動時間が増えて、国の生産能力を向上させたのがアンネリーゼの功績の一つだという。

 さすがアンネリーゼ…。アンネリーゼは女神だから千歳くらいだと思っていたけど、アンネリーゼが人間の身体に宿ってから二歳という意味だろうか。

 今では女性の社会進出どころか勢力が強くなりすぎて男性が風前の灯火なのだけど、やっぱり今度はオレが男性の救済策を考えなきゃいけないんだよな…。失敗ばかりだけど…。



 しかし、この出来事はオレが女であることを毎月思い知らせるだけではなかった。


 生理が始まったあたりから、なんだか…、フラベーナちゃんの姿を見ると、胸が締め付けられるような…。そして、フラベーナちゃんのことをまっすぐ見られないというか…。だからといって、見ていないと寂しさで胸が張り裂けそうな…。フラベーナちゃんとずっと一緒にいたい…。離れたくない…。

 それに、スカートの中をもっと見たいとか、胸とか脚とか妙に気になっちゃって…。


 だけど、そんなオレの気持ちをもてあそぶように、クラリスがしきりに割り込んでくるんだよな…。オレはフラベーナちゃんを見ていたいんだ!クラリスなんて出会ってまだ二年で、たいした付き合いもないんだから…。と思ったら、なんだかクラリスに見とれてしまった…。おかしい…。ドキドキする…。オレやフラベーナちゃんよりはるかに大きい胸…、激しいくびれのある身体…。


 なんだかよくよく見たら、デルスピーナちゃんやアルゾナも素敵な体つきをしていて、一度見たら目が離せない…。

 オレはどうしちゃったんだ…。今までこんなことなかったはず…。


 でもある日フラベーナちゃんが全然笑っていない笑顔でオレに問うてきたんだ。「そんなにみんなのことが気になる?クラリスのおっぱいが好き?」と。オレは慌てて「そんなことないよ、フラベーナちゃんがいちばんだ」と返したら、「ふーん」と納得してくれたようなんだけど、そのあとの記憶がいまいちなくて、気が付いたらみんなのことを見てもドキドキしなくなっていて、以前と同じように見られるようになっていた。


 だけど、フラベーナちゃんだけは違う。フラベーナちゃんのことを見るとドキドキしてしまうのは変わらなかった。これってもしかして…恋…。フラベーナちゃんと何年も一緒にいるのに、フラベーナちゃんにそのときまで恋をしていなかったなんて…。しかも、一瞬でも他の子に恋をしちゃったってことだろうか…。そりゃあフラベーナちゃんを怒らせて当然だ。記憶がないのはきっといつものヤツだろう。今生きているだけで御の字だ。



 フラベーナちゃんに恋をしちゃって、毎日お風呂に入ったり、毎日前に乗っかられて寝てたりして、ドキドキの連続だ…。オレの心臓が持たない…。もう限界だ…。

 どうやったらフラベーナちゃんに触れられるだろう…。そうだ!マッサージ!


 みんなはマッサージしあわないのだろうか。オレのつたないマッサージでもフラベーナちゃんは喜んでくれるかな…。少なくともルルは喜んでくれたけど、オレの魔力はフラベーナちゃんの一〇〇分の一にも満たないから、何にも感じないんじゃなかろうか…。


 今日、お風呂に入ってフラベーナちゃんたちにマッサージされて意識がなくなってしまう前に切り出してみよう。


 けっして、フラベーナちゃんに触れる口実を作ったとかではなくて、あくまでフラベーナちゃんの気持ち良がっている姿を見たいだけ…、じゃなかった、フラベーナちゃんを気持ち良くしてあげたいだけと思わせるようにしなければ。


「ねえ、フラベーナちゃん。今日はオレがフラベーナちゃんをマッサージしてもいいかな」

「えっ、嬉しい!やってやって!」

「じゃあ座って」

「うん」


 フラベーナちゃんにオレのほうから触れるだなんて恐れ多いと思っていたけど、すんなり受け入れられた。

 フラベーナちゃんはお風呂の椅子に腰掛けた。とてもそわそわしているのが分かる。こんなに期待してくれているのに、オレのマッサージの威力にがっかりさせてしまわないだろうか…。

 オレは恐る恐るフラベーナちゃんの背中に触れた。


「ああああああああああああああああああああんんん……」


「えっ」


 ちょっと魔力を込めて触れただけなのに、フラベーナちゃんは、あられもない声を上げたあと、崩れ落ちて床に倒れてしまった。


「えっ、大丈夫?フラベーナちゃん!」


 オレはフラベーナちゃんを揺すってみた。


「ぷはっ…。はぁ…はぁ…。すごい…。もっと!」


 フラベーナちゃん気がついたようで、今まで息が止まってしまっていたかのように、呼吸を荒くしている。


「待ちなさい。次は私よ!」

「これはお姉様でも譲れません」


 なんと、「オレのために争わないで」状態になってしまった。フラベーナちゃんはデルスピーナちゃんと取っ組み合いを始めたのだが、フラベーナちゃんの力のほうが強いので、デルスピーナちゃんは押され気味だ。

 そこで、オレはフラベーナちゃんの背中に回り込んで、フラベーナちゃんの背中を押してみた。


「はあああああああああん…」


 フラベーナちゃんは再び崩れ落ちた。息はしているようだ。


「ナイスよ!私にもやって!」

「はい」


 背中を向けるデルスピーナちゃんの背中を押した。


「あああああああああああああああああああああんんんん……」


 デルスピーナちゃんは雷にでも打たれたかのように、一瞬だけ固まって、そして崩れ落ちた。


「私もお願いします…」


 今度はグリシーラちゃんだ。


「「「「「私も!」」」」」「オレも!」「ボクも!」


「じゅ、順番で…」


 みんなが集まって背中を向けてきた。オレは近い子から順に押していった。


「「「「「ああああああああああああんんん…」」」」」


 次々に崩れ落ちていく…。死なないみたいだし大丈夫だよね…。みんなのことだから死んでも大丈夫だよね…。


 そんなに魔力を込めているわけじゃないんだけどなぁ…。なんで俺ごときのマッサージがこんなに効くんだろう…。



 みんなお風呂の床で寝っ転がしたままでは可哀想なのだけど、風呂場のベッドは一つしかない。

 しかたがないので、一人ずつ寝室のベッドに運ぼう。もちろんフラベーナちゃんから。


 フラベーナちゃんをお姫様だっこした。


 フラベーナちゃん…、大人になったな…。まだ七歳だけど、十五歳くらいに見える…。身体強化を使えるから小柄なオレでもお姫様だっこできるけど…。


 ごくり…。今まで裸のフラベーナちゃんを何度も見てきたはずだ…。眠っていて意識がないところだって見ている。

 それなのに、なんだかいつもと違って見える…。しっとりとしているというか、色っぽいというか…。

 それに、フラベーナちゃんをお姫様だっこすると、フラベーナちゃんとオレの大きな胸が干渉して、むにゅむにゅと形を変えている…。なんだかおかしな気持ちになってくる…。


 いかんいかん!何をやってるんだ!早くしなければ!


 フラベーナちゃんをお姫様だっこしながら、土魔法で脱衣所にある生地をパンツとネグリジェとしてフラベーナちゃんにまとわせる。オレも四年間でだいぶ魔力が上がったけど、一瞬で服を作れるわけじゃない。

 そこで、生地を薄く、面積を小さくすることで、一分で仕上がるようにできた。けっしてフラベーナちゃんにスケスケハミハミのエッチなネグリジェを着せたいとかいう下心があったわけじゃない。もちろん大事なところだけはちゃんと厚くしてある。でもそれ以外のところは時間短縮のためにしかたがなかったんだ。

 女の子にエッチな下着を贈るなんて下心見え見えと思われてもしかたがない。だけど、これっていつも俺が着せられているのと同じだ。それにフラベーナちゃんはエッチな感じのを贈ると喜んでくれそうだからいいよね。


 さてフラベーナちゃんいちばん大切だけど、まだ浴室に転がっている二十二人の子をなんとかしないと。みんな頑丈だから風邪なんて引かないはずだけど、いつまでも女の子を風呂場に転がしておくなんて、紳士のオレにはできない。

 オレは一人一人をお姫様だっこでベッドまで運びながら、スケスケハミハミのネグリジェとパンツをまとわせていった。けっして、四歳のレジーナとかのエッチな姿を見たいわけじゃない。オレはロリコンの変態じゃない。アンネリーゼとは違うのだ。

 フラベーナちゃんだって七歳だけど、フラベーナちゃんはもう大人なんだ。大人なフラベーナちゃんのエッチな姿を見たいと思うのは当然だろ!


 まあレジーナとか幼い子はともかく、みんな結構大人っぽく成長しているんだな…。クラリスなんて留学してきたときから大人だったけど、ちょっと胸が大きくてオレの胸と干渉しすぎてお姫様だっこしにくい…。だがそれがいい…。


 一人一分ずつネグリジェをまとわせながら運んでいたら、全員で三十分くらいかかった…。フラベーナちゃん以外の子がどうでもいいというわけではない。これだけ毎日一緒に寝ていて愛着が湧かないわけもない。ちゃんとみんなのことを大事に思いながら、肌と肌で触れあいながらじっくり運んでいたら、けっこうな時間になってしまった…。

 本命はフラベーナちゃんだけど、みんなのことも大切に運んだよ。プロセーラだって投げ捨てたりしなかったよ。


 とりあえず、みんなを運び終わったらオレもいつものネグリジェとパンツを着た。風呂は寝室に併設されているので、裸で行き来しても誰にも見られない。見られるとしても、メイド四人いるだけだ。

 

 まだみんなが起きないから、今のうちにみんなのネグリジェの生地を厚くして面積を増やしておこう。


「「ん、ん~…」」


 と思ったら、みんな起き始めてしまった。


「システィナ…?」


 フラベーナちゃんは身体を起こすと、オレに気が付いた。


「はうっ…」


 フラベーナちゃんはいきなりボワっと火が付いたように顔を真っ赤にして、そっぽを向いて縮こまってしまった。

 どうしよう…。ネグリジェがエッチすぎただろうか…。フラベーナちゃんにエッチなネグリジェを着せたら喜んでくれるだなんて、思い上がりもいいところだっただろうか…。


「システィナ…、えっ、はううう…」


 デルスピーナちゃんもオレに気が付くと、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。


「「「「「システィナ…。はゎゎゎ…」」」」」


 どうしたんだろう…。起きた子がみんな同じ反応をする…。エッチなネグリジェがそんなにいやだったか…。女心は計り知れない…。


 終わった…。フラベーナちゃんどころか、みんなに嫌われてしまった…。

 王女様を辱めたなんて、死刑だろうな…。

 ヒストリアから留学に来た王女様を辱めたほうがもっとマズい…。国交が悪化して戦争とか…。



 オレが青ざめて考えを巡らせていると…、


「やっぱり我慢できない!」


 プロセーラがオレに飛びかかってきた。だけど、プロセーラが空中にいるときに…


「ダメよ!システィナの初めては私のものなの!」


 フラベーナちゃんが割り込んでプロセーラを突き飛ばして、かわりにフラベーナちゃんがオレに飛びかかってきた。

 ああ…。これはいつものように…。だけど今度は目覚めないかもしれない…。さようなら。愛しいフラベーナちゃん。




「ん、ん~…」


 朝だ。閉まっているカーテンの隙間から朝日が漏れている。

 昨日…、フラベーナちゃんに飛びかかられたところまでは覚えている…。あれ…生きてる…。


「ん~…。し、ししし、システィナ!」


 フラベーナちゃんが目覚めて起き上がったのだけど、オレを見るなり顔を真っ赤にして、ベッドに塞ぎ込んでしまった。

 やっぱり…。エッチなネグリジェを着せてしまったから…。

 オレがいつもやられているからといって、みんなが喜ぶわけないよな…。

 はぁ…。


 っていうか、みんなにネグリジェを着せてパンツをはかせて起きながら、オレはネグリジェだけ着てパンツをはいていなかった…。オレ、ノーパンで寝たのか…。あれ…、みんなを運んだあとはいた気がするんだけど…。


 フラベーナちゃんは、オレのほうをチラチラ見ながら、目を合わせられないという感じだ。なんていうか…、しおらしいというか…。


 その後、みんな起きたのだけど、みんな同じ反応だ。

 みんな、ベッドの上で顔を背けたり、ベッドに顔を塞ぎ込んだりして、いつまでもそのままでいる…。

 このままでは仕事にも学校にも行けないだろう…。


「あの…」


 オレが恐る恐る声をかけると…


「「「「「ひゃうっ…」」」」」


 みんな電気が走ったみたいにビクッとして、そのあともじもじしている…。


 みんなそんなにこのネグリジェがいやだったか…。

 オレは取り返しの付かないことをしてしまった。昨日、気を失ったら、もう目覚めることはないと思っていたのだけど、まだ生きているな…。死ななかったのかな…。生き返してくれたのだろうか…。

 だからといって、オレたちは今までどおりではいかないだろう。オレはこの屋敷を追い出されるかもしれない。いや、ここはオレの屋敷だし、みんなが居候だよね?


「あの…、システィナ…。このネグリジェ着せてくれたの…?」


 フラベーナちゃんがもじもじとしながらしおらしい感じで問うてきた。オレは慌てて繕おうとする。


「ご、ごめん。オレ、けっしてフラベーナちゃんのはだ…」

「嬉しい…」

「へっ…?」


 オレがしどろもどろになって言い訳をしている途中にかぶせて、フラベーナちゃんは何と言っただろうか。


「嬉しいの…」

「えっ…、そんエッチなのを着せちゃって、まるでオレがフラベーナちゃんの…」

「私を見たいと思ってくれたなんて嬉しいよ」

「そ、そうか…。あはは…」

「私の身体に興味がないのかなと思っていたくらいだよ」

「そんなことないよ。オレはいつだってフラベーナちゃんのことが好きで、フラベーナちゃんの身体を知りたいと…、あっ…」

「うふっ。システィナ、大好き!」


 フラベーナちゃんはオレに飛びついてきて、オレを押し倒した。



「ねえ!私を見なさいよ!あなたがこれを着せたんでしょ!私に興味があるんでしょ。私をもっと見てよ…。私に振り向い…」


 いきなりベッドの上で仁王立ちになり、すごんだしゃべり方をしたのはデルスピーナちゃんだ。だけど、だんだん声が小さくなっていって、最後のほうは聞き取れなかった。


「システィナ。お姉様を抱いてあげて」

「えっ、うん」


 いつも俺を独り占めしようとするフラベーナちゃんが、そんな提案をするとは思わなかった。

 オレに覆い被さっていたフラベーナちゃんは起き上がった。オレも起き上がり、立ち上がって、デルスピーナちゃんを抱きしめた。


「ありがと…」

「うん…」


 デルスピーナちゃんがこんなにもオレのことを思っていてくれたなんて…。



「ねえ、わたくし、あなたに一目惚れしてしまったのです…。私はあなたに心を奪われてしまったのですわ」

「えっ」


 今度はクラリスだ。十一歳にして、完全な大人の体つき。オレやフラベーナちゃんに勝る巨大な果実。

 まだ二年の付き合いだけど、オレに一目惚れしているとは知らなかった…。


「いいわよ。クラリス様のところへ行って…」

「うん…」


 デルスピーナちゃんは名残惜しそうに、オレを手放した。


 クラリスは立ち上がって、オレを抱いた。


 クラリスは身長一六五センチくらいだろうか…。オレは完全にクラリスの胸に顔をうずめることになった。このネグリジェはオレが作ったんだ。胸の部分がよく開いていて顔をうずめやすい…。というか、クラリス用としてはちょっと面積が足りなすぎたかもしれない…いや、こうするためにこんなネグリジェを作ったわけじゃないよ…。


 とはいえ…、クラリスの胸はオレの頭よりもはるかに大きい…。これが包容力…。



「次は私に振り向いてください…」


 今度はグリシーラちゃんだ。


「私だってあなたに心を奪われたのよ!」


 フェニラと…。


「私たちのことを引っ張っていってくれるあなたに憧れていたんだから!」


 パリナと…。


 結局全員と同じように抱き合った。

 いつもは強気なプロセーラも、なんだか今日はしおらしい。



 その日は結局、仕事もできなかったし、学校にも行けなかった。

 全員うつろな感じで、頬を赤らめて、オレのほうをチラチラ見たり背けたり。

 ぼーっとしていたら、閉まっているカーテンから漏れる日の明かりが赤くなっていた。


 メイドが夕食に呼んでくれて、やっとベッドから出た。

 メイドがドレスの生地を持ってきてくれたのに、みんなオレの着せたネグリジェから着替えようとしない。ネグリジェのままダイニングに行くことになった。


 いやいや、ちょっとまって、オレだけノーパンだった…。

 それもあるのだけど…、みんな頑丈だから一日くらい飲まず食わずでもなんともないのだろうか。オレにはちょっと負担が大きかったみたいだ。立ち上がったら身体がだるいことに気が付いた。


「システィナ、どうしたの?」

「うーん、なんだかちょっとだるくて…」

「だるい?」

「動くのがきつくて…」

「治療魔法で治るかな」


 フラベーナちゃんはだるくなったことがないのだろう。無敵だからな。


「ああああん…」


 フラベーナちゃんは治療魔法と称して、マッサージしてくれた。可愛くなる魔法付き。何度もやられているから、流れる魔力で効果が分かるようになってきた。


「どう?」

「うん、良くなったよ」

「よかった!」


 少しは回復したけど、そのあとどんどんだるくなっていった…。フラベーナちゃんはそのことにすぐ気が付いた。


「ごはん、ここに持ってくるね」

「ありがとう…」


 だけど、食べ物が何も喉に通らない。すぐに気持ち悪くなって吐いてしまった…。

 フラベーナちゃんに嘔吐物の処理をさせてしまった…。ごめん…。



 オレは風呂に入らずにベッドに横たわった。フラベーナちゃんも付き添ってくれている。


「もっと治療魔法をかけるね」

「ありがとう。あああん…」


 仰向けのオレの背中に、フラベーナちゃんは手を入れて押してくれる。


 オレは身体の九割を身体強化に頼って動かしている。オレは四歳女児程度の筋肉しかないのだ。そこだけは最初に作ったキャラ設定が活きている。

 だけど、今は身体強化がうまく働かなくて、光の魔力がおなかの下のあたりに集まっていて制御できない…。

 それに筋肉のほうも疲れきっていて、足が棒のようだ。四歳女児の力でもなんとか立ち上がれるはずなんだけど、今は立ち上がれる気がしない。

 頭も少し痛くなってきた…。オレ…死ぬのかな…。女神の娘にエッチなネグリジェを着せたバチが当たったか…。


「システィナ…」


 みんなお風呂に入らなかったのか、オレの着せたネグリジェのまま寝室に戻ってきた。

 みんなでオレの身体を触って、よってたかって治療魔法と可愛くなる魔法をかけていく。


「あああん…。少し楽になってきたよ。みんなありがとう」


 とても気持ち良くて、いつもだったら気を失っているくらいなのだけど、全然足りない。


「少しかぁ…」


 フラベーナちゃんやみんなが心配そうにオレをのぞき込んでいる。


 オレ、どうしちゃったのかな…。オレ、死ぬんだ…。たぶん何回も死んでそのたびに生き返してもらっているはずなんだけど、生き返れる回数を超えたのかな…。




 眠っていたらしい。腕すら重くて持ち上げられない。フラベーナちゃんはオレの右隣で目を瞑っている。今日は前じゃないんだな。オレの身体強化ナシで乗られたら、苦しいだろうな。フラベーナちゃんはちゃんと分かってくれたらしい。


 首を動かすのすらおっくうだ。左隣にはアンネリーゼ…?アンネリーゼが女の子座りしていた。


「あ、アンネリーゼ様!」


 オレは起き上がろうとしたけど、まったく身体が持ち上がらない。


「ああ、楽にしていていいですよ。それにしてもすごいですね…」

「えええっ?」


 アンネリーゼはオレのおなかの少し下辺りを眺めてすごいと言っている。なんだろう…。大腸癌とかかな…。癌ならフラベーナちゃんがちょちょいのちょいと治してしまいそうだけど…。


「アンネリーゼ様は私の容態を見に来てくださったのですか?」

「そうですよ」


『何しろ、二十三人分ですから』

「うわっ、ダイアナ様…」


 オレの上から声がした。上を見上げるとダイアナが座っていた。


「えっと、私のおなかに何か悪いものが…?」

『悪いかどうか、もう少し様子を見てみないとわかりません。昨日着床したばかりでは、意識が途切れ途切れですので』


 着床ってなんだっけ…。


『とりあえず、機材を取り付けます』

「はい…」


 人工呼吸器とか、心電図とかだろうか…。

 ダイアナはオレの右手と左手の人差し指、中指、薬指、小指に指輪をはめて、右腕と左腕の手首に腕輪をはめて、二の腕にも輪っかをはめて、


「はぅ…」


 太ももにも何やら輪っかをはめたら、ちょっとくすぐったかった…。

 それから足首にも輪っかをはめた。

 最後に、腹巻きのようなものを巻かれた。


 なにやら輪っかだらけだ…。


『取り急ぎ、高出力タイプのインテリジェントデバイスをありったけ取り付けました。魔力を補助してくれるので、身体強化を…使えないですね…。全部子宮に吸い取られています…』


 魔道具もさじを投げたか?魔力が吸い取られている?呪いにでもかかったか。

 インテリジェントデバイスって、スマホに代わる新しい端末だっけか…。


 フラベーナちゃんたちは嬉しいとか言っていたけど、ほんとうはオレに辱められて、オレを呪い殺したいほど憎んでいるんだ…。オレはなんてことを…


「そんなことはありませんよ。フラベーナたちは、あなたのことを心から愛しています」

「えっ…」


 アンネリーゼは女神のような優しい顔で言った。フラベーナちゃんたちがオレを愛している?


「しかも、恋しちゃったみたいですねえ…」

「えっ…」


 愛の次は恋?


『昨日のこれが鍵ですよ』

「また覗き見してぇ…」


 ダイアナはアンネリーゼにスマホ画面を見せている。オレにはスマホの裏側しか見えない。

 覗き見って…。エージェント・アンネリーゼの盗撮?他の人には見せないって言ったのに…。アップしやがったな…。

 昨日のマズかったことといったら、やっぱりみんなにスケスケネグリジェを着せたことか…。


「えっと、今可能な限りの施術をしておきます」

「ああああああああん…」


「それに、ありったけの魔力をデバイスの魔道石に充填しておきます。全然足りないようですから、フラベーナたちが起きたら施術をして魔力を充填するように言っておきます」


「私の治療にはそんなに魔力が必要なのですか…」

「そうですね。何しろ二十三人ですからね…」

「はぁ。二十三人ですか…」

「はい。二十三人です」


 二十三人といったら、


 フラベーナちゃん、デルスピーナちゃん、グリシーラちゃん、

 パリナ、プレナ、ペルセラ、

 イスマイラ、ゾーラ、エレナ、リザベル、ナーラ、

 プラチナ、アルゾナ、コルトラ、

 フラーラ、ティノイカ、プロセーラ、

 エウレカ、アリス、

 クラリス、フェニラ、ファルナ、レジーナ、


 のことだよね…。

 この二十三人みんなから呪いを受けたんだろうな…。

 あれ、でも、フラベーナちゃんが起きたら魔力を充填してもらう?呪った本人じゃ?



「うーん、栄養が足りませんね。魔法だけじゃ足りないです。水分も取っていないようです」

「そういえば、夕食では何も喉に通りませんでした」

「そういうときは、これしかないです。はい」

「もがっ」


 アンネリーゼは、その大きな胸をドレスからペロンと出して、オレにくわえさせた。

 母乳だ…。母乳がどんどん出てくる…。飲み込まないと…。

 ああ、美味しい…。優しい…。身体に馴染む…。本能がこれを欲している。自分がいかに飢えて渇いていたか。




「とりあえず、今夜はずっと看ていますので、安心して休みなさい」

「えっ、はい…」


 まさかのアンネリーゼの添い寝…。


「あの…、ありがとうございます」


 オレは精一杯の力で腕を持ち上げ、アンネリーゼに手を差し伸べた。


「ムリする必要はあり…ああああああああああああああん…」

「えっ…」


 アンネリーゼはオレの手に触れた途端、雷が落ちてしびれたようになり、あられもない声を上げた。

 俺の手は力を失って、ベッドの上に落ちた。


『何それ、すごい!私も!』


 ダイアナの言葉遣いが壊れた。ダイアナはオレの手を取ったが、


『むぅ、なんで私には効果がないのだ』


 何も感じないらしい。


 アンネリーゼは頬を赤らめて、なんだかオレを直視するのをためらっているような…。フラベーナちゃんたちと同じになっちゃった?


「さっ、施術しますので、安らかにお休み!」

「ああああああああああああああああん…」


 アンネリーゼは何かをごまかすようにオレの背中に手を入れた。




 朝だ。閉まったままのカーテンから、朝日が漏れている。

 右隣にはフラベーナちゃん。

 左隣にはアンネリーゼ。

 上にはダイアナ。

 あとは、よく分からないけど、デルスピーナちゃんとかクラリスとかいっぱいいそうだ。


 っていうかオレ…、アンネリーゼと寝たんだ…。なんだか最後はよく覚えていないけど…。

 オレはフラベーナちゃん一筋だと思っていたけど、まだアンネリーゼのことを諦めていなかったのだろうか。

 オレは成長して、アンネリーゼと並んでも…、ダメだ。永遠の少女なので、一七〇センチくらいあるアンネリーゼとじゃ、大人と子供だなぁ。


 でもまあ、オレはやっぱりフラベーナちゃんがいちばん好きだ。フラベーナちゃんに呪い殺されるのも悪くない。


「ん~…。システィナ…。好き…。元気になって…」


 起きたのかと思ったら寝言だった。

 んー。フラベーナちゃんはオレに呪いをかけたんじゃないのか…。好きすぎて呪いをかけちゃったってことかな…。ネグリジェの恨みじゃないんだろうか。

 それにしても、フラベーナちゃん…、ちょっと臭うな…。フラベーナちゃんの香り…。どんな香水にも勝る…。

 フラベーナちゃん…。好きだぁ…。


「んっ、ああぁ~…」


 左を振り向くと、アンネリーゼの大きなあくび…。アンネリーゼって、いくら繕っても庶民派の女神だよな。


「はっ…」


 アンネリーゼは突然顔を真っ赤にして、そっぽを向いてしまった。そりゃ、あくびを思いっきりオレに見られたからな。


「もう!」

「ああああああん…」


 アンネリーゼはお返しと言わんばかりに、オレの背中に手を入れて、背中を押した。



「んっ、あああぁ~…」


 今度は右側であくびが聞こえた。


「はっ…」


 フラベーナちゃんは突然顔を真っ赤にして、そっぽを向いた。


「もう!」

「あああああん…」


 フラベーナちゃんはお返しと言わんばかりに、オレの背中に手を入れて、背中を押した。


 なんだこの二人、そっくりじゃないか。親子だもんな。


 フラベーナちゃんもあと二年くらいでアンネリーゼと同じ背になりそうだ。


「フラベーナ、システィナの治療を任せます。みんなで交代して、夜通しの施術をお願いします」

『あと、インテリジェントデバイスへの魔力充填もね』


「アンネお母様、ダイアナお姉様、任せてください!」

「それではまた来ますね」


 どうやら、二十三人の女神が交代で呪いを解いてくれるらしい。

 どれだけかかるのだろう…。

 オレの戦いは始まったばかりだ。






 ダイアナは健康監視システムからの通知を受けた。


 健康監視システムは、スマホやタブレットに備わったハイパースペクトルカメラや、(Magic)(Resonance)(Imaging)により、使用者や周辺の者の健康状態を監視するシステムである。


「マジか…」


 ダイアナは思わず声を漏らした。合成音声ではなく。


 フラベーナを筆頭に二十三人の娘たちが次々と、「排卵させる魔法」「精子を作る魔法」「受精させる魔法」「着床させる魔法」を使って、カルボシスティナに胎ませた。


 排卵させる魔法は、排卵日とは無関係に排卵させる魔法である。私もデビュタントパーティのあとに三十人の嫁に使った。たとえ初潮が来てなくても、初潮を来させてしまうのも一つの効果である。

 今回はカルボシスティナの初潮が来たばかりであり排卵は終わっていたが、二十三人に魔法を使われて二十三回余計に排卵させられたようだ。


 そして、精子を作る魔法は、今回のように自然な流れでやってしまう場合は、自分の皮膚を削って精子に細胞を作り替える魔法である。意識的にやる場合は、髪の毛などけっこう何でも材料にできる。


 受精させる魔法と着床させる魔法は、おめでたの成功率を上げるものであり、必須ではない。


 これらの魔法はエッテンザムの本能に伝わるものなのだが、エッテンザムではないフラベーナたちも、フラーラたちの精霊伝いに教えてもらったようだ。



 なぜ二十三人がいっせいにこんなことをしでかしたのか。スマホの常時録画を少し戻してみよう。

 カルボシスティナが風呂でフラベーナたちを気絶させている。カルボスシスティナにはそれほどの魔力はないはずだ。

 ということは、これ「お返しの魔法」だ。フラベーナたちがいつもカルボシスティナにかけている魔法は、血行を良くして健康で美しくなる魔法に、可愛くなる魔法を混ぜていたが、「自分を恋の対象と見なせるようにする魔法」も混ぜていたのだ。これはエッテンザムが自分を女性に好きになってもらうための魔法である。

 通常、女は女を恋の対象とは見なせないが、この魔法をかけられた者は術者を恋の対象と見なせるようになる。

 しかし、この魔法は術者が対象を恋の対象と見なすためのものではない。術者が対象を恋の対象と見なせるようになるためには、対象から術者に「お返しの魔法」を使ってもらう必要があるのだ。


 今までカルボシスティナは、フラベーナたちにお返しの魔法を使ったことがなかった。自分の魔力が低いので、マッサージ効果が薄いと思っていたからだ。

 しかし、今回はカルボシスティナに初潮が訪れたため性欲が芽生え、フラベーナたちに触れてみたいと思うようになったようだ。それで魔力を込めて触れたら、お返しの魔法が発動してしまったようだ。

 お返しの魔法の魔力は、術者が対象に積み立てていくものである。フラベーナたちは何年もカルボシスティナにお返しの魔法の魔力を積み立てていた。それを今回カルボシスティナはいっきに解放したのである。

 これにより、フラベーナたちはカルボシスティナを本能的に恋の相手だと認識。積み立てた魔力がすごい威力となってしまい、まだ性欲の芽生えていない幼い者までもが、カルボシスティナを恋の対象としてしまった。

 恋は盲目。あっという間にゴールインしてしまったということだ。


 さて、いきさつはどうあれ、このままでは母子ともに死ぬ。治療魔法は栄養不足では働かないのである。



『ママ、カルボシスティナがピンチだ。ムコサール領に行くよ』

「えっ、いったい何?」

『二十三人の子を妊娠した』

「はぁ?」

『とにかく行くよ』


 というわけで行ってみた。

 カルボシスティナの精霊は一応自動HP回復を習得しており、魔力のすべてを子宮につぎ込んでいた。しかし、まったく足りていない。

 指輪と腕輪のインテリジェントデバイスを持ってきた。影収納を備えており、中に魔道炉が入っている。今回は出力の大きいものをたくさん用意してきたのに、出力が足りなかった。

 あと、二十三人も育てるスペースはおなかには明らかにないので、魔道腹巻きも巻いた。


 ママが施術するも、栄養が足りない。しかし、子宮に血流を取られすぎて、消化器官がほとんど働かない。

 そこで、ママは母乳を与えることにした。ママはカルボシスティナが男であったことを忘れているようだ。私は生物学的に雌であれば、心が雄でもいいよ。むふふ。


 栄養が回ってきたら、胎児のエンジンがかかったようだ。

 やばい!スマホの胎児教育プログラムに反応があった!転生者の兆しが見える!

 カルボシスティナは九歳四ヶ月だったようだ!私は二十三人に胎児に薄緑の精霊や他の精霊を付けた。電気も闇も付けられた!


 転生者の大量召喚は、ジフラーナかジフローラが九歳になるまで我慢しようと思っていたのだ。

 クラリスでは見送ったのだ。デルスピーナの代やフラベーナたちにも転生者の召喚を押しつけるつもりはない。

 だけど、これは拾いものだ。せっかくこの世界に来てくれたのだから、死なないようにしないと。


 しかし、転生者の生まれる条件は、母体九歳と四、五ヶ月…というか母体が胎児になってから十年二ヶ月から三ヶ月くらいなのであるが、いったいどこ部位にその因子があるのだろう。

 卵巣や卵子は受精したからといってすでにできるものではない。とくに今回、カルボシスティナは三歳で性転換したときに治療と称して卵巣と卵子ができている。卵子ができた時期は関係ないのだろうか。

 卵子に因子があるのか調べるために、影収納使って卵巣に扉を開き、卵子をいくつかもらうことにした。


 ちなみに、卵子というのは生まれたときに数が決まっており、どんどん減っていくのが普通なのだが、ママの考えた自動HP回復によって、卵子の数が常に回復しており、一定の数に保たれているようだ。私たちに閉経は訪れないようだ。

 これはカルボシスティナに限ったことではなく、ママや私はもちろん、光の魔力の高いヒーラーガールズや、ヒルダたちなどママの施術を受けている者はみんな、卵子の数が減っていないようだ。

 スマホによる健康管理システムに、卵子の数の監視を加えておこう。




 しかし、ジフローラAでカルボシスティナの心を読んでいるととても面白い。ママやフラベーナのことを女神だと思い込んでいる。そのうえで、庶民派女神とかぽやぽやしているとか、とても失礼なことを考えている。

 ママもその心を読んでいるようで、真っ赤な顔をして繕っている。しかし、「可愛いから許す」ようだ。さすが可愛いが正義。


 カルボシスティナは、すでに酷いマタニティブルーになっているようである。二十三倍のマタニティブルーはすごいな。フラベーナたちを辱めたと勘違いしており、妊娠の諸症状を復讐の呪いだと思っているようだ。

 この世界にそんな魔法はない…こともないか。ママは血流を悪くして下半身不随にする魔法とか脳死させる魔法とかを使う。まるで呪いのようだ。



 ママはカルボシスティナにちょっふれられただけでお返しの魔法をかけられてしまったようだ。ママはカルボシスティナに可愛くなる魔法をかけたことがあるので、うっかり恋の対象になる魔法もかけていたのだろう。うっかりにもほどがある。

 そして、一晩容態を見守ると言っておきながら、我慢できなくなって二十四人目を胎ませてしまった。ずるい!私もやる!

 ホワイトゴールドドラゴンクォーターである、ジフロラーナA、フルプレドーナA、ティノミーナAとリグコベーナA、四人の子を便乗して胎ませた。二十四人も二十八人もたいして代わらないよね。どうせ光の魔力が全然足りないし。

 ただ、その四人は非公開キャラなので、表向きは四人ともジフローラが胎ませたことにする。

 よしよし、ママの子も自称ジフローラの子も転生者の反応を示したよ。


 ついでに、転生者の生まれる条件がどこにあるのかを調べるために、カルボシスティナの卵子ではなく別の卵子を影収納で植え付けて、体内で受精させたけど、どうやら転生者ではないようだ。つまり、母体が転生者の生まれる条件は母体にはないようだ。

 しかたがないので、この失敗作には私の記憶をコピーして分身にしておいた。


 カルボシスティナには、魔力もさることながら、栄養がまったく足りない。栄養摂取能力も死んでいる。

 しかたがないので、ママと交代で頻繁に母乳を与えに来ることにした。

 母乳は赤ん坊でも消化できる栄養食品である。たしかにその通りであるが、ママがそう思い込み続けた結果、ママの母乳は胃に入ると自らを消化し、自動で腸まで移動して栄養として全身に行き渡るところまでやってくれる、魔法の飲み物になってしまっている。しかもママの愛の味がするのでとても美味しいのだ。

 ママの多くはママの思い込みでできている。信じれば何でもできる。それがこのファンタジー世界。


 ムコサールの屋敷には毎日来ることになったので、転移の間を設置することになった。転移の間は相手側の座標や風景が明確に分かればどこへでも行けるので、王城側の改造は必要ない。




 システィナの話はさておき、この四年間には外交を進めた。


 まず、アンテベーナと、デルモゾーラ、グリスティーナはあっという間に出荷された。西の国、北西の国、北の国の首脳陣を洗脳して、国民すべてを可愛い女に改造した。


 北東の国だけ来ないなぁと思ってドローンで偵察に行ったら、メリリーナが武力で王になっていた…。メリリーナは東に行くって言っていたから東のゾルピデムに辿り着くのかと思っていたのに、方向音痴でいつのまにか北東の国に辿り着いていた。

 メリリーナはハーレムを築いてキャッキャうふふしているらしい。これでママや私と対立することもないかな。


 今回征服した北の国と北西の国よりも北には、国はなさそうだ。この世界の気温は人がすごしやすいように火の精霊と水の精霊によって制御されている。だけど、これ以上北には人も精霊もいなくて、気温が制御されていないようだ。なので、突然極寒の地になる。

 だから、勢力を伸ばしていくなら西と東だろう。


 ドローンの機能は飛躍的に向上した。影収納に魔道炉を積むことで、いくらでも出力を上げられるし、スタンドアロンで活動するためのコンピュータも高性能にできる。

 転移機能を備えたドローンを開発中だ。この惑星をどんどん探索していくんだ。



 一方、南側、ヒストリアのある大陸のほうは、ママが勢力を伸ばしている。説得と称してライブツアーで民衆を洗脳して、国民すべてを可愛い女に改造している。


 今や、この辺りで男が残っているのはロイドステラとヒストリア、あとはメリリーナの国だけである。

 メリリーナは性転換の魔法を使えるほどの魔力を持っていない。可愛くする魔法も、肌や髪を綺麗にするとか、部分的に血行を良くしてスタイルを整えるようなものだけである。

 メリリーナにはたいした知識もないので、王になったといっても、実質国を牛耳っているのは、メイドのスピラのようだ。

 北東の国は、国といえる規模のものではないようだ。部落とか部族というところか。人口も一〇〇〇人程度か。一領地の規模だ。

 寒い地域で、魔物を狩りして生活しており、力がものをいう国だ。メリリーナにぴったりだ。

 でもその話はまた別の機会に。




 四年の間には、たくさんの子を成した。


 まず、私はミスリーとセレーナの子を産んだ。


 ミスリーの子はレンドルミナ・メタゾール公爵令嬢。この子には生まれてから薄緑の精霊を付けたので、スペックは乳児の魂百まで級。一つ上の姉のアンビエーナと同じだ。


 セレーナの子は双子で、リグローラAを掛け合わせたドラゴンクォーター。名前はボルテナAとB。私の記憶をコピーした私の分身。セレーナは黒髪でリグローラは薄い金髪なので、ボルテナも暗い金髪になってしまった。

 こちらはそれぞれ、胎児の間に真っ白な精霊と薄緑の精霊を付けてある。


 セレーナの子は、ミスリーの子と一緒にママにこっそり取り上げてもらい、ミスリーには見せていない。ボルテナはすぐに胸の谷間の住人になった。


 アンテベーナとデルモゾーラとグリスティーナは、第五、第六、第七の王女として次々に政略結婚で嫁いでいったので、次なる政略結婚のコマを育てなければならない。しかし、私の身体はそんなにたくさん一度に育てられない。

 そこで、三十人の嫁を使うことにした。


 ワイヤは胎まされた遺伝子が自分の子孫でないことを本能的に認識できるようだが、人間にそのような能力はない。私が胎ませれば人間の嫁は自分と私の子だと思ってくれる。まあ、魅了してあるので、私のことを疑ったりはしない。


 そういうわけなので、アンテベーナα×デルモゾーラαと、デルモゾーラα×グリスティーナαと、グリスティーナα×アンテベーナαの三種類を作って、それぞれを一卵性の四つ子にして、十二人の嫁に胎ませた。この子らは第八、第九、第十の王女である。それぞれの四つ子は一人ずつしか産まれなかった扱いにしたいので、あとで出産した洗脳で操作しなければならない。

 生まれた子はマイア姫の血が五十パーセントといっても、そろそろ顔が遠くなってきた気がする。なんせマイア姫のひ孫なのである。ここらがマイア姫と私の子というには限界か。


 そこでしかたがないので、その次の世代は、マイア姫と掛け合わせることにした。

 マイア姫の血が七五パーセントになってしまっても、銀髪でさえあれば私の子であることは疑われない。そして、マイア姫にかなり似ているので、マイア姫の子であることも疑われないであろう。

 マイア姫の血は、能力的にはなんの役にも立たないが、もう片方の血はすでに多くの属性を胎児の魂百まで級で持っているので、能力的に困ることはないだろう。

 ちなみにこの子らは第十一、第十二、第十三の王女である。


 ついでに、リグローラとセレーナを掛け合わせたボルテナAの子と、マイア姫を掛け合わせて四つ子を作った。そろそろ外交は近隣国とはいえなくなってきたので、闇の魔力に長けた工作員が欲しいのである。

 ドラゴンクォーターになってしまうけど、変身しなければバレないだろう。銀髪でもないし私の面影もあまりない。まあ、金髪だしマイア姫には似ているのだから、ママとマイア姫の子の第十四王女だと言い張って売りつけよう。



 そして、その次の世代は第十一から第十四の王女を掛け合わせて、第十五から第二十の六人の王女を作った。


 そんなこんなで王女を量産していき、全部で十三人の王女ができた。全員私の分身である。闇の魔力に長けた者は遠方の国に送りつけよう。



 それから、ワイヤに産ませたジフロラーナα・β・γ・δ、フルプレドーナα・β・γ・δ、ティノミーナα・β・γ・δ、リグコベーナα・β・γ・δ。

 アリスに、ジフローラA、フルプレーナA、ティノーラA、リグローラAを掛け合わせて作った。もちろん、全員私の記憶を持った分身だ。国内活動の工作員、通称「胸の谷間の住人」であり、外国派遣用の王女ではない。


 ワイヤは我が儘なので、自分の子孫が強くなっていくことにしか興味がない。ほんとうはワイヤに政略結婚用王女の代理出産を頼みたかったのだけど断られた。頑丈な母体を遊ばせておくのはもったいなので、胸の谷間の住人を作ることにした。

 アリスはホワイトドラゴンハーフで、ジフローラたちはゴールドドラゴンハーフなので、ジフロラーナたちは、ホワイトドラゴンとゴールドドラゴンの血を二五パーセントずつ引くことになる。

 ホワイトドラゴンはとても頑丈なので、工作員としても母体としても優れている。


 ホワイトとかゴールドとか、もはや元の色はまったく関係なくなってしまった。なぜか髪の色がドラゴン形態の色にも反映されるのだ。

 ジフロラーナは銀だし、他のはかなり薄い金だ。


 ちなみに、ジフロラーナもフルプレドーナも、うろこはホワイトドラゴンのように堅く、導電性も高いという、二種族の効果を併せ持つこととなった。耐久性の高い導線を作るのにぴったりである。

 色違いだが効果は同じだ。そもそも、色は髪の色から来ているものであり、元のドラゴンの色とはまったく関係ない。



 ちなみにワイヤは最近十五歳になって、やっと尻尾をしまえるようになった。エウレカもいつのまにか翼と尻尾をしまえるようになっていた。


 さらに、ブルードラゴンのベニシアとレッドドラゴンのシンシアだが、こちらもヒト型のときに残るドラゴンの部位が少なくなっていて、残すは翼と尻尾だけだ。

 この二人は生まれたときにママが進化の泉に連れていったが、目とか手足にドラゴンの部位が残ってしまい「可愛くない」からヒト型化を禁止していたはずだ。だけど、翼と尻尾だけなら、まあ許せるというところか。ワイヤもそうだったしな。

 私はママの寝室にはなかなか入れないので気が付かなかった。


 これなら人と交配しても、ちゃんと人が生まれるだろうか。

 ベニシアとシンシアは、プレナとパリナと仲良くやっているようだ。ベニシアとプレナ、シンシアとパリナで交配してくれて構わないのだが、卵から生まれたベニシアとシンシアは、受精してからの正確な年月が分からないので、転生者を生める時期が分からない。

 それだったら、ベニシアとシンシアの遺伝子から精子を生成して、正確な歳の分かるプレナとパリナに植え付けた方が確実である。


 だけど、プレナやパリナに転生者の出産を強制するつもりはない。今は自分の分身がたくさんいるのである。あと四年経ってジフラーナが九歳になったら、ベニシアとシンシアの子も作ってみよう。

 そのときは、パープルドラゴンのレティシアの子も作ろう。レティシアは今四歳で、ジフラーナが九歳になるときはレティシアは八歳だけど、精子を作る側は何歳でもいいのだ。



 ちなみに、ベニシアとシンシアのうろこは、以前ヒルダたちが不在のときにこっそり採取させてもらったが、ベニシアのは耐火性・耐熱性で、シンシアのは耐冷性・耐腐食性だった。

 ホワイトとゴールドの掛け合わせは、二つの特性が弱まることなく合わさっているので、レッドとブルーの特性も、掛け合わせたら両方得られるだろうか。

 ついでに、パープルの軽いという特性も掛け合わせたら、最強の素材になりそうだ。


 魔物の素材というのは奥が深い。原子番号とか化合とかいう概念では表せない。とりあえず熱したりしながら土魔法で変形できるので、そのまま使っているだけだ。


 まだグリーンドラゴンとブラックドラゴンを見つけていない。早くコンプリートしたい。そのために勢力範囲を広げなければ。




 四年の間にはもう一つ手に入れたものがある。ヒト型の精霊である。

 ただし、メテーナみたいなのは邪魔だ。自分の顔ってのも困る。


 そこで私があらかじめ精霊にいだいていたイメージは、小さな妖精さんだ。

 十五センチの手乗りサイズ。蝶のような羽根付き(収納可能)。イメージすればお着替え可能。顔や体型はキャラメイキングアプリで、可愛さ高めでランダムで作成した。もちろんロリ巨乳少女である。強い光りの小さな玉型にもなれる。


 もちろん、子作り機能も付いている。相手になれるのは魔力の精子を作れるママか、ジフラーナAなどの真っ白の光の精霊を付けた者のみ。なぜか光の精霊とのハーフしか作れないのだ。できた精霊は薄黄色となる。

 ドリーの子である薄緑の精霊も、光属性持っているので、薄黄色の精霊は薄緑の精霊と一緒には付けられない。光属性が重複してしまうためである。

 すべてのチート精霊を付けた工作員を作りたいが、そうはいかないのである。




 それと、四年間の間に実用化したものとしては、ペガサス娘と空飛ぶ馬車の外販である。


 今いる母体はすべてペガサス娘であり、身体強化を鍛えた頑丈な母体であるため、胎児の魂百まで計画を施せるのだ。そのため、人間よりものになるのがずっと早かったりする。

 また、馬は二歳で子を産めるので、優秀な個体どうしを掛け合わせて、より優秀な個体を作るのも早くできる。ただし、ずっとヒト型でいると、なぜか人間と同じで早くとも八歳まで初潮が来ないので、馬型ですごさせなければならない。


 ちなみに、ヒト型になっても馬耳と尻尾だけは残ってしまう。馬耳は人間の耳とは別に生えている。これは、光の魔力の強い個体でもどうにもならないようだ。二十六歳のシルバーもいまだにしまえない。


 ペガサス娘は人間と交配でき、生まれる子もペガサス娘である。だから、子は進化の泉に行く必要がない。近親交配や自家交配も可能で、どんどん量産している。


 ペガサス娘は、胎児の魂百まで計画で育てられており、すべての属性の魔力をフラベーナ級で持っていたりする。ただし、薄緑の精霊を付けたりはしないので、チートレベルとは言えない。また、本体がチートレベルの魔力を持つこともない。


 空飛ぶ馬車の燃料はペガサス娘の魔力なのである。空飛ぶ馬車のほうにはバッファーとしての魔道石を積んでいるが、基本的にペガサス娘から姿勢維持の魔道具へ風の魔力を供給することで馬車が飛ぶようになっている。


 魔道馬車にもなっており、若い個体でも1DK程度ならずっと維持できる。

 恒星間ワープモードを備えており、使用する場合は馬車分のスペースが居住スペースから取り除かれる。そのため、ベテランのペガサス娘でなければ恒星間ワープモードをずっと維持できない。短時間であれば若い個体でも恒星間ワープモードを利用可能。

 恒星間ワープモードを使用すると、身体強化と風魔法を駆使して、若い個体なら時速二〇〇キロ、ベテランの個体なら時速三〇〇キロで飛ぶことができる。恒星間ワープモードを使用しなくても、時速一〇〇キロから一五〇キロで飛ぶことができる。


 そして、馬としてはシニアをすぎているような六歳程度の個体になると、人間のメイドとしての訓練も受けていて、メイドとしても使用することができるのだ。それも戦闘メイドである。胎児の魂百まで計画を施されているため早熟で、六歳でも十二歳程度に見える。影収納に生地を持っていて、ヒト型になるときに自分でミニスカメイド服をまとう。

 シニアになっても飛行能力も衰えるわけではなく、むしろどんどん速くなる。


 ただし、シニアのペガサス娘はお値段もかなりするのだ。すべての領地が改革されたこのご時世で、侯爵クラスの一ヶ月分の収入程度が必要になる。

 二歳から四歳であれば、豪商でも買える程度のお値段である。

 レンタルも行っている。



 若い個体を買って数年待っても、メイドの訓練を受けていないため、かってにメイドになるわけではない。ただし、とても可愛いので愛玩メイドにはなれるかもしれない。

 だからといって無体なことを強要できるわけではない。胎児の魂百まで計画によりひととおりの教養を持っているので、ただの家畜でも、無知な子供でもないのだ。

 今やボンクラ貴族というのはいなくなりつつあるが、数年前のボンクラ貴族よりよほど知識もあるのだ。


 ペガサス娘には人権がある。家畜として扱ってはならない。若い個体でもヒト型になることができ、馬屋ではなく最低でも使用人として生活させなければならない。

 ペガサス娘ハーフも同じである。馬型で妊娠期間を過ごして産んだペガサス娘ハーフはペガサス娘と同じ能力を備える。近くにスマホを置いておけば、胎児の魂百まで計画が施され、座学の教育も行われる。生まれてから馬としての訓練するかは購入者の自由である。だけど、生活面は人として扱わなければならない。


 一方で妊娠期間をヒト型で過ごしてしまうと、ヒト型のペガサス娘ハーフが生まれ、光の魔力が育つまでしばらく馬型になることがなれない。馬型になれるようになっても、ペガサス娘としての能力は落ちることになる。


 だから、シルバーがヒト型で出産したプラチナには馬としての訓練を施していない。とっくに馬型になれるようだが、変身したことはない。耳も尻尾もしまえるが、それは母親のシルバーも同じである。だけど、基本、耳と尻尾を出しっぱなしにしている。




 それと、私の娘たちについて、ちょっと勘違いしていたことがあった。

 私は永遠の九歳なのである。だから身長が一四〇センチから伸びず、ずっと童顔なままである。これがすべての娘に遺伝すると思っていたのだが、ちょっと間違いだった。


 ママが生み出した永遠の幼児という種族が女性と結婚して生まれた永遠の幼児ハーフというのは、永遠の少年か永遠の少女になってしまうらしい。私としては少年はどんな大きさでもNGだが、幼児でない少年はママとしてもNGなのではないだろうか。


 まあ、何がいいたいのかというと、フラーラ、ティノイカ、プロセーラの三人組や、他の二十八人の銀髪娘は、身長が一四〇センチを超えてしまったのである。一四〇センチまではあっという間に育って、その後は成長が鈍化しているけど、私のようにピタッと一四〇センチで止まったりしなかった。

 銀髪は必ず遺伝するけど、永遠の少女は必ず遺伝する属性にするなんて進化の泉では設定しなかった。しまったなぁ…。ジフローラとかで改造すれば一四〇センチに戻すことはできるけど、本人の意志を無視して改造するのはちょっと…。


 ちなみに、二十八人の銀髪娘も進化の泉に連れていったよ。銀髪が必ず受け継がれると選択したものはそれなりにいた。




 四年間の回想はこれくらいにして、話を現在に戻す。


 私はカルボシスティナの治療を終えて、転移の間から王城に帰ったあと、さっそく実験を行った。持ち帰ったカルボシスティナの卵子を別の嫁に植え付けて、体内で受精させた。しかし残念ながら転生者ではなかった…。

 母体と卵子の両方に因子があるのだろうか。


 とりあえず、私の記憶をコピーして分身にしておいた…。工作員はいくらいてもいい。


 今度、ジフラーナで実験しよう。ジフラーナのあとは分身が立て続けにいるから、実験し放題だ。



 カルボシスティナには毎日ママと私が母乳を与えにいっている。


 本人はほとんど動けないが、母子の経過は良好だ。


 二十八人の転生者と私の分身が中にいる。私の分身には真っ白の精霊を付けてあり心を読めるので、監視役にうってつけだ。

 とはいえ、胎児の意識は途切れ途切れなので、ダイアナの胸の谷間の住人が記憶を読み出して、転生者の前世を調べた。


 IT企業の社長、化学系大学教授、歯科医、

 環境省大臣、市長、自動車会社の社長秘書、

 刑事、消防士、小学校教師、バレーボール選手、

 工業系大学生、音大生、文系大学生、中学生、小学生低学年、

 家電店店員、喫茶店店主、化粧品店店員、アイドル歌手、

 ドラマ監督、シンガーソングライター、記者兼カメラマン、

 声優、アニメ専門学校生、漫画家、ゲーム会社社員、

 キャバ嬢、連続殺人犯。


 中には困った職業の者もいる。

 何も考えずに薄緑の精霊を付けて、インテリジェントデバイスを使って転生者教育カリキュラムを学ばせているが、いたずらされても困るので、光の魔力が低いうちに魅了と洗脳で改心させておかなければならない。

 なので、ダイアナが授乳に訪れるたびに、胸の谷間の住人に魅了と洗脳をさせている。一方で、腹の中にいる監視役の分身にも、途切れ途切れの意識の中、魅了と洗脳をさせている。


 ちなみに、元男はいないようだ。Y染色体で作らないと、男を召喚できないのだろうか。

 残念ながら偉人というのは男が多いので、前世の知識をこの世界に取り寄せるには、男を召喚したほうがいい。

 エッテンザムが嫌うのは生物学的な雄である。生物学的に雌であれば、心が男でも私は気にしない。

 今度、転生者を召喚するのは、ゾルピデムに嫁いだジフラーナの予定だ。Y染色体で作って、男が宿ったのを確認したら、腹の中ですぐに性転換させよう。


 まあ、困った職業以外は、前世の職業を活かしてもいいし、新たな人生を送ってくれてもいい。


 この子らは同列というわけではない。王族、貴族、平民、さまざまである。

 とくに、栄えある王位継承予定のフラベーナの子に輝いたのは……。






 転生者システィナはムコサールの屋敷でのんびりと過ごしていた。


 オレが呪いを掛けられてからだいぶ経った。最初のころは、身体がほとんど動かないし、常にげっそりしていて辛かった。フラベーナちゃんたちがお姫様抱っこでお風呂に連れて行ってくれたりして、完全介護状態だった。お姫様にお姫様抱っこされるなんて複雑だけど、ちょっと嬉しい。


 今ではだいぶ身体が動くようになってきて、自分でお風呂くらいは入れるようになった。それもこれも、じゃらじゃらと付けている腕輪や指輪のおかげだ。これらが身体強化の魔力を供給してくれるからオレは動ける。

 もし、自立しないハイヒールじゃなくて、普通の靴や裸足でお風呂まで歩いていければ、もうちょっと安心していけるのだけど、フラベーナちゃんたちはオレにハイヒールを履かせて、不安そうによろよろ歩いている姿をどうしても見守りたいらしい。そして、オレが倒れそうになったときに支える役の奪い合いになって喧嘩している。


 しかも、挙げ句の果てに、フラベーナちゃんたちは、「ちゃんと腕輪の裏も洗わないとダメ」とか言って、わざわざオレの腕輪やらを外してオレを動けないようにして、お姫様抱っこでお風呂に運ぶようになってしまった。ベッド上での配置を決めるローテーションアプリを使って、オレをお姫様抱っこする役割を決めているらしい。五歳のファルナと四歳のレジーナまで、オレをお姫様抱っこしたがるんだ…。なんというか、まだ起き上がれない赤ん坊を世話するような優しい表情で…。


 だけど、腕輪とかは外しちゃうのに、腹巻きだけは残してくれる。調子が悪いからおなかを冷やすなということだろうか。まあ、お風呂で濡れても水魔法で水分を抜き取ってくれるからいいけど。


 幼女にお姫様だっこされるのは複雑な気分だけど、フラベーナちゃんとかクラリスとか大人にお姫様だっこされるのは悪くない。

 なんというか…、王子様に抱かれているようなそんな気分…。おかしい…。オレの心は男だから、王子様にときめくというのはおぞましい。それにフラベーナちゃんもクラリスも王子様じゃなくてお姫様だ。でもなんというか、かっこいい王子様への感情みたいなものをお姫様にいだいている…。


 女どうしの恋はよく分からない…。オレがフラベーナちゃんを抱いたときもそうだったけど、大きな胸と胸が干渉してむにゅむにゅと変形するのが、おかしな気持ちにさせてくれる…。これは女どうしでお姫様だっこしないとあり得ない感情なのだろうか…。ちょっとファンタジーすぎて理解が追いつかない…。



 最初のころは食べ物がまったく喉を通らなかった。だけど、アンネリーゼが毎日母乳をくれた…。アンネリーゼの母乳は、とてもすんなり身体に馴染む。

 ダイアナも交代で母乳をくれるけど、アンネリーゼのほど美味しくないし、身体に吸収されるのにも時間がかかるようだ。だけど、食事のできないオレに栄養を与えてくれるのだから文句を言ってはいけない。

 というか、二人ともオレが元男の転生者ということを知っているはずだけど、女神というのは年頃の若い男におっぱいをくわえさせることに抵抗はないのだろうか…。オレが今可愛い女の子でさえあれば、過去はどうでもいいのだろうか。



 最近なんだか、おなかがもぞもぞする…。でもなんだか暖かいような…。


 ずっと緩いネグリジェを着ていたから気が付かなかったんだけど、胸がぱんぱんに張っているというか…、爆発しそうというか…。重すぎてバランスを崩しそうになる…。

 毎日お風呂のあとフラベーナちゃんが土魔法で作ってネグリジェをまとわせてくれるから、サイズも自動調整だし、ろくに動けないから手作業をすることもなかったから気がつかなかったけど、これはかなり大きくなっているのではないだろうか…。




 そして、オレが十歳になり、数ヶ月が過ぎたころ、オレの転性者人生最大のイベントがやってきたのであった。


「そろそろ出しましょう」

「はい?」


 いつものようにアンネリーゼがやってきたと思ったら、おもむろにそう言った。

 アンネリーゼはオレをお姫様抱っこして、大きなベッドの端にオレを移動させた。


『準備できたよ』

「二十九人もいるのに、それで足りるわけないでしょ」

『羊水を取ったら、すぐベッドにやればいい。みんなすぐに歩き回れるはず』

「また感動させてもらえないんだね」


 ダイアナとアンネリーゼは、オレの前での貴族繕とした口調ではなく、庶民のような口調で話している。むしろ、ダイアナは女性の口調ですらない。

 親子で仲が良いんだなと思うと、微笑ましい。


 まあ、それはいいんだけど、前世でも古い公園とかに行かないとほとんど見ることのなかった和式便器が、なぜか側に置いてある…。


「システィナ、楽しみだね!」

「えっ?」


 よく分からないのだけど、便器を使ってオレの呪いを解く最後の儀式でもやるのだろうか。呪いが解けるのは嬉しいけど、楽しみっていうのはちょっと違うような。

 フラベーナちゃん以外もみんな楽しそうにキャッキャうふふとしている。


「アンネお母様、私のをいちばんにお願い」

「いいですよ」


 フラベーナちゃんのをいちばん?フラベーナちゃんの呪いをいちばんに解くってこと?


「しかたがないわね」

「フラベーナ様にお譲りしますわ」


 デルスピーナちゃんとクラリスは、何がしかたなくて譲るのか。呪いを解く順番に何かあるのか。


「では開けます。起き上がらないように」

「うわあ…」


 なんか、またお漏らししたかと思ったけど、ベッドは濡れていない。あれ…。

 便器のほうでじょぼじょぼといっている。やっぱりトイレの魔道具なのか…。


 便器を横目に見ていると…、


「こっちこっち。目が開いていなくても魔力が見えるでしょ?」

『ママ、耳も詰まっているから、精霊の声じゃないと聞こえない』

「あそっか。じゃあよろしく」

《早くでてこいや》

「こわ…」


 アンネリーゼは便器の屋根があるほうに顔を突っ込んで何をやっているんだ…。

 二人は漫才でもしているのか?

 なにやら耳ではないところからダイアナの声が聞こえた。


「ぷはぁっ!やっと…、であえた!げほっ、げほっ…」

「まあ!私の子!可愛い!あなたはアンフローネよ!」

「あなた、ママ?わたち、あんふおーね!わたち、王女しゃま?」

「うふふ、まだ私が王女だから、そのうちね!」

「王女のむしゅめ、やったー」


 なんだ?甲高い声が…。会ったばかりの頃のフラベーナちゃんのような赤ん坊の声だ。

 それが、少し噛みながらもまともにしゃべっている…。まるで会ったばかりの頃のフラベーナちゃんのように。


「みてぇ、システィナ。私たちの子よ!アンフローネよ!」

「あなたもママ?」


「えっ…」


 フラベーナちゃんは何かを胸に抱えてオレの元に持ってきた。

 それは会ったばかりの頃のフラベーナちゃんによく似た…、黄金のベリーショートヘアの…赤ちゃん…。


「そうよ。カルボシスティナよ。システィナお母様って呼んであげてね」

「ししゅしな…、ししゅちにゃ!うー、まだいえにゃい。もっとかちゅじぇちゅれんちゅうちてくえばよかった!」

「まあ可愛い!」


 フラベーナちゃんは何と言った?システィナお母様?


「さあ、システィナの右隣に寝っ転がってね。システィナも少し向き合って」

「えっ、うん」


「ししゅちなママ、かわいいのきてうね。いっただっきまーしゅ」


 アンフローネという赤ちゃんは、しっかりとした手つきで、オレのネグリジェからペロンと右胸を出して、それをくわえた。

 ああ…、パンパンに張っていて爆発しそうだった胸がついに破裂した!ってことはなくて、なんか出ていく感覚…。



「まあ可愛い!あなたはデルトピーカです!」

「げほっ、げふ…。はにめまいて、でるしゅいーなおかしゃま…、げほっ」


 また便器のほうで甲高い声が。


「デルトピーカ、システィナお母様って呼んであげてください」

「はいめまいて、ししゅいなおかあしゃま、でるとみーかでしゅ。こえかあ、よろちくおねがいちまちゅ」


 デルスピーナちゃんは、赤ちゃんを抱いてきた。デルトピーカという赤ちゃんは丁寧な挨拶をした。


「は、はじめまして…」


「それでは左隣でいただいてください」

「ししゅしなおかあにゃま、いただちましゅ」


 デルスピーナちゃんはデルトピーカという赤ちゃんをオレの左隣に寝転がした。金のベリーショートヘアだ。生まれたばかりなのでベリーショートなのは当たり前か。

 デルトピーカはオレのネグリジェから左胸をペロンと出して、左胸をたぐり寄せてくわえた。

 あああ…、今度は左胸が爆発…しない。


「システィナ、少し左に向いてください」

「あ、はい」


 デルスピーナちゃんに言われてオレは身体を左側に向けた。


「ふがああ」


 すると、右胸をくわえていたアンフローネの変な声が聞こえた。アンフローネがくわえていた右胸に引っ張られたらしい。オレの胸は両サイドから開かれた状態になった。ちょっと噛みつかれているようで痛い…。



「あなたはクラリチーナよ」

「げほっ、けほっ。はいめまいて、くあいしゅママ」

「ママではいけません。お母様と呼びなさい」

「うう…、きびちい…」

「さあ、システィナお母様にもご挨拶なさい」


 といってクラリスが連れてきたのは、薄い金髪の赤ちゃん。


「ししゅしにゃ…、しゅしゅしゅな…、うう、いえにゃい…」

「そんなことでどうするのですか!」


 クラリス、厳しいわ…。生まれたばかりの赤ちゃんに何を言わせるんだか…。システィナって赤ちゃんには難しいだろう。まあ、他人の家の教育方針に口を出すつもりはないが…。


「もういいです。システィナお母様にいただきなさい」

「はい…」


「じゃあ、アンフローネは交代ね」

「ふひー」


 フラベーナちゃんに言われてアンフローネが右胸を離すと、オレの右胸がたぷたぷと左右に振り子のように揺れ続けた。

 そして、アンフローネはベッドの上で立ち上がって退いた。

 代わりにクラリチーナが右側に歩いてきた。振動しているオレの右胸を捕まえようとしているが、目がまだよく見えないのか、うまくつかめない。


「はい、どうぞ」

「あいあと!しゅしなママ」


 オレが振動している自分の胸を手で止めて、クラリチーナの手元に向けてやった。クラリチーナはオレの胸をくわえて、吸い始めた。

 ん、オレは何をやっているんだ。自然と身体が動いた。そして、そうすることになぜか喜びを感じる。クラリチーナ吸ってもらうことが嬉しい…。


 あれ…、これって…。


 あれあれ…、赤ちゃんはどっから出てきている?便器?なんでそんなところから…。便器に見えて人間なのだろうか…。



「さあ、テクスメーナ、システィナお母様に挨拶して」

「ししゅしなママ、はじえまちて、てくしゅめーな、でーしゅ」


 アンネリーゼが連れてきた赤ちゃんは、オレに精一杯の自己紹介をしてくれた。


「は、はじめまして…」


 オレは相変わらず気の利かない返事しか返せない。


「ししゅしなママ、ちょーらいね!」

「うん…」


 テクスメーナという赤ちゃんはベッドの上で立っていて、寝っ転がっているオレよりも高い位置に目線があるにもかかわらず、上目遣いでおねだりするという高等テクニックを披露した。

 おれは二つ返事でOKするしかなかった。


 そして、てくてくとオレの左側にやってくると、オレの左胸をくわえていたデルトピーカがオレの胸を離して、ポジションを交代した。

 デルトピーカは言われるまでもなく退くなんて、なんだか謙虚だな…。

 そして、テクスメーナはオレの左胸を引っ張って、母乳を飲みやすい位置に持っていきながら寝っ転がって、母乳を飲み始めた。



 このあとも、グリシーラちゃん、フェニラ、パリナ、プレナ、ペルセラ、イスマイラ…と、何人も同じことを繰り返した。オレはなんだか、そうすることが当然であるかのように、次々に現れる赤ん坊に自分の胸をくわえさせた。なんだか幸せな気持ちがこみ上げてきた…。


「どうしたの、システィナ?」

「あれれ…」


 フラベーナちゃんがオレの顔をのぞき込んできた。

 オレは涙を流していた。


「ねえ、アンフローネを抱いてあげて」

「うん」


 オレは身体を起こした。あれ、身体が軽い。あそっか、これってやっぱり呪いを解く儀式だったのか。


 フラベーナちゃんはオレにアンフローネを手渡した。


「うふふ、ししゅしなママって、めっさかあいいね!」

「えっ」


 赤ちゃんに可愛いって言われた…。でも…、


「アンフローネのほうが可愛いよ」

「あいがと!ししゅしゅなママ!」


 ああ、とても可愛い…。なんだか、理解してきた。本能的に、この子がオレの子であるということを。


「私たちの子よっ。可愛いに決まっているじゃない」

「うん、そうだね。オレたちの子だね…」


「なあに?しゅししなママ、オレっ娘設定?」

「オレっ娘設定…」

「ギャップ萌えかぁ~!」


 オレっ娘設定…。ギャップ萌え…。そういうロールプレイだと思われている?

 っていうか、生まれたばかりの赤ちゃんはそんなこと言うのか?フラベーナちゃんは天才児だったけど、そういう知識はなかったはず…。ということは…。


 そのあと、何人かの赤ちゃんと話して確信した。みんな転生者だった!


 いやいや、それ以前に、やっと理解が追いついてきたのだけど、この子たちってみんなオレが産んだのか!


『これは魔道べ…御産器です。影収納を用いたワープゲートです。二十九人も産道を通すのは大変なので、あなたの胎盤から直接、赤子を取り出しました』

「マジで…」


 ダイアナさん、便器って言おうとしたよね。便器にしか見えないけど…。

 便器から赤ちゃんを取り出すってやめてほしい。


 赤ちゃんの数もびっくりなんだけど、その前に…、


「あの、私のおなかには今まで赤ちゃんがいたんですか?」

『そうですよ。二十九人も入れたら死んでしまいますから、子宮と胎盤のスペースを影収納で拡張するのが、その魔道腹巻きです。赤子は全部出しましたが、まだ悪露が大量に残っているので、脱いだら腹が破裂しますよ』

「こわっ…」


 この腹巻きにそんな効果があったとは…。どおりでお風呂でも外さなかったワケだ…。


 どうやらオレは、三歳のとき(Magic)(Resonance)(Imaging)に子宮と卵巣が映っていたことの意味を、まだ理解していなかったようだ。それはおなかに赤ちゃんを宿すことができるってことだったんだ…。


 あれあれ…、オレはさっきまで赤ちゃんに母乳をあげていたのか…。オレはこの大きな二つの胸がなんのために付いているのか、それすらも理解していなかったということだ。

 オレはこの果実を今日このときのために育ててきたのか…。爆発しそうな感覚が治まったのは母乳を出し切ったからか…。いやそれにしても、一年前はこんなに大きくなかったような…。


 これが女性になって最大のイベントだった…。世の中の女性は、何ヶ月もつらい思いをして子供を産んでいるのか…。ほんとうに頭が下がる。子供を産んでくれる女性に感謝しなければ、そして、自分の身を削って母乳を与えてくれる女性に感謝しなければ、人類は滅んでしまうのではなかろうか。


 でもなんだか…、大変だったけど、みんな生まれてきてくれて嬉しい。頑張ったかいがあった。



 っていうかなんで二十九人?二十三人じゃなかったの?


「あの…」

『はい、顔と名前のリスト』

「あ、ありがとうございます」


 ダイアナはオレの疑問を察したかのように、オレにスマホを渡した。

 載っていたのは顔写真と、親の名前と、本人の名前と…、前世の職業…。なんだか履歴書みたい…。


 一、フラベーナ、アンフローネ。声優。

 二、デルスピーナ、デルトピーカ。自動車会社の秘書。

 三、グリシーラ、リジーナ。記者兼カメラマン。


 四、パリナ、ユーメトーナ。工業系大学生。

 五、プレナ、モンテルナ。化学系大学教授。

 六、ペルセラ、ロラメーナ。喫茶店店主。


 七、イスマイラ、スマトリーナ。文系大学生。

 八、ゾーラ、ゾルミーナ。環境省大臣。

 九、エレナ、エルトリア。バレーボール選手。

 十、リザベル、リートリア。家電店店員。

 十一、ナーラ、トリアナラ。消防士。


 十二、アルゾナ、ネリゾナ。キャバ嬢。

 十三、プラチナ、スノウ。アニメ専門学校生。


 十四、エウレカ、エルドラ。非公開。

 十五、アリス、ホワイティア。刑事。

 十六、コルトラ、コルティナ。ゲーム会社社員。


 十七、フラーラ、フロラゾーナ。小学校教師。

 十八、ティノイカ、ルードミア。中学生。

 十九、プロセーラ、ダイプローラ。漫画家。


 二十、クラリス、クラリチーナ。シンガーソングライター。

 二十一、フェニラ、マレルミナ。市長。

 二十二、ファルナ、バファリナ。音大生。

 二十三、レジーナ、ディレーナ。ドラマ監督。


 二十四、アンネリーゼ、テクスメーナ。アイドル歌手。


 二十五、ジフローラ、ジフルプレドーナ。小学生低学年。

 二十六、ジフローラ、クロベーナ。化粧品店店員。

 二十七、ジフローラ、クロミカ。IT企業社長。

 二十八、ジフローラ、ソルベーガ。歯科医。

 


 オレはリスト上から眺めながら思った。


 母親の名前の欄にはフラベーナとかデルスピーナとか書いてあるけど、みんなオレの娘でもあるんだ…。


 っていうか、非公開って何…。言えないような職業?


 ん?アンネリーゼの娘って…?


「ごめんなさい…、あなたがあまりにも可愛いので…、恋してしまいました…」

「えっ…」


 恋してしまったって、それで終わりじゃなくて、恋しちゃったからオレに妊ませたってこと?

 可愛くなることはこの世界でのし上がるのに必須だと思っていた。だけど、あまりに可愛いと、神すら自制心を失って…。いや、それって、ただの強姦なのでは…。

 まあ、アンネリーゼに強姦されるならいいや…。フラベーナちゃん一筋とかいって、けっこうアンネリーゼのことを引きずっていたし。

 それに、二十三人もいるところに一人くらい追加されたって…。


 いやいや、アンネリーゼ一人ならともかく、


「あの…、最後の四人の親のジフローラは誰ですか…」

『ジフラーナの妹だから、心配しなくてもいいですよ』

「はい…」


 もしジフラーナなら一度は一緒に暮らしたこともあるからいいけど…、あったこともない妹が、しかも四人も植え付けていくってどういうこと?


「あの…、さっき二十九人って聞こえたのですが、リストには二十八人しかいません…」

『ああ、二十九人目は失敗作なので私が引き取りました』

「失敗作…」


 はぁ…。ダイアナは女神の娘だから、人のことを失敗作とか言ったりするんだ…。


「あの…、二十九人目の子を引き取ってもらえるのはいいとして、二十五番以降の子はジフローラに引き取っていただけないのでしょうか…」

『あなたの子なのであなたが育てればよいです。それに元社長とか歯科医とか、役に立ちますよ』

「えー…」


 妊ませておいて面倒見ないって最悪の父親じゃん…。


『養育費なら出しますし、メイドを増やしましょう。あなたが面倒を見なければならないのは、授乳くらいです』

「なるほど…」


 出た。養育費だけ払うパターン。

 でも、社長とか歯科医って、オレより明らかに年上だよな。っていうか、もと男じゃないよね?


『もちろん前世が女性の者だけですよ。年上に授乳プレーするのがイヤですか?年上ではありませんが、高校男児に私は授乳したのですが?』

「あっ…」

『むふふ…』


 あれは、授乳して面倒見てやったんだから、ちゃんとお前も子供の面倒見ろよってことなのか…。

 元はといえば、あなたの娘と妹がオレに強姦したんですがね…。


『大好きな人の嫁になって、子を授かれて幸せでしょう。ほら』


 ダイアナはアンフローネを抱いているフラベーナちゃんのほうを見てからオレの方を向き、ニヤリと微笑んだ。


 そうか…、オレは大好きなフラベーナちゃんの嫁になったのか…。それに、アンフローネも明るくて可愛い子だった。

 でもそれはフラベーナちゃんだからであって、他の子はいくら王女でも嫁になるのは…、んー、悪くない…。とくに、アンネリーゼの嫁っていうのはなかなか良いし、テクスメーナって子も上目遣いが可愛かったな…。


 ん…、みんながオレの嫁じゃなくて、オレがみんなの嫁か…。オレが産んだからオレが嫁なのか?

 まあ、オレはみんなの嫁なんだから、強姦されたんじゃないよな…。同意の上とはいいがたいけど、できちゃった婚みたいなもんか。

 あ、オレはフラベーナちゃんと正式な結婚をさせてもらえるのか?正式な結婚ということは、いずれ王妃…。

 オレが王妃になったら、他の子とはどうなるんだ?他の子は側室?それって、アンネリーゼの立場とまるっきり同じ…。


 なんだかごまかされた気がするけど、オレは二十四人のお嫁さんと授かった娘と、四人の余分な娘を育てることになった。

■アンネリーゼ(二十六歳~二十七歳)

■ダイアナ(十六歳~十七歳)


■ワイヤ(十五歳~十六歳)


■アンビエーナ・メタゾール公爵令嬢(四歳~五歳)、レンドルミナ・メタゾール公爵令嬢(三歳~四歳)

 ダイアナとミスリーの子。


■ボルテナA・B(三歳~四歳)

 ダイアナとセレーナの子。Aにメテーナの子の精霊を付けて、Bにドリーの子の精霊を付けた。


■ジフラーナ・ゾルピデム皇妃 A・B・C(五歳~六歳)

 ダイアナとマイアの子。ルネスタ皇帝とともにロイドステラから通いでゾルピデム帝国を支配している。


■ジフローラA・B、フルプレーナA・B、ティノーラA・B、リグローラA・B(四歳~五歳)

 ワイヤと{ジフラーナ、フラーラ、ティノイカ、プロセーラ}の子。それぞれが双子。

 ジフローラだけ銀髪。他は薄い金髪。

 普段はダイアナの胸の谷間に扉を開いたままの影収納に暮らしている。

 胸の谷間の影収納は、スカートに裏にも常時扉を開いている。母乳を飲むときはブラのカップの内側にも、ダイアナの背中を指圧するときはドレスの背中の内側にも扉を開く。


■ジフロラーナα・β・γ・δ、フルプレドーナα・β・γ・δ、ティノミーナα・β・γ・δ、リグコベーナα・β・γ・δ(三歳~四歳)

 アリスと{ジフローラ、フルプレーナ、ティノーラ、リグローラ}の子。それぞれが四つ子。

 ゴールドドラゴンの血を二五パーセント、ホワイトドラゴンの血を二五パーセント持つ。

 ジフローラの子だけが銀髪。フルプレーナの子とティノーラの子とリグローラの子は、かなり薄い金髪。


■アンテベーナα・β・γ・δ、デルモゾーラα・β・γ・δ、グリスティーナα・β・γ・δ(四歳~五歳)

 フラベーナ×ジフラーナA=アンテベーナ。デルスピーナ×ジフラーナA=デルモゾーラ、グリシーラ×ジフラーナA=グリスティーナ。

 第五、第六、第七王女として、他国に出荷された。銀髪。


■政略結婚用王女

 アンテベーナα×デルモゾーラα=第八王女。デルモゾーラα×グリスティーナα=第九王女。グリスティーナα×アンテベーナα=第十王女。(三歳~四歳)

 第八王女×マイア=第十一王女。第九王女×マイア=第十二王女。第十王女×マイア=第十三王女。ボルテナA×マイアの子=第十四王女。(二歳~三歳)

 全員ダイアナの記憶を持つ工作員。それぞれが四つ子。

 第十四王女だけが金髪で、それ以外は銀髪。

 お披露目まではダイアナの胸の谷間の住人として育つ。


■カルボシスティナ・ムコサール伯爵(九歳~十歳)

■デルスピーナ(八歳~九歳)

■フラベーナ(七歳~八歳)

■フラーラ(六歳~七歳)


■クラリス・ヒストリア第一王女(十一歳~十二歳)

■フェニラ・ヒストリア第二王女(七歳~八歳)

■ファルナ・エッテンザム公爵令嬢(五歳~六歳)

■レジーナ・フェナージ侯爵令嬢(四歳~五歳)


■ベニシア・シンシア(七歳~八歳)

 レッドドラゴンとブルードラゴン。ヒト型になったとき、ドラゴンの部位の翼と尻尾だけが残る。


■アンフローネ(誕生)

 フラベーナとシスティナの娘。前世は声優の転生者。


■デルトピーカ(誕生)

 デルスピーナとシスティナの娘。前世は自動車会社の秘書の転生者。


■リジーナ(誕生)

 グリシーラとシスティナの娘。前世は記者兼カメラマンの転生者。


■ユーメトーナ(誕生)

 パリナとシスティナの娘。前世は工業系大学生の転生者。


■モンテルナ(誕生)

 プレナとシスティナの娘。前世は化学系大学教授の転生者。


■ロラメーナ(誕生)

 ペルセラとシスティナの娘。前世は喫茶店店主の転生者。


■スマトリーナ(誕生)

 イスマイラとシスティナの娘。前世は文系大学生の転生者。


■ゾルミーナ(誕生)

 ゾーラとシスティナの娘。前世は環境省大臣の転生者。


■エルトリア(誕生)

 エレナとシスティナの娘。前世はバレーボール選手の転生者。


■リートリア(誕生)

 リザベルとシスティナの娘。前世は家電店店員の転生者。


■トリアナラ(誕生)

 ナーラとシスティナの娘。前世は消防士の転生者。


■ネリゾナ(誕生)

 アルゾナとシスティナの娘。前世はキャバ嬢の転生者。


■スノウ(誕生)

 プラチナとシスティナの娘。前世はアニメ専門学校生の転生者。


■エルドラ(誕生)

 エウレカとシスティナの娘。前世は連続殺人犯の転生者。


■ホワイティア(誕生)

 アリスとシスティナの娘。前世は刑事の転生者。


■コルティナ(誕生)

 コルトラとシスティナの娘。前世はゲーム会社社員の転生者。


■フロラゾーナ(誕生)

 フラーラとシスティナの娘。前世は小学校教師の転生者。


■ルードミア(誕生)

 ティノイカとシスティナの娘。前世は中学生の転生者。


■ダイプローラ(誕生)

 プロセーラとシスティナの娘。前世は漫画家の転生者。


■クラリチーナ(誕生)

 クラリスとシスティナの娘。前世はシンガーソングライターの転生者。


■マレルミナ(誕生)

 フェニラとシスティナの娘。前世は市長の転生者。


■バファリナ(誕生)

 ファルナとシスティナの娘。前世は音大生の転生者。


■ディレーナ(誕生)

 レジーナとシスティナの娘。前世はドラマ監督の転生者。


■テクスメーナ(誕生)

 アンネリーゼとシスティナの娘。前世はアイドル歌手の転生者。


■ジフルプレドーナ(誕生)

 ジフロラーナとシスティナの娘。前世は小学生低学年の転生者。

 ジフロラーナは非公開キャラなので表向きにはジフローラの子ということになっている。


■クロベーナ(誕生)

 フルプレドーナとシスティナの娘。前世は化粧品店店員の転生者。

 クロベーナは非公開キャラなので表向きにはジフローラの子ということになっている。


■クロミカ(誕生)

 ティノミーナとシスティナの娘。前世はIT企業社長の転生者。

 ティノミーナは非公開キャラなので表向きにはジフローラの子ということになっている。


■ソルベーガ(誕生)

 リグコベーナとシスティナの娘。前世は歯科医の転生者。

 リグコベーナは非公開キャラなので表向きにはジフローラの子ということになっている。


■二十九人目の赤ん坊(誕生)

 ダイアナの子孫の誰かを掛け合わせてシスティナに代理出産させたが、転生者にはならなかった失敗作。

 しかたがないので、ダイアナの記憶を植え付けて、ダイアナの胸の谷間の住人となった。


■胸の谷間の住人(誕生)

 カルボシスティナの卵子を、ダイアナの別の嫁に植え付けて受精させたが、転生者にはならなかったので、ダイアナの記憶を植え付けた。

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