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49 転性者の日常

 転性者システィナは、東方開拓を終えて日常生活に戻っていた。


 フラベーナちゃんにもらったドレスは胸がはだけるように改造されてしまったけど、他の子にもらったドレスはまだ改造されていない。

 むしろ、ローテーションで十五日おきに胸の部分に生地を継ぎ足さなければならない。そこで、次にフラベーナちゃんのドレスが回ってきたら、生地を多めに足してしまえばいいのではないかと思っていた。

 だけど、開拓から戻ってから、なぜか生地の消費が多くなった。ティノイカのドレスの生地はもはや二割を切っており、そろそろ生地をどうにかしなければならない…。


 そんなことを考えながら、開拓から戻った次の学校の日に、パリナのドレスを着ていったら、フラベーナちゃんに、「おはよっ、これも直さないとね」と言われて、挨拶がてら胸の部分をの生地を切り取られてしまった…。しかも切り取った生地を没収された…。

 その翌日、プレナのドレスでも同じことをされた。


 このままでは生地がもったいないので、その次の日、ペルセラのドレスには、胸の部分がきつくなった分の生地を継ぎ足さないで、フラベーナちゃんが削るであろう分の生地を削って、その生地を使って緩くした。

 これなら大丈夫だろうと学校に行ってみたら、フラベーナちゃんは満足いかなかったらしく、大事なところが見えてしまうのではないかと思うくらい、ほんとうに寸前まで生地を削られてしまった。十分に削ったと思ったのだけど、フラベーナちゃんの判定基準は厳しい…。


 結局、その次のイスマイラのドレスでは、大事なところが見える寸前まで自らはだけさせて、これで大丈夫かとドキドキしながら行ったら、やっとフラベーナちゃんは満足してくれた。

 その代わり、胸の部分の生地が余るようになったので、生地の余裕が少しできたので良かった…。


 これらのドレスで気をつけなければならないのは剣術の授業だ。腕を振り上げるだけで、簡単に胸がポロリしてしまいそうになることだ。

 胸を左手で押さえながら素振りしていたら、身が入っていないと教師に怒られた。

 フラベーナちゃんたちには何をやってもかなわないので、今さら左手が使えなくなったからってたいしたことはないのに。



 ちなみに、胸のはだけたドレスを着るようになってすっきりしたこともある。オレは女子トイレに入るたびに、男が女装をして女子トイレを覗いているとか思われているのではないかと気が気でなかった。

 スカートをはくだけではやっぱりダメなのだ。胸は膨らんできているけど、そんなのは詰め物をすればいくらでも膨らませられるだろう。

 だけど、胸のはだけたドレスを着てしまえば、オレには紛れもなく女であることを示すものが備わっているので、今度こそ女子トイレに堂々と入れるようになったのだ。


 まあ、二歳の時のオレは自分が女か男かがよく分かっておらず、間違って男子トイレに入っていた可哀想な女の子だったのだと思ってほしい…。立ちションをしていたとか、それは幻だ…。




 生地の削減は、胸の部分だけでなく、パンツについても同様のことが起こった。

 オレには魔物の討伐の初日にお風呂に入ってからの記憶がない。お風呂の前にフラベーナちゃんにパンツを脱がしてもらったのは覚えているけど、そのパンツはどこにいったのだろうか…。


 翌朝、スケスケのハミハミのパンツをはかされていることに気が付いて、トイレに行ったのに用も足せず、お漏らしをしてしまい散々な目にあった。そのスケスケハミハミのパンツを日常で使うのはとても恥ずかしい。


 また開拓から帰った次の学校の日の話に戻るけど、学校にはスケスケパンツではなくて、予備のパンツをはいていった。

 予備のパンツは、以前はいていたエグいやつよりも布面積は大きいけど、代わりにフリルがいっぱい付いているとても可愛いやつだ。

 もらった当時、女の子初心者だったオレには、こんな可愛いパンツにはまた別の抵抗感があった。だから封印してあったんだけど、今思えばドレスなんてフリフリばかりだし、エグいやつより恥ずかしいことはなかった。


 だから、学校にはフリフリのパンツをはいていったんだ。

 そうしたら、フラベーナちゃんはオレのドレスの胸元を削ったあとに、おもむろにオレのスカートをめくって、「何これ!こっちもダメじゃん」と言って、フリフリパンツの生地を大事な部分を除いて透過率七〇パーセントまで薄くして、面積を七〇パーセントカットして、フリフリなのにスケスケハミハミのパンツに改造してしまった。

 こうして、オレのパンツは開拓のときにもらったスケスケハミハミのパンツと、フラベーナちゃんに改造されたフリフリスケスケハミハミのパンツの二つだけになってしまい、その次の日から交互にそれらをはくことになった。


 この世界は挨拶で自分のスカートをめくってパンツを見せるような世界なのだけど、だからといって、公然の前でスカートをめくってパンツをチェックするだなんて、フラベーナちゃんは無茶しやがるぜ…。

 でも、オレはそんな距離感ゼロなフラベーナちゃんが好きなんだ。 



 それから、エージェント・アンネリーゼにおむつについても教えてもらった。ほんとうはおむつではなくて魔道ナプキンという名前の魔道具らしい。

 幼児だけでなく、遠征でトイレのない場所に行く場合は大人も使うことがあるらしい。早く教えてほしかった。男用も女用もあるらしい。


 もう一つ使い方があるらしいけど、エージェント・アンネリーゼに口に指を立てて、妙に色っぽい内緒のポーズで『大人になってから』と言われてしまった。


 そういうわけで、遠征に備えておむつを用意しておくことにした。




 さて、今日は休日。珍しく、フラベーナちゃんたちと出かける約束もしていない。


 昔は休みの日にスラム時代の仲間が住む第二メタゾールの家に帰っていたけど、フラベーナちゃんたちと付き合うようになってから、いつしか帰らなくなってしまった。

 ルル、どうしているかな。ルルはヒーラーガールのことが気になっていたようだけど、ルルの魔力や成績ではアイドル養成科には入れないだろうし、ヒーラーガールと知り合いになる機会はないだろうな。

 まあいいや、もうルルに会うこともないだろう。っていうか、どんなツラしてルルに会えばいいんだ。


 オレは鏡の前でブラとパンツだけになって考える。オレはもう五歳だ。オレはもう、貧相なガキのカルボスじゃない。胸が大きくてスタイルの良いシスティナだ。カルボスの面影なんて…、少しはあるか…。あるかな…。

 会いに行ったらオレだって分かるかな…。いや、会えなくてもいい。ルルやみんなが元気でやっている姿を見られればいい。


 そうだ。オレは男爵になって、この国の国民が平等に教育を受けられるように考える教育大臣になったんだ。みんながちゃんと勉強できているか見に行く…、そう、視察だ!視察に行こう!


 今日はフラーラのくれたドレスで行こう。比較的質素…だったのに、フラベーナちゃんの意向により胸の部分が大きく開いたワンピースになってしまった…。けど、持っているドレスの中ではいちばん質素なやつだ。もちろん、スカートは股下ゼロセンチだ。ちゃんとローテーションで回ってくるたびに継ぎ足している。




 というわけで、久しぶりに地下鉄に乗って第二メタゾールに行くぞ。

 地下鉄の駅は、建設中の新しい路線に通じるエレベーターを準備中だった。この前開拓した東方のフルニトラ方面の電車だ。

 その反対方向の西方にも鉄道が延びる予定だ。俺たちが東方を開拓している間に、西方をアンネリーゼが開拓していたらしい。


 まあ、それはさておき、オレは鈍行列車に乗車して、第二メタゾールで下車した。



 第二メタゾールは変わっていない。こうしてみると、この前自分たちで開拓した第四メタゾールとほとんど同じ作りであることが分かる。


 オレの家…だった場所に歩いてきた。アンネリーゼの建ててくれた家だ。この前建てた屋敷みたいに、表面を焼き上げて艶を出すなんてことはしていないけど、この土色の家だってこの世界では立派な家だと思う。


「だあれ?」

「えっ」


 後ろからした声は…。オレは振り向いた。やっぱりルルだ…。

 正確な歳は分からないけど、ルルは十七歳くらいだ。もう完全な大人になっている。いや、この世界の十七歳が前世の人種にとって大人、むしろそれ以上に見えるだけで、この世界ではまだ大人ではないのかもしれない。

 だけど、胸はオレのほうが大きいんじゃないかな…。


 ルルはこの町の他の住人と同じような、地味な色の農民服を着ていた。農民服といっても、胸は大きくはだけていて、スカートも股下ゼロセンチだ。

 スカートは子供の時から股下ゼロセンチがこの世界の標準だ。胸元は、だいたい八歳から十二歳くらいの間に、大きく開いた服に切り替えていく習慣のようだ。そこらにいる大人の女性はみんな胸元の開いた服を着ている。

 オレたちがアンネリーゼに拾われたときルルは十三歳だったけど、そのときは胸元の開いていない服をもらっていた。当時一歳だったオレも、この世界の常識を知らなかったから、それで違和感はなかった。

 スラム暮らしで何も知らなかったルルも、第二メタゾールでこの世界の常識を学んで、おしゃれをし始めたってことだろう。農民服は地味な色だからあまりおしゃれではないけど、もしかしたら農作業のとき意外はもっと綺麗な服を着ているのかもしれない。


 もしかして、フラベーナちゃんに胸元の生地を削られる前のドレスを着ていたオレって、すごくダサかったんじゃないか?もしくは、何か後ろめたいことがあるとか、傷を負っていて見せたくないとか、例えば顔を隠しているような状態と同じように見られていたのではなかろうか。


「えっと…、ヒーラーガール?」

「えっ?オレはヒーラーガールじゃ…」


 ああ、この服装を見てヒーラーガールだと思ったのか…。たしかにフラーラのくれたドレスは貴族としては比較的質素で…、いや、でも、あくまで貴族としては比較的質素なのであって、平民から見れば華々しく見えるドレスなのには違いないか…。まあ、いくら質素っていったって、男爵のオレにでさえオーバースペックだと思う。自分で買おうと思ったら数ヶ月の給料が飛びそうだ。ヒーラーガールだってこんなドレスは着られないだろう。


「あれ?オレ、だなんて、カルボスみたい。あれあれ…、カルボス?」

「えっ」

「やっぱカルボスだよね!大きくなったね!胸が!」

「…」


 なんで分かるんだ…。オレでさえ同一人物だって言われて先入観を持って見ても、システィナがカルボスの成長した姿だなんて信じられない。

 だいたい、今のオレは大きな胸をひけらかしていて、明らかに女の子の格好をしているのに、そこには何の疑問もないのか。カルボスが男の子だったことなんて忘れてしまったのか。それとも、最初から性別に無頓着だったのか。

 っていうか、大きくなったのは胸だけじゃなくて、身長も五歳児とは思えないほど伸びているんだけどな…。


「ねえ、カルボスなんでしょ!」

「うん…」

「カルボス、しばらく見ないうちにめちゃくちゃ可愛くなった…。この服可愛い…。お姫様みたい…。ヒーラーガールやってるの?すごいな~。もしかしてセンター?どこの支部?」

「えっと…」


 ルルがどんどんしゃべっていくから、返事をする間もない。


「ねえ、今までどこ行っていたの?これからは一緒にいられるの?」


 久しぶりに会ったからはしゃいでいるのは分かるけど、それにしても押しが強いな…。


「とりあえず、おうちに帰ろっ」

「え、ちょっ…」


 ルルはオレの手を引いて、みんなの家に向かっていく。

 ルルの引く手はこんなに力が弱かっただろうか。いや、オレが重くなったのか。


 いやいや、オレはルルに手を引かれたことがあっただろうか。誰か別の子と勘違いしている。そう…、いつもオレの手を引いているのは…、フラベーナちゃんだ…。フラベーナちゃんの力は強すぎて、オレでは太刀打ちできない。


 でも…、ルルの力はこんなにも弱い…。ルルは魔力を鍛え始めたのが遅かったので、四年経った今でも、せいぜいオレが一歳半のときの魔力しかないだろう。だから身体強化もほとんど使っていないようだ。

 体格はルルのほうが大きいから筋力はあるだろう。だけど、身体強化に差がありすぎる。この世界は若くして魔力を鍛えなかった者に厳しいな。


 それは、この家に住んでいる半分の子についても同じだ。半分の子は十歳を超えていた。


 どうしよう、この家にこんな綺麗なドレスを着ていったら、明らかに場違いだ。オレはみんなに会っていいのだろうか。

 ルルの手をほどくのは簡単だ。でもこの手を離したら、オレとスラムの子たちのつながりも切れてしまう気がする。


「ホント、カルボスがヒーラーガールになっていたなんて、驚きだよー」

「えっ、うん。連絡しないでごめんね」


 ヒーラーガールと勘違いされているから、もうヒーラーガールでいいか。このドレスはヒーラーガールにしてもちょっと豪華すぎるけど。

 男爵になったと打ち明けるべきだろうか。オレはもう違う世界に足を踏み入れてしまった。それに、もっと上にのし上がろうとしている。


 ルルは家の扉を開けて、


「ただいまー」

「おかえり」「おかえりー」

「「「おかえいー」」」

「「「「「おー、いー」」」」」


 おかえりがいっぱい聞こえてきた。いや、おかえりじゃない、言葉じゃないのもいっぱいあった。


 まず、はっきりおかえりと言ったのは、コデインとアダムだ。

 コデインも大きくなった。十九歳だったかな。アダムも十三歳になって大きくなったなぁ。この二人と、オレとルルは最初に名前を付け合った。言葉を分かるのがこの四人だけだったからだ。


 あとは十歳以下の子が数人、ややおぼつかない口調だが、喋れるようになっているようだ。


 残りの半分の子、とくに大きい子は母音の雰囲気だけまねているだけのようだ。

 そうだよな、十年以上、言葉ナシですごしてきたんだ。もう言語の習得は無理なのだろうか。


 幼少期に学ばなければ、大きくなってから能力を習得できないってのは、べつに魔法に限ったことではなかったか。言語を習得できる年齢ってのは限られている。


「カルボスが帰ってきたんだよ」

「えっ?その子がカルボスなのか?こんな可愛い子が…」

「たしかに言われてみれば、カルボスってこんな顔だったかも…」


 ルルにオレがカルボスだと言われても、コデインはなかなか信じられないようだ。カルボスの面影なんて一割もあるだろうか。

 でも、アダムは納得しかけている?


 だいたい、二人ともオレが男だったことを忘れているのか?オレはスラムでマッパだったんだぞ。オレの大事なところだって見ているはずだ。

 まあ、日々の生活で精一杯で、新しく捨てられてきたやつが男か女かとか、死んだりいなくなったりしたやつが男か女かとか、気にもとめなかったということか…。


 他の子は話を理解しているのだろうか。

 少しは話せるようになっている子も、オレがいたときには話したことがなかったから、オレのことを忘れてしまっているだろうか。


「カルボスはヒーラーガールなんだよ。すごいよね!」

「マジか!この村の治療院では見たことないぞ」


 ルルにヒーラーガールだと紹介されてしまった。もうヒーラーガールで通すしかない。

 コデインは、治療院に行ったことがあるのか。


「毎月のマッサージをカルボスにやてもらえたら最高だなぁ」

「えっ」


 アダムがオレにマッサージしてもらえるって?

 そっか、治療院でのマッサージって、誰でも受けられるんだっけ。人気だから予約しても一ヶ月に一度しか順番が回ってこないらしいけど。

 で、オレがヒーラーガールとして第二メタゾール派遣されたことになってしまうと、オレがみんなをマッサージしなきゃいけなくなってしまう。


「ご、ごめん、オレは第二メタゾールじゃなくて、王都勤めなんだ…」

「なーんだ」「そっかぁ、残念」


 アダムとルルは残念そうだ。でも、オレは治療魔術師じゃないんだよ…。可愛い格好している子がみんなヒーラーガールって短絡的だろ…。



 それにしても、言葉を話せない大きな子たちは、まったく話に着いてきてないな。これで不自由なく暮らせているのだろうか。

 アンネリーゼは何も持っていなかった俺たちに仕事を与えてくれた。腹一杯食えるようにしてくれた。

 普通に考えればじゅうぶんに平等な教育の機会も与えてくれた。だけど、それでじゅうぶんだろうか。


 この子たちはもう、言葉を覚える時期を逸している。魔法だって今から鍛えてもどうしようもない。

 この子たちはオレと同じで、手や足を失った障害児だった。まあオレは生まれつきだったが。しかし、この子たちは今再び、言語の障害児になってしまっている。

 何もないスラムで何もしないですごしてきたこの子たちの時間を返してほしい。だけどそんなことはできない。


 オレはこの国の教育を任された教育大臣だ。不平等にならないように、国民が均等に教育や雇用を受けられるようにするのが、オレの役目だ。

 この子たちにも均等に教育や雇用の機会が与えられてはいるけど、この子たちは教育に適した年齢をすぎてしまった。この子たちは一応、不自由なく仕事をして暮らしているかもしれないけど、四年経っても言葉すらろくに覚えられないこの子たちのことをどうすべきか、オレには分からない。


 まあ、マイア王が即位して教育の改革が始まったのは、七年前のことらしい。それまではほとんどの人が魔法の教育をされてこなかった。べつに、今から魔力を鍛えてもしかたがないのは、ここにいる子たちだけじゃない。

 言葉はともかく、魔法についてはこの国の半分以上の人ががんばっても魔力がほとんど上がらない状態なんだから、文句をいってもしょうがない。たんにオレの運が良かっただけだ。


 オレはひとまず、この子たちと同じような境遇の子を生み出さないように、スラムに捨てられる子が現れないように、この国を良くしていこう。




 そんなことを胸に秘めながら、けっこう長い時間話し込んだ。


「ねえカルボス、今日はここで寝るの?」

「いや、明日学校あるから、夜には王都に帰るよ」

「そっかぁ。カルボスはもう王都で暮らしているんだねー」

「うん」

「じゃあ、お風呂だけでも入っていきなよ」

「えっ」


 オレがここに来たばかりのとき、当時十三歳のルルが女湯から男湯に裸で入ってきたことを思い出した。今は、たかだか五歳のオレでもそんなマネはできない。

 東方開拓のときオレはフラベーナちゃんたちに毎日裸を見られていて、もう慣れてしまったけど、それはやっぱり、フラベーナちゃんたちが女の子だからだ。

 ここにいる男の子に見られるわけにはいかない。そもそも、もう男の子なんて歳じゃない子もいっぱいいる。


 いやいや、オレがここでお風呂を拒否したとしても、ルルはいつもどうしているんだろう…。ルルだってもう立派な大人の女性なのに、まだ男湯に突入しているんだろうか…。


「なあ、ルルはその…、まだ男湯に入っていたりするのか?」

「私はもうめったに男湯に入ったりしないけど、そういえばカルボスはずっと男湯にいたよね。私はカルボスと入りたいけど、男湯がいいなら私も行くよ?」

「いやいや、オレはルルと一緒に女湯にするよ!」

「分かった」


 ルルは男湯に抵抗がないのか?あれ、めったにって言ったよな。ときどきは入るのか?それで何も起こらないのだろうか…。


 風呂だけじゃない。十九歳の男と十七歳の女が一つ屋根の下で暮らしていて、何も起こらないのだろうか。



 脱衣所で壁のほうを向いてドレスを脱ぐと、


「わー!カルボス、ホントにおっきい!私よりおっきいじゃん!後ろから見ても分かるよ!」


 ルルの声が後ろから聞こえた。そして、


「ひゃっ…」

「すごくやわらかい…」


 ルルはオレの後ろから手を回し、オレの胸を揉み始めた…。

 なんでみんなオレの胸を気軽に揉むんだ…。パンツを見せるのが挨拶になる世界だから、これも挨拶の範疇か?


 ルルはもうほとんど大人で、一六〇センチくらいはあるだろうか。肩幅も広くて、華奢なオレの身体なんて、オレの両腕越しに包んで、胸に手が届くようだ。


「ん~…」

「カルボス、声も可愛くなったよねー」


 脱衣所でいつまで胸を揉まれてればいいのかとも思うけど、これが意外に気持ち良くて、止める気が起きない…。


「さっ、お風呂に入ろっ」

「あ、うん…」


 なぜみんな、後ろからオレの胸をわしづかみにしたまま浴室に入るのだ…。


 浴室には誰もいなかった。誘われるがままに風呂に入ってしまったが、まだ早かったのでは?

 それに、お風呂だけでも入っていきなよって、そうじゃなくて普通は、夕食だけでも食べていきなよではなかろうか。


「はい、座って。背中を流してあげるね」

「あ、ありがと…」


 背中を流すって…、気持ちいいやつ…。

 と思ったら、普通にシャワーでお湯をかけられて、スポンジで身体を洗ってくれるだけだった。

 そりゃそうだ。ルルには魔力がほとんどない。治療魔法を勉強しても、一日二回擦り傷を治す程度だろう。


 だけど、これはこれで気持ちがいい。なんだかとくに胸やお尻を素手で入念に洗われている気がするけど、気持ちがいいので身を任せている。


「今度はカルボスが私の背中を流してよ」

「うん、いいよ」


 背中を流す…。それは、学校の治療魔法の一環で習っているカイロプラクティック。

 ルルはオレの身体を普通に洗ってくれたけど、オレはルルの背骨の間接の筋肉を触って、堅くなっているところを探して押した。


「ああああん…」


 できた…。じつは、やったのは初めてだ。


「カルボス…、やっぱりヒーラーガールなんだね…」

「いや、まあ、うん…」


 座学は履修したけど、実技はアイドル養成科に入るための必須科目ではないので、履修していない。なんだか、アイドル・イコール・ヒーラーと思われがちだけど、アイドルにヒーラーの要件は入っていない。


 それにしても、フラベーナちゃんたちの一〇〇分の一の威力もないと思う。あれだけ毎日やられていたから分かる。流れる魔力が二桁以上違う。

 フラベーナちゃん、どうしているかな。明日学校に行けば会えるというのに、なんだか寂しくなってしまった。

 オレがフラベーナちゃんの背中を流しても、フラベーナちゃんを気持ちよくしてあげることはできないだろう。オレはいつも気持ちよくされてばかりだった。

 いやいや、開拓のときだから一緒にお風呂に入っていたのであって、もう一緒にお風呂に入ることはできないんだ。やっぱり寂しい。


「ねえカルボス。私、わかっちゃった」

「えっ?」


「カルボス、好きな人ができたでしょ」

「あっ…」


 カイロプラクティックの魔法には、相手に元気になってほしいとか、綺麗になってほしいという思いを込めるとよいと習った。だからといって…。


「カルボスったら、私のことじゃなくて別の人のこと考えてるんだもん」


 カイロプラクティックとは関係ない思いまで伝わってしまうものなのか?


「そうだよね…。カルボスはすごく綺麗で可愛くなったもんね…。彼女の一人や二人くらいいるよね…」


 オレがたくさん彼女を侍らせているって?オレはフラベーナちゃん一筋だ。他の子は…、たくさんいるけど、彼女ってわけじゃ…。

 フラベーナちゃんのことは彼女といっていいのだろうか。オレたち相思相愛だよね?


「ほら、彼女のこと考えているんでしょう」

「あ…、うん…」


「私、ヒーラーガールと結婚したいって言ったから、カルボスがヒーラーガールになって戻ってきてくれたのかと思ったよ…」

「そういうわけじゃないんだ…。それに、オレはほんとうはヒーラーガールじゃない」


「そっか…」


 ルルに悲しい思いをさせてしまっただろうか。だいたい、オレのことを先に振ったのはルルだろう。付き合っていたわけじゃないけどさ。

 それにヒーラーガールなら誰でもいいのか?第二メタゾール学校の憧れのヒーラーガールはどうしたんだ。


「一つ聞いていい?ルルは男のことを好きにはならないの?」

「えっ?なんで?私は女の子と結婚して、治療院で子供を授けてもらいたいよ」


「そっか…」


 いよいよもって男の結婚が絶望的になってきたのかな…。


「ここにいる男どもからコクられたことは?」

「ないよ。なんで?」

「いい歳の男と女が一つ屋根の下で、何も起こらないものかと思って…」

「何もって何?」

「いや、ないならいいよ…」

「変なカルボスっ」


 十九歳のコデインにも十三歳のアダムにも、十七歳のルルは優良物件だと思うんだけど…。


「はぁ~。カルボスに振られちゃったぁ。カルボスがこんなに可愛くなるんだったら、つば付けときゃよかった。四年前は赤ちゃんだったし、こんなに可愛くなるとは思わないよねー」

「つばって…」


 オレもこんなに可愛くなるとは思わなかった…。


「はぁ~、気持ちいいねー」

「うん…」


 二人で湯船に浸かった。お風呂はどこで入っても気持ちがいい。水道代とかガス代をあまり気にせずに全国民がお風呂に入れるようにしてくれたアンネリーゼに感謝だ。

 だけど、これだけ広いお風呂は開拓から帰ってきて久しぶりだ。やっぱり、なんだか…。


「カルボス、もう帰りなよ」

「えっ」

「帰ったら彼女が待っているんでしょ?」

「そんなことは…」


 帰ってもワンルームで一人だ。開拓から帰って一週間一人ですごしていたはずなのに、なんだかフラベーナちゃんたちと一緒に寝泊まりしていた日々が恋しくなってしまった。


「ほら寂しそう。さあ、上がった上がった」

「あわわ」


 オレはまた胸を捕まれて、風呂の外に連れ出された。それはオレを持ち運ぶための取っ手ではないのだけど、丁度よい出っ張り具合なのだろうか…。



 脱衣所にて、脱ぐときは気が付かなかったけど、ルルもブラをしていた。十七歳なんだから当たり前か。だけど、オレのみたいに大事なところが見える寸前のギリギリまで露出したやつじゃない。

 それに、ルルはパンツもスケスケハミハミではなかった。

 なんでオレに色気を求めるのかとも思うけど、こういってはなんだけど、ルルよりオレのほうが女っぽい体型をしている…。オレはフラベーナちゃんに改造されまくっているからな…。

 なんだか本物の女の子より女っぽいなんてちょっと申し訳ない…。いや、オレだって本物の女の子になったんだ。どうどうとしていればいいんだ。




 早く帰れと言われたけど、気になることがあったので、コデインとアダムに聞いてみた。


「なあ、二人はルルのこと、どう思っているんだ?」

「えっ、そりゃ可愛いけど…」

「アダムは?」

「ボクもかわいいと思うけど…」

「けど?」

「「ルルはヒーラーガールが好きみたいだし…」」


 コデインとアダムがハモった。


「ルルが女の子を好きなら、諦めちゃうのか?」

「えっ、だってそうだろう」

「うん」

「そういうもんか…」


 いや、オレもルルがヒーラーガールを好きだと言ったとき、あっさりと引き下がっちゃったな…。なんでだっけ…。よく思い出せない…。

 とはいえ、十七歳の女の子と一つ屋根の下に住んでいる十九歳と十三歳のの男が、そんなに草食なものだろうか…。




 ルルたちに別れを告げて、オレは煮え切らないまま、王城の職員寮に戻った。

 職員用の食堂はもう閉まっている。しかたがないのでコンビニ…、売店で弁当を買って部屋に帰った。


 帰ったからといって、寂しさが紛れるわけではない。賑やかだったテント暮らしの日々が懐かしい。

 オレはフラーラのドレスを脱いで、スケスケのネグリジェに着替えた。


 ド、ガシャン!玄関のドアの開く音…、いや…壊れる音では…。


「システィナ、もう!どこ行っていたの!」

「えっ、フラベーナちゃん」


 この子はオレが自分の部屋で鍵を掛けていようと、トイレで鍵を掛けていようと、お構いなしに入ってくるんだな…。

 っていうか、フラベーナちゃんはネグリジェを着ている…。オレみたいなスケスケではないやつ。開拓の時に着ていたやつだ。


「さあ行くわよ」

「デルスピーナちゃんまで…」


 デルスピーナちゃんもネグリジェ姿で部屋に入ってきた。

 グリシーラちゃんとかパリナとか…、玄関の外を見たら銀髪娘とか全員ネグリジェ姿でいるじゃん…。いや、二十人もいるから一人くらい欠けていてもすぐには分からないんだけど…。


 デルスピーナちゃんはオレの左手を握って外に連れ出した。


「あ…、ちょっと待って…」


 聞く耳持たず。

 今度はフラベーナちゃんがオレの右手を握って引っ張っている。

 フラベーナちゃんの手…。柔らかい…。安心する…。

 デルスピーナちゃんの手も柔らかくてなかなか良いな…。

 女の子の手ってなんて柔らかいんだろう。手を握っているだけで幸せになれる。


 幸いなことに二人の向かう方向は一緒だ。左半身と右半身が泣き別れにならなくてよかった…。


 いやいや、何も幸いじゃない。ここは王城勤めの職員が住んでいる職員寮である。そしてオレはスケスケのネグリジェである。みんなもネグリジェでここまでやってきたのはどうかと思うけど、オレみたいにスケスケのではないからセーフなのだろうか。


 歩いている廊下を職員とすれ違う。幸いなことにここは女子寮なので、女性しかいない。「あらあらまあ、可愛いわね」みたいな声が聞こえる。たしかにたくさんの幼女がネグリジェ姿で集団移動しているのは可愛いかもしれないけど、一人だけ裸に近いネグリジェのオレの身にもなってほしい…。


「ねえ…、どこいくの…」

「うふふっ」


 フラベーナちゃんは微笑むだけで答えてくれない。

 そして、オレはそのまま職員寮の建物を連れ出された。夜にこの格好はちょっと冷える…。


 いやいや、そうじゃなくて、この裸同然の格好で外に出るのは…。

 ほら…、寮の外に出ると、男性職員もいた…。フラベーナちゃんたちだって、ネグリジェ姿を男に見られてもいいのか?

 

 王城の敷地内を歩かされ、たどり着いたのは立派な建物。これは、この前第四メタゾールに建てたような、表面を焼いて陶器ような艶を出した新しい建築手法を用いた建物だ。王城の敷地内にこのような建物は他にない。


「じゃーん!どう?私たちで建てたのよ!」


 フラベーナちゃんが胸を張って自慢げだ。あれ、胸が少し膨らんできている…。まだ三歳なのに、さすがフラベーナちゃん…。さすフラ…。


「焼いたのはほとんどフラーラだけどね」


 デルスピーナちゃんが言うには、表面の仕上げのさすフラは別フラらしい。これは火のチート精霊を持っているフラーラに頼るのがいちばんだからだ。


「ささ、入って」

「うふふっ」


 フラベーナちゃんとデルスピーナちゃんに手を引かれるがままに、その立派な建物に入った。


 そしてそのまま大きなベッドが一つある部屋に連れていかれた。


「今日から一緒だよ」

「えっ」


 今日から一緒に寝るってこと?またテント暮らしのときと同じってこと?


「うふふ、そんなに嬉しいの?」

「あれ、あれれ…」


 オレは涙を流していた。そんなに嬉しいのか…。嬉しい…。


「システィナ、一人で寂しかったでしょう。もう離さないよ」

「私も離さないわよ」


「私もよ!」「私もー」「わたくしも!」・・・


 やばい…。だけど、嬉しさがこみ上げてきたのもつかの間…。



「あれ、起きたぁ?」

「ん~?」


 フラベーナちゃんの声だ。

 知らない天井だ。全体に光沢があって、品位が漂っている。

 オレはベッドの上で横になっている。とても広いベッドだ。周りにはフラベーナちゃんといつもの女の子たち。


 なんだか記憶が飛んでいるので、またいつものやつだろう。気にしてもしょうがない。

 いつもは目覚めたら数時間経っているけど、時計を見る限りは数十分だ。そうだ、オレが自分の部屋で見た最後の時刻から数十分だ。窓にはカーテンが閉まっているけど、灯りが差し込んだりはしない。


 えっと、オレは自分の部屋からフラベーナちゃんたちに強引に連れ去られて、ここに来たんだな。このベッドの部屋に連れてこられたことまでは覚えている。それだけでじゅうぶんだ。


 まてまて、重要なことは、オレがこれからみんなとここで一緒に寝るってことだ。ああ、なんだか嬉しくなってきた。


 オレは身体を起こした。


「あはっ、システィナったら、顔が明るくなった」

「えっ、うん。聞き間違えじゃなければ、オレはここでみんなと寝るのかな」

「そうだよ」

「そっか…」

「今日から一緒だよ。もう離さない」

「うんっ」


「それじゃあ、もう一回横になってね」

「あわわぁ…」


 フラベーナちゃんは、座っていたオレの前に勢いよく飛びついた。フラベーナちゃんはオレの上半身をそのまま後ろに倒して、オレの上に覆い被さった。ちょっとラリアットに近かった。

 そして、フラベーナちゃんはオレの胸に顔をうずめた。


「ああん…、フラベーナちゃん…」

「私のポジションはいつもここ!」


 テント暮らしのときも何度かあったような…。あのときは、フラベーナちゃんに乗られたあと、すぐに朝になっていたような…。


「もうそれでいいわ。残りのポジションはアプリで決めるわよ!」


 デルスピーナちゃんがスマホをみんなに見せて、配置を指示している。さすが第一王女だ。従わないのはフラベーナちゃんくらいのものだ。


 パリナたちは「しかたがないわね」などと文句を言いながら配置に就いている。


 まず、オレの真上にはパリナがいる。頭が接触しそうなほど近い。


 それから、右隣については上中下、三人いる。

 上段にいるプレナは上下逆向きになって、目線がオレのおでこあたりにある。


 中段にいるのはペルセラで、上下はオレと同じ向きで、目線がオレの口元あたりにある。上のプレナとは頭が接触しそうなほど近い。


 オレは五歳だから皆より身長が高い。いや、四歳と五歳とかいう差じゃなくて、かなり差がある。

 オレのペルセラの足下はオレの膝くらいなので、そこからすぐ下にもう一人、イスマイラが配置されている。


 左隣についても同じような感じで、上段に逆向きでゾーラ、そ中段にエレナ、下段にリザベルだ。


 そして、オレの真下にナーラだ…。真下といいつつも、オレの脚を開いてオレの膝くらいのところに頭がある…。


「ああん…」


 膝の辺りにいたナーラが上がってきてオレの太ももにナーラの頭が触れたら、気持ちよかった…。

 オレが股を開いたから、上に載ってるフラベーナちゃんの膝がナーラの顔に膝蹴りをかましている。でもナーラは「えへへ」と言って嬉しそうにしている。


 それから、オレの…裏にアルゾナがいる…。ベッドとオレの間にもぞもぞと入り込んできた…。表側のフラベーナちゃんと合わせて二人分だけど、重くはないようだ…。


 アルゾナは、オレの裏から脇に手を通して、オレの胸を横から揉んでいる…。前からは胸と胸の間にフラベーナちゃんが顔をうずめているし、横からはアルゾナに揉まれているし、なんだかずっと気持ちが良い…。


 オレは前後上下左右をがっちりと固められて、その周囲に誰がいるかはもはや分からない。二十人全員いるのだろうか。


 それにしても、落ち着かなくて寝られない…。

 左右に腕はエレナとペルセラが抱きしめているし。

 顔を左右どっちに向けても、プレナかゾーラの顔が近いし。

 胸はフラベーナちゃんが顔をうずめているし、横からはアルゾナに揉まれているし。

 股ではナーラがもぞもぞやっているし…。

 足はリザベルとイスマイラに抱きしめられているし。


 テント暮らしのときはここまで密着していなかったような…。

 オレも身体強化を鍛えているから、フラベーナちゃん一人載ったくらいで苦しくはない。しかし、無数の女の子を着ている状態では寝られない…。




 翌朝…。


「ん~…」


 疲れが取れていないと思ったけど、そうでもなかった。むしろ、元気いっぱいだ。

 そうだ、オレはフラベーナちゃんたちと寝たんだった…。

 そのフラベーナちゃんがオレの胸に顔をうずめてよだれを垂らしている…。フラベーナちゃんの意外な一面を見られた…。


 そして、オレの腕はエレナとペルセラに抱かれているし、足はリザベルとイスマイラに抱かれているし、胸はオレの裏にいるアルゾナに捕まれている。

 まったく振りほどけない。この子たちはほんとうに眠っているのだろうか。


 アルゾナは一晩中オレに敷かれて苦しくないのかとも思うけど、オレだってフラベーナちゃんに敷かれて苦しくないから、アルゾナには二人分の重さくらいたいしたことないんだろう。

 オレはむしろ、フラベーナちゃんに敷かれて幸せいっぱいだけど、アルゾナは自らオレなんかの裏に入ってきて、それでいいのだろうか。


「フラベーナちゃん、起きてよ。遅刻するよ」

「ん…、ん~…。柔らかい…」

「ああん…」


 フラベーナちゃんは寝ぼけて、オレの胸と胸の間でもぞもぞしている。なんだか気持ちいい。

 だけど、そこには自分のよだれがたっぷり貯まっているはずだ。


「んぐ…。べちゃべちゃ…」


 オレの胸から顔を出して自分の顔を触って、よだれが付いていることに気がついたようだ。


「あ!システィナ!」

「ああん…」


 フラベーナちゃんはオレの胸と胸の間にまた胸をうずめてしまった…。


「おはよう、フラベーナちゃん。遅刻するよ」

「もうこんな時間?みんな起きて!」


「ん~」「おはよー…」…


 みんなやっと起きた。そして着替えだした。

 みんなの着替えというのは、土魔法で着ているネグリジェを繊維の塊に戻して、別の繊維や金糸などの塊を自分にまとわせながらドレスを形作っていくというものだ。

 クローゼットの部屋にあったのは、ドレスそのものではなく、生地や装飾用の素材。それを、メイドが運んでくると、みんなは次々に自分にまとわせていく。

 まるで、魔法少女の変身シーン。一度パンツ一丁にならなければならないところまで再現されている。でも、フラベーナちゃんなんて胸が膨らみ始めてきたし、行程を見直した方がいいと思う。


「システィナは着替えないの?」


 もちろん、オレは一瞬でドレスを作ることなんてできない。まだまだ数十分はかかるのだ。

 いやいや、それどころか、オレは自分の荷物を寮に置きっぱなしじゃないか…。

 っていうか、オレの部屋の扉は破壊されていたような…。


「あの…、オレの荷物…」

「ああ、そっかぁ。じゃあ、作ってあげるね。だいたい、何年同じドレスを着ているのさ」

「そ、そうだね…」


 男爵と教育大臣とリボンのお店の給料を合わせても、フラベーナちゃんのドレスを買おうと思ったら半年分の給料が飛んでしまう。

 みんなにもらったドレスを何時間かかけて別のドレスに仕立ててもいいんだけどね。でももらったものをばらしちゃうのって、なんだか申し訳なくて…。


 まあでも、フラベーナちゃんはオレにいつまで同じドレスを着ているのとか言っておきながら、オレが二年前にあげたリボンをいまだに付けて大事にしてくれている。オレだってそれが嬉しい。

 とはいえ、そろそろフラベーナちゃんに新しいリボンをプレゼントしてもいいだろうか。


 フラベーナちゃんは、自分の着ているドレスと同じデザインのドレスをオレにまとわせた。金糸や宝石がたくさん付いている…。これは、フラベーナちゃんの作ってくれたとっておきクラスのドレスだ。これまたオレの五年分の給料が飛びそうだ…。


「おそろい!いこっ!」

「う、うん…」


 もらってもいいのだろうか…。

 オレはフラベーナちゃんに手を引かれて部屋を出た。

 ふと気がついた…。フラベーナちゃんはドレスしかまとわせてくれていないので、オレはノーブラだ…。ドレスの胸の部分は相変わらず大事なところがギリギリ見えないくらいの長さしかないうえに、ブラよりもフィット感が弱い。ドレスのカップの上にただ胸を置いているだけのような感じだ…。

 歩くたびに胸がぽよぽよと跳ねて、大事なところがこすれて痛い…。それに歩くときにちょっと大きく跳ねると、そのまま飛び出してしまいそうだ…。まるで卵を浅い皿に載せて歩いているような、そんな危うさだ…。

 しかもこの卵はダチョウの卵だ。しかも半熟卵…、いや、プリンだ。ちょっと動くだけで、ふにふに形を変える。自分の身体の一部なのに、自分では制御できずにかってに動く部位があるなんて、やっぱ女の子って大変だな…。


 女の子は、何かしたらすぐにはみ出してしまうとか、ちょっと動いたらすぐに見えてしまうとか、そういうぎりぎりのところを狙っておしゃれを頑張っている。世の中の女の子にはほんとうに感服する。


「もう!急がないと!」

「わああ…」


 オレは胸が飛び出さないように恐る恐る歩いていると、フラベーナちゃんがしびれを切らして、俺の右手を強く引いて早歩きを始めた。

 その衝撃で、オレの胸は今にも飛び出しそうだ…。オレは飛び出しそうな胸を左手で押さえながら、なんとか学校に着いた。



 よりにもよって、今日は剣術の授業だ…。


「今日は新しい子を紹介します」


 教師の声とともに入ってきたのは…、銀髪幼女、銀髪幼女、銀髪幼女、銀髪幼女、………。いったい何人いるんだ…。二十人以上いる。数えられない…。

 背丈はプロセーラ、ティノイカと同じくらいだろうか。顔立ちはプロセーラ、ティノイカにかなり似ている。

 まさか、これ、みんな腹違いの姉妹?みんなダイアナの娘?みんな二歳?

 全員が薄緑色の強い光を放つ精霊を持っている…。

 

 続いて、今度は明るい栗毛の女の子八人。みんなグリシーラちゃんと同じくらい?三歳かな。

 いや、一人だけフラーラの世代と同じくらいの子がいる。この子だけ二歳かもしれない。こっちの八人はアンネリーゼの子かな…。いわれてみれば、アンネリーゼの面影がある。

 こっちの八人も薄緑色のチート精霊を持っている…。


 一人一人名乗っていっているけど、さすがに多すぎて頭に入らない。全員が家名を持っているご令嬢のようだ。


「ねえ、フラベーナちゃん…」

「あっちの八人は異母姉妹だよ。離宮で見かけるけど、面識ない。銀髪はダイアナ様の娘だよ」

「やっぱりそうなんだ…」


 アンネリーゼとダイアナって、いったい何人の子がいるの…。ここにいるだけですでに数えられないけど…。

 オレはアンネリーゼを早々に諦めてほんとうによかった…。


 自己紹介を聞いていたら眠くなってきた…。王都から通ってきている一般人も加えたら、すでに六十人を超えていると思うし、クラスを分けたほうがいいんじゃないかな…。


「さっ、始めよっ」

「はっ、うん」


 フラベーナちゃんの声で目覚めた。

 銀髪の子は、やはり怖い子ばかりなのだろうか…。オレはフラベーナちゃんに優しく叩かれたい…。


 フラベーナちゃんが竹じゃない竹刀を振り下ろしてきた。オレには振り下ろし始めるところだけが見えていて、そのあとが早すぎて見えないけど、一応がんばって避けようとしてみた。もちろんフラベーナちゃんの竹刀をオレは避けられず、竹刀は肩に当たった。相変わらず、フラベーナちゃんは痛くないように優しく叩いてくれる。


「はぅぅ…」


 でもそれだけじゃなかった…。避けようとしたのが徒になった…。避けようとして後ろに軽く飛んだまではよかったけど、ドレスのカップに置いてあるだけのオレの二つのプリンが空中に置き去りになり、大事なところが外に出てしまいそうになった。オレは慌てて竹刀を捨てて、両手で二つのプリンがカップから飛び出ないように抑えた。


「可愛いぃぃぃ!もう一回!」

「えっ…」

「えいっ!えいっ!あー!可愛いなぁもうっ!」

「ちょっ、ちょっ、わぁあ…」


 フラベーナちゃんは、オレがジャンプして避けるべき低い攻撃ばかり仕掛けてくる…。オレはジャンプして下降中にプリンが旅立ってしまいそうになるのを必死に抑えながら、避け続けた…。

 でも、オレはなぜか超不安定なハイヒールを履かされているので、フラベーナちゃんの剣に足を取られて転んでしまった。受け身は取らなかった。オレの両手はプリンがカップから飛び出さないように押さえるためにあるのだから。


「そうだ、剣術の授業なんだから、剣を落としちゃダメだよ」

「あっ、はい…」


 オレが立ち上がると、フラベーナちゃんはオレの落とした竹刀を拾って、オレに手渡した。フラベーナちゃんの試練は厳しい…。もうダメだ。片手じゃカップから飛び立とうとしている二つのプリンの両方を抑えることはできない。


「今日の授業は終わりです」

「もう終わりなの~?」


 助かった…。自己紹介が長すぎて、授業時間が短くなってくれて助かった…。

 二十人以上の銀髪娘にリンチされたらどうしようかと思ったよ…。



 午後の授業はアイドル養成科のダンスだ。ここには、オレとフラベーナちゃん以外には三人のヒーラーガールしかいない。比較的平穏な時間だ。


「一緒に踊ろっ!」

「うんっ」


 社交ダンスとかお貴族様のダンスじゃなくて、「振り向いて」というポップスの曲に合わせて踊る。

 この曲も二年以上練習しているんだけど、新曲出ないのかな。この曲ってアンネリーゼとかマイア王が歌っているらしいんだけど国歌なのかな。

 歌詞は女の子が恋した相手に振り向いてほしい思いを綴ったものなのだけど、ちょっと独占欲が強くて粘着質でストーカー気味なんだよな…。


「ひぃぃ…」


 オレはフラベーナちゃんに合わせてステップを踏んだ。すると、胸が飛び出ていってしまいそうに…。忘れていた…。

 オレは慌てて胸を押さえて、もじもじしていると…、


「今日のシスティナはほんとうに可愛い!」


 胸がはみ出さないように必死にしている俺の姿は、フラベーナちゃんにツボっているようだ…。


「よくできていますよ!」


 リフラナ先生にも褒められた…。リフラナ先生は初代ヒーラーガールズの元センターだ。

 元センターに褒められるのはいいけど、オレはまともに踊れていないと思う。でもそれでいいんだ…。


 その後も胸がはみ出さないようにもじもじしながらなんとか踊っていたら、フラベーナちゃんとリフラナ先生だけでなく、三人のヒーラーガールもなんだかオレを見守るように、そして顔を赤らめてオレをじっと見ている…。まるで、幼児がよちよち歩くのを見守るような目で。うう、なんだか恥ずかしい…。




 やっと授業が終わった。なんとか大事なところを守った…。

 明日もこの調子じゃ身が持たない。


「フラベーナちゃん、あの…、オレ、フラベーナちゃんたちの部屋に一緒にいていいのかな…。

「もちろんだよ。あれはシスティナと暮らすために建てた離宮だもん」

「オレと暮らすため…」


 フラベーナちゃんはオレのことをそんなに思ってくれていたんだ…。彼女のためにマンション一棟を買ってくれちゃう男前なフラベーナちゃん…。

 建物自体は土なのでタダだけど。


「じゃあ寮の部屋から荷物を持ってくるよ」

「わかった。離宮で待っているね」

「うん」



 オレはフラベーナちゃんと別れて、職員寮の自分の部屋に行った。

 オレの部屋はドアは破られたままだった…。

 そして、机の上に昨日買ったコンビニ弁当が袋のまま置いてあった…。ちょっと臭う…。


『侵入者はいませんよ』


 部屋に入ると、机の上に置いたタブレットに表示されたエージェント・アンネリーゼが、オレの疑問に応えた。

 あんまり気にしていなかったけど、王城の敷地の中だし、ドアが開きっぱなしでも泥棒が入らないくらいには治安が良いんだな。


 タブレットのエージェントとスマホのエージェントは同期している。別人というわけではない。人ですらないが。

 タブレットは普段持ち歩いていない。スマホは影収納の中だ。いつもは、胸の谷間の影に影収納の扉を常に開いている。さもないと、影収納の中には電波も声も届かない。それに、スマホを半分出して胸に挟んでおくと、通知でバイブレーションしたときにちょっと気持ちいい…。

 だけど、そろそろタブレットも胸の谷間から入れられるような気がする。それくらい広大で深い谷間ができている…。


「そっか。オレの着替えをいつも盗撮しているくらいだから、見張りはバッチリだな」

『その通りです』


 開き直ってやがる。


 オレは部屋のカーテンレールや扉に適当に掛けてあるドレスを集めた。一度に持っていける量じゃないな。

 ここに持ち帰ったときは魔道バッグに詰め込んで持ってきた。だけど、魔道バッグは使い捨ての闇の魔石を電池とした魔道具で、電池が切れると中身が出てきてしまう。充電式の闇の魔導石を使えば繰り返し使えるけど、ドレスが十七着も入る影収納を維持する闇の魔力はオレにはないので、魔道バッグはもう機能していない。

 とはいえ、オレの闇の魔力の回復量で維持できるのが六リットルの影収納なのである。数十分で闇の魔力が尽きる前提であれば、それなりに大きな影収納を作ることができる。


 ところで、クローゼット入れてある水着…。ときどきこの部屋の鏡の前で試着している水着…。アルゾナからもらった水着…。この部屋を出ると、一人水着ショーなどできなくなってしまうかもしれない。

 いや、いいんだ。オレは一人水着ショーよりも大切なものを手に入れた。

 いやいや、最後に一回だけ一人水着ショーをやっていこうかな…。


 オレは鏡の前でアルゾナの水着を着てみた…。この水着は紐でサイズを調整できるので、三歳でもらったときから生地を継ぎ足していない。パレオだけは生地を足して、腰で結べるようにした。

 いや、パーツが水着と同じってだけで、実際にはドレスと同じ素材でできていて、装飾の雰囲気もドレスと同じだ。


 三歳でまだぺったんこだったオレに丁度よかった水着。肩紐はないけど、ブラもパンツも紐が長いので五歳になった今でも着られる。だからといって、布面積は三歳用なので、五歳のオレでは大事なところしか隠せていない…。そもそも、三歳児用の水着のブラは、谷間のできるような胸のために、カーブを描いていたりはしないだろう。


 このギリギリ感…、癖になってきた。見えちゃうかもとか、はみ出ちゃったらどうしよう、というのはオレの中の乙女を育てる。


 うーん…。オレって…可愛い…。こんなに可愛かったかな…。なんだかずっと見ていると惚れてしまいそう…。

 イカンイカン、オレにはフラベーナちゃんという心に決めた人が!


 可愛いだけじゃない。スタイルも抜群。子供だから小さいのではなくて、まるで大人をそのまま縮小したような。

 それにしても、胸とかお尻とかはみ出すぎだな…。こんなに胸が大きかったかな…。こんなにお尻も大きかったかな…。やっぱり、開拓から帰ってきてから急激に大きくなった気がする…。オレ、五歳に見えないよね…。


 胸とお尻だけじゃない。身長だって…、


『一三〇センチです』

「なあ、いつも思うけど、オレの心を読んでいるのか?」

『顔に書いてあります』

「まあ、鏡を見て頭の上に手を当てて柱と高さを比べていたら、身長を測ろうとしているのは分かるよな…。っていうか、一三〇だって?」

『はい。この世界では八歳くらいです。ちなみに体重は二八キロです。これがシスティナの成長曲線です』


 タブレットにグラフが表示された。上側に身長、下側に体重が載っていて、一週間ごとに目盛が振ってある。


「ここ…、みんなと開拓に行っていたときだよな…。なんでここだけこんなに傾きが激しいんだ…」

『それはもちろん、開拓されていたからでしょう』

「いや、開拓することと成長の何が…」

『むふふ…、知っていますよ。お風呂とベッドで何をやっていたのか』

「えっ…、まあいつも盗撮されているから驚かないけど…。でも開拓って…」

『気持ちよかったでしょう』

「まあ…、うん…」

『システィナはお嬢様方に開拓されたから成長したのです』

「開拓って…。またフラベーナちゃんたちの魔法?」

『はい。カイロプラクティックは血行を促すことで、肌が綺麗になり、新陳代謝が良くなることでスタイルも良くなりますが、お嬢様方はアンネリーゼの力を受け継いでいますから、可愛くしたいとか、胸を大きくとか考えると、それが形となって現れてしまうようです』

「それって、いつも授業で気を失ったときにもやられている?」

『はい』

「はぁ…。それってもしかして、すぐに可愛くなるんじゃなくて、可愛くなる速度が上がるとか?」

『はい。その通りです。それが、グラフのこの傾きが大きい部分です』


 画面の中のエージェント・アンネリーゼが、グラフの傾きが大きい部分を指さして言った。


「なあ、身長はまあいいんだけど、オレの可愛さをグラフにしてくれ」

『この通りです』

「うわっ…」


 一年前に聞いたときはたしか三四〇だったような…。二年かけてフラベーナちゃんを抜く予定だったはず…。それが…、


「なんで二二〇〇もあるんだよ!」

『加速度運動しているからです』

「たしかに、二次曲線みたいになってるけどさ!」


 オレの可愛さが二二〇〇ってどういうことなんだ。


「オレより可愛い子はいるのか?」

『ロイドステラ王国とヒストリア王国にはいません』

「マ…ジ…で…。オレいちばん可愛いの?」

『そうです』

「フラベーナちゃんがオレを独り占めしたがるのは?」

『もちろん尋常じゃないくらいに可愛いからです』

「みんながオレを取り合いするのは?」

『もちろん他の誰よりも可愛いからです』


 はぁ…。みんなはオレをよってたかって可愛くしておいて、オレを愛でるのか…。可愛い子たちに好意を持ってもらえるのは嬉しいけど…。



「もう、遅いよ、システィナ!」

「ひゃっ」


 フラベーナちゃんが突然入ってきた。ノックくらいしてほしい…。でもノックすべき扉なんてなかった…。扉があっても鍵がかかっていても、構わず入ってくる子だった…。

 オレはアイドル養成科仕込みの仕草で驚いてしまった。もう、オレは根っからの女の子になってしまった。


「なあにぃ、システィナ、そういうのが好きなのぉ?」

「あ、これは違うんだ」

「じゃあ、明日はそういうの作ってあげるね」

「待って、待って…」

「っていうか、まだ荷物詰め終わってないの?」

「手伝ってあげるから」


 フラベーナちゃんが自分のスカートの中に、ドレスをぼんぼんぶっ込んでいく。スカートの面積は小さすぎるので、スカートというより股に入れているように見える…。

 フラベーナちゃんも闇魔法はそれほどチート性能ではなかったはずなので、たくさん詰め込むには闇の魔力の回復量を超える空間を確保しなければならないはずだ。


「もう、いつまでこれを着ているの?」

「それは、フラベーナちゃんのくれた大事なやつだから…」

「言ってくれれば新しいのあげるってば」

「そういうわけには…」


 フラベーナちゃんは、フラベーナちゃんのくれた普段着用のドレスと、とっておき用のドレスのハンガーを手に取って、あきれた顔でオレに言った。

 フラベーナちゃんにもらった普段着用ドレスはオレの給料半年分に相当するし、とっておき用ドレスは給料五年分なんだ。そんなものをぼんぼんもらっていたら、働く気がなくなってしまいそうだ…。


「よし、これで全部?行こっか」

「あっ…、ちょっと待って…。この格好じゃ…」


 オレは三歳児用の水着を着ているんだ…。大事なところがギリギリ隠せるだけの面積しかないし、ちょっと動いたらずれてしまいそうだ…。


「それってアルゾナのやつでしょ。今まで着ていなかったけど、大人になったからそれを着る気になったんだよね。だから、明日のドレスはそういうの作ってあげるって」

「うー…、違うんだってばぁ…」

「早く行くよっ」

「わぁ…」


 フラベーナちゃんに強引に右手を引っ張られてバランスをくずしたら、すぐに水着がずれてしまいそうだ…。左手で押さえているけど、今にも脱げてしまいそう…。これは、さっきまでノーブラで着ていたドレス以上に不安定だ…。


 オレはフラベーナちゃんに手を引かれて、自分の部屋を出て、職員寮の廊下で女性職員の「あらあら…可愛い…」などというつぶやきを聞きながら職員寮を出た。昨日より早い時間なので、人通りも多い…。

 もちろん職員寮を出てからの男性職員も多くて、大変危険な水着姿を披露しながら離宮に辿り着いた…。



「あらぁ!システィナちゃんは私の贈ったドレスをやっと着てくれたのね~っ!」


 アルゾナに感激されてしまった。


「そうなのよ。明日からはこのタイプを作ってあげるのよ」

「いや、フラベーナちゃん…、違うんだってば…」

「楽しみよねっ!」

「ホント楽しみだわ~!」


 フラベーナちゃんはアルゾナと意気投合してしまって、聞く耳持たない…。


 離宮ではメイドさんが夕食を出してくれた。オレはタダ飯喰らいでいいのだろうか。

 水着のまま夕食を取った後はみんなとのお風呂が待っていた。


「あああああん…」


 テント暮らしのときと同じだ。とても気持ちがいい…。オレはもうこれなしでは生きられない…。


 そして、みんなはオレの隣のポジションの奪い合い…はせずに、昨日と違う子が隣になった。

 もちろん、フラベーナちゃんはオレの前で、オレの胸に顔を埋めている。


「あれ、ジフラーナは?」

「ジフラーナは外国に嫁いじゃったの…」

「えっ…、だってまだ一歳になったばっか…」

「ジフラーナはね、私とデルスピーナお姉様とグリシーラが他国に嫁がなくてもいいように、ダイアナ様が産んでくださった王女なの」

「そうだったんだ…」


 これが政略結婚というやつ…。一歳でも嫁いじゃうんだね…。

 無表情でしっかりした子だったけど、もう会えないとなると少し寂しい。



 翌日…。


「フラベーナちゃん…、あのね…」

「こういうの、着たかったんでしょ?」


 オレは、金糸や宝石をあしらったパレオ水着風のドレスを着せられた…。


「き、昨日作ってくれたやつが好きなんだ!」

「あれ、そうなの?じゃあ、はいっ」


 一瞬で昨日のドレスに着替えさせられた。だけど、これじゃまだ昨日と同じ危うさが…。


「あの…、それと、昨日預けたブラを…」

「あ、ごめんごめん、はい」


 フラベーナちゃんは自分のスカートの中に手を入れて、オレのブラを取り出して、オレに手渡した。


 魔物退治の時、フラベーナちゃんは影収納から魔導ナプキンを取り出すと見せかけて、自分の使っている魔導ナプキンを取りだしてオレに手渡した。まさか、ブラをそんなところに挟んでいるとは思わないが、もしかしたらそうなのではないかと期待してしまう。いやいや、オレは何をいっているんだ。

 でも…、なんかこのブラ…、暖かいような…。


 ドレスのトップスを脱いで、ブラを付けていると…、フラベーナちゃんがまじまじと見てくる…。恥ずかしい…。

 男だったオレがブラジャーを付けるというのは、ある意味女装をしているのに近いというか…。オレは女の子になったのだから、堂々としていればいいはずなのだけど、なんだか割り切れない…。


 でも、周りの子がまだブラを付けていないのに、いちばんに胸が大きくなってしまった子がクラス内で初めてブラを付けるってどういう気持ちだろうか。フラベーナちゃんも胸が膨らみ始めているし、フラベーナちゃんがブラを付けるようになってきたら、気にならなくなるだろうか。

 そうか!フラベーナちゃんは、自分の胸が早く大きくなって、ブラを付けたいと思っているに違いない!


 あっ!良いことを思いついた!フラベーナちゃんにブラジャーをプレゼントしよう!

 いや…、ちょっと待て…。下着の贈り物なんてする男がどこにいるか…。いるかもしれないけど、それって女の子にエッチな下着を着せて…。

 いやいや、オレはすでにフラベーナちゃんにブラもパンツももらっている。しかもエッチなのばっかりだ…。あれ…。フラベーナちゃんはオレにエッチな下着ばかり着せて、オレをどうしたいんだ…。

 いやいやいや、オレは女の子初心者だ。オレは女の子の常識を知らない。フラベーナちゃんは常識に則って、オレにこういう下着を着せているのかもしれない。


 俺たちは女の子どうしなのだから、下着の贈り物くらいしても…いいのかな…。


「ぼーっとしてないで早く行くよ!」

「あ、ごめん」


 フラベーナちゃんは、オレが先ほど脱いだドレスをばらして同じ形に成形しながらオレにまとわせた。楽でいいよな…。


 ブラを装着したからといって安心していたのだけど、やっぱり大事なところがギリギリ見えないくらいの面積しかないブラでは、激しく動くと胸がこぼれ落ちてしまいそうで、運動系の授業では身の入っていないオレは先生に怒られつつも、学校生活をすごした。



 フラベーナちゃんは毎日、オレにドレスを着せてくれる。水着じゃなくて普通のドレスだから、それはいいんだ。

 ブラジャーはなぜか、オレが自分で付けている上に、フラベーナちゃんにまじまじと見られているのだけど、問題は見られていることではなくて、日に日にブラジャーより胸が大きくなっていることだ。

 一人暮らしの時は、ときどき生地を足していたのだ。だけど、フラベーナちゃんは継ぎ足し用にしていたティノイカのドレスをばらした生地を返してくれない。もう残り一割を切っていて、原型を留めていないので、ゴミだと思って捨ててしまっただろうか…。


 でも、ブラの生地を継ぎ足さないと、どんどん胸が溢れてしまう。そこで、フラベーナちゃんにドレスを着せてもらったあと、こっそり袖を削ってブラに継ぎ足すということを毎日やるようにした。ドレスのほうは、フラベーナちゃんがオレの成長に合わせて完璧にフィットさせてくれているので、必要があれば生地が増えていく。

 ほんとうは、ブラの生地が足りなくなってきていることをフラベーナちゃんに言えばいいのかもしれない。だけど、フラベーナちゃんは生地が多いときはすぐ怒るのに、足りないことのほうには寛容というか、むしろだんだん溢れていくことを望んでいるようなので、ブラに生地を継ぎ足すことを許してくれるか分からない。フラベーナちゃんの基準は難しいのだ。

 だから、袖とか、あまり興味なさそうなところの生地を削って、こっそりブラに継ぎ足すことにしたんだ。ほんとうに毎日少しずつだから、フラベーナちゃんも気にしてはいないようだ。助かった…。


 ちなみに、今までオレが着ていたドレスは、一応クローゼットの部屋にそのまま掛けてある。クローゼットにあるのは、オレのドレスだけだ。みんなのは生地の状態で保管してあるようだ…。

 これらのドレスも生地を継ぎ足さないと使えない。みんなのように生地の状態から一瞬でドレスとしてまとえるのなら、成長してしまってサイズが合わないことはなくなるのだけど、オレにはそれができないから生地をドレスの形のまま生地を継ぎ足さなきゃいけないのに、フラベーナちゃんたちにはそれが分からないから、同じサイズのドレスをいつまでも着られると思っているのだろうか…。




 そして、次の休日、オレはこっそり仕立屋に行って、フラベーナちゃんのブラを見繕うことにした。

 一緒に部屋で寝るようになってから、みんなの目を盗んで出かけるのには、結構苦労した。というか、みんなプライベートな部屋というのを持っていないのだ。当然オレにもない。

 幼女ばっかりだから一人部屋なんていらないと思われているのかな…。


 フラベーナちゃんのサイズは、毎日お風呂で見ていたからバッチリだ!…なんてのはウソだ。いくら幼女だからといって、オレはフラベーナちゃんの胸をまじまじと観察するなんてできない…。

 それでも、これくらいだったかなぁと、なんとか思い出して、サイズを調整してもらった。

 値段はオレの給料の三ヶ月分だ。自分の普段着にそんなにお金を掛けるわけにはいかないけど、好きな子へのプレゼントの値段としては妥当だろ。

 金糸や小さな宝石をあしらってあって、フラベーナちゃんに相応しい。これは、ブラジャーだからこの値段なのであって、この装飾のドレスを買おうと思ったら、オレの五年分の給料が飛んでしまう。つまり、オレがもらったドレスと同じ…。


 このままではオレはフラベーナちゃんにまったく返せていない。そこで、オレは離宮に帰る前に、自分のリボンのお店に寄って、包みを開封して、ブラを改造することにしたんだ。カップとカップの間に小さなリボンを付けたり、縁に小さな花を付けたり。

 この世界の服にはこういうちょっとした可愛さが足りない。お金がないならアイデアで勝負だ。


 原料はリボンのお店で生地を出庫した。ここでブラの材料を全部調達して作ろうかとも思ったけど、ブラはまだプロに作ったものをベースにしてよかったと思う。


 それから、フラベーナちゃんが二年間ずっと使ってくれているリボンだけど、そろそろ新しいのをあげたい。

 オレはり二つのリボンを原価で出庫して、四枚羽根の蝶のような形に合体させた。このデザインはここでは売り出していない。


 ブラとリボンを、お店の包装紙で可愛くラッピングしてできあがり。

 さあ、帰ろっかな。


 待てよ…。フラベーナちゃんだけに買っていったら、みんな怒るかな…。

 みんなはもう、最初にオレの店で買っていったリボンを付けていない。いいよね、みんなにはプレゼントしたわけではなかったし。ここらでオレの本命はフラベーナちゃんだってハッキリしておくのも悪くない。




「うわぁっ」


 昼頃に離宮の部屋に戻ると、フラベーナちゃんに飛びかかられて、オレは倒れてしまった。

 オレはとても不安定なハイヒールを履いているので、飛びかかられるとすぐに倒されてしまう。


「どこ行ってたの?システィナ!もう、いないから寂しかったじゃん!」

「ご、ごめん…。でもね、これを用意していたんだ」

「なあに?」


 オレは立ち上がって、スカートの中の影収納から包みを出して、フラベーナちゃんに渡した。

 フラベーナちゃんがリボンをほどいて包みを開けると、ブラジャーとリボンが姿を現した。


「わー!可愛い!これ、くれるの?」

「うん。フラベーナちゃんのために用意したんだ」

「嬉しい!さっそく付けてみるね!」

「うん」


 フラベーナちゃんはリボンにも気が付いていたけど、よほどブラジャーが嬉しかったらしい。真っ先にブラジャーに食いついた。


 フラベーナちゃんは土魔法でドレスのトップスを分解して脱ぎ、繊維の塊にした。相変わらず豪快な脱ぎ方。

 そして、フラベーナちゃんはブラジャーを前後逆にして、前側でホックを留めて、前後をくるりと回して肩紐を掛けた。

 フラベーナちゃんは、オレがブラジャー付けているのをいつもまじまじと見ているので、付け方に迷いがない。ほんとうに自分ブラを付けるのを待ちわびていたようだ。

 でも、顔を赤らめている。ブラを初めて付けるというのは、女の子にとってもドキドキなんだな。


「どうかな…」

「か、可愛いよ…」

「ありがとう!」


 手を後ろで組んで、もじもじしながら顔を赤らめて、上目遣いで「どうかな」だなんて、イチコロだよ。世界制覇できる。


 でも…。やばい、カップの高さが足りなかった。いや、足りているけど、大事なところが見える寸前のほんとうにギリギリだった…。もし大事なところがはみ出すようなブラを贈っていたら、下心満載すぎて嫌われてしまうところだった…。

 フラベーナちゃんの成長が著しい。フラベーナちゃんも将来有望だな…。


「わー!大きさもぴったりだね!」


 えっ、それでいいの?ぴったりなの?

 でも、よく考えたら、大事なところが見える寸前のほんとうにギリギリの大きさって、オレがいつもフラベーナちゃんにやられていることだし、フラベーナちゃんもそれでよかったのか…。っていうか、それがこの世界の標準なのかな…。


「それにこの真ん中のリボンと縁のお花。ほんとうに可愛い!こんなのお店で見たことない!」

「うふふ、オレがデザインしたんだー」

「うわーっ!やっぱりシスティナはセンスがあるねー!さすがリボンのお店のデザイナーをやっているだけはあるよねー!」

「喜んでくれて嬉しいよ」


 フラベーナちゃんは、繊維の塊を自分にまとわせてドレスにした。

 しかし、生地の塊が若干あまった。なぜなら…、フラベーナちゃんの胸元が開いていたからだ。ブラと同じく、大事なところが見える寸前…、いやそれ以上にはだけさせて!って、ブラを付けているから、ドレスがはだけても大事なところは見えないけど。

 ドレスの生地が足りなくて、ブラの縁が見えてしまっている。でも、その縁にはオレがあしらった小さな花が見える。


「どう?」

「お花が見えていいね!」

「でしょー」


 ブラをこんなふうに使うなんて大胆。さすがフラベーナちゃん!さすフラ! 



「こっちのリボンもくれるの?」

「うん」

「これも見たことないデザイン!」

「もちろんフラベーナちゃんのためにオレが作ったんだ」

「システィナ大好きっ!」

「うわぁ」


 フラベーナちゃんはオレに飛びついてきた。

 オレは身体強化を使ってやっとまっすぐ立てる不安定なハイヒールを履いているので、フラベーナちゃんに飛びつかれて押し倒されてしまった。


「うふっ」

「フラベーナちゃん…」


 頬を赤らませて、色っぽく微笑むフラベーナちゃん…。


「ねえ、付けて」

「うん」


 オレは起き上がって、フラベーナちゃんにリボンを付けてあげた。


「どう?」

「よく似合っているよ」


 フラベーナちゃんは部屋の鏡で見ながらオレに問うた。


「システィナありがとっ!」

「うわぁ」


 フラベーナちゃんに飛びつかれて、また押し倒されてしまった。


 それを見て、周りの子たちが…、「やっぱりねー」とか「しかたがないねー」とか言いながら、なんだかちょっと寂しそうにオレとフラベーナちゃんのことを見ていた。

 オレがフラベーナちゃんを本命にしていることが、そんなにがっかりだったのだろうか。どう見たってオレはフラベーナちゃんのものだろう。

 いや、この世界はアンネリーゼやダイアナのように、嫁を二〇人も三〇人も持つような世界だ。

 オレの正妻はフラベーナちゃん、というかオレがフラベーナちゃんの正妻だけど、みんなを側室にしてあげてもいいよ。って、オレは何をいっているんだ…。オレみたいな馬の骨、フラベーナちゃんに娶ってもらえるだけでも奇跡だっていうのに、これだけたくさんのお姫様とかお嬢様のことを側室だなんて、オレはどんだけ図に乗っているんだ。




「ねえ、私にも咬ませて」

「えっ」


 突然話に入ってきたのは、ティノイカだ。

 フラベーナちゃんとの二人の時間を返してほしい。

 オレとフラベーナちゃんは立ち上がった。


「リボンのお店のデザイナーとして、私も雇ってほしいの」


 ティノイカといえば、ゴテゴテ装飾だらけのドレスをオレにくれた子だ…。そのドレスの九割は、他のドレスのお直し用の生地になり、残りの一割はフラベーナちゃんに捨てられてしまったけど…。

 そんなティノイカは、たしかにデザインセンスはあると思うけど、実用性をまったく考えてない、とんでもないものを作ってくれそうだ…。


「フラベーナちゃん、いいかな…」

「いいよ!」


「ありがとう!じゃあ、さっそくお店に行こう!」

「えっ、うん」



 フラベーナちゃんとティノイカとオレで、リボンのお店へ。俺が帰ってきたのは昼頃だったので、飯も食わずに出てきてしまった。


「ねえ、フラベーナちゃんに献上したような可愛い下着も売り出したらどうかしら?」


 ティノイカもフラベーナちゃんのことをちゃん付けで呼んでいるのか。それなのに、献上とかカタッ苦しい言葉が混ざっていて、よく分からない子だ…。


「私はいいと思うよ」


 フラベーナちゃんは同意した。


「じゃあ、お願いするよ。でも下着なんだから、ゴテゴテさせすぎてもドレスを着たら見えないよ」

「あら、下着を前面に出すドレスもあるのよ」


 と言って、ティノイカはスマホを見せてくれた。メタゾールの仕立屋のホームページだ。

 ドレスというより、ビスチェのようなものや、コルセット部分とブラジャーが独立しているようなものがある。

 この世界って、下着で出歩くのがOKな世界だったか…。どおりで、オレがスケスケのネグリジェで出歩いていても「あらあらまあ」くらいで済んでしまうわけだ…。


「これらは、ダイアナママと、アンネばあちゃんのデザインしたものらしいけど、これを超えるの作らない?」

「ドレスにするなら、スタッフが足りないな」

「じゃあ、まずは見せブラ、見せパンからにしましょう」

「でも、最初は装飾は控えめで頼む…」

「んー、じゃあ、控えめなのも用意しましょう」


 こうして、リボンのお店は下着も取り扱うようになり、メタゾールブランドの浸食を始めた。

 ティノイカのデザインは、オレが前世のアニメで見たものをまねたようなものではなく、芸術的な模様や装飾が多かった。どうやってもドレスの下には着られないような、立体的なデザインが多い。これらは見せブラだ。わざとブラがはみ出すようなドレスにするのだ。


 ティノイカは下着だけでなくリボンのデザインも始めた。こっちも、蝶や花の形や中には鳥や動物のような、超立体的なものまである。

 髪の装飾品市場は、フラベーナブランドの独壇場であり、ティノイカのデザインはそれをさらに促進することとなった。


 オレはもうデザイナーとして役に立たないかというとそうでもなくて、綺麗なものはティノイカ担当で、可愛いものはオレ担当という棲み分けができてきた。

 綺麗なものは大人向けが多いが、可愛いものは小さい子だけでなく、大人向けとしても受け入れられている。なぜなら、この世界には永遠の十七歳という種族の女の子が多くて、この世界の十五歳くらいに見える大人が可愛いものを好んで買っていくからだ。


 こうして軌道に乗ってきたフラベーナブランドは、ドレス市場にも進出。スタッフも増員した。

 下着を前面に出すデザインは下火になっていたが、再燃することとなった。



 それにしても、ティノイカにこんなデザインセンスがあったなんて…。おとなしい子であまり関わりがなかったけど、意外だったな…。


「ねえ、私のあげたドレスは?」

「えっ…」


 朝起きたらいきなりこれだ。

 ほとんど原料にしてしまったあげく、フラベーナちゃんに捨てられちゃったとか言えない。


「じゃあ、今日は私がデザインしてあげるわ」


 ティノイカのドレスか…。


「最近私たちのお店で流行りのやつを作るの?」


 フラベーナちゃんの言う流行りのやつといえば…。

 ティノイカは土魔法でどんどんオレにドレスをまとわせてゆく。

 できあがったのは、花や蝶がゴテゴテ付いたブラジャーと、大きなリボンが特徴にコルセット。

 ブラジャーは大事なところが見える寸前なのはキープしている。

 コルセットは腰を細く見せるものではなくて、へそを隠す程度のものだ。

 スカートはひだが無数にあり、フリルやレースがたくさん。

 とても動きにくいけどそんなのはお構いなしだ。女性というのは、生活の不自由を受け入れてまで美を追究しなければならないなんて、相変わらず世界中の女性には頭が下がる思いだ。


「じゃあ、明日は私が作ってあげるわ」

「えっ」


 今度はパリナか!

 今までは、オレのドレスはフラベーナちゃんが用意するのが通例だったけど、ティノイカを皮切りに、十九人がローテーションで用意することになってしまった。

 その中には、アルゾナの超不安定な極小水着があったのはいうまでもない。オレは十九日に一度、胸がこぼれ落ちそうになる恐怖と戦いながらすごすことになった…。

■カルボシスティナ・ムコサール男爵(五歳)

 八歳くらいの身長。十七歳くらいの体つき。


■コデイン(十九歳)

 カルボス(システィナ)とスラムで暮らしていたグループの最年長の男。


■ルル(十七歳)

 カルボス(システィナ)に言葉を教えた女の子。


■アダム(十三歳)

 カルボス(システィナ)とスラムで暮らしていたグループ内で数少ない言葉を使える男の子。


■ダイアナの嫁が産んだ娘(二歳)

 デビュタントパーティで魅了した令嬢の娘、三十人。

 そのうち、ティノイカ、プロセーラだけが転性者であり、メタゾール籍である。

 他の二十八人は産んだ母親の名を名乗っている。

 ちなみに、フラーラはダイアナの産んだ娘。


■クローナ、メレーナ、ソラーナ、エリス、アレスタ、グリメサ、タルメアの娘(三歳)

■ロコイアの娘(二歳)


■デルスピーナ、パリナ、プレナ、ペルセラ(四歳)

■イスマイラ、ゾーラ、エレナ、リザベル、ナーラ(四歳)

■プラチナ、アルゾナ(四歳)

■フラベーナ、グリシーラ(三歳)

■コルトラ、エウレカ、アリス(二歳)


■リフラナ(二十歳)

 アンネリーゼのメイドとして雇われているのだが、王都の学校のアイドル養成科の教師も兼任している。 

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