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48 うつつを抜かした2

 ゾルピデム帝国の使者の訪れから七ヶ月が過ぎた。ダイアナは十二歳、ジフラーナは一歳になった。

 そして、ゾルピデム帝国からミスリー第三皇女がやってきた。


 ダイアナは応接間でミスリー皇女を迎えた。髪は金に染めている。衣装は黒メインのゴスロリだ。後ろにはメイドのリメザを控えさせている。

 筋肉が付くようになってから、私もハイヒールを履けるようになった。でも私はロリ巨乳美少女なので、十センチのヒールに留めている。それにヒールはちゃんと自立するようにしてある。


 ミスリー皇女はすでにマイア姫への謁見は済ませている。ママ抜きで。ママはミスリーに異様な執着を見せていた。王女を二人も娶っておきながら欲深い。

 ゾルピデムは王国ではなくて帝国なので、皇帝が治めており、その妃を皇妃、娘を皇女というらしい。正直どうでもいい。間違えても怒らないでほしい。


『ようこそ、おいでくださいました。私はダイアナ・メタゾール公爵と申します』

「お招きいただき、ありがとうございます。私はミスリー・ゾルピデム第三皇女です」


 私はAIの電気魔法で自分の筋肉を操作して、完璧なカーテシーをこなした。カーテシーとは脚を交差させて少しかがみ、ミニスカートをつまんでパンツがこんにちはする挨拶だ。

 ミスリー皇女は顔を赤らめた。チャンス!魅了はいつでも効くが、あらかじめ少しでも好意を持たせておいた方が効率が良いのだ。


 可愛らしい子だ。ウェーブのかかった金髪で、ザ・王女様という感じだ。王族や高位貴族はデフォで可愛いとはママの名言だ。

 十二歳ということだけど、十四歳くらいに見える。まあ、王族や高位貴族は平均より二割くらい早熟なものだ。

 私は永遠の九歳だけど、九歳のときに十二歳くらいの体つきになっている。身長こそかなわないが、ヒールのおかげで同じくらいの背に見える。もちろん、胸の大きさは十四歳の娘ごときに負けたりはしない。

 伝統的なロングスカートのドレスを着ている。ロイドステラではもう、開発していない地域にも貴族だけならミニスカドレスとパンツが行き渡っているので、これはもうダサいかっこうなのだ。


 まあ、私はこの娘を正妻として娶るのだから、張り合う意味はない。むしろ、とても可愛く改造してあげよう。ジフラーナAを使って。

 ジフラーナAにはママとおよそ同じサイズの光の精霊が付いているので、ママにできることはだいたいなんでもできる。

 でも、魅了だけはダイアナが自分でやらなければならない。ジフラーナAにやらせたら、ミスリー皇女はジフラーナAに懐いてしまう。


 ちなみに、この子には火・水・風の精霊が付いている。お貴族様三点セットだ。


 この子はほんとうは男に嫁ぎたかったようだけど、政略結婚の道具として生まれた娘は、望まぬ相手に嫁がなければならないものだ。でも、私が幸せにしてあげよう。

 でも、今回の訪問は交流を深めるだけだ。嫁いでくるのなら最低でも一年後になる。まだあんまり幸せにしすぎるのはよくない。


 ミスリーは三人のメイドと二人の女騎士を連れてきている。ミスリーだけでなく、この子らも魅了しなければならない。魅了というのは基本は自分を中心にした範囲に掛ける魔法であるが、指向性を持たせることもできる。今回はミスリーと従者たちを同じように扱うわけにはいかないから、別々に掛けねばならず面倒だ。

 メイドももちろんロングスカートだ。騎士も厚手のロングスカートと革鎧だ。

 メイドにも火・水・風のいずれかの精霊が一つか二つ付いている。

 騎士には光の精霊が付いている。


 精霊を付けること自体は知られているが、育てることは知られていないようだ。やってきた六人全員精霊がピンポン球サイズのままだ。



『それではまず、お茶でも飲みながらお話しましょう』

「はい、ありがとうございます」


 早々、話してもらうことなどない。隣の部屋にポロンとともに待機させているジフラーナAを使って、すでに記憶を全部抜き出している。抜き出した記憶は、ジフラーナAの考えを伝える魔法でダイアナに転送することもできるし、サーバーに上げておいてあとで閲覧することもできる。

 この子は一応スパイとしてやってきたらしい。まあ、他国に嫁いでやることなんてスパイしかないな。

 この国にエッテンザムが巣くっているのではないかと勘ぐっている。実際にその通りではあるが、いちばん浸食しているのはママである。


 リメザがお菓子とお茶を持ってきた。


「美味しいですわ!こんなお菓子は初めてです!」

『お気に召したようで何よりです』


 今日のお菓子は、ホイップクリームを挟んだビスケット。

 以前に来た使者と違って今日は餌付けが目的だ。魅了にはけっこう時間がかかるが、こうして好感を持たせればその分早く終わるのだ。


「これは紅茶ね!とても風味豊かだわ!私も使者の持ち帰ったものをいただいたのよ」

『お好みでこちらの果汁やミルクを加えると、変化を楽しめるのです』

「それは初めて聞いたわ」

『これらは日持ちしないので、交易品やお土産にお持ち帰りいただくわけにはいかなかったのです』

「まあ、それは残念ね」

『でも、ミスリー様は、嫁いでいただければいつでもこの味をお楽しみいただけますよ』

「そうよね!楽しみだわ!」


 胃袋のつかみはバッチリだ。もう魅了が七〇パーセント済んでいる。


「それに、このカップもお花の模様が入っていて、素敵だわ」

『うふふ、綺麗でしょう』


 数年前まで、ティーカップやお皿といったら、茶色いコンクリートのような質感だった。でも、土魔法で整形したあと火魔法で焼き入れることによって焼き物のような雰囲気に仕上げたのだ。

 今ではメタゾールの名産だ。




 隣の部屋で待機していたジフラーナAを、ポロンに連れてきてもらった。


『こちらはマイア王と私の子、ジフラーナ第四王女。ゾルピデム帝国に嫁がせる予定の子です』

「まあ、可愛いらしい。先ほどお目にかかったマイア王陛下と、ダイアナ様によく似ていらっしゃいますね」

『すでに使者にお願いしてはありますが、ミスリー様にも、この子を大事にしてくださるご令嬢を見繕っていただきたいのです』

「ええ…、ご令嬢なのよね…。もちろん、この子を大事にしてくださる方にお願いしますわ」


 ミスリーは、ジフラーナの嫁ぎ先がご令嬢であることに少し面食らったようだ。聞かされていたようだが、まだまだ頭が固いな。すぐに洗脳してあげよう。っと、今回はまだダメなんだった。


 ジフラーナも金髪に染めてある。ミスリーは、ロイドステラがエッテンザムに浸食されたのではないかと勘ぐっているので、今はまだ私たちは銀髪を晒すべきではない。

 ジフラーナは普通の一歳児を装っているので、しゃべったりしない。まだ歩き始めたばかりで、たどたどしい感じを演出している。


「この国では女性が女性に嫁ぐのよね…。ジフラーナ様は、先ほどお目にかかったマイア王陛下とダイアナ様の面影があるので、たしかにお二人の子供なのでしょうね」

『はい。お疑いになるのもムリはないでしょう。この国でも女性どうしの婚姻に関する法律を施行し、女性どうしで子供を授かる魔法を広めたのは、つい三年前のことですから』

「それ以前は普通に男性と女性で結婚し子供をもうけていたのですか?」

『はい。でも今は女性と女性で結婚することも普通なのです』

「失礼しました…」

『いえ、よいのですよ』


 やはり、エッテンザムの魔の手が広まっているのではないかと考えているようだ。




 お茶会を終えたところで、


『ミスリー様に、ドレスをお贈りしてもいいですか?』

「えっ、いいのかしら?」

『はい。婚約者にドレスを贈るのは当然でしょう』

「そ、そうですね」


 ミスリーは女性から婚約者と言われて、さらにドレスを贈られるということに、頭がついて行っていない。


『それでは、私の経営する仕立屋を呼んでありますので、部屋を移りましょう』

「は、はい」


 ジフラーナAは、ポロンとともにまた隣の部屋に待機させた。


 部屋にはサンプルとして、マネキンにいくつかのドレスが飾ってある。もちろんすべて、予め調査してあるミスリーの寸法にほぼ合わせてあり、完璧な絶対領域を確保できるミニスカートだ。

 ちなみに、ドレスだけでなく、マネキン自体がミスリーの体型を完全に再現している。


「あ、あのぉ…」


 ミスリーは、マネキンのはいたスカートの短さに躊躇している。それもそのはず。この世界の女性はノーパンが基本であり、こんな短いスカートをはくということは、大事なところの防御力が心許ないということだ。


『実は、この中はこのようになっておりまして……』


 私はマネキンのスカートをめくって、パンツを見せた。まあ、パンツなら先ほど私も見せたのだ。今度はマネキンを使って、パンツの裏まで見せて説明する。


『これには魔道ナプキンというものが使われておりまして……』


 魔道ナプキンについて説明した。

 月経のときはもちろんのこと、おむつとしての使い方もできる。遠征してもトイレの心配がない。

 パンツの存在によりミニスカートという文化が生まれていることを説明した。


「これはとても素晴らしい魔道具ですね!」


 ミスリーは、最初にカーテシーをした私のミニスカートとパンツにとてもご執心だったのだが、この世界のトイレ事情を鑑みると、とても自分はミニスカートをはけないと残念に思っていた。

 それが、魔導ナプキンの説明を聞いたことで、自分もミニスカートをはけるとわかり、感動したようだ。


「私、ダイアナ様がお召しのドレスがいいわ!」

『分かりました。すぐに仕立てましょう。それではお召し物をお脱ぎください』

「はい」


 ゴスロリドレスをご所望とはお目が高い。あらかじめ用意しておいた、完璧にサイズを合わせたマネキンとドレスとは無駄になったが、ドレスというのは着るよりも作ってまとわせる方が楽なのだ。

 私は仕立屋の用意していた生地を受けとって、ミスリーにまとわせながらゴスロリミニスカドレスとパンツに仕立て上げた。仕立屋に任せていては一日かかってしまうからだ。


「まあああっ!ダイアナ様、これは土魔法ですよね!ダイアナ様は素晴らしい土魔法使いでいらっしゃるのね!

 まさか、すぐにドレスができるなんて思ってもみませんでしたわ!これでダイアナ様とおそろい!」


『喜んでいただけて何よりです』


 魅了が一〇〇パーセント完了した。


「あとは、その、脚が長く見える靴も欲しいわ!」

『お作りしましょう』


 ミスリーは十センチでは高すぎて歩けなくなってしまったので、五センチにした。それでも歩きの練習中はよろよろしている。足下のおぼつかない姿はとても可愛らしい。

 ヒールを履く前は背丈が同じだったのだけど、またミスリーのほうが少し高くなってしまった。これ以上身長が伸びないように改造しようかな。


「どうかしら…」


 ミスリーは顔を真っ赤に染めながら、少し下をうつむき上目遣いで私を見ながら、カーテシーをした。初めてはいたパンツを私に見せるその仕草が破壊力抜群だ。私が魅了されてしまう。


『とてもお似合いです…』

「嬉しいわ!」




『丁度よい時間ですね。ご夕食を用意しました。こちらへどうぞ』

「はい!」


 ほんとうは、ダイアナ本体が「手料理」を作れればよかったのだけど、ダイアナの魔力では手料理はできない。

 手料理とは、手でこねたり、手でちぎったり、手で混ぜたり、手で暖めたりして、手間暇掛けて作る料理のことである。手料理には愛が込められており、愛の味がするようになるようだ。

 ジフラーナAなら手料理を作れる。だけど、ジフラーナAの手料理ではジフラーナAに靡いてしまう。


 とはいえ、食材はドリーの木から生まれた、この世界には存在しないものばかり。


 昆布出汁を利かせた風味豊かな和風スープ。

 様々なハーブを利かせた米粉パスタ。

 香味野菜と醤油ベースのドレッシングを掛けた、蒸しコカトリスの胸肉のサラダ。

 メインは、ハーブで風味を整えた、マグロと豆腐のハンバーグ。コンソメベースのソースがけ。


 私の好きな和食をこの世界の者にどうやれば楽しんでもらえるか悩んでいたところ、フラーラが料理を教えてくれた。和の素材を使ってるだけで、和食とは言いがたくなってしまったが。


「ん~~っ!とても美味しいですわ!」

『お気に召しましたか』


 頬に左手を添えて軽くブルブルと震えながら目を瞑り「ん~」と叫んでいる姿は、とても姫とは思えないが、自然で愛らしい仕草である。

 ここまで素を引き出せれば、もうスパイ活動をしないかもしれない。


「お皿にもお花の模様が入っていて可愛いわ!」

『うふふっ』


 これもメタゾール産の焼き物だ。焼き物は火の魔力の高い者が必要になるので、二十歳前後のメタゾール領民の仕事となっている。ここ数年で開発した領地の者では扱えないのだ。



『ご存じのことかと思いますが、私はヒストリア第二王妃という名と、メタゾール公爵という名を持っております。ミスリー様に嫁いでいだだいた暁には、当初はヒストリア第二王妃の第二配偶者になってもらおうと考えておりましたが、考えが変わりました。メタゾール公爵の第一配偶者になっていただきます』


 魅了が一〇〇パーセント完了しているので結婚話を出してみた。


「とても光栄なことですわ。ダイアナ様は私と同い年なのに、爵位もお持ちなんて。ダイアナ様と結ばれるなんて、ほんとうに素敵だわ…」


 遠い目をしている。私との生活を夢見ているようだ。女と結婚するとかいう心配はすでにどっかへ行ってしまっている。




『それではお風呂に入りましょう』


 いつもは三十人のお嫁さんとワイヤ、そしてその娘たちとお風呂に入っている。だけど、お嫁さんたちは娘と一緒に里帰りして領地改革を進めているので、今は王都にはいない。

 お嫁さんたちには妊娠中に勉強をしてもらった。ボンクラもいたが、魅了と洗脳でしごいたことにより、全員一年で必要な過程を終えたのである。ボンクラを三年も放置プレーしたママとは違うのである。十把ひとからげには違いないが、ちゃんと全員手塩にかけている。


 そもそも、銀髪娘三〇人をミスリーにさらすわけにはいかない。

 ちなみに、娘三〇人のうち、ティノイカとプロセーラは私が親権をもらったので、王都に置いたままだ。その二人の親からはもう一人娘が欲しいと言われているが、領地改革が終わって戻ってきたらあげると言ってある。さぞかし領地改革をがんばってくれていることだろう。


 ティノイカとプロセーラは残っているのだけど、髪を染めるのも面倒だし、ミスリーには会わせない。ドラゴンの部位が残っているワイヤとエウレカも同じだ。


 まあ、そういうわけだから、お風呂はミスリーとその従者だけだ。

 客室にはお風呂が付いている。八人用のお風呂が付いた客室を選んだ。


「まあ!お風呂を使わしていただけますのね!」

『長旅でお疲れでしょうから』


 ロイドステラだって王族ともなれば、一ヶ月に一度くらいは風呂に入っていた。でも、客にお風呂を使わせるのは珍しいかもしれない。


 とはいえまず、ミスリーを先に入れ、メイド三人にお世話してもらう。


「お風呂のお世話は私だけでやります」

「我々はお部屋を整えさせてください」


 まあ、風呂に二人も三人もメイドはいらないわな。


『いえ、あなた方三人とも脱いで、全員でお世話しなさい』

「「「はい…」」」


 一時的な洗脳をかけて命令した。普通はお世話するのにメイドが脱いだりしないが、もちろん脱がせた。


 脱衣所の外で見張っている女騎士二人に、


『あなた方もご一緒しましょう』

「いえ、我々は……」

「ご一緒します…」


 こちらにも洗脳をかけた。脱衣所で鎧を脱がせた。私も脱いだ。そして、ジフラーナAと一緒に浴室にゴー!


「あっ、ダイアナ様…」

『お背中を流しますね』


「ああああああああん…」


 私だって毎日三〇人の嫁を気持ちよくさせているのだ。並のヒーラーガール以上にできる。これくらいお手の物だ。


「「「「「あああああああん…」」」」」


 そして、メイド三人と騎士二人も気持ちよくさせてあげる。


 続いて、ジフラーナAを使って…


「ああああああああああああん…」


 むぅ…。威力が違いすぎる。

 というか、ジフラーナAは可愛く美しくする魔法をかけたのであって、気持ちよくさせようと思ったわけではない。

 だけど、これらの魔法はママが編みだしたものであり、ママの考えた原理に基づいているため、いまいち自由に改変できない。

 ママの知識を引き出せれば分かるのかもしれないけど、ママの光の魔力に阻まれて、深い記憶は引き出せない。


「「「「「あああん…」」」」」


 メイドと騎士も少し美しくしてあげよう。私の周りに美しくも可愛くもない者などいらない。


 しかしこのままではみんなジフラーナAになびいてしまいそうだ。


「「「「「「あああああああああん…」」」」」」


 私はジフラーナAの気持ちよさに打ち勝つよう、必死になって六人を揉み続けた。



 そして、湯船でまた気持ちよくなってもらう。


「こんなにたっぷりのお湯を使ったお風呂は初めてです」

『うふっ、そうでしょう』


「ところで、私の髪ってこんなに艶めいていたかしら…。お肌もすべすべぷるぷる…」

『うふふっ、ミスリー様はお綺麗ですよ』

「いえ、ダイアナ様のほうが綺麗だわ…。こんなに素敵なダイアナ様と一緒になれるなんて…」

『ミスリー様…』

「ダイアナ様…」


 イカンイカン…。まだダメだってば…。でも口づけくらいなら…。

 進化の泉に行く前に私なら確実にやってしまっていただろう…。五人の従者も一緒に。


 美肌や髪の艶は治療魔法なので即時効果だ。可愛くなる魔法は、それなりに時間がかかるようになっている。だんだん可愛くなっていく姿を見るのも一興だ。

 ただし、永遠の十二歳に改造してあげたのでこれ以上大きく成長することはない。胸やスタイルを除いて。




 お風呂から上がった。脱衣所にはミスリーと従者五人のネグリジェとパンツを用意してある。


「これが寝間着なのかしら…」

『はい。最上級のものを用意しました』


 ネグリジェとパンツは、大事なところだけが少し厚くなっているが、ほとんどの部分がスケスケである。スカートは股下ゼロセンチだ。胸は大きく開いている。スケスケなので、布面積はあまり重要ではないけど、透けているとかはみ出ていることが重要なのであって、けっして全裸ではいけないのだ。


 従者の洗脳は解けているが、気持ちよくなってしまったため顔がうつろで、何でも言うことを聞いてくれる。従者の身で主人と一緒に寝てしまうことなど、気にもとめない。ミスリーもそれをとがめない。


『さあ、朝までご一緒しましょう』

「はい!」


「「「「「「ああああああん…」」」」」」


 従者たちの魅了も一〇〇パーセント完了したようだ。


 ほんとうは授乳したかったのだけど、私の光の魔力ではたいした洗脳効果はない。ジフラーナの魔力ならいけるだろうが、ジフラーナは母乳がとうぜん出ないし、ジフラーナに懐いてもらっても困るのである。

 やはり、一人で全属性コンプみたいなキャラになりたいものだ。といっても、私の意識を別の個体に移したりはできない。ジフラーナは私の記憶を持っているだけの、別の意識なのである。




 翌日。私は起きてぼーっとしていると、ミスリーが目覚めた。


「あっ…、おはようございます、ダイアナ様…」

『おはようございます、ミスリー様』


 昨日は何もなかった。私は必死にこらえた。何もなかった。いいね?


 メイド三人と騎士も目覚めた。私とミスリーと同じ、スケスケネグリジェを着ている自分に気がつき、昨日何をしたのか思い出したようで、真っ赤になってしまった。


「「「「「申し訳ありません…」」」」」


『かまいませんよね、ミスリー様』

「ええ」



 朝食をとるため廊下を歩いていると声が聞こえた。


「何あれ、なんかデジャブ」

「手までおつなぎになっていますわ」

「ホント、べったりじゃない。血は争えないわね」


 シンクレアとロザリーとヒルダが、何やら失礼なことを言っている気がする。

 ふと気がつくと、ミスリーが私と手を繋いでいた。とても触り心地の良い、柔らかくてすべすべの手。昨日私が改造した。


「血は争えないっていうのなら、私たちの娘もああなるのかな?」

「姫はそんなにたくさんいませんよ」

「姫じゃなきゃいけないのかしら…」


 血は争えないというのは、ママのことだろうか。姫といえば、セレスか、あとはまあマイア姫だろうか。

 まあいい。この子は私が可愛く育てて、キャッキャうふふするんだ。私だけの姫にするんだ。



 その後は町を案内したり、お茶したりして数日過ごした。もちろん毎日ミスリーと寝た。

 メイドと騎士は、お風呂や夜をたまにご一緒した。いつもミスリーと同じ扱いにするわけにはいかないが、魅了をうまく効かせるためには必要なのである。


「あ…、ダイアナ…。その子」

『ちっ』


 廊下を歩いていたら、会いたくないやつに出くわした。


「どなたですの?とてもお綺麗な方」


「ダイアナの母、アンネリーゼと申します」

「まぁ!第一王妃様ですのね!ダイアナ様の母君が第一王妃様だなんて、親子そろって陛下に愛されているのね!素敵だわ!」


 私は愛されていないけどね。


『お母様、私の嫁にちょっかいを出さないでください』

「いたっ…、ちょっかいだなんて…」


 ママはミスリーの両手を取ろうとしたので、その薄汚いママの手を私ははたいた。

 ママは触れただけで相手を気持ち良くさせてしまう危険な生き物なのだ。触れさせるわけにはいかない。


「私たち、今から町に出かけるところですの」


「わたし…」

『ダメ』


「わた…」

『ダメ』


「わ…」

『ダメ』


「ダイアナの意地悪…」


「お義母様が悲しんでおられますよ」


「お義母様…。なんだか良い響き…」


『母はすぐに調子に乗るので甘やかしてはダメです』


 ママは触れていなくても、側にいるだけで無意識に相手を魅了してしまう、私より危険なやつなのだ。私のかける魅了とはかなり違うが、ママに魅了されたら、私の魅了では対抗できない。長く一緒にいられると困る。


「まあ、ダイアナ様に嫁げばご一緒する機会はいくらでもありますものね。アンネリーゼ様、申し訳ございません。ダイアナ様がこのようにおっしゃいますので、今日のところは失礼しますね」


 ご一緒する機会は永遠に訪れない。


「はい…。ごきげんよう…」


「それではごきげんよう」


 まったく油断も隙もあったもんじゃない。




『ミスリー様、実は仕立屋を呼んだときに飾ってあったドレスは、すべてミスリー様のためにあつらえたものであり、すでに購入済みだったのです』


 私は先日ミスリーにサンプルとして見せたドレスを飾っておいた部屋に、ミスリーを案内した。


「まあ…、どうしましょう…。ダイアナ様のドレスがいちばん素敵だったのは確かですけど、他のも気になっていたのです」

『では、毎日これらの中からお好きなのを選んで着るとよいですよ』

「これを全部いただけるの?」

『婚約者にドレスを送るのは当然ではありませんか』

「ダイアナ様!」

「わっ」


 ミスリーが私に抱きついてきた。


「ダイアナ様…、好きです…。お慕い申します…」

『ミスリー様…。私もあなたが好きです…』


 こういうときは上目遣いで見てほしいけど、私がロリ巨乳美少女であることを選んだのでしかたがない。


「ダイアナ様は着替えないの?」


 痛いところを突かれた。私は着た切り雀だ。


『すべてのドレスはミスリー様のためにあるのですよ』

「まあっ、お上手っ」



『ところで、メイドさんと騎士の皆様も、こちらにお着替えになってはいかがですか?』

「「「「「えっ…」」」」」


 この子たちにはパンツとネグリジェ与えたが、日常ではパンツだけはいているようだ。王城にはトイレが完備されているので、ロングスカートでパンツをはいていても煩わしくない。

 だけど、与えたパンツは大事なところしか隠せない夜専用のものなので、それを日常ではいてもらうのは…、まあいいけど。


 そういうわけなので、ミニスカメイド服とミニスカ騎士鎧と、日常用のパンツを用意してあげたのである。


『皆様の格好は、ロイドステラでは少々伝統的すぎまして…』

「そ、そうですか」

「いただいてもいいのですか?」

『もちろんです』

「「「ありがとうございます!」」」


 メイド三人はとても嬉しそうだ。でも騎士は


「これでは防御が…」

「たしかに…」


 着たくてしょうがないという感じだけど、防御が心許なく見える。


『騎士様のストッキングは、丈夫な素材でできております。ですので、ご安心ください』

「なるほど…」

「これなら…」


 騎士はストッキングを触ってみて納得したようだ。打撃はあまり防げないけどね。


「それではありがたく頂戴いたします!」

「ありがとうございます!」


 こうしてメイドと騎士にもロイドステラに染まってもらった。




 ミスリーが帰る日がやってきた。


「私、帰りたくないわ!今すぐダイアナ様と結婚する!」

『そう言っていただけると私も嬉しいのですが、手続きをしなければならなかったり、嫁入り道具を持ってこなければならなかったりするので、一度帰らなければならないのではありませんか?』


「私、ダイアナ様以外には何もいりません」

『そういうわけには…』


 泣いて懇願するミスリー。


「重傷じゃない」

「タラシだね」

「困ったものです」


 またヒルダとシンクレアとロザリーが影で失礼なことを言っている。


「それなら、ダイアナ様がゾルピデム帝国にいらしてください!ジフラーナ様もご一緒に!」

『えっ…』


「そして私たちの結婚の手続きを済ませて、ついでにジフラーナ様の婚約の手続きもして、私の嫁入り道具を持ってロイドステラに戻りましょう!」

『なるほど、それはとても良い案ですね。それなら私もジフラーナを任せる方を見定めることができますしね』


「そうと決まれば、ダイアナ様は手続きの準備や、ジフラーナ様の嫁入り道具や付き人の手配などを急いでしなければなりませんね!」

『分かりました。それではあさってまでお待ちください』


「はい!」




 そして出発の日の早朝。


『ミスリー様の馬車は、こちらの魔道馬車に積んでしまいます』

「へっ?」

『魔道馬車の広さはこの前町をご案内したときにごらんになりましたよね』

「そうでした…。まさか馬車の中に馬車が入るなどと思いもしませんでしたが、よく考えたら馬車の中に屋敷が入っているのですものね」



『それではどうぞ、ミスリー様』

「はい…」


 私はミスリーの手を取りエスコートした。ミスリーはそれが嬉しかったようだ。

 ミスリーに続いて、メイドと騎士を乗せた。


 続いて、ジフラーナを抱いたポロンとリメザが乗り込む。Aばかり働きづめなので、今日はBだ。といっても、スカートの裏に開いた影収納の扉から、Aは外を見張っている。


 ポロンとリメザはジフラーナに付ける。

 実際のところ、ジフラーナのほうがダイアナより機敏に動ける。ダイアナのメイドがいなくなるのほうが困る。

 でも使えない者を敵地に送り込んでもしかたがないので、ポロンとリメザを付けるのだ。


 そこで、ダイアナ用に新しいメイドを三人雇った。東方の森開拓で目に留まったヒーラーガールズだ。

 第五世代のヒーラーガールズで十四歳。名をそれぞれメドロラ、ドレニザ、オイラナという。


 ちなみに、もともと夜のお仕事用に雇った三人は、今は普通のレディースメイドとして使っているけど、あまり役に立ってはいない。元ヒーラーガールズにかなうわけもない。ハウスメイドに降格させようか。私の部屋の掃除は大変なので、ハウスメイドは何人いてもよい。


 あと、敵地に乗り込むというのに兵力が心許ないので、シルバーを借りた。みんな乗り込んだあとなので、御者がいないことを知らない。


「景色が流れていますね。まったく揺れないので、外を見ていないとわかりません」

『面白いものを見られますよ』

「えっ、何でしょう!」

『ふふっ』


 王城の庭で加速した馬車は離陸した。


「えっ…」


 そして、床一面に配置されたディスプレイが、シルバーに設置された俯瞰カメラの映像を映した。


「きゃあ!落ちちゃうわっ…」


 そんなことを言って私に抱きついてくるミスリー。ああ、可愛い…。


『うふっ、私に掴まっていれば大丈夫ですよ』

「絶対に離さないわっ」


 次第に地面が小さくなり、王都全体を見渡せるようになった。


「これがロイドステラの王都…」


 床を見ている間に恒星間ワープモードに入り、窓は真っ暗になっている。

 シルバーは時速七〇〇キロで飛べるようになっており、二十五分ほどで王都を抜けた。

 もう街道を走ってもいいのだけど、シルバーは飛ぶ訓練に力を入れており、走行速度は時速八〇〇キロに留まっている。街道が曲がっていたり、人や馬車を避けなければならないことを考えると、もはや飛んだほうが速いのだ。

 がんばっていろいろな乗り物を開発しているが、いまだにこの速度で飛べる航空機というのはシルバー意外にいないのである。



「あら…、これって…、落ちないのですね…。もう!言ってくださったらいいのに!」


 騙された!と少し顔を赤らめていたミスリー。


『私に掴まっているのは嫌でしたか?』

「いえ…、このままずっと掴まっていてもいいですか?」

『もちろんです』


 そして、私の腕をより強く握って、さらに顔を赤らめた。なんて可愛い生き物なんだ…。


「次の町が見えてきましたわ。案外近いのですね。それに小さな町」

『いえ、人や家の大きさが分かりますか?』

「あっ…、豆粒みたい…」

『王都から隣町まで三〇キロ、町の大きさも三〇キロ程度です』


 ディスプレイに十キロ単位のグリッドを表示して、王都や町が三マス分であることを示した。


「すごいわ…。町の大きさを測れるなんて…。ダイアナ様は下々の者をこのようにして見下ろすことができるなんて、女神なのではないかしら…」

『これは私の作った魔道具ですよ。この旅が終わってロイドステラに戻ったら、ミスリー様は私と一緒に魔法や学問を学びますか?世界が広がりますよ』

「ぜひ!」


 ミスリーには仕事をしてもらうつもりはない。愛玩専用の姫なのである。でも、本人が望むなら魔法の勉強でも何でも好きなことをやればよい。



 私の腕に掴まりながら、うとうと眠ってしまったミスリー。私はミスリーを抱きかかえ、寝室のベッドに寝かせた。

 女の子一人くらいなら私の筋肉と身体強化でも抱きかかえられる。

 私も一緒にベッドで横になっていたら寝てしまった…。


 その間に、俯瞰カメラで取得した測量データを検証しているジフラーナA・B・C。

 ドローンがそれほど高くない場所から撮影したデータでだいたい集まってはいるのだけど、やはり広すぎて抜けがあるのだ。


 さらに、私たちが上空を進んでいる間に、ドリーに地中を掘り進んでもらい、ゾルピデムの帝都まで一直線のトンネルと高速道路を建設してもらっている。惑星に対して円弧ではなくてほんとうに直線である。

 緊急脱出にも使うし、魔力波レーザー通信のためにも使う予定だ。

 ジフラーナは魔力波レーザー通信をできるが、指向性が必要なので方角を合わせるのが面倒だし、間に誰かいると死んでしまうかもしれない。だから、地下に魔力波レーザー通信のアンテナを設置する予定だ。

 ジフラーナABCの闇の魔力はかなり大きい。魔道馬車程度の空間なら数十個を維持できる。だから、ジフラーナの魔道ルームにはかなりの量の資材や機材が入っている。その中には、緊急脱出用の自動車やジェット機なども入っている。




 一時間するとミスリーは目覚めた。ダイアナはまだ目覚めていない。


「あら…、いつの間に…。ダイアナ様の寝顔…」


 ジフラーナBは寝室の扉の影からこっそりその様子をうかがっている。


「ダイアナ様の唇…」


 ジフラーナBはダイアナの記憶をコピーした、ダイアナとは別の意識を持った個体であるが、ミスリーがダイアナに口づけしようとしている姿は自分が襲われているようにしか見えない。

 ジフラーナBは顔を手のひらで覆い、自分が襲われているところを見ないように…するのではなく、たんに指の隙間からその様子をうかがっている。

 自分の寝込みが襲われているところを第三者視点で見られるとはなかなか一興である。


「んっ…」


 ついに私の唇は奪われてしまった。ちなみにファーストキスではない。ファーストキスはもちろんママである。


「んんん~」


 ダイアナが動いた。ミスリーを抱きしめて、よりディープなキス…。って、ダイアナ、起きてないじゃん!私って寝たまま無意識でキスしちゃうんだ…。

 まあ、唇にものが触れると吸い付いてしまうのは、人間が持って生まれる数少ない本能だからしかたがないな。

 ちなみに、ジフラーナにはまだ性欲が芽生えていないので、自分もあのようにしたいとは思わないのである。



 さてそろそろ、ジフラーナBからCに交替するかな。トイレに入って、自分の影からジフラーナCに出てきてもらって、Bが中に入る。

 他人の影収納を開け閉めすることはできないので、これは魔道馬車と同じような魔道具だ。でも必要な魔力は全員で供給している。

 この中も魔道ルームになっている。部屋としては1DK、バス・トイレ付きだが、家具は一歳児が使えるように何もかもが小さめだ。影収納としてはとても広くて、開発用のスペースや物置のスペースがある。


 各ジフラーナはイヤリングや指輪など、いろいろなところにカメラやセンサーを身につけており、魔道ルームの中にいるジフラーナが電気魔法による脳内コンピュータでその映像や情報を見られるようになっている。中にいてもそれを頼りに、外に魔法の行使ができる。



「ん~、あああん…」


 ジフラーナCに入れ替わって、寝室に戻ってみると、まだやっていた…。ダイアナは服を脱がされて、それでもまだ起きない。起きていないのに、ダイアナはかなり本気でにゃんにゃんしている。

 スマホや周りの機器が監視しているので、AIが危険を察知すれば起こすようになっているが、これは危険ではないので起こしてくれないようだ。危険というのは、相手を妊ませてしまう危険である。今日は危険日ではないようなので、そのままゴールしても構わないとAIが判断しているのである。


「ん…、あれ…」

「ダイアナさまぁ。やっとお目覚めですかぁ?」

『私…、服、どこ…』

「ダイアナ様って寝ていてもあんなに激しいのね!」

「えっ…」


 ダイアナは混乱している。起きたのでジフラーナが見ていた記憶をダイアナに同期する。


『ああ…、私は寝たままミスリー様にいろいろとやっていたようですね…』

「そうなのですよ!」

『申し訳ありませんが、私は覚えていないので、もうちょっとお付き合いください』

「はいっ!」


 ミスリーは顔を赤らめて元気よく返事した。とても可愛らしくて食べてしまいたい。今まで私が食べられていたのだから、今度は私がミスリーを食べたい。


 ジフラーナCはやれやれと言わんばかりに肩をすくめて、寝室を去った。



 いつの間にかロイドステラ王国を出ていた。まだまだ四時間ほどかかる。街道のようなものはあるが、森を縫っていたり山を避けたりしていてまっすぐではない。やはり今のシルバーは飛んだほうが速い。

 ロイドステラの端からゾルピデムの端まで直線距離で一五〇〇キロだが、曲がった道はもっとある。馬車というのは時速十キロで一日五時間という見積で進むものだが、この道を三十日で来ているとすればかなり無茶をしていると思われる。


 そして、昼食を取ったり、お風呂に入ったりして四時間経つと、


『ゾルピデム帝国が見えてきました』

「えっ、私たち、何日ベッドですごしたのかしら…」

『ですから、この馬車は通常の馬車の七十倍の速さで飛んでいるのです』

「実感が湧かないわ…。でもダイアナ様がおっしゃるのなら、本当なのでしょうね…。あれが我が国…。ほとんど森と山と荒野ですね…」

『この地は魔物に溢れた人の住めない地域ばかりですからね』

「わたし、ロイドステラの空を通っているときに寝てしまいましたが、ロイドステラも同じですか?」

『はい。今、ロイドステラでは各地で改革を進めており、今後人口が爆発的に増える見込みです。ですから、少しずつ魔物減らしていき、人の住める区画を増やしていきます』

「ダイアナ様は王妃として国の未来を考えてらっしゃるのですね」

『はい。そして、ミスリー様と一緒になる以上は、ゾルピデム帝国の未来も考えていきたいと思います』


「私、正直なところを申しますと、最初はダイアナ様と結婚することで、ゾルピデム帝国に利益がもたらすことだけを考えていました…。でも、私が何をするまでもなく、ダイアナ様は自らゾルピデム帝国の利益を考えてくださるのですね」


『はい。ミスリー様のご家族の住まう国の人々にも幸せになってほしいと思います』

「私、ダイアナ様と結ばれて、ほんとうによかった…」


 でも、その幸せが何かは、私たちが定義し、それを本能に刻み込んでいただきます。




 ゾルピデム帝国の上空を二時間ほど飛んでいくと、ゾルピデムの帝都が見えてきた。


「見えたわ!ほんとうにこんな短時間で国境から帝都に付くなんて…」

『飛んだまま帝都に入ると不法侵入になってしまいますので、街道に降りましょう』

「はい」


 馬車を降りる前に、ジフラーナはトイレに入ってCからAにチェンジ。身体的に頼りになるのは、やはりAなのである。


 シルバーは上空で時速七〇〇キロから二〇〇キロまで減速し、恒星間ワープモードを解除する。ゲートの魔道具を出して、魔道馬車を出す。すると魔道馬車の窓には光が入ってくる。


 そして、街道に着陸した。まだ時速一〇〇キロは出ている。そのまま減速しつつ、御者台にリメザが出た。無人では暴走馬車だと思われてしまう。


 帝都への入場は、ミスリーの持っている通行証ですんなりいった。

 帝都を時速十キロで進んでいくと、三十分ほどで帝国城に着いた。ミスリーの通行証で帝国城にもすんなり入ることができた。


 シルバーはまだ耳と尻尾を隠せないようなので、馬屋に行ってもらった。ママにばれたら怒られるかもしれない。

 でも、何かあったとき伏兵にできる。シルバーの耳にイヤホンを仕込んでおいた。これでこちらの状況を伝えられる。

 それに銀髪に良い印象がないので、真っ白な髪も何か言われるかもしれない。だから、馬屋のほうがのんびりできていいだろう。たぶん。



「お母様、ただいま戻りました」

「み、ミスリー…、よくぞ戻りました…。なんだかとても…」


 なんだかとても…美しくなりましたね。と言いかけて、ミスリーのミニスカートが目に入った。

 ミスリーの母親は、ミスリーのミニスカートを見て若干引きつり気味だ。しかし、すぐに頭を切り替えて、スカートとガーターストッキングの間のわずかな絶対領域を見て、男性を誘惑する武器になり得ると判断した。

 ミスリーはカーテシーをしていないが、そんな短いスカートで大事なところをひけらかすとは、なんて大胆な子になったのかと、母親は感心している。


 しかも、ミスリーの後ろに控えているメイド三人と騎士二人までミニスカートである。それに幼女やそのメイドも!

 ロイドステラ王国では従者や幼女までこのような格好ができるなんて、ちょっと、はしたなうらやましい。母親はそのように考えていた。


「ようこそ、ゾルピデム帝国へいらっしゃいました。私はミスリーの母、ゾルピデム第三皇妃のイミリジーナです」


 イミリジーナは私に向かってカーテシーをした。脚を交差させ少し屈み、ロングスカートの裾が地面に付かないように少し持ち上げる挨拶だ。ロイドステラのカーテシーとは動作が同じでも目的が違うのである。

 綺麗な女性だが、ザ・意地悪王妃って感じの人だ…。


『突然の訪問をお許しください。私はミスリー様の婚約者の、ダイアナ・ロイドステラ第二王妃でございます』


 私はカーテシーをしてパンツをこんにちはさせた。


「ま、まあ…、王妃様じきじきにいらしたとは…」


 イミリジーナは先ほどカーテシーをしなかったミスリーのスカートの中が気になっていたが、私がカーテシーをしたためにその中が明らかにされ、私のパンツをまじまじと見た。その三角形のズボンのようなものは、女性の魅力をとても引き立てている。大事なところが丸見えになるよりも、むしろ魅惑的。


 よし、つかみはOK。


『そして、こちらは私の娘、ゾルピデム帝国に嫁ぐ予定のジフラーナ・ロイドステラ第四王女でございます』


 ジフラーナAはまだしゃべったりさせないが、カーテシーをして見せた。一歳児が成人にパンツを見せるには、スカートをほぼ一八〇度上にめくり上げなければならない。

 ロイドステラではこれが標準の挨拶なのだと、イミリジーナは理解した。


「こちらが…とても可愛らしい…。まだ一歳というところかしら…」


 ジフラーナAは魅了全開である。一秒に付き一パーセントの勢いで魅了が進んでいる。ただし、好意を持つ理由が少なければ、魅了は解けやすく効果が減衰しやすいので注意が必要である。

 ジフラーナAが魅了を掛ければ、BとCにも好意を持ってくれる。これは、一卵性の三つ子だから成せる技である。魅了の魔法は相手の持つ魔力の魔紋に対してフェロモンのようなものを感じてしまうらしくて、一卵性の子供なら同じ魔紋を持っているからだ。


 ちなみに、建物やスマホのセキュリティには魔紋認証を使っているが、副情報として魔力の量や付いている精霊の魔力なども、認証情報として使っている。ただし、それらは日々成長するものであるから、たぶんこっちが正解、というようなレベルでしか判断していない。

 重要なのはスマホや監視カメラなどで、途中で入れ替わったりしないように常に監視し続けることである。


 ダイアナも魅了をかけている。でもダイアナの光の魔力はジフラーナの一パーセントにも満たないので、いろいろなもので釣った上で数時間かけてやっと魅了が完了するのだ。

 ちなみに、一人に魅了されると、他の魅了が解けてしまうわけではなく、ジフラーナがいなければダイアナに好意を持ってくれるようになる。もちろん、同時にいる場合は、強い魅了をかけた方を慕う。


『はい』


「賢そうな子ですね」


『御国の皇女またはご令嬢に娶っていただく娘ですので、しつけはしっかりしております』


「皇女が娶る…」


 もちろん、ジフラーナAはイミリジーナの記憶を吸い出し中であり、考えを伝える魔法を使ってリアルタイムにダイアナとジフラーナB・Cに転送中である。ちなみに、電子データを介して転送することも可能である。

 ロイドステラでは女が女を娶るということを聞いていたが、自分たちも同じことをしなければならないということを私に聞かされて、気が遠くなっているようだ。


「とりあえず、おかけになって」

『はい』


 一方で、ジフラーナの魅了がそろそろ完了に近づいており、他国から嫁いできた可愛い王女を、できるだけ大事にしてくれる皇女に嫁がせなければならないと、使命感をいだきつつあった。


「この子のためにも、私の娘、ジアゼピーナをあてがいましょう」


「まあ、私の妹にダイアナ様の娘が嫁ぐなんて素敵ですわ」


 ミスリー第三皇女はイミリジーナ第三皇妃の第一子、ジアゼピーナは七歳の娘で第三子らしい。間に息子がいて、第四皇子のようだ。


 魅了が完了してせっかく協力的になってくれたのはよいが、記憶を見る限りイミリジーナはあまり頭がよくないように思える。自分でいうのもなんだが、第二とか第三の王妃とか皇妃なんて、美しい子孫を残すためだけのボンクラであることが多いと思う。


 私としては、もう少し影響力の強い者に嫁ぎたい。いや、影響力が強いのは皇子だと思うが、男に嫁ぐなんてできるわけない。

 やはり、第一か第二の皇女に嫁ぎたい。最初から手紙にそう書いておけばよかった…。


『イミリジーナ皇妃殿下、私は第一皇妃様と第二皇妃様にもお目にかかりたくぞんじます』

「まあ…。ジフラーナ様にふさわしいのはジアゼピーナよ」


 たしかに名前が「ジ」で始まっていて「ーナ」で終わるから親近感はあるけど、イミリジーナには「自分の子は優秀」フィルターがかかっているよう感じられるので、考え自体が信用ならない。

 しかし、まだ魅了が完了していないダイアナの言うことは聞いてくれないようだ。ダイアナが洗脳を使って一時的に命令することはできる。でも、ここでずっとやっていくジフラーナが周りの人間を動かす練習をしよう。


 ジフラーナはしばらくしゃべったりせず、普通の一歳児で通す予定だ。言葉で命令するのは難しい。その代わり、考えを伝える魔法でいくことにする。

 ジフラーナは他の皇妃や皇女にも挨拶したいと、顔で訴えた。ように見せて、考えを伝える魔法でそう伝えた。ママに言わせれば「顔に書いてある」状態である。


「まあまあ…、ジフラーナ様は他の女性にも挨拶したいと…。分かりました…」


 だいたい、子を産む専用の第二皇妃とかならともかく、第一皇妃には会いたいなぁ。ああ、うちもミスリーをママに会わせなかったんだった…。廊下で鉢合わせしてしまったけど…。

 まあ、突然押しかけて皇帝に会わせろっていうのはちょっと難しい。


 イミリジーナには、イミリジーナが私の対応をしろと皇帝に命令された記憶がある。なぜそのように命令されたのかということを考えた形跡がない。そのときの皇帝がどのような雰囲気で言ったかも覚えていない。うむ、やはりイミリジーナはボンクラっぽい。

 そういう曖昧な記憶は、超解像を使うとある程度復元できるのだが、まあ、皇帝自身の記憶に聞いた方が早い。


 ちなみに、イミリジーナは、ミスリーが予定の半分の時間で戻ってきたことに気がついていない。




 というわけで、まず皇帝と第一皇妃、第一皇女に謁見できることになった。ミスリーは付いてきていない。


 王座にはハルシオン皇帝、右隣にトリアゾラ第一皇妃、左隣にロラメット第一皇子、二つ右にルネスタ第一皇女が座っている。これが第一王妃一家のようだ。

 皇帝の座る椅子を王座といっていいのかは知らない。


 ルネスタは十四歳、ロラメットは八歳だ。

 ルネスタはジフラーナを娶るには歳が離れているが、しかたがない。

 ルネスタはウェーブのかかった腰まである金髪で、ザ・王女様である。

 トリアゾラは金髪をアップにしている。私の好みではない。あとで降ろさせよう。

 ハルシオンもロラメットも金髪。王族は金髪好きだ。


 もちろん、見かけた瞬間から魅了開始である。まずは皇帝か…。

 あれ…、魅了ってどうやるんだっけ…。相手が自分を好きになるところを想像すればよいはず…。でも、それができない。

 ああ…、男が私を好きになるところが想像できないんだ…。今まで男にかけたことないから、気がつかなかった…。気持ちがこもっていなくても、そういうアニメや映画のシーンを想像するだけじゃダメかな…。ダメみたい…。

 いくらジフラーナの魔力が強くても、イメージできないものは実現しない。精霊の適当力もいまいち働かない。


 しかたがない。

 ダイアナは魅了に何時間もかかる。まずは皇妃から数パーセントずつ、まんべんなくやっていこうかな。

 ジフラーナAは本命の第一皇女から落としていく。どうせ数分で終わるので、話しているうちに皇女も皇妃も落とせる。


 魅了と同時に記憶の吸い出しも始めている。全部吸い出すのは時間がかかるので、全員の浅い記憶からまんべんなく吸い出していこう。



「よくぞおいでになった。私はゾルピデム帝国の皇帝、ハルシオンだ」

『お初にお目にかかります。ロイドステラ王国の第二王妃、ダイアナ・メタゾール公爵でございます』


 私はカーテシーをした。あれ…。なんだか見せたくない…。相手が男だからか…。まあ、これがロイドステラの挨拶なのだからやるしかない。

 それでも、私の身体はAIの電気魔法に制御されているので、相手を嫌いだからといって礼儀をおろそかにはしない。


『この度は、ミスリー様を妻として迎え入れる許可をいただきたく参りました』


「ふむ…」


 娘が女の妻になる。誰もが最初は抵抗を感じることだ。あらかじめ聞かされているとはいえ受け入れがたいようだ。


『そして、私の娘、ジフラーナ・ロイドステラ第四王女を御国のルネスタ第一皇女に娶っていただきたく思います』


「な、なんだと」


「お父様、わたくし、この可愛いジフラーナ様を気に入りましたわ!」


 ルネスタ第一皇女の魅了はもう完了している。


「ルネスタ…」


「あなた、私もこんなに賢そうな子が嫁いでくるとは思ってもみませんでした。ジフラーナ様はルネスタにふさわしい伴侶となるでしょう」


「トリアゾラ…、お前もか…」


 あれ、なんかヤバいかも。ハルシオン皇帝は、私がエッテンザムだと確信したようだ。

 銀髪なんて関係なかった。女を魅了して女同士で結婚するというだけでエッテンザムと判断するのには十分だった。


 ハルシオン皇帝は衛兵にハンドサインを送った。兵を集める指示のようだ。


 吸い出した記憶から情報が集まってきた…。

 私がここに来る前からロイドステラがエッテンザムに支配されているということは、ほぼ確信していたらしい。

 女であるロイドステラの王が女である王妃を娶って子を産んだという噂を聞き、それを使者が確かめて戻ってきた時点で、ハルシオン皇帝の中ではエッテンザムの仕業だと確定したようだ。


 ミスリーにはそんな記憶はなかった。あれだけ愛でておいてなんだけど、ミスリーはそれほど頭の切れる子ではない。

 ハルシオン皇帝としては、エッテンザムへの餌、生け贄になれば幸いとして送り出したようだ。


 ゾルピデムにはドローンをやっていたが、ドローンは飛行音こそ魔法で消しているものの、風を出してしまうので、あまり人に近寄れない。だから会話の収集などは行っていなかった。ちょっとなめていた。


 トリアゾラ皇妃もルネスタ皇女も、エッテンザムのことを知っていたようだ。だけど、魅了の完了した今は、ジフラーナがエッテンザムでもかまわない、自分も仲間に加えてもらいたいという考えに切り替わっている。



 この場を丸く収めるにはどうしたらよいものか…。四人集まれば文殊の知恵。ウソです。同じ記憶を持った者では、同じ考えにしか至らない。いや、そうでもない。ダイアナは性欲にまみれているが、ジフラーナにはまだ性欲が芽生えていないので、ジフラーナの考えのほうがマシな結果になるかもしれない。


 とりあえず、ジフラーナAは、ハルシオン皇帝を洗脳した。洗脳なら効いた。よかった。ジフラーナAの洗脳にあらがえる者はいないのだ。

 ジフラーナAは考えを伝える魔法で、ハルシオンから衛兵に再び指示を出させた。招集した兵士は謁見の間の外で待機。指示があるまで動くな。ハンドサインではこれ以上の複雑な指示を出せない。


 ハルシオンの記憶を深く読んでいると、かなり用意周到であることがわかった。ハルシオンはエッテンザムが魅了や洗脳の魔法を使うことを知っている。自分が魅了や洗脳をかけられる前提の作戦を立てていた。

 ハルシオンが私たちに気を許すような発言をするときは、複雑な暗号的な手順に従って、そのように宣言しなければ、ハルシオンが操られていると判断されることになっている。

 兵士に外で待機させるのはギリギリセーフのようだけど…、トリアゾラとルネスタの態度はNGだったようだ…。トリアゾラとルネスタは私に操られたと判断されてしまったようだ…。


 衛兵たちは私とジフラーナに向かって剣を振り下ろす。


「「キャー」」


 トリアゾラとルネスタの悲鳴が響く。


 衛兵たちの攻撃を、ジフラーナはよけられても、私の身体能力ではよけられない。

 だけど、私には周囲を見張っている超小型のドローンが着いている。

 実際にはドローンと見せかけて、本体は影収納の中にいる。影収納の中にサーバーを置いて、そのサーバーが影収納の扉から触手や潜望鏡を出しているような状態だ。単体のドローンでは大きなバッテリーを積むことはできないが、影収納の中にはバッテリーや魔導炉を積んであるため、およそ無尽蔵の魔力で魔法を行使できる。

 この影収納は私の闇の魔力でまかなわれているため、離れた位置に移動することは大きな扉を作っている扱いになり、消費魔力が激しくなってしまう。そのため、それほど遠くに長い時間滞在することはできない。でも、普段は私の身体に待機しているため、消費は中の空間の分だけである。

 ドローンは普段、イヤリングや指輪の丸い宝石のフリをしているが、実際にはレンズだ。


 私は衛兵の剣を避けられないけど、ドローンからレーザーを発射することで、振りかざされた剣を熔解して切断した。


 ジフラーナAは避けることなく、剣の腹を親指と人差し指でつかみ、そのまま剣に穴を開けて折った。


 他にも衛兵がどんどん剣を向けてくる。謁見の間の外に待機していた衛兵も突入してきている。

 ジフラーナAは余裕で回避できるのだけど、暇をしているBとCがスカートの中から電撃を発射して、衛兵の手をしびれさせた。


 兵士が電撃でしびれていたり、ジフラーナに剣を折られたりしてひるんでいる間に、ダイアナとジフラーナB・Cで、部屋にいる衛兵や男どもを、急いで洗脳した。

 ジフラーナAは、メイドや女騎士を魅了している。




 はぁ…。失敗した…。ママは心を読む魔法を、広範囲にわたっていつも展開しているらしい。それでは情報量が多すぎて、一人当たりの心を読む速度が遅くなってしまうし、常に周りの心が聞こえているのも耳障りなので、情報にフィルターを掛けている。基本的には、誰かに対する悪意・害意と、自分に対する強い思いだけを拾うようにしているらしい。そうすることで、離れたところの危険を察知することができる。


 一方で今回、私は要人の思惑を知りたかったので、要人に集中して深い記憶を読み取っていた。そのため、衛兵の害意に気がつかなかった。こういうときにもっとたくさんジフラーナAが欲しい。BとCにも、薄緑の精霊ではなくて、メテーナの真っ白な精霊を付ければよかった…。でも、魔道回路の集積化をドリーに任せっきりだったので、土魔法使いが欲しかったんだよ。


 それはさておき、この場の者をすべて鎮圧した。男は洗脳しておとなしくさせた。ジフラーナA・B・Cが広範囲に魅了の魔法を掛けて、すべての女を魅了した。ダイアナの魅了は時間がかかるが、とりあえず指向性を持たせてトリアゾラ皇妃を魅了中だ。

 しかし、洗脳は魅了と違って単一の者にしか掛けられないし、ジフラーナAのものでも数時間しかもたない。それに、面倒なことに洗脳で命令を与える場合はジフラーナA・B・Cを区別するのだ。


『ハルシオン皇帝、私はこの城中の者と会いたく存じます』

「分かりました。おい、城中の者を集めろ」

「「はっ」」


 皇帝一家がおかしな言動を始めた場合のマニュアルは、もともと謁見の間にいた者と、待機していた衛兵にまでしか伝えられていないようだ。突然の招集命令を疑問に思う者はもういないはず。



「ダイアナ様、何かございましたか!」

「何ごとです!」


 ミスリーとイミリジーナ第三皇妃が、騒ぎを聞きつけてやってきた。招集命令を聞く前にやってきたらしい。

 うちのメイドである、リメザとポロン、メドロラとドレニザとオイラナたちも一緒だ。


『ハルシオン皇帝陛下が城中の者を集めるようです』


「いったい何が起こったのでしょう…」

「なんと、まぁ…」


 悪いけど、ミスリーとイミリジーナには何が起こっているのか疑問に思わないように、二人を洗脳しておいた。

 さきほど謁見の間で魅了したトリアゾラとルネスタや、メイドたちも同様に洗脳して、疑問に思わないように命令しておいた。


 謁見の間に皇族や帝国城勤めの者が集まりだした。第二夫人一家もご登場だ。

 集まるっていったって、謁見の間に全員は入らない。洗脳した衛兵に入り口の前で並ばせて、一人につき一分ほど待機させる。ジフラーナAは入り口に控えていて、A・B・Cが全員で待機中の者ひとりひとりをまず洗脳して、それが女の場合はA・B・Cが手分けして数分かけながら魅了していく。とりあえずはA・B・Cのどれかで数時間もつ洗脳でおとなしくさせ、少しずつ魅了を進めていけばよい。


 謁見の間にやってきた者のうち女は何をするでもなくすぐに帰される。

 残りは男だけといっても、謁見の間に入りきるような人数ではないので、皇帝の命令でこういう行事を行うのにふさわしい講堂に移動することになった。


「あなたたち、丁度いいところに来ました。この者たちを整列させなさい」

「「「「「はい」」」」」


 リメザとポロン、メドロラとドレニザとオイラナに、洗脳でうつろになっている男どもを整列させるよう指示を出した。

 ちなみに、この五人は、今起こっていることを理解しているようだ。私の作戦が失敗して、リカバリーに奔走していると分かっているので、余計なことを言わずに命令に従ってくれる。非常に有能である。



 講堂に集まったのは、帝国城にいた男が三〇〇人。すべて洗脳済み。

 講堂には皇帝一家の座る王座が四つ並んでいる。王座の側にはジフラーナAを置いている。とりあえず、ハルシオン皇帝だけ前に出てきてもらった。


「×××!」


 ジフラーナAは魔の指でハルシオンの背中を押した。同時に、ジフラーナAのスカートの中から伸びるジフラーナBとCの魔の指もハルシオンを襲う。ちなみに、ジフラーナが三人いることは隠しておきたいので、他の者にはBとCの手が見えないようには配慮している。

 そう、これはママの光の精霊メテーナから伝授されたカイロプラクティックの魔法。すべてのメタゾール領民とすべてのヒストリア王国民を魅了してしまった、ママの魔法である。

 魔法にかかった者は、あまりの気持ちよさに、その快感を得るために従順になってしまう。

 もちろん男の声など聞きたくないので、消音魔法は必須だ。


 この魔法には、ほんらいなら患者に健康で美しくなって欲しいという愛を込めなければならない。だが、私は男に対してはそのような感情を抱くことはできない。

 男の施術で込めることができる願いは、「自分に危害を加えないでほしい」とか「自分を色目で見ないでほしい」ということだけである。

 この辺りの実験は何度かやったのだが、これ以外のことを強制することはできなかった…。ジフラーナAにはママ並の光の精霊が付いているのに、この魔法はママの考えた原理が働いているためなのか、思うように改変できない。ママは何も考えていないと思うのだが、なぜかママの知識から来る思い込みのようなものが原理になっていて、それに基づく以外の効果が得られないので、非常に残念である。


 そういうわけで、私が男に対してできるのは、再び快感を得るために従順にすることと、ジフラーナに危害を加えないようにすること、ジフラーナを色目で…見ることはないか…。まあその三つだけである。


 ダイアナだってそこらのヒーラーガールズよりはできるのだが、ダイアナで同じ効果を得るためには時間も必要だし回数をこなさなければならない。それは私の嫁やミスリーで証明済だ。


 それにしても、ママの魅了・洗脳魔法があってよかった…。あまり自由度がないが、エッテンザムの魅了や洗脳と比べて、より生物学的な原理に基づいており、確実性が高い。

 エッテンザムの魅了と洗脳で安易に征服できると考えていた…。でも私は男での実験を怠っていた。

 私がママの魔法を行使して男に発動するかどうかもあやしかった。幸いなことに、「危害を加えないでほしい」とか「色目で見ないでほしい」というのは私の希望であったから発動したのだ。従順になるのは意図した効果ではなく、快感に伴う中毒効果なのだが。


 もし、ママの魔法が効かなかった場合は、もう一つ作戦があった。すべての男を女にしてしまえばよいのである。女になれば魅了できるだろう。

 でも、カルボシスティナが女になってしまったのは、薄緑の精霊を付けた十六人の娘がよってたかって、「元の形はこうあるべきだ」と願った結果かもしれない。ジフラーナAで実験していない以上はバクチでしかない。


 私は女にうつつを抜かして、慢心していたと言わざるをえない。人の心を読み、人を従えさせる力を手に入れ、神にでもなった気分だった。

 でも、とりあえず何とか治まりそうでよかった…。



 ハルシオン皇帝の施術を終えた。ハルシオンはふにゃふにゃになって動けなくなってしまったので、その辺に転がしておく。

 ハルシオンの次はロラメット第一皇子だ。


「×××」


 まだ中性的な容姿の年頃だけど、私はママのように男の()とか永遠の幼児とかいう種族を認められない。いくら可愛くても性別が男ではいけないのだ。


 それから、ジフラーナA・B・Cは第二王妃や第三王妃の息子を押していき、あとはお偉いさん、兵士や使用人など、すべての男を押していった。

 洗脳目的のカイロプラクティック魔法とはいえ、男ばかり気持ちよくさせておくのは癪に障る。せっかくだからエッテンザムの魔法で魅了済のすべての女性も気持ちよくしてあげよう。

 私は城のメイドに指示を出して、再び女性を招集した。


「「「「「あああああああああああん…」」」」」


 手が滑って、可愛くなる魔法を少し込めてしまった。そもそも可愛くなる魔法の原理はカイロプラクティックである。カイロプラクティックによって血行が良くなることで美しい肌や体型が得られるのである。


 その間に、ダイアナは並んでいる女性たちを一生懸命魅了している。ダメだ、光の魔力が尽きそうだ。




「ダイアナ様…、やらかしてしまわれたのですね…」


 シルバーがメイド服姿でやってきた。

 シルバーにはイヤホンを仕込んであったので、こちらの声が伝わっていた。シルバーは耳と尻尾を隠せていないが、このタイミングでやってきたということは、もう安全と判断したということだ。


『うむ、その通り』


 シルバーは、男どもがふにゃふにゃになって転がっており、女性がとろとろになって転がっているこの惨状と、イヤホンで聴いたあえぎ声を元に、施術が行われたと判断したらしい。

 シルバーは、カイロプラクティックで気持ちよくなった者が快感を求めて従順になることを知っているようだ。シルバーは、実は、ママの施術をいちばん受けているのではなかろうか。


「私にも指示をください」

『シルバーは、メドロラとドレニザとオイラナと手分けして、城内にまだ施術を受けていない者を探して連れてきなさい』

「「「「はい」」」」


 こうして、ゾルピデム帝国城のすべての女性はジフラーナに魅了され、男は再び快感を得るためジフラーナに従うことになった。




 ルネスタ第一皇女はジフラーナを娶ることが決まった。ハルシオン皇帝はルネスタに皇帝の座を譲り渡すこととなった。


 ハルシオン皇帝を従順にしておくためには、定期的に気持ちよくしてあげなければならない。しかし、私は定期的に男の身体を触るなんてごめんこうむる。

 まずはハルシオンを表舞台から消してしまう。

 ロラメット第一皇子も同じだ。他の王族の男もすべて、後宮でしばらくのんびり過ごしてもらう。

 人々から忘れられた頃に…、むふふ…。

 でも、それまでは気持ちよくさせておかないと、反抗されるかもしれない…。いやだなぁ…。


 ゾルピデム帝国は皇帝の権力が強い国らしい。

 私は皇帝に即位したルネスタを使って、強引にゾルピデム帝国を私好みにしてしまおうと思う。ロイドステラとヒストリアのように、甘っちょろいやり方はしない。

 私はこの国を女だけの国にしてやる!



「ジフラーナ…」

『ルネスタ様…』


 周囲が安全になったので、ジフラーナは一歳児の演技をやめて五歳児くらいを振る舞うことにした。ついでに、金髪もやめて銀髪に戻した。ダイアナも一緒にだ。


 そして、今夜はルネスタに妊んでもらう。

 ジフラーナにはまだ性欲がないので、ジフラーナでにゃんにゃんしても、ちっとも嬉しくない。だから…、


「ダイアナ様…」

『ルネスタ様…』


 ダイアナも入れて3Pすることにした。今日のために、ダイアナも魅了をがんばったんだよ。

 ルネスタはジフラーナに骨抜きになっているから、積極的にダイアナに構ってくれるわけではないけど、拒否もされないから、ダイアナは好きにニャンニャンするだけだ。間違ってダイアナが子種を作らないように、ジフラーナに見張ってもらわなければならないけど。


 もちろん、ミスリーには内緒だ。


 十ヶ月後にルネスタの子が生まれたら、女性どうしでの結婚を法律で認めて、女性どうしの子作りを解禁する。この流れはロイドステラやヒストリアと同じだ。

 でもそのあとの流れは違う。そのときまでにジフラーナは準備を進めておこう。



 あとは、ゾルピデムの帝国城の地下までドリーにトンネルを掘ってもらっているので、魔力波通信のアンテナを設置してきた。これで、フルニトラ経由でロイドステラと通信できるようになって、ダイアナがロイドステラに帰ってもダイアナとジフラーナの同期ができる。


 こうして私は、ジフラーナA・B・Cとリメザとポロンを残して、ロイドステラに戻ることにした。


「ルネスタお姉様にジフラーナ様を娶っていただけて良かったですね」

『はい。ゾルピデム帝国の方は良い方ばかりでした』

「うふふっ」

『それでは、ロイドステラに戻って私たちの幸せを築きましょう』

「はい!」


 私はミスリーの嫁入り道具を魔道馬車に積み込んで、ロイドステラに発った。


「ダイアナ様…、お慕いしています…」

『ミスリー…』


 ロイドステラに戻る間に幸せを築いてしまった…。

■ダイアナ(十二歳)、ジフラーナA・B・C(一歳)

 現在、金髪に染めている。


■メドロラ、ドレニザ、オイラナ(十四歳)

 元、第五世代のヒーラーガールズ。

 ロイドステラ東方開拓の働きが認められ、ダイアナにメイドとして召し上げられた。


■ミスリー・ゾルピデム第三皇女(十二歳)

 金髪。第三王妃の娘。金髪。ザ・王女様風。


■イミリジーナ・ゾルピデム第三王妃

 ミスリーの母親。


■ジアゼピーナ・ゾルピデム第四王女(七歳)

 ミスリーの妹。イミリジーナの第三子。


■ハルシオン・ゾルピデム皇帝

■トリアゾラ・ゾルピデム第一王妃


■ルネスタ・ゾルピデム第一皇女(十四歳)

 金髪。


■ロラメット・ゾルピデム第一皇子(八歳)


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