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28 禁断の魔法

 日々はすぎ、新しいお嫁さんたちとの生活にも慣れてきた。


 マイア姫とヒルダとクレアには、メタゾール邸に専用の執務室を用意してあって、大きなディスプレイによるビデオチャットがそれぞれの領地の執務室と常につながっている。それぞれの領地の屋敷の執務室に訪れれば、まるでその場にマイア姫やヒルダがいるように話をできる。

 だから、基本的に三人は執務室で仕事をしているのだけど、別に常に事務仕事があるわけではないので、ずっと執務室にこもっている必要はない。

 重要な会議のとき以外は、三人は学校に通ったり、私の治療院を見学したりしている。緊急な呼出は、携帯電話経由でやればいいだけだ。



 ロザリーはもちろん、学校に通っている。ただ、専門分野を学ぶというよりは、領民にどういうことを学ばせるべきなのかというのを見定めている。領地に帰って自分が教師をやるわけではないので、専門分野を学ぶ必要はそれほどないのだ。


 聖女の守り手の五人も、仲良く学校に通っている。近接戦闘職の三人も魔法を練習しているし、魔法職の二人も近接戦闘を練習したりしている。


 ロザリーと聖女の守り手の五人は、闇魔法の習得用の恥ずかしい動画を見て、闇魔法を開花させた。また、理化で電気を学び、電気魔法も開花させた。



 ドリーも、学校に行っていたりする。ドリーの木に実らせるものをドリーに要求するときに、分子式や性質を説明するのに、ドリーが物理化学を理解できると都合がいいようだ。

 学校に通っている領民のうち、私より若い子のほとんどは、ドリーを見ることができる。乳児の魂百まで計画により、魔力が高いからだ。



 私はダイアナに頼まれた素材を探す冒険に出たり、治療院を開いたりしていて、あまり昼間にお嫁さんたちに構ってあげていないけど、朝食、夕食、お風呂、ベッドはご一緒しているし、寂しい思いをさせている子はいないようだ。


 それに、私もときどき学校に行っている。治療魔法と人体構造の授業は、いまだに私が講師だ

 逆に、ダイアナの追加したカリキュラムは、工学系大学の専門分野なので、私も生徒として学ぶべきことが多い。



 といっても、教師はディスプレイやタブレットの中のCGの私だ…。っていうか、おかしな機能がどんどん追加されていく…。

 タブレットにインストールされたCGの私は、成績の良い子に対しては、デレる機能があるらしいのだ…。それがみんなの成績向上に効いているらしい。


 さらに、成績の良い子には、お触り機能が解禁されるらしい。

 実は、初期の状態で胸や脚などをお触りしようとすると、タブレット画面から静電気が発せられて、触れないらしい。以前ロザリーが触っているのを見たけど、あれは手だったかなぁ…。

 それで、成績が上がっていくと、だんだんお触りできる回数が増えたり、あらぬところを触らせてくれるようになるらしい…。


 あれ…、それって…、これがいくら本物の私じゃないからといって、男に触れるのは嫌なんだけど…。

 と思ったら、男はいくらがんばっても、私がデレるようになるだけで、いつまでもお触りさせてくれないらしい。はあ…、助かった…。


 スマホやタブレットは、魔紋認証になっている。

 魔紋というのは、指紋のようなもので、すべての者が持つ魔力の固有の情報であり、個人を特定可能で、偽ることもできないものだそうだ。魔力で高周波の通信技術を確立したときに、一緒に発見したらしい。人それぞれが持つ、高周波で微量の魔力の揺れみたいなものだということだ。

 タッチパネルセンサー自体が、登録した魔紋にしか反応しないようになっていて、他人が画面を何回か触ろうとすると、自動でロックがかかるらしい。

 だから、他人に貸すことはできない。女性用の端末を男性に貸して、お触りさせることはできない。相変わらず無駄に高度すぎる。


 CGの私アプリは、メタゾールとプレドールとテルカスとマイア姫の領地または、ヒストリア王都で学校に通っている者の端末には必ずインストールされている。なので、あんまり変な機能を入れないでほしい…。




 前世の記憶にある植物をドリーの木で手に入れられるようになって、農業は一変した。

 ドリーの木自体は、一週間で二十日分の食料を実らせられればいいところなので、ドリーの木では種や球根を入手するのが主体となっている。

 さらに、ドリーは植物の生長を促進する魔法を知っていた。ドリーの木と同じように、最低でも一週間は待たないと、バカ味のものができてしまうらしいけど、最初はこれで大量生産した。

 でも、あんまりドリーに頼り切ってばかりだと、農民が自立できないので、自分たちで食べる分だけにして、ほどほどにしておいた。

 植物の生長促進魔法自体は、植物の生態をある程度理解しており、土の精霊の育っている私とダイアナなら使えた。これは、理科の授業で優先的に教えるべきだ。土魔法の得意な農民が使いこなす分には素晴らしい!


 はっきりいって、私よりダイアナのほうがドリー本人とドリーの木を使いこなしている。食材となる植物はもちろん、香水や染料に使える花や、化粧品の材料、バイオプラスチックの材料など、もはや何でも来いという感じだ。

 ダイアナの前世は、会社に行く以外は、引きこもってゲームやアニメばかりの喪女ではなかったのだろうか。



 そんなこんなで日々はすぎていき、私は十四歳になった。

 そして、今年の税収は、やらかしてしまった。


 ガラスの宝石やシルクのドレスなどは、プレドールとテルカスでも作れるようになってしまったので、値段が落ちてきていた。今年の経済成長率?は去年に比べると落ち込むだろうと思っていた。

 でも、ドリーの木を元にした産業がヤバかった…。食料はもちろん、酒、化粧品、香水や染料、シャンプーやコンディショナーなど、ダイアナがどんどん開発していき、それらの売り上げによって、前年の収入の十倍を軽く超えてしまったのだ…。


 売り上げの一割を、当然、王国に納税している。その額は、王国の税収の九十五パーセントを占めている。私が王国の税収を、一人で二十倍にしているのだ。

 ちなみに、残りの五パーセントのうち、プレドールとテルカスとマイア姫の領地を合わせたのが二パーセントで、他の数十領を全部合わせたのがもう三パーセントだ。

 信じられないような税金を私がバカ正直に納税しているものだから、当然、王国も潤っているのだ。


 もちろん、私ばかりがお金をため込んでも何も意味がないので、じゃんじゃん放出している。

 私というよりはダイアナが金に物を言わせて、国中から金属や工業資源を買いあさっている。

 ハンターギルドにも採集依頼を出している。半導体とか、この世界の人々には意味の分からないようなものも、原子の構造とかをイメージして土魔法で採集できるように、採集方法の説明付きで依頼を出している。


 プレドールとテルカスには、私が投資しまくっているから結果が出るのは当たり前なんだけど、マイア姫に投資することは許されていない。でも、私が国の財政を爆上げしているおかげで、国からマイア姫に与えられる予算も上がっているのだ。だから、マイア姫も学校や医療施設に投資できるため、それなりに効果が出ている。

 ただし、予算増額はマイア姫に限ったことではなく、他の王族の領地経営練習・試験でも同じことだ。それうまく使えているかは知らないけど。



 そんな巨額納税者の私は、十二年ぶりに陞爵して、侯爵になってしまった…。いや、陞爵なんて、一生に一度もないのが普通だと思う。二度も陞爵した私はおかしいだろう。


 陞爵で王城に赴いた際には、王の背中をポチッと押して、寿命を延長してきた。


 でも、今回の功績はドリーの魔法とダイアナの発想に寄るところが大きい。私はちょっとした香辛料の料理とかお菓子しか作っていないんだけど…。



 貴族はお家ごとにマーク、というか家紋っていうのか、がある。メタゾール家は、ボートのような小さな船のマーク。

 まあ、この世界には、私が大きな船を作るまでは、ボートのサイズの船しかなかったのだから、当然なのか。それにしてもダサいんだよ…。

 それで、家紋を囲っている円の色が爵位を表すものだ。伯爵のときは緑だったけど、侯爵になって青になった。

 陞爵したときに青い円で囲われたバッジを新しくもらった。バッジは王からもらえるんだけど、馬車に入れたマークは、自分で緑の円から青の円に替えなければならない。



 陞爵したら、また新たな領地とか言われたけど、飛び地なんていらない。だから、またメタゾール領付近の誰の領地でもない場所を与えられたけど、そもそも前回陞爵したときも、どこまで拡張していいとか明確に言われなかったから、かってに周辺を農地として広げていたりする。

 メタゾールから農地を耕しに行くのも大変だから、そろそろ農村を新設していいかもしれない。



 町というのは領地にたいして必ずしも一つというわけではない。男爵領や子爵領なら、たいてい町が一つだ。いや、メタゾールとプレドールとテルカスは、当初は町と呼べるようなものではなく村でしかなかった。でも、いまでは三つとも立派な町だ。というか、近代的な街になっている。


 伯爵領以上になると、当主の住む町の他に、町か村があるところも多い。メタゾールは伯爵領なのに、今まで町一つでやってきたのが少しおかしかった。

 というのも、普通、町といったら、魔物の驚異を防ぐために高い壁で囲まれていて門から出入りするものなのだ。村でさえちょっとした木の柵で囲われている。だから、町や村というのはかってに拡張できないのだ。

 ところが、メタゾールには魔物の驚異がないので、壁で囲う必要がない。だから、人が増えたら領民がかってに周りに家を増やして、かってに町を拡張していったりしていた。というかむしろ私が率先して町の周りに建物を増やしていった。だから、メタゾールには町を拡張するということができたため、別の町を新設する必要はなかったのだ。


 だから今回も、メタゾールの周りの土地をもらったなんて何の意味もない。

 メタゾールからプレドールまでは一〇〇キロくらいあったのに、農地を拡張しまくってていつのまにか農地の端からプレドールまでは五〇キロになっていた。

 でも、そろそろ魔物のいる地域にさしかかるので、壁を作った方がいいかもしれない。




 何でも開発してしまうダイアナだけど、いまだにセレスとカローナとレグラと一緒に暮らす目処は立てられていない。

 影収納をワープホールのように使えないことはないのだけど、必要な闇の魔力が多すぎる。闇の魔力がドリーの土の魔力くらいあれば、気軽にヒストリア王都まで行けるのかもしれないけど…。


 セレスとカローナとは毎日とは言わないけど、よくビデオチャットをしている。

 ちなみに、レグラは私の中ではお嫁さん枠なのだけど、本人は遠慮しているのかなぁ。ビデオチャットでカメラの奥の方には写っているけど、いつももじもじしているだけで話してはくれない。


 セレスとカローナとレグラとは、いまだに一ヶ月に一度しか会えなくて、お互いに寂しい。


「ねえ、セレス、大丈夫ですか?顔色が悪いです。ヒーラーガールズに見てもらいましたか?」

『だ、大丈夫よ…。見てもらったわ。政務の疲れだろうって…』


 ヒーラーガールズは治療魔術師としてはこの世界の最高峰をはるかに凌駕しているけど、病気や疲労回復についてはまだちょっと足りない。こんなとき、すぐに私が行ければな…。


「そうですか。カローナ、セレスを支えてあげてくださいね」

『え、ええ…。わ、わたくしがいつも見てますわ…。大丈夫ですって。タブレットのアンネも疲労だと言ってますもの…』

「えっ…」


 何それ…、病気の診断機能なんてあるの…。


 だいたい、セレスもカローナもなんか態度がおかしい。とくにこのカローナの雰囲気はどこかで見たような…。

 ディスプレイ越しでは心を読めない。大事な人たちの心を積極的に読もうとは思わないけど、側にいれば伝わってくることもある。二人が話してくれるのを待とう。




 そんなこんなでやってきた月一回の訪問日。船の性能も日々進化しているし、シルバーの恒星間ワープモードもあるので、今では十五時間で行ける。


「ごきげんよう、セレス、カローナ」

『ごきげんよう、セレス、カローナお母様』


 今回はヒストリア王国での改革を進めるため、ダイアナも連れてきた。

 なんだ、ダイアナもちゃんと言えるじゃないか。カーテシーとかできないけど。


 セレスとカローナとレグラのドレスはミニスカートだ。ヒストリアは王家の経営する仕立屋でミニスカートとパンツの改革を進めているので、広まりが速いのだ!

 だけど…、


「ごきげんよう…、アンネ、ダイアナ…」

「ちょっと、ご機嫌ではまったくないじゃないですか!」

「ほんとうにただの疲れよ…」


 セレスは気分が悪そうだ。

 セレスには体中にうっすらと黒ずみがある。子宮の部分を除いて。これは、自分の身体でも体験したことだから分かる。


「おめでた…でしたか…」

「アンネにウソはつけないわね…」


 妊娠したなら、ミニスカートでおなかを冷やさないほうがいいなぁ。まあ、ヒストリアは暖かいから大丈夫かな。


「ごめんなさい、アンネ…。ほんとうはタブレットのアンネにもそう言われていたんです」


 思い出した。カローナの表情は後ろめたいことがあるときの表情。

 っていうか、なにそのタブレットの機能…。妊娠検査薬?自動でやってくれるの?それともカメラで見ただけで分かるの?マシュマロのロボットに診断機能があったような。


「カローナ…、あなたの子ですか?」

「たぶん…」

「また記憶がないのですね」

「はい…、ごめんなさい…」

「いえ、責めているわけでは…」


「私もないのよ。ただパンツが脱がされていただけ…」

「やっぱりそうなんですね…」


「最近寂しそうな顔をしているセレスを見ていて、いたたまれなかったんです…。だからきっと…」


 デビュタントパーティの夜、私は前世のことを思い出して、寂しい思いをしていた。

 その翌日、私はパンツをはいていなかった…。やっぱりカローナに脱がされて…。

 カローナは、好きな人が寂しい思いをしていると…。無意識に妊ませてしまうのは、少しマズいのでは…。

 


『実は録画がある』

「えっ…」

『タブレットとスマホには、どちらにも全周囲カメラが付いているので、部屋の中にあればどのように置かれていても、使用者に危険がないか見守るようになっている。録画もされている。

 容量問題で、フル画質で保存される期間は一ヶ月。それ以降はタイムラプス状態にして残すようになっている』

「マジで…」


 ところどころ専門用語があって理解できないけど、それって常に録画監視しているってこと?一生残るの?


『それで、セレスとカローナお母様のスマホとタブレットはそのときこの部屋のスタンドに置いてあったから、ちょっと遠いけど綺麗に撮れてるよ』

「知ってたの?」

『うん』

「そんな、親を監視するようなこと!」

『最初は録画したものを見返すつもりはなかったけど、タブレットとスマホには体調管理機能があって、セレスの体調不良は私に報告された。少し遡って毒でも盛られていないか調べようとした。そうしたら、見つけた』

「それって子供が見ちゃいけないやつだったりしない…?」

『自分がどうやってできた生物なのか気になる。私には知る権利がある』


「ダイアナはわたくしたちのことを見守ってくれていたのね…」

「嬉しいわ。体調管理機能は領民みんなのタブレットに付いているの?ダイアナは思いやりがあるのね」

『そういうわけではないけど…』


「それで、わたくしが覚えていない間のことが記録されているのなら、見せてほしいわ」

「あい」『どうぞ。みんなのタブレットに一時的に見られるリンクを送った』


 監視映像には、私が予想したとおりの出来事が映っていた。カローナはセレスのパンツを脱がして、指先に液体を生成して、それをセレスに…。


「もう、カローナったらエッチねぇ」


 セレスは嬉しそうな顔をしてカローナをからかった。


「わ、わわわ、わたくしは水を生成していますの?」

『右上のメニューから、魔力の流れを重畳表示するモードがあるから選択して』


 なにその機能!魔力も録画できるのか!魔力重畳モードにすると、魔力と精霊が一緒に映るようになった。


「こうかしら。あら…、白い光…。使っているのは光魔法なのですね…。やはり、エッテンザム家の娘では禁忌となっている光魔法を学んだから…」


『カローナお母様が生成したのは、自分の遺伝子から作った精子。それもX染色体のものしかないから、女しか生まれない。

 これは、魔法というものが術者の願いを叶えるということを考えれば自然なこと。

 エッテンザム家の者が女しか愛せないということから、カローナお母様は娘ができることを望んだ。だからX染色体を持つ精子のみが生成されたと考えられる。

 そして、カメラの位置が悪いのでよく分からないけど、カローナお母様はセレスに接触するときも何か光魔法を使っていたから、それは着床する確率を高めるものかな。何の根拠もないけど。

 逆に、エッテンザム家で男と交配しても男ができにくいというのは、Y染色体の精子の着床を防止する魔法でも無意識に使ってたりしてね。

 カローナお母様の小さな光の精霊が、そのような漠然としたイメージで染色体まで操作するという高度なことをやってくれるのは、やはりエッテンザム家という特殊な事情があるからだと推察される』


 四歳になってもメイドのリメザにだっこされたままの幼女が、生々しいことを平然というのはやめてほしい…。

 そりゃ、人体の知識の授業で、私が学校で教えてはいるけどさ…。


「なるほどそれが、エッテンザム家の者が昔、女だけの国を築いていた原理なのですわね」


『それで、精子の成分や遺伝子の知識があれば、ある程度光の精霊が育っている人なら誰でも作れるはず。精巣が必要なワケでもないから、年齢も関係ない。

 ほら、私だって作れる。ママだって実は作ったことあるんじゃない?』

「わああああ、もやめようよ、ダイアナ…」


 私は、女どうしで子供を作る魔法を知っていながら、みんなには知らないと言い続けていた。


『さらに、遺伝子サンプルさえあれば、他人の精子もできる。はい、これはそこに落ちてた金髪から作った精子。ママ、いる?』

「もうやめなさい!」


『逆にいうと、卵子も作れるんだけど、胎盤がないとどうしようもないし、体外受精の技術はないから、男同士で結婚す……』「いででで…」


 私はダイアナの頬をつねった。すると、つねられて変形した口から思わず声が出てきた。

 なんということを言っているのだ、この幼女は。


「すべての女性が女性同士で子供を作れるということですか?」


『そう。セレスがカローナお母様の子を授かったことを公表するには、女どうしで子供を作れることを国民に知らしめる必要がある。

 そこで私はヒーラーガールズを同性愛の伝道師に仕立てようと思う。あの子たちの治療院で女性同士の不妊治療を扱おうと思う。

 あの子たちくらい光の精霊が育っていればできると思う。人体の知識に関しても申し分ない。

 女性どうしの婚姻をセレスが法で認めて、国民女性全員が女性どうしで子供を授かれるようにすれば、女性の同性愛がいっきに広まる!』


 ダイアナは口も動かさないで何を熱く語っているんだ…。本来、女性どうしで不妊なのは当たり前だ…。治療じゃないだろう…。まあそこはどうでもいいか…。


 女を愛する女だけの国…。私も求めている理想郷だ。

 だけど、何度もいうけど、私は男を嫌いなわけではないのだ。女が女を愛するようになったら、男を愛する女が減って、ひんしゅくものなのではなかろうか…。

 いや、私の周りには女の子を好きな女の子しかいないからときどき分からなくなるけど、本来、本能的に女は女でなく男を好きになるはずだから、そんなに問題にならないかなぁ…。

 理想郷を作るなら、既存の国を改造するのではなくて、一から作りたいなぁ。


『これはヒストリア王国だからできることであって、ロイドステラ王国ではできない。ヒルダとクレアはもう、ずっとアンネママの子が欲しいと言っている。マイア姫に早く頑張って王になってもらわないと、いつまで経ってもヒルダたちに精子をあげられないよ』


「ちょっとダイアナ…、もうやめてよ…。せめて、子種って言ってよ…」

「やめてよアンネ…、子種なんてはしたない…」


 えっ…。この世界に精子という言葉は存在しなかったので、医学・生物の学術用語として新たに作ったんだ。だから、セレスにとっては子種のほうがはしたないのか…。いや、精子は生々しいというか…。



「ダイアナ…、あなたって、すごく明確なビジョンを持っているのね!」

「すごいですわ…。わたくしだって、ずっとセレスと正式に結婚したいと思っていたのに、行動できずにいました…」


『今回はカローナお母様が行動しちゃったのが発端だけどね』

「ちょっと…、ダイアナったら…」


『できちゃった婚…からの、できちゃった法。後手に回っているけど、今ならセレスの支持も高いし、聖女の力添えがあれば、どんな法案でも通せるでしょ。

 セレスは身重だからカローナお母様が頑張ってね。責任取ってね』


「わかりましたわ…。自分の娘に諭されるとは…」


 立っているものは親でも使え…。私はいつもダイアナにいいように使われているけど、カローナまで使われてしまうとは…。

 ダイアナはいつもだっこされているばかりで立たないからしかたがない…。



 これでもダイアナは四歳になって少しは歩くようになってきたんだよ。でも、エッテンザムという種族の血が濃いのか、九割以上を身体強化の念動力的なものに頼って身体を動かしている。

 おかげで、ほとんど筋肉が付かず、生まれたての赤ん坊のようにぷにぷにだ。それなのに、四歳ですでに女らしい体つきになりつつある。




 セレスの身体は、子宮に血液が集中していて、他の内臓があまり動いていない状況。そのおかげで、食べ物を受け付けず、疲労が回復しにくい状態。私はこれを軽減してあげる。

 いつも以上にマッサージして、内臓が動くようにしてあげよう。もちろん、子宮への血流が疎かにならないようにする。

 私みたいに九歳で妊娠したわけではないから、身体がそれなりにできあがっているから、まだ余裕がある。セレスが身体を鍛えているというのもプラスだ。


「はぁ~…。楽になったわ」

「無理は禁物ですよ。激しい運動をすると、赤ちゃんが死んでしまうかもしれません。

 もう少ししたら、学校で教えているストレッチ体操を再開しましょう。

 食事は消化によい流動食がいいです。そうだ!良いものを持ってきました。リゾットを作りますね!」


 米を持ってきたんだ。というか、影収納に常に入っているんだ。

 厨房を借りて、リゾットを作った。米を炊いて、少し柔らかめに煮て、食欲の進むハーブと少量の塩で味付けして、できあがり。


「これなら食べられるわ!」

「食べ過ぎ注意です。胃袋の稼働率がいつもの二割くらいだとでも思ってください」

「はーい」


 レグラと城の料理人にリゾットの作り方を教えた。持ってきた米は三キロしかないけど、ハーブなどとともに材料をすべて預けた。


「ねえ、アンネの母乳なら飲んでいいかしら…」

「そうですね…、赤ん坊の飲み物だから胃の負担は少ないでしょう」


 もうすぐ母親になる赤ちゃん。

 私も同じだったなぁ。私とお母様の母乳はいつまで出るのだろうか。



 はぁ…。セレスとカローナと暮らせる目は遠のいたな…。

 ヒルダやクレアは、私との子供を望んでおり、もうそろそろ子供を産める身体だ。でも、ダイアナの言うとおり、法整備を先に進めたほうがいい。

 私との子ということを理解してもらえないと、どこの馬の骨との子か、ということになってしまう。

 逆に、私と子をもうけられることがはっきりすれば、政略結婚として有効だから、スムーズにことが運ぶだろう。




 こういうのを実験というのははばかられるのだけど、ヒーラーガールズが他人の髪の毛から精子を作って、他の人に着床させるという実験を行った。

 ダイアナの提案どおり、ヒストリアで女性同士で子供を作ることを国として認め、推進するための実験だ。


 被験者は、子供を欲しがっているメイドさん十人だ。元エッテンザム家のメイドで、現在はヒストリア王城で働いている。五人は精子のための遺伝子提供者、残りの五人には普通に卵子と胎盤を使わせてもらう。

 エッテンザム家が女性のみの国を作っていたという話は割と知られており、エッテンザム家の者はメイドさんの憧れだった。

 今回、そのエッテンザム家の者と同じように女性どうしで子供を作れるかもしれないということで、率先して協力してくれた。類は友を呼ぶというか、やはりカローナやエッテンザム家の者は、女性とにゃんにゃんしたい女性を集めるようなフェロモンを出している気がしてやまない。 


 精子の生成には、精子の構造とかX染色体とかを、ダイアナがイメージCG動画を作ってヒーラーガールズに指導した。

 着床を促進させる魔法も、ダイアナの指導の下に使ってみた。


 そして一ヶ月後、月経が来ないことや、スマホのカメラによる診断…、ハイパースペクトルカメラというらしいけど、それと、私の黒ずみによる子宮への血流の集中などから、メイドさんたちの妊娠を確認。

 メイドさんたちの身体の調子も一緒に整えてあげることなった。


 ヒーラーガールズの同性愛の伝道師としての第一歩だ。これでちゃんとした子が産まれたら、一般開放しよう。

 こういう人体実験は、やっぱ躊躇するなぁ…。でも、女性社会を作るには必要なことなんだ。



 今回の滞在は、ヒストリア王国での改革を進めるため少し長めに取ってある。

 今は王都にしか発電所や魔道炉、電線や魔力線を整備していないが、今回は王都の隣の領と、最北端のバステル男爵にもインフラ整備を進めようとしている。

 だから、王都付近を開発しているときは、王城に戻ってセレスやメイドさんたちを見てあげることにした。


 もちろん、ヒストリア王国内の領地を回って、領民のマッサージ十秒コースをやっていくのも忘れない。まだまだ全部の領地を回るのには時間がかかるけど。




「アンネお姉様ぁ。遅かったじゃないですか!」

「実はですね…」


 メタゾールに帰ってすぐにこれだ。マイア姫がドッジボールのように飛んできて、私の胸でバウンドした。でも私はドッジボールが得意なので、十二歳のマイア姫を難なく受け止められる。


 私の胸も、スイカと呼べるほどになりつつある…。お母様ほどではないけど、正直いって邪魔だ…。だけど、お母様が大きな胸を邪魔であることに喜びを感じていたように、この邪魔さにはなぜか快感がある…。


 ちなみに、カローナのスイカはお母様のスイカを超えていた。これでまだ十四歳だというのだから、あと数年後にはどうなっているのだろう。

 エッテンザム家というのは、美人でスタイルの良い女の子たちがキャッキャうふふする種族なんだな。やはり私も混ぜてもらいたい。もう混ぜてもらっているか。その結果がダイアナだった。うーん、記憶がないのは実に残念だ。



 それはさておき、マイア姫や他のお嫁さんたちに、セレスのご懐妊について話した。すると当然、


「アンネお姉様の、欲しいです!」

「私もアンネの子供、欲しいわ!」

「私も!」


「アンネお嬢様と子供を作れるなんて、何という幸せ!」


 食いついてきたのは、マイア姫とヒルダとクレアと、そしてアマージ。


「説明したでしょう。三人はマイア様が王になられて女性どうしの婚姻に関する法を整備されてからです」


「ちっ」

「貴族って面倒ね」

「ちぇー」


 お姫様が舌打ちしやがりましたよ。


「私はいいんですね!」

「それは…」


 アマージは平民なので、誰と結婚しようが誰の子供を産もうが、何の届け出も必要ない。

 いや、メタゾールや開発中の嫁領では、タブレットなどを配る都合上、戸籍管理してるけど。 でも、とにかく国に届ける必要があるのは貴族の正式な結婚と正式な子孫のみだ。貴族当主が妾扱いのアマージとの子をもうけても、何も問題がない。 


 アマージは十九歳だし、肉体的にも何も問題がない。


「いいですよね!」


 問題は他のお嫁さんが納得するか…。幸いなことに、聖女の守り手でアマージ以外は、私との子に興味はなさそうだ。

 でも…、


「むきー!私を差しおいて妾の子なんて、打ちく……むぐぐ……」

「ちょっと、ダメだよ、マイア様。みんな萎縮しちゃうよ」

「暴れないで!」


 今、打ち首って言おうとした…。そこでクレアがマイア姫の口を押さえて止めた。

 さらに、アマージに襲いかかろうとしているマイア姫を、ヒルダが後ろから押さえている。


 マイア姫は王族だけど、とくになにか権限を持っているわけではないのだ。今はただ、王族に無礼を働くと、権限を持っている王が許さないということだけだ。

 マイア姫の場合は、将来王になったときに、強権で過去を蒸し返して無礼討ちにするとかはあるかもしれない…。

 でも、そんな暴君ではないと信じている…。それじゃ、第五王子と言っていることが同じだ…。


 マイア姫には、母乳とマッサージで機嫌が良くなっている隙を突いてみんなのことを紹介しただけであって、クレアやロザリーのように腹を割って納得してもらったわけではない。

 こういうちょっとしたことで洗脳が解けてしまう。

 …洗脳だなんて…、私の母乳もマッサージもそういう薬や術ではないってば…。もう、声を上げさせたり、記憶を飛ばしたり、洗脳したりと、そんな用途で使っちゃダメじゃん…。


「アマージ…、今は諦めなさいよ…」

「そうだな、今はな」

「今は危険」

「僕も、お嬢様方のあとにするよ」


 えっ、たんにお嬢様方を差しおいて先にもらうのは無理って思っているだけで、実際にはみんな欲しいのか…。

 あれ…、お嫁さんが、えっと…十三人だっけか…、十三人いるってことは、子供も十三人できるってこと?


 あ、でもみんな子供が欲しいってことは、ちゃんと自分で育てるんだよね?そりゃあ貴族はメイドさんに基本的な生活を見てもらえるかもしれないけど。

 まあ、アマージなんかは、大事に育ててくれそうだな。

 もちろん、私と一緒に住んでるんだし、父親側である私が養育費を出すけどさ。


 それに、妾との子は法的に何の意味もなさないけど、養子にしてしまえば一応は貴族の扱いになる。というか、ダイアナがその状態だ。私は正式な結婚をしておらず正当な子孫はいないから、今はダイアナが養女として爵位第一継承権を持っている。


「えっと…、先ほども言ったとおり、この件はマイア様が王になられて、女の子どうしの結婚が正式に認められてからにしましょう」


「わかりました!アンネお姉様との子供のために、私がもっとがんばります!」


 はぁ…。なんとか丸く収まった…。




 さて、ロザリーがメタゾール来てから一年が経った。ロザリーの帰る日がやってきた。

 ロザリーは基礎的な理数系や魔法の知識を身につけた以外は、メタゾールやプレドールが歩んできた改革を学んでいた。


「みなさんとはしばしお別れですね」


 今回、ロザリーは一通りラメルテオン領の改革を立ち上げたら、またメタゾールに戻ってくる。


「まあ、いつでもお話はできますよ」


 今回は、魔力波通信のアンテナも設置するのだ。そうすれば、ヒルダたちと同じようにリモート勤務できる。


 私とダイアナ、そしてマイア姫とロザリー、そしてドリーで、恒星間ワープモード付きの馬車に乗って、シルバーで四時間。マイア姫の領地に到着。

 まずはマイア姫の領地に、ラメルテオンの方角へ向けたアンテナを仮設置した。

 塔は建ててあるから、アンテナの追加だけだ。


 ちなみに、マイア姫はメイド一人と女騎士二名しか連れてこなかった。ぞろぞろいたら邪魔だし。やっと分かってくれたか。いや、でもメタゾールまでの道のりは危なかったのでは…。


 そして、五時間掛けてラメルテオン領に到着。辺りは真っ暗だ。


『ママ…、ここ、寒い…』

「前世の母国の最南端と最北端くらい距離があるからね」


 ダイアナは初めて味わう気温だろう。十度くらいかな。これでも、メタゾールからの距離を考えると暖かいのだけどね。



「これはこれはマイア姫様、よくぞおいでくださいました」


 アゴニス・ラメルテオン侯爵に出迎えられた。


「ごきげんよう、アゴニス・ラメルテオン侯爵。お世話になります」


 私は片脚を交差させ少しかがみ、スカートを少し持ち上げてカーテシーをした。


「アンネリーゼ・メタゾール侯爵、このたびは陞爵おめでとうございます」

「ありがとうございます、アゴニス・ラメルテオン侯爵」


 貴族の陞爵や世代交代は、王国から各領地の貴族当主に手紙で知らされることになっている。

 でも、九年前にヒルダと初めてお茶会したとき、、ヒルダの父親、つまりワッセル・プレドール子爵は、私が爵位を継いだことも、陞爵したことも知らなかったなぁ。まあ、うちのお父様と同じで、あの人が何もできない人なのは、あとで知ったことだ。

 それに対してアゴニスはできる人だ。ロザリーに丸投げしないで、一緒になってラメルテオンを発展させてくれると信じている。



「ロザリーもよく帰ってきた。その…、綺麗になったな…」


 当たり前だ。ロザリーは私が育てた。お肌はすべすべ。髪つやつや。スタイル抜群。

 さらに、今ではダイアナの開発した化粧も使っている。私もダイアナもケバいのは嫌いだから、ほんのりピンクのチーク、ほんのりピンクのリップ、ほんのりアイシャドーのナチュラルメイクだ。これだけで、王族を余裕で超えた、この世のものとは思えない美人になった。

 それに加えて…、ミニスカートとガーターストッキングの間から覗く魅惑的なあんよ。ロザリーが帰る前に、贈り物としてミニスカートのドレスを仕立てた。


 そしたら、マイア姫もくれって。まあ、これくらいならあげてもいいよね…。


 そんなわけで、アゴニスは、ロザリーの脚はもちろん、私とマイア姫の脚にも、鼻の下が伸びそうなのをずっとこらえているのだ。頑張ってくれ、そこで負けたら、できるやつのイメージが崩れる。


 


 今晩はラメルテオン邸でおもてなしを受けた。


「ロザリー…、あなた…どうやったらそんなに綺麗になれるの…」

「お、お母様、はしたないですよ…」


 ラトニー・ラメルテオン侯爵婦人。美しくなりすぎたロザリーを前にして、ラトニーの食いつきが酷かった…。

 やはり、メタゾールから商人を出さないと、ラメルテオンには品物は届かないか…。

 翌日化粧をお試ししてあげるということで、今日は矛を収めてくれた。



「アンネお姉様、美味しくなかったです…」

「部屋でくつろいでいるときでも、そういうことを言うものではありませんよ…」


 夕食は塩味の豚テキとか。

 私としてはラトニーの食いつきが酷くて、料理の味がしなかった。

 ちなみに私が暴落させかけたオーク肉とかの価格は元に戻っているらしい。


「アンネお姉様ぁ…、おトイレが…」

「明日までの辛抱です…」


 ラメルテオン邸では汚物の吸収・分解のおまるの魔道具がちゃんと使われている。ハンター活動していたときも町が汚物臭いということはなかったので、領内でもちゃんと使われているのだろう。

 しかし、今やメタゾール領は温水洗浄付き便座の時代。原始的なトイレでは我慢ならないのだ。前回だってテントのトイレしか使わなかった。


「お風呂が…」

「今日は諦めましょう…」


 お風呂なんて、王族でもたまに入れればいいのだ。侯爵家にもそんなものはない。

 まして、ラメルテオン侯爵は、私腹を肥やすタイプではないので、そんな贅沢品があるわけもない。

 でも私たちはお風呂に入らない日など一日たりともなかったのだ。


「魔道馬車の扉を閉じると、この部屋に魔道馬車への入り口を開けたりはしませんか?」

「それです!」


 ナイス!ロザリー!


 その日、マイア姫と私は別々の部屋を用意されたにもかかわらず、私の部屋に魔道馬車への扉を開いて、みんなで魔道馬車のお風呂に入り、みんなで魔道馬車のベッドに寝た。ロザリーも含めて。




 翌日、さっそくアンテナ設置、インフラ設営や学校建築をしたいところだが…、ラトニーに捕まえられて化粧をさせられた。

 ラトニーはなかなかの美人だけど、化粧をしたところで私の育てたロザリーにかなうはずもない。それでも、気軽に綺麗になれるということで、化粧を気に入ったようだ。

 ちなみに、商品としては基礎化粧品を売っているのだけど、私やお嫁さんは使っていない。私の肌は常に自動回復しているし、お嫁さんのお肌も私が回復させるからだ。そもそも、血行が良ければ、肌が荒れることはほとんどないのだ。


 ロザリーは自分の分の化粧を持ってきていたけど、ラトニーに奪われそうになったので、しかたがないので私の手持ちを全部あげた…。

 だから、今日の私はすっぴんだ…。まあこの世界の女性はみんなすっぴんだけど…。

 ダイアナが化粧を開発するまではすっぴんだったのに、化粧を使い始めてからはすっぴんがこんなに防御力が心許なくなるなんて…。

 今後は魔道馬車の商人をメタゾールから送って、化粧品を広めるようにしよう。



 というわけで、今度こそインフラ設営だ。基本的には私とダイアナで作るけど、メタゾールから職人が応援にやってきた。明日以降の作業を職人に任せたいから、レクチャーしながらやるのだ。

 他にも実技系の授業を行う教師もあとから来る。実技系以外は、タブレットの私にお任せだ。


 これでラメルテオンに電波が開通した。ロザリーとはいつでもビデオチャットできる。


「はぁ…、他の領地はいいですね。これが全部タダなんて」

「初期投資分は返してもらいますよ」


 マイア姫の領地は、投資が受けられないせいで、開発が遅いのだ。


 作業が終わったのは夜八時。


「ロザリー、頑張ってくださいね」

「はい。ラメルテオンを平和で豊かにしてみせます」


「ほんとうに泊まっていかなくてよろしいんですの?」

「はい。馬車で寝られますので」


 ラトニーに泊まっていくよう催促された。

 すみません、昨日も馬車で寝たし、めしもマズかったです!

 これ以上滞在すると、あなたにいろいろむしり取られそうです!とは言えない。


「それではマイア姫様、お気を付けて」

「ごきげんよう」

「メタゾール侯爵も達者でな」

「ごきげんよう、ラメルテオン侯爵」


 私とダイアナとマイア姫は、魔道馬車で帰路に就いた。


「アンネお姉様と二人っきりー!」

「はい!」


 ダイアナはマイア姫にとってライバルではないので、眼中にないようだ。

 マイア姫にたっぷり母乳をあげてマッサージしてあげた。


『うふっ、私のことは見えないのねー』


 ドリーのことは、マイア姫が落ち着いたら可愛がってあげるからね。



 翌日、目覚めるとマイア姫の領地だ。メタゾール領ではないのだ。

 朝食を済ませて、マイア姫の領地からラメルテオンへのアンテナの向きの調整だ。


「ロザリー、聞こえますか?」

「聞こえました!」


 タブレットとスマホは、領地内のローカル通信でも使える。だけど、メタゾールと繋がっていれば、アプリのアップデートとかもできるのだ。


 マイア姫の領地でアンテナを調整して、今度こそメタゾールに戻った。




 私は十五歳になった。

 ここ数ヶ月は、二週間おきにダイアナとヒストリア王国に赴いている。


「セレス、臨月ですね」

「ええ」


 セレスもなかなかのお胸をお持ちなので、おなかとどっちが出っ張っているかというと、余裕でお胸のほうが出っ張っている。

 お胸様の大きさは、財力の対数におよそ比例しているのだ。ただし、カローナは種族補正?があるので別だ。


「まだ大丈夫だと思いますが、何かあったらすぐに呼んでくださいね。十五時間もかかりますけどね…。そうだ、ヒーラーガールズがいつでも駆けつけられるようにしておきましょう」


 ヒーラーガールズなら、出産に伴う危険にある程度対応できる。それでも、万が一の時は私が駆けつければ、あとでなんとかできるはずだ。なんとかしてみせる!

 その後、実験中のメイドさんの容態も見て、マッサージをしてあげた。



 一週間後にまたヒストリアを訪れた。


「うーん、これから産まれるまで滞在します」

「心配しすぎよ」

「心配しすぎて損するということはありません」


 とくに、この低文明の世界では、出産による死亡率だってそれなりにあるんだ。そういえばセレスって心臓が一回止まったんだった。


「まあ、城にいて何もしないというのももったいないですから、付近の領地改革を進めてきます」

「いつもありがとう」

「ふふっ。今はセレスのことがいちばん大切です。カローナ、何かあったらすぐに連絡をください。電話の繋がるところにいますから」

「ええ、わかりましたわ」



 数日、王都周辺の領地を整備してすごした。毎日セレスをほぐしてあげたから、だいぶ楽になったようだ。


 そして、携帯電話の着メロが鳴ったのだ。「私の心を奪ったあなた」のアレンジミュージックだ…。ダイアナの用意している着メロが、私たちの歌しかないんだよ…。


『アンネ!セレスが産気づきました!』

「一時間で戻ります」


 王都から三百キロ離れた領を整備していた。私はシルバーを駆り、王城に戻った。


「セレス!」

「んーーっ……はぁはぁ…」


 赤ん坊が黒ずんでいるということはない。血中酸素、心音、心拍数も母子ともに正常。


「一度力を抜いて」

「ええ…。ああああん……」


 ずっと力の入りっぱなしになっていたところをほぐしてあげた。それから切れていた産道の傷を、狭くならないようにしながら塞いだ。あとで元のサイズに戻しておかないとだ。


「痛くない!ありがとうアンネ!まだやれるわ!んんんーーーっ」


 セレスが息張っては、私がマッサージするの繰り返し。体力にも余裕がある。

 あれ、これってもしかして、便秘が解消するツボとか、腸付近の活動を活発にするツボとかで、出てきやすくなるんじゃない?


「おぎゃあ、あぎゃあ」


「生まれましたわ!女の子です」

「はぁはぁ…。それは分かっていたことじゃない…」

「おめでとうセレス!この子の名は?」

「クラリスよ!」


 セレスの産道を広げたまま治療してしまったので、元のサイズに戻さないと。


「おめでとうございます!セレスタミナ様!」

「ありがとう、レグラ!」


 クラリスは銀髪だ。やはりセレスよりもカローナに似ている。


「ほらダイアナ、あなたの妹なのよ!」

『そういえばそうだ。腹違いの妹だ。そんなキミには、これをプレゼント』


「タブレット?まだ使えないんじゃない?」

『見守り専用アプリを入れてある』


「何これ、私とカローナじゃない」

『そう。アンネママは無関係』


 タブレットには、セレスとカローナのCGが映っている。

 たしかに私を親だと思われても困るから、これでいいのだろう…。


『あはああん…』

「うふっ、カローナが可愛いわ!」


 セレスがカローナのCGの胸をつつくと、私が指圧したときのカローナと同じような声を、CGカローナが上げた。


「セレス、何ですか…、やめてください…」


 それ…、誰のための機能なの…。


 このタブレットはクラリスのものだけど、セレスとダイアナとレグラが操作できるように、魔紋を登録してあるらしい。これはべつにクラリスの端末に限ったことではなく、すべての子供用の端末には、親の魔紋を登録できるようになっているらしい。



『はぁ~、私も赤ちゃん欲しいわぁ』


 いやぁ…、ドリーは無理なのでは…。精霊って子供産むの?そもそも減ったり増えたりするの?


『やってみてぇ!アンネちゃんの作ってくれたこの身体ならできるんじゃないかしら!』


 マジで…。

 ドリーは私の握ったおにぎりや、私の母乳を摂取できる。実際の物体は必要なく、そこに宿っている光の魔力だけあればよい。

 ということは…、私の遺伝子を持つ光の魔力…?土の魔力ブレンドがいいのかな?


『そう、それよ!早くちょうだい!』


 えっ…、でもその葉っぱパンツ、脱げないんじゃ…。


『脱げないけど、隙間から指を入れるくらいはできるわよぉ』


 ちょっと…、ここでそれをやるの…。


『いいじゃない、誰にも見えないわよ』 


 誰にも見えない、いつでもどこでもエッチできる嫁に、マジでなってしまった…。


『ああん…、産まれるわぁ!』


 ちょっ、早すぎ!


 ドリーの前には、数年前のリーナ…、いや、これは私だ…。五歳の私の姿をした精霊がいた…。

 ドリー自体、お母様がベースになっているし、お母様と私の子だったら、こういう顔になるのだろう…。それってほぼ私だ…。

 でも…、しまったなぁ…。また葉っぱブラ、葉っぱビキニと葉っぱパレオになってしまった…。五歳の私の姿なのに、これはちょっと…。いや、五歳なのに谷間ができるほど胸がある…。ヤバい…、ロリ巨乳になってしまった…。


 まさかほんとうに生まれるなんて思っていなかったから、一瞬浮かんだイメージが採用されてしまった…。私とドリーの娘ならこんな感じかな…、って思ったのが運の尽き…。

 しかもなんで五歳…。初めて鏡を見て自分の姿をまともに確認できたのが五歳だったからかなぁ…。でもなんで巨乳にしてしまったのだ…。

 このキャラメイキングシステム、勘弁してほしい…。私の趣味を表しているようだ…。


 ドリーの土の魔力の半分と、私の光の魔力の半分を併せ持った、エメラルドグリーン色の魔力。


『ああん、可愛い!アンネちゃんそっくり』


『ねえ…、ママ…、誰それ…、また葉っぱビキニ…』

「ドリーと私の娘…」

『まさか最初に人外を妊娠させてしまうとは…』

「うるさい…」


『アンネちゃん、この子の名前は?』

「リーフ…」

『ママ…安易だね…』


『ねえ、リーフをクラリスの精霊にしてあげたらぁ?』

「ドリーみたいにフリーの精霊にはできないんですか?」

『この子は言葉を知らないみたいよぉ。このままじゃコミュニケーションが取れないから、一度は誰かに付けて勉強するしかないわね~。もちろん一度付いたら主が死ぬまで取れないけど』

「なるほど…」


 セレスたちはクラリスに夢中で、私が虚空と話していても気がつかなかったみたいだ。


「セレス、クラリスに精霊を付けますね」

「お願い!」


 基本は、強い魔力を流すと、そこに精霊が寄ってくるから、そのときに手を当てさせると精霊が付くんだけど、それだと、いちばん近くにいる精霊が付いてしまうので、クラリスをリーフの元に抱いて運んだ。首を支えて大事にね。


「ちょっとどこに連れて行くのよ」

「ここにすごい精霊がいるんです」


 セレスもカローナもレグラも、光と土の精霊が見えないようだ。

 リーフは光と土をブレンドした精霊なのかな。リーフからは、ドリーの半分ほどの土の魔力と、私の半分ほどの光の魔力を感じる。

 精霊がヒト型化するには、ドリーの半分程度の魔力があればいいってことかな。それなら、ドリーの精霊の姿は直径十メートルで、私の光の精霊はすでに四メートルだから、あともうちょっとだ!

 いや、体積だったらお手上げだな…。だとすると、リーフの精霊の姿の直径は八メートルくらいかな…。最初からヒト型化しているからよく分からないけど…。

 というかそもそもヒト型化したら、精霊の姿に戻れるんだろうか。


 リーフの近くで光と土のブレンド魔力を流してみる。すると、リーフはふわふわと近寄ってきた。すかさずクラリスの手を精霊に触れさせると、どうやらリーフはクラリスと契約できたようだ。


 その他、クラリスに水の精霊を付けた。あとは、各属性の事象を体験してからでないと付けられない。

 それを考えると、リーフは光の精霊として付けられたのであって、土の精霊として付けられたわけじゃないんだろうか。


「クラリスには強力な光と土の精霊を付けられました」

「ありがとう、アンネ!」

「わたくしはいまだに土も光も見えませんわ。火と水と風以外は、いつまでもアンネ頼りですわね」


 とくに、電気と闇の魔法は、私が生まれてから発見したものなのだからしょうがない。


「今付けた精霊は、光と土の両方の属性を持ち合わせているようです。名前をリーフといいます」

「名前があるの?」

「実は人の形をしているんです」

「精霊って丸い形をしているって聞いたわ」


 セレスは身体強化を使えるけど、いまだに光の精霊が見えない。

 リーフはまだ言葉を理解しないらしいけど、私なら考えを伝えることができるかな。

 リーフ、私はあなたの親。クラリスを守ってほしい。

 考える知能はあるのだろうか。いちおう、分かった、と言われたような気がした。



『あ、そうだ。タブレットやスマホのカメラで魔力や精霊を撮影できる。リーフを見られる』

「ほんとうなの?どうやるの?」

「わたくしにも教えてくださいまし」

『カメラアプリはこのアイコン』

「どれどれ」「どのような人かしら」


 マジか…。そういえば、監視機能で魔力を撮影しているって言っていた…。


「ちょっと!小さいアンネよ!」

「可愛いですわ!」


 をいをい…。自分の子を可愛がれよ…。キミたち、私のこと好きすぎだろう!嬉しいけどね!

 それにしても、目に見えないものが写るカメラ…。心霊写真?


「この子がクラリスを守ってくれるのね!頼もしいわ!」

「そうですね、光と土の魔法を、かなりサポートしてくれると思います」


 小さい私の形をしているけど、性格が私と同じというわけではないのだろう。

 ドリーもお母様のような、あらあらまあまあさんだけど、お母様の性格とは無関係に、昔からそういう性格らしい。


「それで…、もう一人、カメラにしか写らない人がいるのだけど…、リンダお母様?」

『はぁ~い、ドリーよぉ!』


 ドリーがセレスのカメラに向かって、にっこりと手を振っている。


「あっ…、そ、そそそ、それは、ドリーといいまして、わ、わわわ、私の土の精霊なのです」


「何か言っているの?私には聞こえないわ」


 ドリーの声は録音されているのかな…。魔力や精霊を見る視覚というのは、ダイアナも知っていると思うけど、精霊が発する声というものをダイアナが知ったのは最近のはず…。だからまだ端末にそんなものを観測する機能はないんじゃないかな…。


「ドリーが名乗っているんです」

「そうなの。アンネの土の精霊は、こんな美人だったのね」

「精霊が美人だなんて、うらやましい限りですわ」


 二人は、ドリーのことをお嫁さんであると気がついていないのだろうか…。

 カローナのは、精霊が美人ならいつでもいちゃいちゃできると想像しての発言かな…。

 それに、二人は、私にもう一つ五十センチの土の精霊が付いていることに気がついていない。まあ、精霊が一属性につき、一人一つだなんて法則は、精霊が見えていない人には関係ないのかもしれない。


 しかし…。これでは、セレスとカローナの娘、クラリスの誕生というメインイベントが台無しだ…。



 その後、私はヒストリアに一ヶ月間留まり、クラリスとセレスの産後経過を見守った。

 そのあいだには、ビデオチャットを使ってメタゾールにいるお嫁さんたちにもクラリスをお披露目した。


『クラリスはやっぱカローナ似なのね』

『クラリス可愛い!』

『むきー!私もアンネお姉様の子が欲しい!』


 ヒルダもクレアもマイア姫も、クラリスの誕生を喜んでくれたようだ。



 セレスの出産からおよそ一ヶ月。実験中のメイドさんたちが、同時というわけではないが、無事、出産を果たした。母子共に異常なし。せっかくだから精霊を付けてあげた。

 魔法で作った精子だからって、カローナとは無関係だ。ちゃんと、両方の母親に近い顔をしている。

 ダイアナやクラリスがカローナに似ているのは、エッテンザムの血の主張が強いからなのだろう。


 失敗したなぁと思ったのが、なぜ男の子を産ませなかったのか。べつにX染色体だけでなくY染色体の精子でも、イメージさえすれば作れたはずなのに…。

 メイドさんたちも、女どうしで結婚して女の子を作ることに憧れていたし、女の子を作ることに何も疑問を持っていなかった。

 でも、すべての女性同性愛者が女の子を欲しがると考えるのは早計だ…。男の子を作れることが実証されてないけど、見切り発車で法の施行と、ヒーラーガールズの治療院で女性どうしの不妊治療の取り扱いを開始することにした。



 ヒストリア王国で結婚を届ける必要があるのは貴族だけだ。この点はロイドステラ王国でも同じ。

 ロイドステラ王国と異なるのは、第二夫人以降も届け出が必要なところだろうか。


 今回の法律で、女性の貴族当主が女性と結婚することが正式に認め、女性どうしでもうけた子供を後継者とすることを認めるようになった。

 これと同時に、女性どうしで子供を作れる魔法が存在することも公開した。

 そして、セレスとカローナは結婚し、クラリスという第一王女を産んだことも公開した。


 女王セレスタミナの王妃カローナ…。カオス…。

 ロイドステラにもヒストリアにも、「王」という単語に「女」をくっつけた「女王」という単語はないし、女王を意味する「クイーン」のような一単語もない。「王」という単語に男の意味が含まれてもいない。


 ヒーラーガールズの治療院で女性どうしの不妊治療を受けられる。不妊治療は、貴族に限らず平民にも開放される。


 そもそも、現在のヒストリアには貴族の女性当主が存在しない。

 ヒストリア王国で後継者を選ぶ基準は、長子だとか、有能な次男三男だとか、ありきたりなものだった。いくら有能でも、娘を当主にするということはなかったのだ。

 だが、セレスが王となった以上は、これからは女性の貴族当主も推進する。


 すべての街に学校を設立するので、これからは貴族も平民も、男性も女性も平等に、高度な教育を受けられるようになる。

 今までは、後継者となる男児しか教育を受けられなかったが、これからは女児も教育を受けられるのだ。有能であれば家を引き継ぐべきだ。



 これらの法律は、カローナががんばって考えた。それをセレスと私で見直して、細かいところを修正していった。

 カローナの原案は、ちょっと女性寄りすぎだったので、私とセレスで男女平等になるように変えた。つまり、男どうしの結婚と子孫のことも同様に認められる。

 だからといって、男どうしで結婚する魔法は知らない。もし、そういう魔法を開発できたのなら、すぐにでもどうぞ、という状況だ。みんな学校で医療や光魔法を学ぶのだから、きっと誰かが開発してくれるよ。私はBLに興味がないから開発しないけど。


 外国人の私がヒストリア王国の法に関わってよいものかと思うけど、この法律、そのままロイドステラ王国でも使わせてもらおう。



 私とダイアナは法の施行を見届け、セレスとクラリス、そしてメイドさんとその娘たちの容態が問題ないことを確認して、メタゾールに戻った。

■アンネリーゼ、ヒルダ、シンクレア、セレスタミナ(十四歳~十五歳)


■カローナ・フェイナ・ヒストリア(十四歳~十五歳)

 ヒストリアで同性婚を正式に認めたことにより、王妃となった。


■ダイアナ(四歳~五歳)

■マイア(十四歳~十五歳)


■クラリス(着床~誕生)

 セレスタミナとカローナの娘。カローナ似。


■リーフ

 アンネリーゼとドリーの娘?の精霊。アンネリーゼの光の魔力の半分とドリーの土の魔力の半分を持つ。

 クラリスを加護する精霊となった。

 五歳のころのアンネリーゼに似ている。五歳なのに谷間ができるほどの胸があるロリ巨乳。

 ドリーと同じ、葉っぱブラ、葉っぱビキニ、葉っぱパレオ、裸足。

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