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イケメン探偵〜桜のような王子様と模範解答のない謎〜  作者: 地野千塩


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散りゆく運命編-7

 せっかくカフェにいるのだし、豊がみんなにケーキを奢ってくれた。なぜかみんな一番地味なイチゴのショートケーキを選んでしまった。確かにこの場でゴージャスなデコレーションのチョコケーキや重厚感のあるモンブランは麗美香も食べる気はしなかった。


「ケーキやお茶美味しいですね」


 優が人たらしっぽくお茶のお代わりを持ってきたカフェ店長に笑って言っていた。店長も笑顔で嬉しそうにしていた。


 こういう風に気をつかえる優の心根の真っ直ぐさを麗美香は感じてしまう。


「なんか優さんって雪村君に似てる…」


 ケーキを半分ぐらい食べた後、瑠璃花はボソッとつぶやいた。


「え!? どこが似てるの?」


 優はニコニコと笑って聞く。


「いえ、雰囲気というか。よくわからないんですけど。雪村君は、周りのスタッフとかファンにもすごく優しかったし……」


 再び瑠璃花は泣きそうだった。それはイメージ通りだと麗美香も思う。


 テレビは意外と人柄も映しているように感じる。もっとも、人柄など本性が全く想像できないような人もいるが。


「そうだよね。ユッキーは性格いいって有名だったから」


 優も懐かしそうに呟く。


「だから、俺もどうしても自殺だとは思えないんだよね」

「うん。優さんの言う通りだと思う。私だって信じられないよ」


 瑠璃花はぎゅっと目を瞑り、泣くのを堪えているようだった。


「何か知らないかな?」


 豊は優しく尋ねる。


「うーん。追悼コメント出している芸能人は全員嘘よ。雪村くんは、芸能界には友達いなかったから」

「え!?」


 それは初耳である。優も大きな声を上げる。確か雪村には、共演者や後輩などの慕われているはずだったが。追悼コメントも思わず涙を誘うようなものも多く、中にはアコースティックギターを使って追悼しているものもいて話題になっていた。


「うん。雪村君は、すごい真面目で女遊びしている芸能人が苦手だったのよ。芸能人は女遊びしていない人はいないからね。居心地悪かったんだと思う……」


 こうして聞くと麗美香の中の幸村の印象は良くなってしまうが、この事は自殺と関係あるのだろうか。豊は麗美香と同じ疑問を持ったようで、質問をしていた。


「遊んでいる芸能人からしたら雪村さんの存在は面白く無いでしょうね。いじめみたいな事はなかったんですか?」


 その可能性は大いにある。麗美香と雪村の存在は違いすぎるが、いじめに陥っていく過程はよくわかる。「ノリが悪い」などと言われていつのまにか孤立していくようないじめ。雪村がそうなっていくのは、麗美香にも想像がついてしまった。


「そ、それは…」


 瑠璃花は、とても言いにくそうに答えなかった。


「何か知ってない? 教えてよ」


 優は真剣な眼差しで聞く。こんな風に言われてしまうと瑠璃花も答えざるおえないようだった。


「それは、ちょっとハブられている事もあった……。あの、昔舞台やっていた時は、葬式ごっこみたいな事も共演者にされたり……」


 瑠璃花はとても言いにくそうだったが、話してくれた。こうして聞くと陰キャの麗美香は幸村に良い印象しか無いが、こんな事されたら自殺してもおかしくない気もしてきた。


「でも、かなり前の事ですから。雪村君は精神力もとても強いですし、そんな柔な精神だったら舞台も映画の主演もできませんよ」

「そうだよな。ユッキーがいじめられていたって言うのはショックだけど、自殺は無いよなぁ…」


 優も瑠璃花の言葉にしみじみと頷く。


「他に何か心あたりは無いです?」


 豊が聞くと、麗美香は紅茶を一口飲んで頷く。


「たぶん元カノの橋本結希さんが知ってるかもしれない」

「橋本結希?」


 優がちょっとびっくりしたようの聞き返す。その名前は聞き覚えがあった。確かアイドルグループの一員だったが、去年農業がやりたいと引退していた人物の名前だ。20代前半ぐらいで、可愛らしい雰囲気の人だった記憶がある。一時期はバラエティによく出演していたが、突然引退したので色々と憶測がされていた。


 しかし、雪村と恋人同士だったのは驚きである。芸能ゴシップの詳しくない麗美香でがあるが、優や豊も初耳だったようで驚いていた。おそらくあまり世間では知られていない関係だったのだろう。


「結希さんはどこにいるか知ってる?」


 麗美香が聞く。元カノだったら雪村について何か知っている可能性があるだろう。


「実は、うちの実家で一緒に農業やってるのよ。結希ちゃんもすごいショック受けてて…。でも何か知ってるかも知れない……」

「ねぇ、瑠璃花ちゃん。結希さんに会う事は可能?」


 優は久々に上目遣いで、ちょっとぶりっ子っぽく聞く。いつもだったら優のこのぶりっ子している事は呆れてしまうが、ここで手がかりが得られれば安いものだろう。


 瑠璃花はちょっと顔を赤くし、頷いた。


「わかった。結希ちゃんに連絡とってみるね」


 こうして瑠璃花の協力のおかげで、次の手がかりとなる結希に会える事になった。

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