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イケメン探偵〜桜のような王子様と模範解答のない謎〜  作者: 地野千塩


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陰キャの矜持編-1

 麗美香は毎朝、星川アリスに英語を教えていた。朝早い教室はまだ誰も登校していない。校庭からは部活の朝練するものの声や笛の音などは聞こえるが、おおむね静かだった。


「LとRの音の違いが分からない!」


 ハーフで見た目では外国人のような星川アリスではあるが、生粋の日本人。ある事情の為、取引しこうして英語を教えているわけだが、毎回「分からない!」と逆ギレされる。


「まあ、もうその発音にこだわるにはあきらめましょうよ。全く何でネイティブレベルを目指すかね。どうせ日本人の前でスピーチするんだから、それっぽく聴こえていればいいのよ」

「それでもネイティブレベルになりたいんだけど!」


 麗美香はため息をつく。


「それは無理よ。10歳ぐらいまでだったら可能性があるけど、その後はもう母国語の影響は強くなってしまうのよ。科学的にもそう言われてるのよ」

「そんなぁ」

「だからジャパニーズイングリッシュで開き直るメンタルも必要ね。ネイティブレベルを目指すといつまでたっても失敗を恐れて話せないわよ」

「あんた陰キャのくせにけっこう言うわね…」


 星川アリスは呆れていた。この星川アリスも決して性格は良くないが、こうして毎日勉強している。本人は気づいていないが、そこそこ成果も出ている。単なるリア充だと思っていたが、意外と根性はあるらしい。その点は麗美香も見直していた。


 それに麗美香との約束も守っている。昼休み、麗美香達が教室でお昼ご飯を食べられるようにこっそりと配慮してくれているようで、とりあえず毎日問題なく過ごしていた。今のところは、いじめなどもなく、陰キャの麗美香にも問題はなかった。


「最近、日菜子は付き合い悪いんだよね」


 勉強に飽き始めた星川アリスは、爪を研ぎながら愚痴をこぼし始めた。星川アリスの持っているペンポーチの中には、爪やすりが常に入っていて、飽きるとこれを取り出してよく爪を研いでいた。先がとんがった攻撃性のある星川アリスの爪を見るたびに麗美香は、内心怖いと思う。


「日菜子って誰だっけ?」

「ちょっと麗美香、マイペース過ぎ。うちらと同じグループの子よ。茶髪で巻き髪の」

「ああ、アイツね…」


 その話を聞いて思わず麗美香は顔を顰める。リア充集団の中でも月村日菜子は一番苦手なタイプだった。


 まず見た目からして派手で声を大きく、威圧感もある。陰キャを馬鹿にしているのがありありと伝わってきて、時々麗美香や聡美に嫌味を言うのを忘れない。厄介なことに成績もかなり良い。美人でノリもいいので、教師受けもとても良かった。


 教師も人間である。同じ成績が良くても、隠キャでその上気の強い麗美香よりも、美人でノリの良い日菜子が教師受けが良いのも当然である。世間で言われているほど教師は芋臭い陰キャは好きではない。それに麗美香はテストの問題文の誤字はもちろん、矛盾点もどんどん指摘してくるので、教師にとっては可愛げの無い存在だと言えるだろう。


「その日菜子が何で付き合い悪くなったの?」


 興味はないが一応聞いてみた。


「うーん。何か新しい趣味が出来たんだって」

「何の趣味? カラオケか何か?」

「あのね、麗美香。リア充が全員カラオケ好きって言うのは偏見だからね?」

「そうなの?」

「そうよ」

「だったら何の趣味やってるの」

「麗美香が考えても仕方がないじゃん」

「それもそうね」


 こうして麗美香と星川アリスは勉強に戻る。リア充の趣味がちぃっと気になったのは、優の影響かもしれない。優は、リア充でイケメンなのにミステリーマニアだった。そんなギャップが面白いのも事実だった。日菜子については何も知らないが、一方的に嫌ったりするのも偏見しすぎかもしれない。基本的にリア充は苦手であるが、頑なに壁を作るにも違うような気持ちもある。


 そんな事を話しながら勉強がすすむ。生徒がちらほら登校してくると、勉強がは一旦中止。星川アリスがこんな風に勉強している事は一応秘密だった。


「おはよう!」


 そこへ麗美香の親友である聡美が登校してきた。いつも通り化粧っけのない黒髪ボブ姿の聡美だった。さっきまで化粧ばっちりの星川アリスと一緒にいた麗美香はちょっとホッとしてしまう。


「おはよう。なんか今日の聡美は機嫌良くない?」

「そうなのよ!」


 聡美は顔をクシャクシャにさせて喜びを表現していた。なんでも推しのアイドル声優・レン様のイベントに当選し、ファンミーティングとしてお茶会のイベントに参加できる事になったようだ。


「本当にレン様に会えるなんて…」

「よかったね、聡美」


 麗美香も自分のことのように喜ぶ。こんな風に陰キャはとりあえず平和だった。しかし、その放課後。そんな平和をぶち壊すような事が起きていた。

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