07.続々とカボチャ共が集まってくる。
続々とカボチャ共が集まってくる。
「うぇあぁぁあ……」
別に襲いかかってくるわけじゃない。昔のコントよろしく、ハロウィンヘッドの怪人達が口からウリ科植物の種を飛ばしてきたりも。アレの名前なんて言ったっけ?
「せ、先生……」
内弟子ちゃんが、わたしの袖を摑む。
こっちはマジで怖がってる。そりゃそうだろう、揉めごと起こしてる隣村のごっつい男達が、無言で鋤や鍬を携えて集まってくるんだから……おいおい、ねえってばおい。これ聞いてた話と大分違くない?
生命の危機を感じて、いつにない大声が出た。
「すとーっぷ!うぇいたみにっつ!きゃにぅすぴぃくざぱにーず?」
片言の外国語で話せますかもないもんだが。とりあえず通じたようだ――鍬や鋤は下ろしてくれないけど。わたしと内弟子ちゃんは殺気立つ面々に囲まれてしまった。
「せんきゅ。せんきゅ。はろうえゔりわん。まいねいむいず」
「こっちでいいよ。そっちのほうは分かんねえ」
祖父さんの国の言葉だけど、と見るからに混血っぽいアニキさん。陽に爛れた色の薄い膚は、土着のものじゃない。彼と彼の御先祖様にも、いろいろあったみたいだ。
わたしが眠っていた村と同じく、人種の混合が進んでる。まだ三、四世代なのに、そうしなければいけないほど災厄後の状況は厳しかったのか。
「あ、あんた神様だろ。最近、隣村で目覚めたって聞いたぞ!」
こちらは黒光りするおっさんが叫ぶ。誤解が村の外にまで広がっているらしい。
「違うよ。わたしは普通の人間。ちょっと寝坊したせいで、同世代の人達から置き去りにされちゃったんだけど」
「嘘つくな!」
間髪入れず否定。それだけ言いきる根拠が、初めて会ったあんたらのどこに?
「それは誤解です。僕達の村では、ごく普通に暮らしてます!み、皆さんがそう考えた理由を教えてください」
内弟子ちゃん、ぐっじょぶ。論理的に反駁しながら、切々と感情に訴える。返す返すもぐっじょぶ。少なくとも当面、生命の危機は遠ざかった……はず。
「戦争に備えて、食いもん備蓄しようとしてただろ!」
瓶とか袋の空気抜いたアレか。
「しばらく前に爆発が聞こえたぞ。材料の毒か何かを床中に撒き散らしたって」
それはビールだ。おやっさんの汗と涙と鼻水の結晶。
「昨日も夜遅くに集まってたじゃねえか!どう攻めるかの算段に決まってる!」
アレな。君らが幼稚な悪戯するから、対策を話し合ってたんだよ?
結論。
「全部誤解」