04.生き延びるために必要だったこと。
生き延びるために必要だったこと。
神格化と教団化。わたしを信仰の対象に据えることで、村の団結と生き残りを図ったのがそもそもの始まりらしい。
でも……本当に必要だったんだろうか。
「仙道派の者達です。神々を排した皇帝の崩御から、横暴が激しくなっていました」
「…センドー派?ていうか、それって逆じゃない?」
「統治者としては公平だったのです。それこそ公平すぎるくらい」
何もかも御説明します、と見つめてくる。
「まず僕は、聖櫃騎士団の団長を務める始祖の末裔。長子の僕が司祭を務めなければならないのですが、御覧のとおりですので妹のほうに任せております」
「いや聖櫃って。わたし神様なんかじゃ」
「分かっております。ですが世の中は、そのように見てくれませんでした」
弾圧と神格化。今となっては、どっちが先だったかなんて分からない。鶏と卵。堂々巡り。水掛け論。これも今となっては、どうしようもない。
「あなた……女の子、よね?」
「そう仰られると、年甲斐もなく気恥ずかしいですが……これも家訓でして、女子は自らを『僕』と称することになっております。そのほうがお喜びと伺いましたゆえ」
「そ、そうなんだ」
わたしの性癖が、おかしな伝統を生んでしまった。
悲しいやら嬉しいやら。こんなとき、どういう顔をしたらいいのか分からないの――って言えば許してくれるって、昔の文献に書いてあった……はず。
「とりあえず、あなたのことは『騎士ちゃん』って呼んでいいかな?」
年甲斐もないと言ったけど。
どこか面影のある騎士ちゃんは、歳相応に可愛らしく笑った。
「な、何かおかしかったかな?」
「そういうところ。まさに伝承のとおりです」




