09.いろんなことをやったけど。
いろんなことをやったけど。
「先生っ!」
いろんなところへ行ってみたけど。
「先生っ!どこにいるんですか!?」
美味しいものを食べた。面白いものを見た。
「巫女さん、先生を見ませんでしたか!?いつも寝坊してるくせに、朝起きたらどこにもいないんです」
……わたしの居場所は、どこにも見当たらなくて。
「どうなんですか!?はっきりしてくださ」
「………ん」
ここから先を、わたしの口からは説明できない。
何しろわたしは、この時代から忽然と消えてしまったんだから。
内弟子ちゃんと巫女ちゃんには、手紙を残しておいた。
どちらも似たような内容だけど。一緒にいた時間の分だけ、内弟子ちゃんに宛てたもののほうが長い。
それには、こんなことが書いてある。
☆★☆★☆★☆★☆
やあ、元気かな?君達がこれを読んでるとき、
わたしはもう眠ってるはずだけど。
泣き言ばかりになっちゃうかもしれないから、最初に言わせてね。
ありがとう。
だけど、わたしは神様じゃない。ただの研究者。引きこもりの学者馬鹿。
みんなよくしてくれたよ。でも、やっぱりわたしの性には合わなかった。
わたしがこの時代にやってきた経緯は、話したよね?
変な宇宙人?の技術を真似たら失敗しちゃった、ってやつ。
だから、千年後に行きます。わたしが生まれた頃と同じくらい、
科学が進んだ未来へ。
お金は二人で好きにしてね。仲よく半分こしないとだめだぞ?
素敵なお婿さんを見つけて……
千年後かあ。さすがに面影はなくなってるかな?
またどこかで会えるのを、きっと楽しみにしてます。
ダメな神様で、ダメな先生でごめんなさい。
ほんとうに、お世話になりました。
さようなら。
追伸。
お金は、ほんのちょっとだけ残してください。
この時代で目覚めたとき、マジ絶望しかけたんで。
半年……いや五年どうにか生活できるくらい?
追伸その2。
二人には悪いことをしたと思ってる。
特に内弟子ちゃんは、あいつの子孫だからってだけで
職業選択の自由を奪われた挙句に無職なわけだし。
迷惑ついでで本当に申し訳ないんだけど、
これから巫女ちゃんのことを気にかけてくれないかな?
どうもキナ臭い感じがするんだ。
君みたいに生まれたときからの名家!って感じじゃないし、
ものすごく優秀ってわけでもない。
敵対していた村に単身送り込まれるような子が、
大切にされていたとは思えないんだよね。
追伸その3。
お花は、大好きです。でも床に敷くのはやめてください。ダメ。絶対。




