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46話 10歳、そして卒業試験

「じゃあね〜、良い子は早く寝るのよ」


 バイバーイと手を振りながら、元神の女は窓から出て行った。彼女が神器を見つければまた持って来てくれることだろう。しかし、盗んで来るというのは勘弁して欲しい物だ。


「はいはい、帰った帰った」


 適当に手を振りかえして答えるホムラ。



 すぐには眠れないので、神器について考えることにする。


 この世界に送られた転生者達が所持していた神器は本人達にしか使用は出来ないとされているが、未知のものであるため国などが手元に置いて研究や保管したいのだろう。


 もしも神器を転生者以外でも使用が可能となれば一気に軍事力がひっくり返る可能性もある。そうなれば神器を多く確保している国が有利になるだろう。


 国の宝と言っても良いものなので、盗まれたとすると大騒ぎになる。しかし、騒ぎを避けたいだろうから国は表沙汰にはしないことだろう。国王は可哀想に……。帝国もドンマイ……。


「どこかの国に転生者がいるとか、先生が言ってたな……」


 神器持ちの転生者であれば多くの国が、取り込もうとするらしい。だが、その転生者は一国に縛られるのを嫌って放浪してるとか……ホムラ的にもそれが良いことだと思う。

 

「自分はバレたくないなぁ……」


 自分は現在、神器を3つ所持している。厄介ごとに巻き込まれなければ良いなとホムラは思いながら眠りにつくのだった。







 4年ほどが経過してホムラは10歳になった。今日は、レーミング領から先生に抱えられて遠い距離を飛んで平原にやって来ていた。


「ホムラ君に会ってもう5年ほどですね。それでは、卒業試験と行きましょうか」


 10歳にもなれば身長もかなり伸びている。魔法の扱いも格段に上達した。いよいよ、先生に魔法を教えてもらう時間も最後になるようだ。


「はい、練習の成果を発揮して頑張ります」


「神器も使って構いません。遠慮せずに全力で来てくださいね!」


 先生が杖を構える。


 ホムラも先生に合わせて杖を構えるのだった。




 試験は単純、先生と戦って彼女を認めさせれば良いだけ。ホムラは全力で挑めば試験自体大丈夫だろうと思う。


「行きます、ファイヤボール!」


 先制攻撃でホムラは火球を放つ。遠慮はしない。そうでなければ認めてもらえないだろう。


「アクアボール」


 すぐさま先生は、水球を放ちホムラの火球を消し去る。そのまま、水球がこちらに向かってくるがホムラは水球を氷に変えて地面に落とす。


「さあ、まだまだ行きますよ!」


「もちろんです、先生!」


 3属性の強力な魔法、自在に操るエルメティア。彼女にホムラは、全力で魔法を放っていく。


 2人の戦いは、平原を荒野に変えんとする勢いであり他の場所では被害が大きかったことだろう。この場所を選んで正解だったと言える。


 いつからか2人は試験を忘れたかのようにひたすらに魔法を放ち続けるのだった。




「合格です、ホムラ君。新しい魔法の使い方にも驚かされました」


「ありがとうございます、先生。ホッとしました」


 無事に合格をもらうことが出来た。しかし、これで教えてもらうのも最後になるのかなと思うと悲しくなるものだ。



「ホムラ君、最後に私から宿題を出しておきましょう。いつか先生に報告に来てくださいね」


「宿題ですか?」


 ホムラの寂しい雰囲気を感じてか、エルメティアが言う。ホムラは、興味深そうに聞く。


「ええ、これから私が使う魔法をいつか習得出来たら見せてください」


 そういうと、先生は少し距離を取って杖を構える。その直後、彼女の周囲の魔力が練り上がるのを感じた。


 そして、先生の周囲を炎が覆った。濃密な炎にホムラが注目していると、徐々に炎が収束していく。


「凄い……」


 ホムラが息を呑んだ。膨大な炎が収束して現れたのは、全身に炎を衣服の様に纏った先生だ。まるで彼女自身が杖になっている様な膨大な力を感じる。


「どうですか?ホムラ君。驚いてくれましたかね」


 いつのまにか先生は自分の背後にいる。いつ移動した?と思うほどのスピードを発揮しているのだろう。


「まるで、精霊の様な。凄いですね……、こんな魔法があるだなんて。動きすら見えなかったし」


「ええ、そもそもこれは習得している人自体が少ないですからね。この状態で放つ魔法も凄いですよ?」


 炎を纏う先生が、指を空に向かって指す。直後に、先生の指から火球が上空に向かって放たれた。


「え……」


 そして大爆発。あまりの規模の魔法にホムラも口が塞がらなくなる。


「《精霊化》、そう名付けられています。この世界で最も魔法を使いこなせているのは精霊だとされていますが、この技はその精霊の力に匹敵すると言われています」


 炎が四散して先生が元に戻る。


「これを僕が習得するんですか。出来るかなぁ」


「ええ、ですから宿題です。やろうと思って出来るものではありません。ひたすらに自らを鍛えてくださいね」


 これは数年、数十年単位の時間がかかるかもしれない。先程の先生はまさしく人が使える魔法の領域を超えていた。いつになるかはわからないが今日から、全力を尽くそうと思う。


「さて、帰りましょうか。私の指導が終わったことをローレイラ様にも報告します。よく頑張りました」


「ありがとうございます。いつか、先生からの宿題を達成してみせます」


 こうして、5年に渡って続いた先生との魔法の学習は終わりを迎えた。

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