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45話 神器吸収

「はい、どうぞ!これも神界で見たことがあるやつだから名前を知っているわ。《魔力弓》っていうのよね」


 どこから取り出したかはわからないが、元神は弓を持っていた。多分、アイテムボックスでも持っているのだろう。


「持ってきたってか……盗んだんじゃないよな?」


「帝国の宝物庫に落ちてたのを拾ってきただけだわ。王都の時と同じよぉ?」


 完全に盗みを働きましたね。彼女は犯罪者……犯罪神というか。


 そして、王都の時というのがホムラ達がこの前公爵令嬢の誕生日で訪れた王都。そこのお城の中の宝物庫からも神器を盗んできた時のことを言っている。

 ホムラが呪いを祓う時に使った《聖なる剣》、それは王都の宝物庫から盗まれたものだ。


 ホムラは、彼女と再会した時のことを思い出す。パーティの後3日ほど王都に滞在していたが、レーミング領に帰る前日の夜に事件は起きた。





「明日で王都ともおさらば……今日は早く寝ておくか。母様とリーラも元気にしてるかなぁ?」


 可愛い妹に早く会いたいなと思いながら、さっさとベッドに潜り込もうとすると……。


「ふふふ、それなら一緒に寝ましょうか。可愛いホムラ君?」


 扉の開く音すらも聞こえなかったはずだ。ベッドに黒髪の女性が腰掛けていた。魔法学校で会った女性……地上に落とされた元神に違いない。


「松明!」


 ホムラは、武器を構えいつでも魔法を発動できるようにする。ミルレイヌ神が言った言葉が本当ならば彼女は、敵……変態だ。現に、一緒に寝ましょうとか言ってきてるし。


「あらあら、勇敢なのね。格好いいわ」


 舌舐めずりにホムラはゾワッとする。子供でなければホイホイと乗せられたかもしれない。


「何をしに来たんですか?まさか、僕を拐いにでも?」


 彼女の魔力が部屋を覆っているのが感じられた。これは、声を上げても外には聞こえないだろう。


「それも良いんだけどね〜、今回はプレゼントを持ってきたのよぉ?」


「プレゼント?」


 そう言うと彼女は一振りの剣を取り出した。豪華な装飾の剣だ。見事な剣に既視感を覚える。


「《聖なる剣》っていう武器よ〜。君の松明と同じで神器」


「目録で見たかもしれない。でもどうして神器を?」


「うふふ、お城の宝物庫を散歩してたら落ちてたのよ。だから君のために拾ってきたの。気に入ってくれるかしら?」


「普通に泥棒ですね。神器があるとは聞いてたけどこんな形でお目にかかれるとは……」


 これってバレれば極刑じゃね?と思わなくもない。


「さあさあ、吸収しちゃって!」


 グイグイっと剣をこちらに差し出してくる。なんのことだろうか。


「吸収?」


「あれ?ミルレイヌから聞いてない?」


「なんか僕でも神器を使えるとは聞きましたけど」


 説明漏れか……オヤツのことばかり考えてる神め。


「松明を出して」


「あー、はい」


 ホムラが松明を持つと、《聖なる剣》が粒子となって松明に吸い込まれた。なんだそれと思いながら、ホムラは松明を見つめる。


「本当に、何も聞いてないのね〜。《松明》は、特別性能の神器なのよ。他の神器を吸収してその力を使えるのだから。じゃあ、さっきの《聖なる剣》を思い浮かべてみて」


 何やら神器の使い方指導が始まった。ここは聞いておいて損はないだろう。


「変わった!」


 松明が《聖なる剣》に形を変えたのだ。正直驚いた。


「ミルレイヌったら……、大事なことを全く説明してないわね。神失格だわ」


「全くです。あれ?でもあんたも下半身露出とかセクハラで地上に落とされたとか?」


 姉は変態、妹は怠惰。よく神になれたものだ。


「あらあら、頭の殆どがオヤツで出来ている癖にそこは説明してるのね?」


 強めのオーラが噴き出している。もう早く帰ってくれないだろうか。



「じゃあ私は行くわね〜。また神器見つけたら持ってきてあげる」


「なんか見返りとか要求しないですよね?」


 こんな元神のことだ、良くないことをしてくるかもしれない。


「別に良いわよ〜、私が好きでやってるんだから。大人になったら、貰いに来ようかしら?」


 最後の言葉で鳥肌が立つ。何を貰いに来るのだろうか……ぽけぇーっとしていると


「長居すると、あのエルフのババアに見つかるかもしれないから帰るわね〜。あのエルフ、変態だと思うから食べられないように気をつけてね!」


 と言いながら宿の窓を開けて飛び去って行くのだった。台風が来て去っていったような気がするホムラだった。


「先生が変態なのは、知ってる」


 とホムラは呟くのだった。







「まあ、松明に吸収してるからバレないけど、普通に犯罪なんだよなぁ」


 ため息をつきながらホムラは答える。


「バレなければ犯罪じゃないの〜。ほら、弓を吸収しちゃって〜」


 ホムラはパパッと《魔力弓》を松明に吸収させる。これで自分が使うことが出来るのだ。


「飛び道具、たまには良いな」


 ゲームなんかでは、剣を使うが、時々銃も使いたくなる時がある。そう言う気持ちだ。


「また何かあったら持ってくるね〜」


「そういえば、地上に落とされて何か目的とかあるの?」


 もしも他の神に復讐とか考えてたら恐ろしい。


「別にないかなー。案外、地上は楽しいから。悪戯も出来るのからね〜」


 良くないことしてそう。悪戯の犠牲者は可哀想に……


「さて、今回は少し報酬を貰おうかな〜」


「え、大人になったらじゃないのかよ!」


 全く、これだから神というのは信用できぬ。神と言ってもミルレイヌ神しか知らないため、彼女のことだが。


「はい、頂きました」


 と言われた直後、ホムラは元神にお尻を触られるのだった。



 先生といい、この元神といい、なんでそんなにお尻を触るんだよ……とホムラは呟かずにはいられなかった。

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