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43話 形態変化

 黒い鳥の群れを形作った闇に対してホムラは、松明を投擲する。


「遠距離発動、浄化の炎!」


 地面に突き刺さった松明から大量の炎が吹き出してホムラに向かおうとしていた黒い鳥を焼き尽くす。



「遠距離発動……、やはり神器とはとんでもない代物です」


 ホムラの様子を眺めながらエルメティアが呟く。杖とは自らが握っていなければ強力な魔法を発動しない。しかし目の前のホムラは杖である松明を投擲した上で魔法を発動させているのだ。


 ハーヴェリアの呪眼から出る黒い鳥は、出た直後に炎に焼かれる。このまま、シスターの目に触れてしまおうとホムラが進んでいると。



「デカイ!」


「ホムラくん!」


 ホムラの前にエルメティアの防壁が張られる。その直後に、防壁が軋み火花を散らす。



「危ない……、流石に呪いってのも本気か」


 自らも防壁を張りながら呟く。先生が守ってくれなければ負傷していたことだろう。

 

 そして今や、目から流れ出した闇は龍を思わせる形を作っていた。あまりに膨大な闇だ。



「ホムラくん、援護します」


「はい!来い、松明」


 地面に刺さっている松明を呼び戻して握る。先生が後ろにいるため安心して向かえる。


「ガァァィァァぁぁ!」


 龍が咆哮を上げて、黒い炎を吐き出して来る。呪いって声を上げることが出来るのかと思いつつ、歩みは止めない。


「ウォーターアロー、そして温度操作!」


 黒い炎に水の矢をぶつけて凍らせていく。黒系統の炎は、普通の水では消せないこともあると講義で聞いた記憶がある。


「喰らえ、全力の浄化の炎だ!」

 

 松明から光線のように炎が放たれて龍を消し去る。一気にシスターとの道が開ける。


「ホムラくん、油断しないでください。ここまではガレオン君もやれました。しかし、最後に呪いの大元が残ってます!」


 先生の言葉の直後、ホムラは自らが闇に囲まれるのを感じた。




「ガキか、まさか呪いである我をここまで追い詰めるとは。これで2度目の経験だ」


 黒い塊の様なものが言葉を投げかけて来る。


「呪いって自我とかあるんだな……ねぇ、シスターの身体から出てって貰えない?」


 周囲を見渡しても闇しか見えない。


「我とて自我を持てば、申し訳なく思うものだ。だが、自我があっても呪いの本能に流される。この身体からは離れられん」


「じゃあ、僕がどうにかするしかないわけか」


 松明を持ってに力が入る。


「そうだな、小僧。お主に我をどうにか出来るだけの力があるか?我を消すことが出来るのならばやるが良い。だが、出来なければ諦めよ。前に来た男のように、外に放り出す」


 ガレオンは、ここで闇を払えなかった様だ。


「なら、僕が終わらせます」


 と言いながら松明を構える。感覚だが、この呪いを消すためにはかなりの技量を求められる。


「やってみよ、小僧!」


「ああ……松明、《形態変化:聖なる剣》!」


 ホムラの松明が、剣に形を変える。豪華な装飾のなされた剣だ。それを構え、魔法を纏わせる。


「その魔力……、それに武器……。お前は」


「僕は、ホムラ。じゃあね、呪眼」


 ホムラが剣を振るうと白い炎が呪いを燃やす。


「ふっ……、これまでか」


 特に後悔のなさそうな呪いの声が最後に聞こえるのだった。



 剣を振るうと周囲の闇が晴れて、気がつけば、ホムラはシスターの目の前に立っていた。


 目は、ドロドロと闇が蠢いていたが何かが出てくる様子はない。とりあえず、ホムラはシスターを屈ませてその目に手を当てて隠す。


「浄化の炎」


 闇の残りカスすらも残さず燃やす。これで彼女の目は戻ることだろう。


「終わりました……か」


「はい、手をどけますね」


「ゆっくりで、お願いします」


 エルメティアや父様も近くにやって来ていた。ホムラは、ゆっくりと手をどけた。





 ゆっくりと暖かい手がどけられた。そして、1番に目に入って来たのは金髪の子供。その子に自分の視線は吸い込まれていた。


「見えますか?ホムラです」


「ありがとう、ホムラ君!ありがとうございます」


 気がつくと私は、驚いた表情をしている彼に構うことなく抱きしめていた。エルメティアや領主のローレイラ殿もいるが、最初に視界に入ったホムラのことしか見えてなかったのだ。




 突然抱きしめられて驚くものだ。悪い気はしませんがね。先生、ハンカチを噛むものではありません……。父様もニヤニヤと見ないでほしい。


「とりあえず、一件落着といった所ですね」


 とホムラは、一息つくのだった。

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