40話 僕は転生者です
「さてと……、喜ばしいような厄介なような……。とりあえず、話し合いを始めようか」
ホムラの父ローレイラが口を開く。場所はローレイラの書斎。そこには、ホムラは勿論のこと、父ローレイラ、母ミレイラ、そして先生であるエルメティアがいた。家族会議のような感じだ。
「本当なの?ホムラが白属性を使ったって」
「はい、ホムラくん。改めて見せてくれますか?」
ホムラの座る椅子の右には母様が、左には先生が座っている。3人で座るのには若干手狭な気がするが、喜ばしいので良いとしよう。父様は、正面で1人座りだ。
「はい!では、出します」
と言いながらホムラは自らの指先に白い炎を灯す。その炎をエルメティアはじっくりと、見つめ続ける。
「ええ、間違いなく白属性……浄化系統です。この状態は、浄化と火の複合ではありますが、ホムラくんが2属性の魔法が使えることに変わりはありません」
エルメティアが、ローレイラとミレイラに答える。
「そうだよな……、目の前でホムラが呪帯を浄化した所も見た。まさか、2属性使いとは。後天的に魔法を得るものなどいただろうか?」
「まさか、前にホムラくんが後天的に魔法を得ることが出来るかと聞いたのは……」
思い出したように先生が聞いてくる。そういえば、聞いたことがあった。興味がありますという風に繕って聞いたが、実際は自分が複数の属性が使えることになったことに驚いていたからだ。
「はい、ちょうど複数属性持ちの話を聞いた後だったので……どうしても言い出せなくて」
「しかし、不思議ですね。後天的に魔法スキルが現れるなど聞いたことがありませんし、この前王都に行った際もスキルの鑑定を行いましたが紅属性の適正だけだったはず」
1属性内では、変化が起きることもあるらしい。ホムラは、火系統しか使えなかったが、エルメティアとの修行で温度操作系統も使えるようになっていた。そのため、そこだけは鑑定で変化していたのだ。
「ホムラは、何か知らないか?どうして2属性が使えるのか」
まあどう考えても、あの厄介な神であることは確実だろう。これを話して良いものかと思うため悩ましい。
「この顔は、わかってるのね。お母様はホムラの表情でわかるわよ」
頬をムニッと触られる。よくわかっていらっしゃる。
「はい、僕はどうしてか予想はついてます。でも驚かせてしまう内容かもしれないです!」
「ははっ!父様はそうそう驚かないぞ?ホムラが転生者だとか言ったら流石に驚くけどなぁ!」
どうして正解を言ってしまうのだろうか。なんというか雰囲気をぶち壊された感がある。
はぁ……とホムラが頭をぽりぽりとかきながら、はいと頷く。
「まさか……」
息を呑む、先生と母様。
「マジか……」
なかなかに驚いた表情をしてくれる父様。
「正直に話します。僕は、転生者です」
期待通りの驚き方はしてくれているようだ。
「いつから、記憶があったんだ?」
「生まれた時からです。生まれて母様が僕を抱きしめてくれたことからしっかりと覚えています」
「そ、そうなの……、なんだか恥ずかしいわね」
まあ赤ちゃんの目の前でラブラブしている所も見ているので、それも見られていたのだと思い出しているのかもしれない。
「僕も、前世の記憶があるのにお漏らしとかを変えられるのは恥ずかしかったです」
大きい方を漏らした時の羞恥心など凄かった。メイドさんとか優しいから良いけど。
「通りで賢すぎると思った訳だ。はぁ、まさか転生者とはなぁー」
「では、ホムラくんは神に?」
「はい、会いました。その時に魔法が使えることを教えて貰ったんですが……、まさかここまで使えるとは」
もう少し詳しいことを教えてくれれば良いものを、あの神の説明不足さは残念だ。
「転生者なら、あそこまでの魔法を使えてもおかしくはないですね」
「いえ、先生が教えてくれなかったらここまで使えてませんよ!ありがとうございます、エルメティア先生」
スキルが有れば使えるというわけではない。彼女に習ったお陰でここまでやれるようになった。彼女には、海よりも深く感謝だ。
「ホムラくん!」
嬉しかっのだろう。急にエルメティアに抱き締められる。親の前だとなかなかに恥ずかしいものだ。
「ホムラが2属性使うことが出来るのは、わかった。まさか、我が息子がここまでの才能を持っているとは。どう報告したものか……うーん、報告すべきかなぁ?」
父様が頭を捻りまくっている。それは悩むものだ。特に帝国なんかには情報を流さないでほしい。
「凄いわ、ホムラ。2属性だなんて!きっと、大きくなったら何か成し遂げそうね!」
母様も嬉しそうだ。母様が喜んでいると、自分も嬉しいためつい調子に乗ってしまいそうだ。
「いえ、母様!2属性じゃないですよ。5属性です」
目の前に5色の炎を出して答える。空気が固まるのを感じた。
つい調子に乗ったと反省するが、ホムラは、とんでもない爆弾を放ってしまった様に感じるのだった。




