表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/53

38話 素直に謝りましょう!

「シスターハーヴェリア、それは一体どういうことなんだ?」


 彼女の発言に静まり返っていた空気から父様が復帰して聞く。既にホムラの心臓は高鳴りつつあった。これは、良くない流れだと……


「私は目が見えないのですが、魔力を感知することに関してはかなりの自信を持っているのです。エルメティアなら良く知っているでしょう?」


「え、ええ……、私にもない貴方だけの才能と言っても良いレベルのものですね。疑いようがないことは分かっています。ですが……」


 驚いた表情のエルメティアがホムラの方を見る。出来ればポーカーフェイスでいたいが、顔に焦りが出ているだろうか?


「全身を魔力で覆ってましたね。まだ子供なのに、素晴らしい技量ですね。でも、私達は聞かなければなりません、君が山賊の居所を掴んだキッカケを」


 ホムラの前に屈んだハーヴェリアが頭を撫でてくる。


「ホムラ、本当にお前なのか?シスターに手紙を渡したのは」


 静かに父が尋ねてくる。これは下手したら怒られるかもしれない。


「えっと……知らない冒険者に渡してくれって手紙を渡されて……」


 咄嗟のことで雑な言い訳しか浮かばない。


「ホムラくん、魔力が揺らいでます。嘘をついてますね」


 お見通しだという様にエルメティアに言われる。魔力で嘘まで見抜けるなんてズルいものだ。


「ホムラ、そもそも手紙を貰ったとしても時間的に考えるともうお前は寝てるはずだろう?どうして外にいたんだ?」


 しまったとホムラは思う。すでに、ハーヴェリアに見抜かれていた時点で詰んでいるのだ。言い訳をするだけ自分の信頼がなくなっていくだろう。


 普段はふざけた様子の父様も真剣そのものだ。怒られるのは確定だろうが、正直に話すしかないのだろう。


「私が感じたのは確実に貴方の魔力でした。本当のことを話してくれませんか?」


 先生が信頼を寄せるほどの相手だ。ここから、自分じゃないという方向に持っていくのは不可能だろう。



「えっと……、1人で森に入っていたら灯りが見えたのでバレない様に近づきました。それで、山賊の話が聞こえたので、なんとかしたいと思って知らせました。シスターなら目が見えないからバレないと思って」


 淡々と言葉を紡ぐ。シスターの表情は読み取れないが、父様やエルメティア先生は驚いた表情をしている。それは、まだ6歳の子供が夜に1人で森に入りましたとなったら驚かないほうが不思議ではあるが。


「ホムラは、なんで森にいたんだ?それも夜に!危ないとわかっているだろう?」


 父は、ホムラがそれくらいの判別がつくことくらいならば良くわかっている。


「森で魔法の練習をしていました。僕なら、森の魔物程度には負けません。例え夜でも!それだけの自信があって森に入りました」


「下手したら山賊に殺されていたかもしれないんだぞ?」


 そりゃそうだ。そう思うのは当然だ。


「負けません、アイツらにだって勝てる自信があった。でも、僕が戦ったらバレるから。もうバレてしまいましたけど」


「ホムラくん……」


 先生はかける言葉を探している様だが、見つからない様だ。


「確かに、貴方の言葉は正しいのでしょう。ですが、貴方はお父様の気持ちを考えてますか?大切な我が子が夜の森に入っていただなんて何かあったらと思えば心配するのも当然です」


 自分は転生者。神様に神器を貰っている。だがら、森の魔物程度に負けることもない。だが、僕はホムラ・レーミングなのだ。ローレイラ・レーミングの息子。まだ6歳なのだ。心配されるに決まっている。色々言ったけど、悪いのは自分だ。


「ごめんなさい、父様。もう夜に森に入ろうとはしません。こんなにも不安な顔をさせてしまった自分が情けないです……」


 仕方なし、謝ろう。残念だが、森に入るのは大きくなるまでお預けだ。


「領主としては、山賊のことを知らせてくれてありがとう。だけどな、父さんからは灸を据えてやらないとな」


 パシッと額にデコピンを喰らわされる。意外と痛い。


「素直な子ですね。優秀な子です。きっと救いをもたらしてくれると思います」


「シスター、息子が申し訳ない」


「いえいえ、多くの人が救われました。それに、お父様とお母様にたっぷり怒られるでしょうから、私からはお礼だけにしておきますね」


 デコピンで赤くなっている額にキスされた。とてつもないご褒美に、顔全体が赤くなる。


「光栄です……、プシュ〜」


「むむ……」


 先生が怖い顔に。




「ホムラ、後で母さんも交えてしっかり話をするからな?母さんは怖いぞ?」


 後でお説教とは勘弁して欲しいが仕方ない。とりあえず、ぶん殴られたりしなくて良かったと安心する。この世界だと案外村の子供が悪さをして殴られてる所など見飽きている。自分なら、魔力障壁で守るだろう。


「手紙のこともわかりましたし、私は、助けた人達のケアに向かいましょう。少しでも心も救わなければ」


 とハーヴェリアが立ち去ろうとした所、扉が開かれる。


「大変です、シスター。助けた子供が苦しみ出して!」


 苦しそうに息をする子供を抱えた教会騎士の人がやってくる。


 これはまた一波乱ありそうだなとホムラは思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ