36話 教会騎士に頼ろう
「どうにかあの場所に戦える人を誘導するしかない。戦える人達……」
冒険者達の生活スタイルは自由だ。今頃酒場で飲んだくれている可能性すらもある。街に駐留している騎士も急に動けるとは思えない。
「やっぱり教会騎士に頼ってみるか?元々森に入る予定なんだ。1番動ける可能性がある」
とんでもないことに巻き込もうとしている気がするが、人命が優先だ。
シスターハーヴェリアは、教会の中で祈りを捧げていた。彼女は、空いている時間を良く祈りに捧げていた。呪眼というものを得てしまっている罪深き自らの贖罪を祈りいつか救いが訪れることを祈るのが日課になっていた。
時間も時間であるため、周囲には誰もいない。目が見えなくとも、ハーヴェリアにとっては感覚的にわかっている。
「誰でしょうか、この時間にお祈りですか?熱心ですね」
人の気配を感じて後ろを振り返る。誰かはわからないが、暖かい魔力を感じた。だが、相手は特に言葉を発する事もなく教会の床に手紙を置いてすぐさま走り去ってしまった。
「なんだったのでしょうか?しかし、困りましたね。誰かを呼ばなければ手紙の文字は読めません」
彼女はすぐさま移動を始める。
教会の奥には、2人部屋がいくつも用意されており、教会騎士達はそこで寝泊まりを行っている。
ハーヴェリアは、借りている自室の扉を開ける。するとこちらに視界が向いたのを感じた。
「お祈りお疲れ様です。今日は少し早かったですね?」
「起きてましたか、ネイチス。いえ、少し急用と言いますか。これを読んで貰えませんか?」
誰かわからない人物が置いていった手紙。それを同室のネイチスに見せる。彼女は、ハーヴェリアが信頼する人物であるため、手紙がどんな内容でも大丈夫だろう。
「もしかして誰かに恋文でも貰いました?では、早速読んで……え?これは……どういうことですか!」
「何が書かれてるんですか?」
「森の奥、大まかな場所の絵が描かれてますね。そして、山賊と思わしき者が複数。奴隷商人を殺害……奴隷の乗せられた3台の馬車を奪い帝国に売りに逃げる可能性あり。明け方には現在地を経つ予定。どうか力をお貸しいただきたい。囚われた者の中には女もいる。早急な救助をお願いしたい」
ネイチスが手紙を読み上げる。もしも目が見えているならハーヴェリアは彼女の驚いた表情を見たことだろう。
「これは、本当だとすると。急がなければ……」
「しかし、信用できますかね?誰が持ってきたかわからないのですよね?」
「ええ、もう一度遭遇すれば私の直感で魔力を読み取れると思いますけど」
ネイチスは、頭を掻きながら考える。本当であれば厄介な問題だ。特に時間がないのが厄介だ。
「偵察を出しましょう。寝ている子を起こしてくれる?何もない、イタズラならそれはそれで安心という事で」
「わかりました、場所は絵があるのですぐに向かえるはずです。先鋭を向かわせます」
「お願いね。私は、レーミング男爵に報告しにいってくる。国家魔法使いエルメティアの助力も得られるかもしれないし」
すぐさま、男爵の屋敷に向かうための準備を始める。ネイチスが素早く他の教会騎士を起こしてくる。
「偵察の子達は、注意してお願い。深追いはしないようにね。誰か私に2人ほど付いてきてくれるかしら?」
パパっと指示を出してハーヴェリアは、男爵の屋敷に出発する。他の教会騎士は、待機だ。大勢で動くと、敵に状況が伝わる可能性もある。
ベッドに入って寝たふりをしているホムラに廊下の方からバタバタと音がするのが聞こえた。何やら動きがあった様だ。
部屋の扉に耳を当てて伺っていると、先生の声が聞こえた。
「敵は、森というわけですね。そしてすでに確認が済んでいると……」
「ああ、力を貸してもらえないだろうか?講師として招いているのに申し訳ない」
父様と話している様だ。
「いえ、構いません!危険な人物がいるのなら見逃すわけにもいきませんね。それに、この領にも愛着を持ってますので、私も力になりたいですよ」
どうやら先生も対処に向かう様だ。相手は可哀想なことにこちらの過剰戦力に押し潰されることだろう。
これは確実に、奴隷を救い出せたな!とホムラは確信するのだった。
これで自分はお役御免だろう。わざわざ教会に赴いて、ハーヴェリアに手紙を渡したのだ。ちょうど1人で祈りをあげていたのは運が良かった。タイミングの良さを神に感謝したくらいだ。
「明日、起きる頃には解決してるだろうな……ふぁ、ねむい……おやすみ」
流石に子供の眠気に限界が来た。誰に対してでもない挨拶をしてホムラの意識は沈んでいくのだった。




