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31話 お嬢様からのお誘い

「はい、下級貴族は退きますね〜。すみませんね、お邪魔した様で失礼」


「貴様!人の話を聞いているのか?」


 すぐ怒る。どうしてそこまで短気なのか……頭の血管切れちゃうよ……


「聞いてますよ。ギリーアに、どけ!下級貴族と言いましたね。むしろ彼よりも僕の方が下級貴族ですから退きましたが。なにか?」


 所詮はわがまま坊主。僕の相手ではない。


「ぐぬぬ……うるさい!さっさと教えぬか!下郎」


 言葉遣いの悪さにイラっとするが、冷静冷静と心で唱える。暴力でも働こうものなら父様の迷惑にもなってしまうからな。


「あれは、エミーシャ様のために用意したものです。教えることは出来ません!」


 教えるつもりもないし、教えても出来るものでもない。


「貴様!地位もわからんのか?貴様など!」


「騒がしい」


 良く通る声が飛んでくる。ホムラ達も一斉にその声の方を見ると、そこに立っていたのは本日の主役エミーシャ様だ。


「エミーシャ様!いや、この下級貴族が分を弁えない態度を取ったもので」


 慌てた様で答える貴族の傲慢子息君。公爵令嬢相手にはペコペコだ。


「良く言うわ。貴方、私のパーティを台無しにしたいの?」


「そうだぞ、貴様!」


 いや、お前だろ!なんで俺が悪いみたいに言ってんだよ。


「何を言っているの?お前よ、お前!迷惑だわ」


 指さされてやんの。顔が青くなる傲慢子息君。流石に気づけよとホムラは思う。どうしたものかと思っていたのでエミーシャが介入してきたことは幸運だ。


「さてと、ホムラだったわね。2人っきりで話さないかしら?貴方に非常に興味があるわ」


 おお!と周囲からは声が上がる。なんか名誉なことなのだろうか?正直な所、Sランク冒険者とお話ししたいのに。丁重にお断りしたい。


「エミーシャ様、とても嬉しい申し出で……」


「もちろん、来てくれるわね?」


 圧力!ゾクっと来ましたよ。もう着いてこい!と言っているようなものだ。



「はい、お誘い頂き感謝致します」


「ええ、では行きましょうか」


 と言いながら歩き始めるエミーシャ様。めっちゃ目立ってますよ、僕達。貴族達からの視線も凄まじいものだ。悔しそうな顔をしている者もいる辺り、みんな自分の子供が誘われるのを狙っていたのかもしれない。


 父様はニヤニヤした表情で俺を見ている。冒険者との交渉はしてくれただろうか?してなかったらしばきたい。


 エルメティア先生は……噛んでたハンカチが破けた!何を悔しがっているんだ。



 大広間から出て、他の部屋に向かうようだ。実はエッチなお誘いだったらどうしようかと考えてみるが、自分の身体は6歳。そんなこと出来ません!



2人きりとはいえメイドさんが着いてきています。実はうちのメイドと同じで戦闘も出来る系だろうか?と疑問に思ってしまう。


「お水を持ってきてくれる?」


「はい、かしこまりました」


 メイドさんが行ってしまう。


「ここよ」


 と言いながら扉を指さすお嬢様。場所を言いながら、動かない。


「ああ、失礼」


 自分に開けろと言うことだろうか。ホムラが扉を開けると、さっさと入ってしまう。


「失礼します」


 と言いながらホムラが中に入ると、そこには豪華なソファとテーブルが置かれている部屋だった。金の使い方が凄いなと感心する。


「お嬢様、お水をお持ちしました」


 水差しとコップを置くメイドさん。お菓子も持ってきてくれたようだ。


「下がって良いわ、ありがとう」


「失礼します」


 すぐさまメイドさんが出て行ったため2人きりになった。正直どんな話をしたらいいのかわからない。貴族の話題には疎すぎる。


「だぁぁぁ、疲れたぁぁ!はぁぁぁ。ダルいのよ」


 ホムラは耳を疑った。荒っぽい言葉がどこから聞こえたのか見回してしまう。だが、どう見ても言葉は目の前のお嬢様から発せられている。


「お、お嬢様?」


「何よ!ほらっ、さっさと水を注ぎなさいよ」


 人使いが荒い。なるほど、パーティに出てた時の態度は仮面だったようだ。お嬢様に夢を見過ぎていたのだなと思う。


 とりあえずコップに水を注いで渡すと、すぐさま飲みだす。


「ゴクゴクゴク……ぷはぁ!お腹もすいたし、喉も乾いてたのよ!ずっと座って笑ってるのも疲れるっての」


 いい水の飲みっぷりだ。思い返せば、多くの貴族の挨拶に応えていたため食事の暇もないといえばない。


「はぁ……」


「ほらさっさとおかわり注ぎなさいよ!」


 ドンっとコップを叩きつけるエミーシャ様。もう、ここは貴族の屋敷ではなく酒場の様な気がしてきた。


「はい、どんどん飲んでください」


 早く帰りたいなと思いながら、どうするべきかホムラは考えるのだった。

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