22話 謎の女現る
本日2話目_(:3 」∠)_
魔力検査を終えたホムラとエルメティアは、運動場にやって来ていた。
「ファイヤーボール!」
「ウォーターボール!」
10歳位の子供が、的に向かって魔法を撃つ練習をしていた。外れることもあるが、命中している数の方が多い様だ。
「エルメティア先生!お疲れ様です。こちらに戻られてたんですね」
声を掛けてきたのは、この学校の先生だ。若い栗色の短髪の男の人だ。正直、モブっぽい顔つきだ。
エルメティア自身もこの学校で教えることもあるが、貴族からの依頼で家庭教師として指導することの方が多いため学校にいるのは珍しいのだ。
「ええ、私の弟子の魔力測定をしようと思いまして。それも終わりましたし、授業の様子を見学させてもらおうかなと思いました」
「ホムラ・レーミングと申します!よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。
「ご丁寧にどうも、レーミングといえば男爵家の方ですか!椅子もない場所で申し訳ありません」
「ホムラくんは、気にしませんよ。悪い態度の貴族とは違いますからね」
面倒な貴族もいる様だ。関わり合いにはなりたくはない。
「よろしければ、エルメティア先生からも指導して頂けますか?生徒も喜びますので」
「少しの間でしたら、やらせて貰いましょうか。ホムラくん、この運動場内だったら好きに歩き回って良いですよ。流れ弾には気をつけてくださいね?」
「わかりました!」
「大丈夫でしょうか?ホムラ様に魔法が飛んだら危ないかと」
モブ先生の意見は最もだ。ここで貴族の子供に怪我をされたら困ることだろう。
「大丈夫ですよ。ホムラくん、構えて」
と言った後に、先生から火球が飛んでくる。当たれば大怪我間違いなしだ。
「よっと……」
ホムラは、魔力障壁を張り火球をあっさりと防いだ。これには、モブ先生も驚いてくれた様だ。
「今のを防ぐんですか!ホムラ様は何歳でいらっしゃいます?」
「6歳です」
「見る目のない私でもわかります。これは、将来有望ですね」
「ええ、私を超える魔法使いになりますよ」
エルメティアは、ドヤっと答えた。
エルメティアが生徒たちに魔法の使い方を指導しているのを眺めながら、ホムラはのんびりと運動場を歩く。
案外、人通りもあるらしく運動場の周囲をランニングする者や魔法の練習をしている大人もいる。
「わふっ……あ!すみません!」
しばらく歩いていると、目の前にいる人にぶつかってしまった。というか、いつの間にか目の前にいたという感覚だ。先程まで、そこには誰も立ってなかった様に感じた。
「んふふ……、可愛い子。君の名前を教えてくれる?」
フードから覗く黒髪の妖艶な女性だった。細い傷ひとつない綺麗な白い手が、ホムラの頬をスリスリと撫でている。恥ずかしく、照れて赤くなりそうだ。
「名前?ですか」
「そうそう、可愛いボクの名前教えて〜」
顔を近づけて言ってくる。なんか良い匂い。冒険者の男など、これであっさり陥落だろう。
「知らない人には、名前を言いません!」
だが、答えぬ!なんか、おやしい。ハニートラップという奴かもしれないと思う。
「あらあら……、残念ね〜」
「父様は、こういう感じのパターンが1番危険って言ってましたので」
モテる騎士は辛かったぜ、なんて言っていたので軽く耳を傾けていたが役に立つものだ。
「ふふふ、また会いましょう。このまま居ると、後ろのおばさんが怒るから〜」
「誰がおばさんですか?」
いつの間にか自分の後ろに立っているのは、先生だ。どんな動きをしたら、生徒のところから来れるんだろうか。
(てか、先生の顔こわっ……こえぇ)
いつもの優しい顔はどこへいったやら。そこにあるのは、鬼神の如き顔だ。
「あらあら、それはあなたのことよ。エルフさ〜ん。結構歳食ってるんじゃない?」
「これでも、ピチピチなんですよ。それにしても、彼に何か用ですか?」
先生は、いつでも杖から魔法を放てる様にしている。何やらやばい空気?
「可愛い子に声をかけてただけよ。流石に、国家魔法使いは相手が悪いわね〜。じゃあね、ホムラくん。また会いましょう」
女性がバックステップした直後に空に浮き上がり飛んでいく。一体なんだったやら。
「ホムラくん、何かされてませんか?」
「はい、さっきの人はなんだったんでしょうか?」
異常がないかの確認のためだろうが、身体中を触ってくる先生。
(待て、今どさくさに紛れてお尻触ったな……)
「不審者とでもしておきましょう。それにしても、ホムラくんは彼女に名前を名乗りました?」
「えっ?名乗ってないです」
そう答えて、ハッとする。彼女は、最後に自分の名前を呼んでいた。エルメティアも、ホムラの名前は出していない。だが、名前を知っているのはどういうことだろうか?
「まあ、私の攻撃範囲内でしたので、引いた様ですが……なんなのでしょうか?」
また会いましょうとか言ってたけど、正直会いたくない。良い匂いはしたけど、地雷臭もした。色々な意味で危険人物だろう。
「とりあえず、変態でしょうね。嫌いですわ」
とホムラが言うと、先生はビクッとしていた。どうやら変態1号には、自覚がある様だな……とホムラは思うのだった。
「んふふ、んふっ……濃密な魔力ぅ。あの子、ほしいわぁ……」
ホムラは、またどこかでまた会うことになるのか……
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