20話 お知り合い
やって来ました!王都魔法学校。
「思ったより、小さい」
学校見たホムラは感想を呟いた。ラノベなんかで出てくる魔法学校は、これよりも遥かに広大な敷地面積を持っている。だが、目の前にあるのはそこそこの運動場と、小さな校舎のみである。
「ええ、そうなんです。魔法使い自体がそこまでの人数いるわけではないので、このような規模の学校になりますね。魔法国家アルブスであれば、とてつもない大きさの学校がありますが、我が国ではそれは厳しいものです」
魔法国家アルブスとは、魔法使いだけが入国可能な国らしい。日夜、魔法使いの研究が盛んになっており偶に先生も訪れるとのこと。
魔法使いの子供を産むことを強制される帝国の魔法使いがよく亡命するとか……
「運動場で魔法を使ってるのって、ここの生徒ですか?」
的に向かって何人かで魔法を撃っているのが見える。火、水、風とそれぞれだ。
「ええ、10歳になったらここに通い始めるのですよ。まだ、的に当てるのは厳しいようですね」
運動場の様子を眺めながらエルメティアが呟く。
この学校に通っているのは、平民とのこと。貴族は、基本的にホムラの様に家庭教師として魔法使いを家に招くためこの様に通学することはないらしい。
向上心の高い者は、魔法国家であるアルブスに留学をすることもあるとのことだ。ホムラとしても一度訪れてみたいとは思う。
「さて、ホムラくん。測定に行きましょうか!それが終わったら、見学しましょう」
「はい、先生」
校舎に入り、魔力測定の魔道具が置いてある部屋に向かう。学校の中も、どこか元の世界の小学校の様な雰囲気があり心が落ち着くものだ。
そこまで広くもない廊下に、ホムラとエルメティアの足音だけだ響いていた。授業の音も聞こえてくるもんかな?と思ったがそうでもないらしい。
「ああ、そういえば今日は、クラスによっては、ギルド見学を行なっているんですよ。遠足みたいなものですね!」
「楽しそうですね!見学とかさせてくれるんだ」
荒くれ者が集まりそうな雰囲気があるものだが、治安的には良い場所なのかもしれない。
この世界の子供の憧れの職業は、冒険者らしい。やはり格好いいからだろう。そして、年齢を重ねることで、ギルド職員になりたいとなるなど道が分かれていくようだ。
(そういえば、幼稚園に行ってたときは消防士になりたいなんて思っていたものだ。その内、別の夢に変わってしまったが)
「おやぁ?もしかして、エルメティアせんせーじゃないですか?おお、おっひさーです」
陽気な声が廊下に響いた。
こちらに向かって、女性が悠々と歩いてくる。身体は鍛えているのだろう、体格が良い。髪は、ナイフで雑に切っているのか粗野な感じがする。なかなか野性味のある人だ。
「あらぁ?スズールじゃない。こんな所で何をしているのかしら」
どうやら先生のお知り合いの様だ。会釈会釈。
「ちょいと、届け物で保健室に。それにしてもなんだ?国家魔術師の貰い手無しエルメティア様は、とうとう子供に手を出したか?」
ボン!直後、スズールという女性の目の前で爆発が起きる。どうやらエルメティアが魔法を放った様だ。
対する、スズールも魔力障壁を貼って爆発を防いだらしい。
あまりに早い攻防、俺は見逃した。
「デートのお誘いは、ホムラくんからです!健全なお付き合いです」
ムンっと胸を張ってエルメティアが答える。
というか、付き合ってるみたいなこと言ってますが……
「喰われねー様にな?」
こちらに向かってスズールがウインクしてくる。ホムラは、苦笑いを浮かべる。
「それで、実際の所エルせんせーは、なんの用事で?」
「ええ、この子。ホムラ・レーミングくんの魔力測定です。ついでに、学校内の散歩といった所です」
「へぇ〜、レーミングってぇっと。あ?もしかして、ローレイラ団長の息子?長男は、もう少し歳上だったよな!ていうと、ミレイラの方か!」
どうやら父様と母様のことも知っているようだ。世間は狭いもんだ。
「はい、えっと。スズールさんは、父様達とは……」
「彼女は、元々騎士団に所属してたのよ。今は、のんびり冒険者をやってるけど実力は、相当のものよ?」
どうやら父様の元部下の様だ。
「たくっ、団長の奴!子供が産まれたなら教えてくれても良いじゃねーか」
「あなたが、転々としてるからでしょ」
なかなか自由気質な人らしい。しかし、そういうスタイルにも憧れるものだ。ぜひ、冒険の話など聞きたい。
「お!興味ありそうじゃないか!今度、遊びに行くから話そうぜ」
ぽんぽんと頭を撫でてくる。粗そうな人に見えたが、優しい手だ。
「はい!ぜひ」
楽しみが増えた。
スズール・フェイル。彼女は、魔力操作に関しては、エルメティアも一目置く存在である。魔法スキルを1つ持っているが、本人は〈身体強化〉のスキルも持っているため、魔法より近接戦を好んでいるとのこと。
後に、ホムラに近接戦闘の訓練をつけてくれることになるが、もう少し先の話だ。




