夜の詩姫
辺りが暗くなり夜が支配する。これからの時間はただ圧倒的な不利な条件が続く。対の属性の【朝】は使えない。ただこれで俺も使える手札が増えた。
「———星降剣」
「——黒夜盾」
天から降る星の剣が漆黒の盾に阻まれる。
「—————月蝕剣舞」
「——————夜空舞杖」
神をも封殺する圧倒的な剣技を夜という重圧が絡めとるように杖が防ぐ。【星】と【月】の属性は基本的に夜の方が強いはずだが…夜ほど圧倒ではないらしい。当然だが。
「夜行詩姫 行軍歌 鎮魂歌」
もう一段濃密な攻撃を仕掛けようとするも先にディーヴァのマーチとレクイエムを発動させる。マーチが自分を含む味方の全能力の大幅上昇でレクイエムが味方の自然回復量上昇・相手の戦意及び能力の低下。
相対的に言えば倍近くの能力値差が出来る。だが関係ない。一行動ごとに呼吸を入れて霊脈からマナを吸収し魔力《MP》へと変換する。その魔力の一部を身体強化に廻す。これだけ強い霊脈からなら3秒もあれば今の俺なら全開だ。完全状態だと霊脈が枯れてしまうけど。どうせ電脳空間であんなチートな能力値は使えないだろうし。
「夜想狂乱夢想」
その瞬間暴力的な力が憑依する。夜想狂乱夢想は俺自身が過去に蓄積する記憶から自由に引き出し一時的に自分の力としてその身に憑依させる。いわば能力面の真似だ。
俺はミミアと自分の共鳴現象を憑依させる。レゾナンスは本来、互いがなんらかの形で物理的に接触している状態であり互いの肉体を介して互いの能力を自由自在に使用するもの。ようは特性属性【夜】の魔法の行使も可能になるわけだ。
「夜行詩姫 行軍歌 鎮魂歌」
バフ・デバフを仕返しする。これにより俺のステータスが超大幅にリードする。現在の俺と過去の俺にミミア3人分の能力値とバフ・デバフの格の違いによる暴力だ。
「止めだ」
剣に魔力を馴染ませる。
たった一撃。
ただ一撃。
その一撃にさまざまな想いを込める。禁忌の力も解禁する。否解禁しなければ討つことが出来ない一撃。
「終焉の救済剣」
光り輝くその剣で彼女の胸を深く突き刺した。