表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界だろうが働かん!  作者: おしり
2/7

第二話


「どわぁ!?」


 素っ頓狂な声を上げて放り出された俺。


「き、きたああああああああああああ!!!!!」


「うるさっ、つーかなに?ここどこ?何系の世界?」


 俺を待望していたかのような大声を上げた少女に聞いた。

 ふっ、俺が来たからにはもう安心だぜ。(イケボ)

 待ち望んでいた展開に心を震わす。


「そんなこといいから早くアイツをやっつけてよ!!」


 待て待てそう焦るな、俺にはこの金属バットが……って無かったんでしたね、すんません。十徳ナイフはポッケにあるけど。


「まあいい、どんなヤツが俺の相手をして……く、れ……」


『ブッシュッ、グオルゥゥゥゥ……ガアァッッッ!!!!!』


「ヒエッ……」


 デカい、ゴツい、なんか俺三人分くらいの棍棒持ってる、無理。


「なんだよアレはよぉーーーーーー!!!」


「ゴブリンのボスよ!!!見れば分かるでしょ!!!」


「そうか!!よし俺は逃げる!!」


 全速力で俺は走り出した。なんかここ森だしよく分かんないけどとにかく走り出した。

 いやー、逃げグセがついてるとこういう時便利なんだよなぁ〜みんな知ってる?正常性バイアスって?コレ意識しとくだけでも危機を逃れられる可能性が増えるのよね。


「ちょっ、ま、待ちなさいよ!!!」


「待ってられるか!!!ブッ殺されちまう!!!」


 どうみても敵いっこない中肉中背の青年を戦いに駆り出させようとしているサイコパス少女が追いかけてきた。怖いね、異世界。


「アンタ召喚された身でしょうが!!!少しは力持ってるはずでしょ!!!」


「何わけわからんこと言ってやがる!!!超がつくほど平凡マンじゃい!!!」




ーーーーー




 無我夢中で走り回った結果、どうやらあのデカブツは撒いたようだ。

 森は抜けられていないが足で撒けるのが分かっただけでも少しだけ救いがある。


「はぁ、はぁ……」


「なんだ、体力ないな。」


 ぼくちゃんちょっぴり運動神経には自信があるのよね。


「う、うっさい!つーかアンタなんで力を使わないのよ!」


「おい叫ぶなよ……せっかく撒いたのに見つかっちまう……」


「くっ……」


 サイコパス少女はバツが悪そうに一瞬たじろいだが静かに俺に問いただす。


「アンタ、なんの力なのよ」


「さっきも言ったけどあんな化物と戦う力なんて持ち合わせてないんだが……」


 んなもん俺だって欲しいやい!聖なるイカヅチで打ち滅ぼしたいわ!あんな化物!


「それはアンタの元いた世界の話、ここに来たからには……!」


 そう言ってサイコパス少女は俺の上着をひん剥こうとする。え、なに?この子痴女?サイコパス痴女?


「な、なにすんだよ……!」


 ちょっぴり嬉しいクセに頬を染め嫌がるフリをする俺。


「なに勘違いしてんだか知らないけど……アンタ、自分の身体、見てみなさい」


「……うわ何コレ!!キモッ!!」


 気色悪い模様が俺の胴体に刻まれていた、油性ペンで書いたわけではなく。


「……これは風系ね」


「な、なんだよ」


「アンタの力は風使いっていったところね」


「……」


 サイコパス少女の言った言葉を頭の中で噛みしめる…………そうか。


 「詳しく説明して!!!!」


 「……なんで目が活き活きしてんのよ」



ーーーーー




「ふーんなるほどねぇ〜『風』かぁ〜」


 もう心はウッキウキである、最高の気分である。

 どうやらこの世界に召喚された者は身体に紋章を刻まれそれに記された力を使うことが出来るんだってさ!!素晴らしいね!!


「だからアンタはその力で戦えたんだからね、倒せないにしても何かしらは出来るのよ」


「おお!出来たぞ!!小さなつむじ風!!いや!!旋風が巻き起こっている!!!」


 シュルシュルと小気味良い音を立てて手のひらに浮かぶ力に俺は舞い上がる。


「聞いてないし……まあいいわ、ここからさっさと出て村に戻りましょう……」


「村?それって俺も行っていいの?」


 この力のせいで魔女狩りみたいなのとかないよね。


「当たり前でしょ、アンタはこれから私と旅に出るんだから」


「は?」


「魔王討伐よ決まってるでしょ、さっきのヤツの親玉よ」




 魔王、討伐かぁ〜…………魔王か〜…………魔王…………さっきのデカブツの、親玉か……………





「やめとこ?」


「なんでよ!!」


「いや無理でしょ」


「そんな事ないわよ!!」


「いや、だってさっきのデカブツの親玉を討伐するのにその下っ端のデカブツを討伐できないんだし……」


「そ、それはこれから旅をして強くなるのよ」


「なれんの?」


「なるのよ!!じゃなきゃ人類滅亡よ!!」


『メツボーヨ!!』


「マジかよ滅亡かよ……なんだか面倒な世界に来ちゃったなぁ……しかしそういうのは伝説の勇者に任せてさぁ……」


『マカセテサ!!』


「ん?」


 なんだ、このちっこいの。ブッサイクだなオイ。


「うわ、やっば……見つかっ」


『ゥギィーーーーーーーーーーーーー!!!!!!』


 なんだなんだうるせーな!騒ぐとあのデカブツがっ……てその子分か!!


『グゥーフ……』


 はい臭そうな息を吐きながら来ました、例のデカブツです。


「あ、ああアンタ今度こそ逃げんじゃななないわよ」


「いやお前ビビりすぎだろ……一体何しにここに来たんだ」


「ゴ、ゴブリン討伐よ……」


「じゃあお前があのデカいのやれよ」


「それは無理ね、私は小さいやつをやっつけてたの」


「お前それ弱いものイジメじゃねえか」


「う、うっさい!!いいからアイツをどうにかしなさい!!」


 まあやってみようか、俺の風で八つ裂きにしちゃうもんね!!


「ぐぬぬぬぬぬぬぬ……………」


 なんかよく分からないけど強く念じると手のひらの旋風がどんどん大きくなっていく、んでもって渦を巻く力も強くなっていくのが分かる。


「おいおい!!これスゴくね?」


「やればできるじゃないの!!よし、アイツにぶちかましてやりなさい!!!」


「かしこまり!!!」


 小規模な竜巻と化した俺の力を思いっ切りブン投げてやった、俺の手を離れた竜巻は周りの砂や小石を巻き上げてデカブツを包み込んだ。


『ヴォ!?ゥグォ!ヴォオォ!!!』


 お?効いてんじゃね?風が収まるころには八つ裂きになった野郎の亡骸が転がってんだろ!


「はい余裕〜」


「うんうん!その力があれば魔王討伐も夢じゃないわ!」


「いやそれはやめとこ、な?」


「なんでよ!!」


「怖い」


「このヘタレ!!!」


 なーんて言ってる間に俺の竜巻が収まってきた。すまんな、お前に恨みはないが俺に会ったのが運のツキってやつさ。(イケボ)




『ヴォ?』




 しかし、そこにはポリポリと頬を掻いて俺の竜巻なぞ全く意に介してないデカブツがいやがった。これ効いてないね、ただの目くらましだったね。


「え?ウソ……」


「逃げるぞ!!」


 ボケっとしているサイコパス少女の手を引っ掴んで思いっ切り走り出す。


「なんで逃げるのよ!!!」


「今のが俺の全力なんだよ!!全然効いてないから逃げるんだよ!!つーかしっかり走れ!!ちっさいヤツらが追いかけてきてる!!」

 

「何よそれもう私達お手上げってこと!?」


「そうです、お手上げです!!尻尾を巻いて逃げるんだよぉ!!」


 のっけからデッドオアアライブすぎんだろ。と、思いつつ走る自らの身体を加速させるようにうまいこと『風』を使っていることにウキウキしてる俺である。


ーーーーー



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ