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異世界だろうが働かん!  作者: おしり
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第一話


 働きたくない働きたくない働きたくない働きたくない働きたくない。


 働 き た く な い 


 大学四年生である俺は一切の就職活動をしていない。なぜなら働きたくないからだ。そう、働きたくないからだ。

 どうして働きたくないかって?そんなもん知らん本能だ本能、イヤなものはイヤ。強いてあげるなら朝起きて満員電車に揺られるのもヤダし新人社員なもんで仕事を覚えんのもヤダし上司だの先輩だのメンドクセー人間関係を築かなければならないのがヤダしあーもうヤダヤダすぎて死んじゃう、これじゃヤダ死しちゃう。


 俺は自分のイヤなものからは全て逃げてきた、というか無駄と感じたものは一切やろうとしなかった。

 小学校の夏休みの宿題なんか六年間ガン無視したしな、夏休み最終日に終わってない宿題に追い込みかけてる友達を尻目に怒られる覚悟を決めていた俺のほうが辛いまであったな。つっても勉強は嫌いではなかったしそこそこ出来たため大学までは順調、と言っては激しく語弊があるがチョイチョイ色んな事から逃げつつもうまく立ち回ってこられた。

 だが今回こそは真剣に身の振り方を考えざるを得なくなってきた。あ~マジ異世界飛ばされてえ。


 よし、まずは思考を整理しよう……よし、就活云々はもうあれだ、しない、いらん、そこからがスタートライン。

 第一働かなくても生きてはいける。世の中には様々なライフスタイルがあるんだ、考えようによってはホームレスも視野に入るがそこは最終手段として……

 適当に思い付くのは親に寄生、生活保護、ヒモになる。

 世間体としては中々に狂ってるが実現さえしてしまえば中々に強力なムーブではあるかと……

 まあこの三つ、如何にして実現できるか軽く考察してみよう。

 ではまず一つ目の親に寄生ルート、これは非常に難しいだろう、しようものなら何発殴られるかわからん。あの親の性格上甘えさせてくれることなどあり得ない、分かってはいたが却下。

 二つ目の生活保護、ネットで色々調べたが俺が受給する条件を満たすのがかなり困難だ、つーか申請したら親に知られるし何発殴られるかわからん。……ネットで見たが手の親指をチョンパすれば……いや、何でもない次だ次。

 三つ目のヒモ、これは他と比べたら最早ファンタジー♡相手なんざいるわけないし見つからないし彼女いない歴=年齢だし童貞だし誰か助けて。

 

 やはり現実は厳しい……就職という地獄の業火でこの身を焼き焦がされる運命なのか……!


 だがしかし!俺は新たな四つ目の選択肢、異世界へ逃げる!と言う線をまだ諦めてはいない!アニメやらなにやらで何かと話題というか飽和状態の異世界転移!条件は至極単純明快!突如現れたワームホールに飛び込みこの地球とは全く違った文化をもつ世界に送られるのだ……!

 そこで待つのはお約束の美少女の一人や二人ならず四、五人のヒロイン候補とキャッキャうふふ…………


 なんてあるわけが無いだろバカなのか俺は……なんかもう大人しく働いたほうがマシな気がする。つーか俺は何回この現実逃避思考サイクルを繰り返してんだよ。


「どーすっかな……」


 最早逃げられるのはここまでなのか、自室でベッドに寝転がりながらおもむろにコミックを取り上げる。


「俺もコレみたいに激しく絶望すれば第三の力が働いてどうにか……」


 なるわけがない、そもそも矢に射抜かれてないし幽波なんちゃらも発現できない。


「働きたくない働きたくない働きたくない働きたくない働きたくない働きたくないよおおおおおおおおおお異世界の門ひらいてよおおおおおおおおおおおおくぱぁって〜」


 それでも一応絶望してみよう、やってみなきゃ分からんしな。はい、働きたくない働きたくない働きたくない。



「働きたくない働きたくない働きたくない働きたくない働きたくない…………ってもういいよバカ、異世界のバカ、おしっこ行こ」



 そう立ち上がった先に。



「……マジ?」



 渦巻く何かが宙に浮いている。




ーーーーー




 人間やってみるもんだな!いや、だってもうこれアレじゃん!異世界に続くゲートでしょ!?


 こういうのでいいんだよ、こういうので!さ、この悪しき世界からはオサラバして俺は異世界で美少女と……っと待て。


 待て、まだ時期尚早……仮に俺がこの先に進んだとしてだ……俺が消えたこの世界の人達はどうなる……?

 俺を心から愛する恋人……無し!唯一無二の親友……無し!そしてかけがえのない家族……昨夜も就活しろって引っぱたかれたな!



 よし、問題無し!服装も動きやすくかつカジュアルにキメた!いざという時のための金属バットと十徳ナイフも装備したしちょっくら行ってくっか!




 ……まあ念のため書き置きくらいはしとくか。




「えっと……なんて書けばいい……っと、お、おいおい!!」


 間抜けな事を考えていたら突如謎の渦に向かって俺の体が吸い寄せられる。この部屋の俺の体だけが、吸い寄せられる。


「待って!!まだ書き置きしてないの!!てゆーか金属バットだけでも!!」


 書き置きなんてしなきゃよかった!!出来てないけど!!金属バット持たせてよ!!ねえ!!もうちょっと、待っ……


 

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