ちゅん鳥戦隊、『逆さ虹の森』にご主人様を連れていく?
今日の『逆さ虹の森』の担当は、隊員全員です。というか、今日はようやくご主人様を『逆さ虹の森』に連れていく事ができそうです。
ちゅん鳥達のご主人様は『普通の人間』です。いえ、魔法が使える少し変わった『人間』です?
もちろん、ちゅん鳥達と言葉が通じるわけではありません。身振り手振り首振りのジェスチャー、それに合わせた鳴き声でコミュニケーションをとってます?
そうだよって意味で『肯定』を示す時には、首を上下に動かして。
『コクコク』
違うよって意味で『否定』を示す時には、首を左右に振って。
『フリフリ』
よく理解できないって意味で『分からない』を示す時には、首を横に傾けたままにして。
『コテン』
これがご主人様との主なコミュニケーションの方法です。
それはもう大変でした。お疲れ様でした。ちゅん鳥戦隊にとって1番大変な任務が、『ご主人様を逆さ虹の森へ連れ出す』事だったのかもしれません?
でも、キツネ隊員やアライグマ君、ひいては森のみんなの為にもなるかもしれません。だからみんな頑張りました。頑張ってご主人様に自分達の意思を伝えたのです。
でも、人間のご主人様を森に連れて行くのですから、それなりに危険があるかもしれません。そう、お互いにとってもね?
それでもちゅん鳥戦隊は、愛するご主人様を信じて森に連れて行く事にしたのです。自分達は森の動物達と話ができるのですから、なんとかなるかもしれないと思っています。そのためにしっかりみんなと打ち合わせもしましたからね。
これもみんなで色々と相談して決めました。『なんでもみんなで話し合って決める』これが『ちゅん鳥戦隊のルール』の1つだからです。
さてさて、どうなるのでしょうか。大人しく見守る事にいたしましょう。
~ ~ ~ ~ ~
ちゅん!
「ん? どうした? 俺ならまだ大丈夫だぞ? 《身体強化》の魔法を使ってるからな。まだまだいけるぞ? 遠慮せずに進んでくれていいからな。まっすぐ空を飛んでてくれれば見失う事もないから」
コクコク パタパタパタパタ
「ふふふ。気を使ってくれたんだな。ありがとうな。よし。気合いを入れて行くぞ!」 ダッ!
* *
「ふー。ここかあ。ようやく到着したんだな。確かにお前達では何ともならない状態だな。これはひどい。ボロボロで危険な吊り橋だ」
コクコク 首を上下に動かして肯定の意思を示すちゅん鳥達。
ちゅん
『そうです。だからこれをご主人様になんとかしてもらいたくて来てもらいました』
ちゅん
『はい。お願いします。ご主人様』
ちゅん
『ご主人様。よろしくお願いしますなのじゃ』
ちゅん
『お願いします。ご主人様』
もちろん言葉は通じていません。ご主人様に聞こえているのは『ちゅん』と鳴く鳴き声だけです。
「ははは。みんなして必死になってるね。これをなんとかして欲しいって事だよね? そうやって首を動かすって事は。
うーん。どうしようかな。これくらいの長さの橋なら、変に補修するよりは新しく作っちゃった方が早いのかな? まあ、ちょっとやってみようか。少し離れててね」
コクコク ちゅん 『はい!』
パンッ! バリバリバリバリバリッ!!
ズズズズズ ズズズズズ ズズズズズ
「おっし。こんなもんでどうかな? 俺の土魔法で作った橋だからしっかり強化もしてあるし、簡単には崩れないと思うよ? 一応ちょっと試してみるね」
コクコク コクコク
『おおー! やっぱり凄いよね、ご主人様の土魔法! いつ見ても規格外だよね!』
『はい! 凄過ぎます。さすがご主人様です。ステキです!』
『さすがなのじゃ! さすがわしらのご主人様なのじゃ!』
『ふふふ。ご主人様にかかれば、こんなの当然よ? いつも見てるでしょ?』
「うん。よし。大丈夫みたいだね。それにしてもこんな所にこんな吊り橋があったなんて、誰が作ったんだろうね? この辺には人影は見当たらないと思うんだけど、お前達も人の姿は確認できてないんでしょ?」
コクコク
「うん。そうだよね。じゃあ、これはずいぶん前に作られた吊り橋で、人間がいなくなったからこうしてボロボロになってたって事なのかな?」
コテン 首を横に傾けたままにして『分からない』の意思を示すちゅん鳥達。
「ふふふ。そうだよね。分かるわけないよね。俺も分からないからね。よし。じゃあ俺の役目はこれでおしまいって事でいいのかな? この橋を直すために連れて来たんだよね?」
フリフリ 首を左右に振って『否定』の意思を示すちゅん鳥達。
「えっ? 違うの? これが目的じゃなかったの? それともまだ他にも俺にやって欲しい役目があるのかな?」
フリフリ
「うーん。違うのか。じゃあなんだろうな」
ちゅん! パタパタ
「ん? 橋を渡ってこっちに来いって事?」
コクコク ちゅん! パタパタ
「ははは。分かったよ。またついて行けばいいんだね? まだ何かあるのかな? ふふふ」
コクコク
「よし。じゃあ行くよ!」
* *
「ふー。今度はここか。到着したんだね?
へー。これは凄くキレイな池だなぁ。なんだか落ち着く水辺だね? 癒やしの場所なのかな? これを俺に見せるために連れて来てくれたのか?」
コクコク
「おー。そうだったんだね。ありがとう。さすがちゅん鳥戦隊、いい所を見つけてくれたね。グッジョブだ!」
ちゅん!
『えへへ~。ご主人様に褒められた! やったね!』
『はい! ご主人様に褒められました! 嬉しいです!』
『ご主人様に褒められたのじゃ! グッジョブだったのじゃ!』
『ふふふ。ご主人様に褒められたわ! 嬉しい!』
「う~ん。本当にキレイな池だね。水が澄んでるから池の底まで見えちゃうね? あれ? 池の中にドングリがたくさん落ちてるみたいだね。なんだろう、たまたまか?
いや、でもそれにしては数が多いような? 誰かのいたずらか? なにかの『おなじない』なのかな? そんな話も聞いた事があるような?」
コクコク
ちゅん ちゅん ちゅん ツンツン ツンツン
『そうです。そうです。さすがご主人様。その通りなんです。この池には、ドングリを投げ込んでお願い事をすると叶うという噂があるんです』
『はい。だからご主人様をここに連れて来たんです』
『ご主人様。このドングリを池に投げ込んでお願い事をして欲しいのじゃ』
『ご主人様。せっかくここまで来たんですから、ご主人様の今の願い事をして下さい。ふふふ』
「え? 本当にそうなの? これはそんな『おとぎ話』のような池なのかな? 凄くキレイだし。まあいいか。そうやって『ドングリ』を用意してくれてるって事は、みんなでドングリを投げ込んでお願い事をすればいいのかな?」
コクコク ちゅん!
『さすがご主人様。よく分かってる! 話が早くて助かるね?』
『はい。さすがです! すぐに私達の伝えたい事を理解してくれますから、ステキです!』
『さすがなのじゃ! さすがご主人様なのじゃ! みんなでお願い事をしたいのじゃ!』
『ふふふ。本当にステキなご主人様だわ! さあ、みんなでお願い事をしましょう?』
「あはは。分かったよ。じゃあ、せっかくだから、みんなでいっしょにお願い事をしようか! 準備はいいかな? じゃあ、いくよ? せーのー! えいっ!」
とっぽーーん!
ちゃぷん! とぷん! ちゃぽん! ぽとん!
「みんなが安心して平和に暮らしていけますように!」
『もっと強くなって、みんなの役に立てますように!』
『もっと頑張って、みんなの笑顔を守れますように!』
『もっと知識をつけて、みんなの役に立てますように!』
『もっと楽しんで、みんなの笑顔も増やせますように!』
ガサッ! スススス カサカサ
バサッ! ザッ! ガサガサッ
「ん? なんだ? おっ! なんだなんだ? いっぱい動物が出てきたぞ? ちっ! 囲まれてるのか!」 ザッ!
ちゅん!! パタパタパタパタ
『ヤバい! ご主人様が戦闘態勢に入っちゃった! ご主人様に攻撃されたら、みんな死んじゃう!』
『はい! みんなの間に入って守らないと!』
『マズいのじゃ! 出てくるのが少し早過ぎたのじゃ!』
『もう! ちゃんと打ち合わせしたのに!』
バサバサ バサバサ
「熊に蛇、リス、鳥、キツネ、アライグマなのか? さすがに熊だけはマズいな。やれやれだ。やるのか?
お? どうしたアカ。熊の頭の上で何をしてるんだ? そんな所にいたら危ないぞ? それともなんだ、そいつを食べたいから仕留めて欲しいのか? クマ肉が欲しいのか?」
フリフリフリフリ ちゅん!!
『だーーっ! 違います! ご主人様、違います!』
『もう! こういう時は、クマさんの肩の上とかに止まるのよ!』
『そうなのじゃ! それでは逆の意味に伝わっても仕方がないのじゃ!』
『もう! しっかりしなさいよ!』
フリフリ フリフリ ちゅん ちゅん ちゅん
「ん? 違うのか? さっきより必死になってるな。アズキにアオにアイまでどうしたんだ? あれ? 熊の肩の上に止まってるって事は違うのか。その熊には危険はないって事なのか? もしかして、お前達がこの森で出会った友達だったりするのか?」
コクコク コクコク
『ふー。セーフ! さすがご主人様。グッジョブです!』
『はい。さすがです。良かったです』
『まったくなのじゃ。おぬし達も出てくるのが早過ぎたのじゃ。下手したらみんな殺されておったのじゃぞ!』
『もう! 危なかったわね。ちゃんと打ち合わせ通りに順番に出てこないから! もしかしたら、みんな命を落とす所だったのよ!』
『『『ええ~~っ!!!』』』
「な、なんだ、そういう事なのか? マジなのか? 動物達と話をしてるようにも見えるし、本当みたいだな。まあ、お前達がそう言うのなら信じるけどさ。凄いな。お前達」
ちゅん!!
『えへへ~。また褒められちゃった! やったね!』
『はい! またご主人様に褒められました! 嬉しいです!』
『またご主人様に褒められたのじゃ! これもグッジョブだったのじゃ!』
『うふふ。またご主人様に褒められたわね! やっぱり嬉しいわ!』
『た、助かったの? 僕達助かったの!?』
よく分からなかったけど、とにかく助かったと聞いてほっとするクマさん。
『また助かったのか~。良かった~』
また命の危険を回避できたと知って喜ぶヘビさん。
『ふー。本当は危なかったんだね。ごめんなさい』
たぶんこれも本当の事だと思って、打ち合わせ通りにできなかった自分の失敗を反省するリス君。
『そうなの? 私達危なかったの? そんな風には見えなかったけど?』
コテンと首を傾けながら、今の状況を軽く見ていたコマドリさん。打ち合わせの事なんか忘れてました?
『え? やっぱりそんなに強いご主人様だったの? うわー!』
ちゅん鳥達から話を聞いていた噂のご主人様を早く見てみたくて、打ち合わせよりも早く出てきてしまったキツネ隊員。
『ごめんなさい。みんなが出て行っちゃったから、つい』
周りの流れに合わせて早く出てきてしまった事を素直に反省するアライグマ君なのでした。
ぽわ~~~ん
「おっ? 今度はなんだ? 池の上の方で何か光ってるぞ!」
コテン コテン
『本当だ。なんだあれ? なんか丸い光る物が池からこっちに向かって飛んできてるよね?』
『はい。なんでしょうあの光の球は。初めて見ましたね?』
『そんな事より、あの光の球はご主人様の方に飛んで行っておるようじゃ! 大丈夫なのか?』
『そ、そうね? ご主人様の方に光の球が飛んで行くわ! ご主人様を守らなきゃ!』
バサバサ バサバサ
「ん? こら! お前達は下がってろ! あれが何か分からないんだ。俺が前に出る! お前達を守るのは俺の役目だ!!」 ザッ!
『うおーー! ご主人様、格好いいー!!』
『はい! やっぱりご主人様はステキです!!』
『凄いのじゃ。やっぱり凄いのじゃ。ご主人様は最高なのじゃ!!』
『うふふっ! やっぱりご主人様、大好き!!』
ぽわ~~~ん ふわんふわん ふわっ!!
「ん? なんだ? なんか温かいような気もする光の球だぞ? 特に害はなさそう、……かな? なんなんだ?」
パタパタ ちゅん
『ねえねえ、みんな。あのご主人様の所で光ってる球が何か知ってる?』
『『『知らな~い』』』
『『『初めて見た~』』』
「ん? お前達、さっきからその動物達と何か話してるようだけど、もしかして本当にその動物達と話ができるのか? この光の球が何なのか聞いてくれてるのか?」
コクコク
「おう。マジか。お前達本当に凄い能力を持ってるんだな。グッジョブ過ぎるぞ? ありがとうな。それで、どうだ? 何か知ってるって言ってるのか?」
フリフリ
「おう。そうか。ここの動物達も知らないって言ってるのか? じゃあしょうがないな。うーん。何だろうな。イヤな『気』は感じないから悪いものではなさそうなんだけど? 何だろう?」
コテン
『なんだろうね、あれ。ご主人様がイヤな気は感じないって言ってるし、確かに僕にも優しい光の感じがするんだよね?』
『はい。私もそう思います。優しい光の球に感じます』
『ふむ。そうじゃの。しばらくはご主人様の周りを飛んでおったのが、今ではご主人様の肩の上に止まっておるように見えるのじゃ』
『ええ、そうね。私達がご主人様達の肩に止まるように、あの光の球もご主人様の肩に止まってるようにも見えるわね?』
「うーん。このキレイな池から出て来た光だからかな? なんか癒されてるような気もするぞ? ふふふ。まあ、害がなさそうならよしとしましょうか」
『おお。さすがご主人様。普段は細かい事を結構気にしてるのに、害がなさそうだと判断するとあまり気にしなくなるんだな。うん。勉強になったぞ?』
『はい。さすがご主人様です。なんだか気持ち良さそうですし、害がなければ問題なしって事ですね。私もこれからそうします』
『ふむ。そうじゃの。あの光は癒やしの魔法にも似ておるのじゃ。この不思議な『ドングリ池』から出て来た光なのじゃ。それなら確かに問題はなさそうなのじゃ』
『ふふふ。そうね。この不思議な池の『チカラ』が宿った光の球かもしれないわ? ご主人様にも悪い影響は出てないみたいだし、それなら確かに問題はなさそうね?』
~ ~ ~ ~ ~
その後、ちゅん鳥達のとりなしで『逆さ虹の森』の動物達とご主人様があいさつをしていきました。もちろん言葉は通じませんよ?
みんなごあいさつをした気になっています。もちろんご主人様も? ボロボロになっていた『オンボロ橋』の代わりに、丈夫な橋を作ってもらったお礼も忘れていませんでした。みんな立派です。
クマさんは、恐る恐るもていねいにおじぎして、
ヘビさんは、申しわけなさそうに大きく首を下げて、
リス君は、元気いっぱいに飛び跳ねながら両手を振って、
コマドリさんは、心を込めてキレイな歌を響かせて、
キツネさんは、もちろん格好よく戦隊の決めポーズをして、
アライグマ君は、キツネさんの真似をして戦隊の決めポーズをして。
この森では動物同士がなぜかみんなと言葉が通じる不思議な場所。だから、もしかしたらご主人様とも言葉が通じるかもしれないと思ったけど、ダメでした。残念です。
でも、いいんです。言葉は通じなくても、身振り手振り首振りのジェスチャー、それに合わせた鳴き声でもコミュニケーションはとれるのです。
伝えたいという優しい気持ちと、あきらめないという強い気持ちがお互いにあれば、例え動物とでも意思は通じるのです。そこがたとえ『逆さ虹の森』ではなかったとしても。
結局、あの光の球がなんだったのかはこの場では分かりませんでした。何の光か分かるようになるのには、まだまだ時間がかかりそうです。あなたは何の光だと思いますか? 不思議なチカラを持った『ドングリ池』から出て来た不思議な光の球ですよ?
願い事を叶えてくれる不思議な光? 体を癒やしてくれる魔法の光? それとも、心をあたたかくしてくれる優しい光?
機会があれば、それはまた別の話です?
今日もまた、森の一角に優しくキレイな虹がかかっています。いつまでかかっているのかは誰にも分かりません。逆さまにかかるキレイな虹の橋。
今回は、人と動物を繋ぐ優しい『かけ橋』となりました。実際に丈夫な橋もかかりましたしね? 強くてしっかりした簡単には崩せない魔法の橋ですよ?
* * *
ここは、『ちゅん鳥戦隊』が暮らす『岩山の家』。岩山で暮らすみんなに朝の訪れを知らせるのが最初のお仕事です。
ちゅん、ちゅん、ちゅん
朝ですよ、朝ですよ、朝ですよ
すると、『今日もさわやかな朝の知らせをありがとう』こんな風にみんな感謝してくれます。朝からみんなで笑顔のあいさつです。嬉しいですね。その後はみんなで仲良く朝食を食べ、順番に周辺の見回り任務に出かけます。
「よし。じゃあ今日も元気に出発だ!」
「「「了解!!!」」」 バサバサバサバサ!
世界の平和までは守れません! できる事からこつこつと? 身近な森の平和を守るため、今日もちゅんちゅん元気に飛び回る? ちゅん鳥戦隊は今日も元気に空を駆け巡る?
あなたも、ちゅんちゅん鳴く元気な小鳥を見掛けたら、優しく声を掛けてあげて下さいね。『今日もさわやかな鳴き声をありがとう』それが1番のご褒美みたいですよ?
コクコク ちゅん!! バサッ!
パタパタパタパタ
『ちゅん鳥戦隊の活動日記 ~逆さ虹の森~』はこれにておしまいです。ありがとうございました。
こちらこそ?