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サモナー・オブ・サモナーズ  作者: まさひろ
プロローグ 召喚師を目指して!
8/103

決闘

「あー、いや俺はそう言うの間に合ってますんで」

「間に合ってるで済む訳ないでしょう!」


 怒りのあまりビターンと地面に手袋を叩きつけてしまうシャルメル嬢。あれ? なんだかおもろい子みたいだ。


「シャルメル様落ち着いて」


 取り巻きの狐ちゃんは今日もばっちりお嬢様の真横をキープ、怒りに燃える彼女を何とかなだめようと必死のご様子だ。


「まぁまぁ、落ち着いてくれよ。決闘とか言われても女子供に上げる手は持ってないぜ」


 あとついでに言えば召喚獣も持ってない。入学式までは教会に居候中の唯の村人Aだ。


 俺がその事を懇切丁寧に説明してもシャルメル嬢の怒りは収まらない。指先ひとつも触れてないからセーフだと思ったんだが、やっぱり彼女的にはアウトだったらしい。

 だがまぁ、彼女の興味は完全に俺の方に向いてると言う点ではセーフだ、アプリコットにこれ以上迷惑を掛けずに済む。


「はっ、貴方がそんな上っ面だけの騎士道精神を持ち出すことは予想済みですわよ」


 そう言って彼女はパチンと指を鳴らす。


「お嬢様ここに」


 そう言って彼女の背後から出て来たのは燕尾服の決まっている、1人の男だった。


 あれっ? ヤバイな、こいつ俺より強いぞ。


 基本的なステータスは俺とどっこいどっこいと言った所だが、あっちの方が、年が少し上で肉体的に完成されつつある。要するに手足や背丈があっちの方が少し、うん、ほんの少し長い。


「この者はジム・ヘンダーソン。(わたくし)の従者ですわ」

「……あんたの代理にそいつと戦えと?」

「ええ、勿論(わたくし)と直接決闘してくださっても結構ですわよ」


 シャルメル嬢は自信満々にそう言い放つ。その時に彼女の胸元できらりと光るものが見えた。

 成程、おそらくは物理防御や反射能力を向上させる呪具を装備してきているのか。

うん、いいね。金に言わせた装備だろうが、自分の実力に慢心せずきちんと対策を取ってくる人物は嫌いじゃない。

 だが、それでは更に、シャルメル嬢と決闘する訳にはいかない。あの呪具の効果がどのぐらいあるか分からないが、手加減する余裕がなくなってしまう。


「あんたはそれでいいのかい?」

「勿論です、お嬢様の剣となり盾となる事こそ私の至上の喜び。お嬢様の恥辱を張らせるなら私は何でもやりましょう」


 ジムと名乗ったその男は、そう言って拳を構える。やれやれ、めっちゃやる気満々だ。


「しょうがない、些細な行き違いから発展した問題とはいえ、ケジメはつけなきゃいけないってのは、宮廷作法に疎い俺でも理解できる」


 俺はそう言って、やや腰を落とす。

 お互い構えは右前のスタンダード。あっちは拳で俺は開手。合格祝いにちょっくら頑張りますか。


 タン。


 相手の呼吸に合わせ一足で懐に潜り込――が駄目。

 敵はその長い足を使い牽制の前蹴りでもって俺の進路を塞――半歩ずれる。

 蹴り足の下に手を這わせ、それを救い上げ――軌道が変化。

 前蹴りは跳ね上がって振り下ろしの回し蹴りとなり俺の頭部を狙――潜る。

 地面に両手をつき、軸足を蹴り払――足刀。

 奴は素早く足を引き、俺の頭部に槍の様な足刀――引く。


「ちっ!」

「ふっ!」


 やるやる、流石は銘家のお嬢様の執事、技のさえが素晴らしい。憎らしい程に長い足を器用に使って俺の攻撃をブロックしてくる。ってかその攻撃がまともに当ったら打撲程度じゃ済まねぇぞ。

 まぁいい。


「小手調べは」

「終わりです」


 魔力操作で瞬間加速を繰り返す、リズミカルに、リズムを外して。

 ガガガガと岩を削る様な、打撃音が俺の手と奴の足の間で交わされる。

 奴の守りを突破できない。もっと早く、もっと鋭く!

 見ろ、見ろ、奴を見ろ! 力の流れを見極めろ!


ピピ―――!!!!!


「ん?」

「ここまですか、申し訳ありませんお嬢様」


 幾度目かも分からないほど、俺の拳と奴の足が交差した時にその警笛の音が鳴り響いた。


「はいそこ! 何やってんの貴方たち!!」


 警笛の音高らかに、何時の間にやら俺たちを見物していたギャラリーをかき分けて現れたのは、見目麗しい金髪の女性だった。


「そこ! ってジム君じゃない何やってんですか貴方!」

「申し訳ありません、リリアーノ先輩」


 そう言ってジムとやらは金髪美女に頭を下げる。成程奴も此処の生徒だったのか、それにしても汗一つかいてねぇ。まぁそれは俺もだが。

 

 まぁこれ幸いと騒動の渦からこっそりとおさらばしようかと思ったが、そうは問屋が卸さないようだ。


「待ちなさいそこの君!」


 当然のことながら、俺の方にも金髪美女からお声がかかる。


「あははは、いやーなんですか? いい天気ですね、えーっとリリアーノ先輩?」

「これはどうもって誤魔化されますか!」

「いやいや、大丈夫ですって、唯のレクリエーションです、レクリエーション。何も危ない事は無かったですって」


 半分嘘だ、奴の蹴りをいなし続けて手が痛え。


「そうはいきません! 貴方たち二人とも風紀委員室に直行です! この学園のマナーと言うものを叩き込んであげます!」


 そう言ってリリアーノ先輩はピンと腕章を示すのだった。





「あははははははは」


 シエルさんの笑い声が高らかに響く。


「笑いごっちゃないですよ。4時間ですよ、正座して4時間。4時間も説教されたんですから」

「いやー、あまりに帰りが遅いものだから、不合格のショックで首でもつってるんじゃないかって皆で噂してたとこなんですよ」


 碌でもねぇな教会。


「けど、無事合格したようで何よりです。頑張りましたねアデム君」


 シエルさんはそう言って、優しく微笑んだ。


 そして、いよいよここから俺の本格的な召喚師としての第一歩がスタートするのであった。


デュエルスタート!


ただし、ヒロインの付き人とのデュエルでした。

召喚師ってなんだろう。

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