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サモナー・オブ・サモナーズ  作者: まさひろ
第3章 意気揚々の夏休み(後編)
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アルデバル家の日常

「ごめんね、お嬢様たちをこんなボロ屋に招待しちゃって」


 イルヤはそう言ってアルデバル家にシャルメル達を案内する。しかし、彼女が玄関のドアを開けようとした際、内側から1人の男が興奮した顔で現れた。


「おお! あんたがアデルの嫁に来てくれた人か!」

「え? ええ?」


 その男はゴツゴツした両手で、シャルメルの手をありがたそうに握りしめた。


「あらあらうふふ。興奮しすぎですわお父さん」


 続いて奥から現れて来た女性が、その男の耳をつまみ上げつつそう言った。


「痛! 痛たたたた! 痛いよ母さん」

「あらあらうふふ、まったく相変わらずあわてん坊で困ったものですわ。

 初めまして、お嬢様方、私はサラ、アデムの母でございます。そしてこのあわてん坊さんがアデムの父のミラン。どうぞよろしくお願い致しますね」

「はっはぁ」


 シャルメル達はあっけにとられてそう挨拶する。


「痛たたた。まったく何してくれるのよ、この馬鹿親父」


 ドアの隙間から抜け出したイルヤが、ミランの尻に蹴りを入れつつそう言った。


「はぁ紹介するわ――」


 そして、イルヤはため息まじりにシャルメル達を両親に紹介する。





「ほーう……ってミクシロン家のお嬢様だって!?」

「ええ、ですが今の私はこの通り、王立魔術学園の一生徒、アデムさんの友達でしかありませんわ」


 シャルメルはそう言って学園のマントを優雅に翻す。


「はぁー、そんなたいそうな人がアデムの嫁に来てくれるって言うのか? けどそんな事が可能なのか?」

「いっいえ、ですから、その」

「そうですよお父さん、流石に身分が違い過ぎます。あちらのお嬢様方ではないのですか?」

「「いっ、いえ、私は、その」」


 話を振られたアプリコットたちは、顔を赤らめながらパタパタと両手を振る。


「おお、母さん。どうやらまんざらでも無いようだぞ?」

「あらあらうふふ。おめでたい事ですねぇ」

「こらこらそこのおめでた夫婦。乙女の内心を勝手に詮索しないの」

「全くです、お兄ちゃんみたいにガサツな人には勿体ないのです」


 浮かれ上がる両親に対して、イルヤたちは呆れながらそう返す。そして、そうこうしている間に、玄関のドアが開いた。体のあちこちに擦り傷を作ったアデムである。


「痛つつつ。全く今日は何時にもまして切れがありやがる。ホントにあの神父様から一本とれたのか疑問に思えて来たぜ」

「お兄ちゃん、お帰りなのです」


 そのアデムに、真っ先に飛びついたのは妹のミントである。両親とイルヤはそれを優しく見守りつつ、お帰りと声を掛ける。

 

「それで、アデム? 誰が本命なんだ?」

「ん? 本命ってなんのことだ?」

「なーにを言ってる、お前嫁さんを紹介しに帰って来たんだろ?」

「……はぁ? なっ何を言ってるんだぜ。俺はサモナー・オブ・サモナーズになる男、女に現を抜かしている暇はないんだぜ」

「おい、口調がおかしくなってるぞ。やはり、この中にいると見た」

「本当なのですか! お兄ちゃん!」


 にやけ顔のミランに、突っかかるミント、あらあらうふふと微笑むサラに、あきれ顔のイルヤ。人数過多のアルデバル家はがやがやと姦しい時間を迎えていた。





「はぁ、騒がしくて済まないな」


 アデムは子供部屋に皆を連れて避難して来た。


「いえいえ、仲が良くていいことではありませんか」

「そっそうです、素敵なご家族で羨ましいです!」


 皆の同情が痛い。と言うか微妙な空気が場を覆う。その中でジム先輩とカトレアさんの冷めた瞳が俺の心を刺激する。


「こっここがアデムさんが暮らした部屋なのですね」


 その空気を無理矢理吹き飛ばすように、シャルメルが話題を変える。


「ああ、とは言っても姉貴と妹との3人部屋だけどな」

「えっ? アデムってお姉さんたちと一緒の部屋だったの?」


 何を言うんだろう、見ての通りベットが3つあるではないか?


「それは……どうかと思いますが」


 おお、アプリコットまでも! 姉弟一つの部屋で住むことがそんなにおかしい事なのだろうか?

 狭い家なんだ、勘弁してくれ。


「けどわかったわ」

「ん? 何がだ?」

「アンタの女性に対する扱いよ」


 チェルシーの一言に、シャルメルとアプリコットが同時に頷く。うう、俺はごく普通に生活をしていただけなんだが。


「ってそこ! 盗み聞きしてんじゃねぇよ!」


 俺が一括するとドアの向うで慌てふためく音が響く。やはりこの家は駄目だ、無駄に騒がしすぎる。

 仕方がない、帰って来たばかりだが、もう一つの目的地へと向かおう。


「慌ただしくて済まないが、教会に案内しよう」


 俺はため息を吐きつつそう言った。





 わいわいがやがや。


 うーん。まるで凱旋したスーパーヒーローだ、あるいは街で人気の大道芸人か? 俺たちが行く先々に人だかりが出来る。流石は滅多に余所者が来ない辺境の村。


「遠路はるばる、お疲れ様でした皆さん」


 と言う訳で、ギャラリーをぞろぞろと引き連れた俺たちを、神父様が歓迎してくれた。


「あー、取りあえず紹介するよ――」


 俺は先程しそこなったシャルメル達の紹介をする。神父様はいつも通りニコニコと笑いながら、一人一人と握手を交わしていった。


 そしてそれが終わった時、俺は長い間貯め続けた思いの丈をぶつける事にした。


「ところで神父様、さっきは口より先に手が出ちまって聞きそびれたんですが」

「なんです? アデム」

「なんで召喚師の現状について教えてくれなかったんですか!?」


 その所為で、どれだけ苦労したことか!


「はっはっは、良いではありませんか。そんな事」

「そんな事って神父様!」

「世間一般の召喚師に対する風評がどうであろうと、この村では英雄であった。それでいいのではないのですか?

 それにアデム、貴方は召喚師の評判が悪ければ、それを気にして、夢を諦めたのですか?」

「う……いや」


 そんなことは無い、幼い俺が目にしたあの姿は瞼の裏に焼き付いている。例え世間がどう言おうと、俺はこの道を進み続けただろう。

 俺が答えに窮していると、チェルシーがおずおずと手を上げる。


「あの神父様、質問があるのですが」

「おや、何ですかチェルシーさん」

「あの、アデムがいつも言っているその英雄の事なのですが、神父様はその正体をご存じありませんか」

「ふむ……質問に質問を返して悪いのですが、その事にエドワードは何と言っていましたか?」

「神父様は父をご存知なんですか!?」

「おや、聞いていませんか? 私と彼は若いころ一緒に冒険した仲ですよ」


 これは意外な展開だ、あの何時も自信の無さそうにしているエドワード先生が、笑顔のバーサーカー(神父様)とパーティを組んでたとは。


「……父は、若いころの話は何もしてくれなくて」

「彼らしい。あの旅は楽しい事も多かったですが、同時に暗く厳しい旅でもありました」


 神父様は遠い目をしながらそう語る。


「……そうですね。彼が今回の旅を許したと言う事は、そういう事なのでしょう。

 では、少し勿体付けさせてもらいましょう」

「えっ? どういうことですか神父様」

「この話を聞くには、それなりの資格が必要だと言う事です」


 神父様はにこりと笑ってそう言ったのだった。


学園の制服はホグワーツの方にある学校とクリソツです、多分

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