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サモナー・オブ・サモナーズ  作者: まさひろ
第1章 疾風怒涛の新学期
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血の気漂うハンティング

 新入生にはちと早い、酒精の漂う冒険者ギルドに俺たちの姿はあった。


「ちょっと、あんた何考えてるのよ」


 場違いを気にしてからか、チェルシーが小声で突っ込みを入れてくる。


「平気だって、俺は村では神父様についてこんな所に良く出入りしてたもんだ」

「……あんたの言う神父様って何もんなのよ」


 そんなもん俺が知りたい、まぁ今更どうでもいいが。


「にしてもアプリコット、お前まで付いてこなくて良かったんだぞ」

「いっいえ、元は私の問題ですし、そんな無責任なこと出来ません」


 彼女は健気にそう返してくれる。その心意気はありがたいが、こんな所に連れ込んだのがばれたら、あのメイドさんに何言われるか分かったものでは無い。

 それにここには情報収集に来ただけだ、俺らみたいなガキが実際に依頼を受けられるとは思っちゃいない。

 見も知らぬ冒険者さん達には悪いが、俺が得物をかっさらわせてもらおうと思っての事だ。


 召喚獣と契約するには2通りがある。1つがその召喚獣と強く結びついた品(それは宝石だったり本だったり)を入手し、呪文を通して契約を縛るもの。次は野生の魔獣を力で屈服させ、獣に主として契約してもらうことだ。

 俺が狙うのはその2つ目、野良野獣をしばき倒すことは修業時代にやっていたから手慣れたものだ。


 凹る事なら簡単な事、その後の契約についてはチェルシーの手を借りなければならないので、できれば簡単な所から始めたい。差し当たっては手頃なウェアウルフ当りを狙いたい。


「おっあった」


 運よくウェアウルフの討伐依頼が見つかる。一応チェルシーたちの面倒は暇人のシエルさんに見てもらう予定だ。討伐依頼は何件もこなしてきたが、何かを守りながら戦うのは今回が初めてとなる。安全面に気を遣いすぎると言うことは無いだろう。





「おっかしいなー、どうしてこうなったかなー」


 ブツブツと愚痴を言う俺を鬼の形相でぎろりと睨む、アプリコットお嬢様の専属メイドで有らせられるカトレア様。肝心かなめのシエルさんは暫くは忙しいと言うし、どうしたこった。護衛範囲が更にまた広まってしまった。

 しかもついて来たのはそれだけではない。


「おーっほっほ! 良いでしょう、学内の決闘が無理だと言うのなら狩りで決闘を付けようとは中々風流でございませんか」

「はっ、お嬢様」


 狩りにはしゃぐ上流階級のお客様が二人いた。




 話は先日にさかのぼる。俺が「皆で狩りに行かないか(キリッ)」と話を締めた所に意外な奴の声が聞こえて来た。


「今度は何の悪だくみをしているのですが」


 その声に振り向いて見ると、そこに立っていたのはレザーメイルを着込んだジム・ヘンダーソンだった。


「げっ、なんでここに居やがる」

「何でも何も、魔術剣士科の実習の一環ですよ。貴方こそ何故このような場所に居るのですか、しかもご婦人がたを引き連れて」


 奴はジロリとこちらを見下してくる。くそ、燕尾服のイメージが強すぎたとは言え自分の目が節穴じゃないかと疑わしくなってくる。こんな所が神父様に見つかったらどんな罰を受けるか考えただけで恐ろしい。


 しかし、考えようによってはチャンスでもある。そうだいっその事奴らを巻き込んでみるのはどうだろう。


「なぁ先輩、ちょっと話があるんだが」


 基本ルールの一つ『兵は詭道なり』『高度な柔軟性をもって臨機応変に対応する』だッ!





 予定外のメンバーになってしまったが、結果はオーライだ。先輩の伝手で正式に依頼と言う形で受けることが出来、小遣い稼ぎになるし、何と言ってもシャルメル嬢自身が証人となってくれる。

 狐ちゃんも自分の後ろ盾となっている、シャルメル嬢の言う事には逆らえまい、つまりはここで俺達、と言うか俺がこいつら二人を上回る成績を出せれば全ての問題が解決する!


「あーそれじゃ、準備するからみんな待っていてくれる?」

「準備ってなにをするのですか? 背後から追い立てるのではなくって?」


 うーん、流石は狩りになれているお嬢様の発言だ、しかし残念ながらここにはそんな大人数はいやしない。冒険者がそんな事をしていたら依頼の度に赤字になってしまう。


「お嬢様ここは彼に任せましょう」


 勝手知ったる、ジム先輩はそう言ってシャルメル嬢に声を掛ける。まぁ助かった、ここから先はお嬢様に見せるには多少野蛮すぎる。


「あーそれじゃ、30分位で」

「了解しました、それでは良しなに」


 森の外へ離れていく二人を見送り俺は準備を始める。


「あのー何をするんですか」


 アプリコットが興味津々と言った様子で見てくるが……。


「撒き餌だよ撒き餌、あまり見てて楽しいものでもないからシャルメル嬢たちと出て行ってくれてもいいんだけど……」


「そんな訳には参りません」と健気で無邪気なアプリコット嬢、因みにチェルシーと、カトレアさんは『撒き餌』と言うキーワードで察してくれて多少は引き気味だ。


 まぁしょうがない、これも社会勉強だと俺は背嚢から保冷と消臭魔術の掛けられていた袋を取り出す。


「うっ」「えっ」「ひゃい!」


「……まぁこれが撒き餌な訳なんですが」


 俺は恐る恐る、袋から獣の内臓を取り出した。まだ血が滴るソレは、昨日肉屋から頂いて来た新鮮極まる逸品だ。


「そんじゃ行ってくる」


 俺は袋を半開きにして匂いを周囲に漂わせながら森の中を駆け抜ける。追い込みを仕掛けるべきポイントは昨日のうちに見つけてある。基本ルール『戦は準備段階から』だ、あの2人には悪いが、単なるギャラリー兼証人として頑張ってもらうぜ。


 血と臓物の匂いを漂わせながら、俺は自らを餌として、立ち回る、風向きを計算し、地形を計算し、奴らの行動を予想する。腹を空かせた獣の群れがどう立ち回るか、俺には手を取る様に分かる。


 森の中に冷たい気配が満ちてくる。


「掛かった」


 俺はボツリとそう呟いた。死の気配、得物の気配、狩りの気配。ひたひたひたひた、ゆっくりとその輪を縮めてくる。

 俺は奴らの間合いに入る直前で方向転換をする。それにつられて周囲の気配が一斉に反応する。

 追えそうで追えないギリギリの距離をキープするのがポイントだ。そうすることで奴らに焦りを植え付け、冷静さを失わせる。右へ左へ、群れの流れを誘導しつつ、ジム先輩に伝えていたポイントへ距離と時間を合わせる。


「よっしゃ! 時間ピッタリ!」


 俺は跳躍と共に、文字通りお荷物となった背嚢を背後の群れに投げ捨てながら半回転し、奴らの姿を正面から捕える。


「さあ狩りの開始ですわよ!」

「左様でお嬢様」


 俺にとっては残念な事だが、シャルメル嬢たちは時間にルーズな性質ではなかったようだ。物陰に潜んで待ち構えていた彼女達も意気揚々躍り出た。


「ちっ、負けてたまるかこんちくしょう!」


 こうして俺達3人はウェアウルフの包囲網の中へ突入したのだった。

召喚形式はサモンナイトとファイナルファンタジー形式です

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