二話:プロローグ②
会社を辞めて一ヵ月後。
ピンポーン。
荷物が届いた。
デスクトップパソコンのような物とヘルメットのような物。
差出人は『ゴッズカンパニー』。
俺がOBに応募したVRMMOの開発元である。
「うほぉ……」
この一ヵ月様々な憶測がネットを賑わせた。
それはすぐに来るはずだったVR機器が、OB開始日まで延期になったことが一番大きいだろう。
盛大な釣りに騙された愚か者。 それがOBの為に高額な機器を購入した人への一般的な見解である。
だがどうか?
VR機器らしき物がこうして届いたではないか!
「エクセレント!」
俺は取扱説明書を流し読みし、さっそく機器を準備していく。
OB開始まで後一時間と時間がない。
せっかくなら開始直後のお祭りに参加したいよね。
「これを被って、開けゴマ……?」
音声起動らしい。
なんで開けゴマなんだ? 開発陣は日本語が苦手なのだろうか。 海外のインディーズゲーだとクソみたいな翻訳している作品も多いしな。
「嫌な予感しかしないんだが?」
まぁやるけど。
たいした英語力もないが、適当にゲームをやる才能は持っている。
フィーリングが大事。
嫌なフィーリングしかしないけどな。
「さぁ始めようか」
――ヴォン
と、パソコンらしき物を起動させると、一瞬だが天井のライトが点滅した。 省エネとは無縁の堅物らしい。 コードでつないだヘルメットを被り、俺は魔法の呪文を唱える。
「オープン、セサミ!!」
英語で言ってもイマイチ。
しかし、効果は抜群だ。
――バッッッッ!!
?
変な音がした気がした。 同時、薄れゆく意識。
俺はベットに寝てから唱えるべきだった、などと思いつつ硬い床の上に寝転んだ。
「ぅ……ぁ……」
離れていく。
意識は完全に、世界と離れていく……。