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課金六十八万円目。帰国

 地面に落下した3人は十や九に拾われ、王国で療養を受けた。王都解放軍の勝利で王様を開放し、帝国と和平条約を結ぶ。ゲームはクリアし、一日中、お祝いムードの中、別れがやってくる。


「先に行くっすね」


 目を覚ました魔王は負けを認め、名無しとして日本に帰ることを決意した。


「まだいなくていいのかい?」


「龍神さん、この世界は十分に堪能できたっす。そっすね、心残りがあるとすれば、みなさんの連絡先を教えてほしいっす」


 名無しはしがないサラリーマンだった。日本に戻ると家族以外、交流する人物がいなくなる。最後に太郎と歌子と連絡先を交換した。


「名無し君。特別に君たち4人にシェアハウスと1年間遊んで暮らせる金をあげよう」


「それはありがたいっす。転職活動が捗ります」


 ――お元気で。そういって彼は去っていった。


 日本に戻れば勇者や魔王じゃいられなくなる。ゲームの世界に留まっても良い。けれど彼は旅立っていく。名無しは魔王として君臨したノウハウをクソゲーのリアルに持っていき、現実世界の攻略を始めるのであった。


 名無しの入った扉が閉まる。次は歌子の番だった。


 彼女は高校生。日本に戻れば平凡な毎日と受験戦争が待っている。


「とても面白かったわ」


「おまけで名無し君と同じシェアハウスに飛ばしてあげよう」


「ありがとう」


 歌子が手を振ると、見送りに来ていた帝国兵や王国軍の者たちが涙ぐむ。


 ディーヴァの冷徹な殺戮は褒められたものではなかったが、彼女の強さに惹かれたファンは、帝国や王国でたくさんいる。多くの民が別れを惜しんだ。


「太郎、最後まで決着がつかなかった」


「ああ、そうだね」


 太郎&歌子の連合軍は最後まで続き、お互いをライバル視しながら勝負は持ち越しになった。


「私たちは現実でも良いライバルよ。これからよろしくね」


 歌子はシェアハウスに住み込み、受験勉強に専念する。ソシャゲ課金ばかりで勉強が疎かになっている太郎には良い刺激になった。


「歌子さん、俺、ゲームの世界に進みたいと思っているんです」


「そう?」


「ええ、eスポーツやゲーム実況、ゲームクリエイターとしてソシャゲに関わっていきたいんです。だから受験はしないと思います、すみません」


「くすくす、別にいいのよ。人生ってゲームでどっちが幸せになれるか、より楽しめるか、勝負よ」


 ――さようなら。


 そうして歌子は去っていった。


「最後だね。いいのかい、のじゃロリ君?」


「龍神、ええ、良いです。わしはこの世界に残ります」


「そうかい。太郎君が去った後は、君の好きな勇者と幸せに暮らすがいい」


「ありがとうございますなのじゃ!」


 のじゃロリ様は明るい返事を返した。太郎の意識だけが日本に帰り、元の勇者に勇者の体が渡される約束がされる。もちろん整形し、美少女の顔を直すことも決まった。


 十や九、一、エピックが大変喜ぶ。合成人間はこれからもあるじ様と暮らせることを喜んだ。


 太郎が別れの挨拶をする。


「タイガ。今までありがとう。たぶん初恋だった」


 世界を統一し、龍神を倒し、勇者の仕事を終えた。心残りはタイガだけだった。


 好きな人と出会えなくなる。こんなに悲しいことはない。胸が張り裂けそうだった。


 今すぐ走り出して大声で叫びそうになる衝動を堪える。


「バッカ。あんたを一人にするわけないでしょ?」


「え?」


 太郎が泣き顔をあげると、タイガは笑っていた。龍神ものじゃロリ様もニヤニヤしている。


「太郎君、今回、のじゃロリ君が残ってしまって枠が一つ空いているんだよ」


「なのじゃ。だから、わしの代わりに八がいくことになったのじゃ」


「ふんっ、だからこれからもよろしくね、太郎」


 タイガが照れ臭そうに笑う。ちょっと赤い。


「ええ、まじ!?」


 太郎は大喜びした。


「合成人間でも日本人になることはできるよ。君と歌子君とタイガ君の修羅場が見たいから、タイガ君をツンデレ系の後輩に転生しよう。年上の受験生と喧嘩っ早い中学生の間でラブラブ共同生活をしたまえ」


「ええ、嫌っすよ。めちゃくちゃ怖い!?」


 太郎は嬉し恥ずかし龍神の案に賛成した。


「今までありがとうございます。あるじ様。一足先に日本を楽しませてもらいます」


「よいよい。幸せになるのじゃぞ、八」


「はい、喜んで!」


 最後に太郎はもみくちゃにされながら、みんなと別れた。


 太郎はこの世界で大切なことを学んだ。


 世界は大きい。銀行はデカい。一人の力はあまりにも弱い。


 けれども、個と個が手をつなぎ、寄りそい、絆を深めれば、それを大きな力になる。


 世論は、どんなものでも動かせるし、どんな暴挙も止められる。


 世界が平和でありますように。みんなが合わさり、願えば、世界はより良い方向に進んでいく。


 太郎は、仲間の大切さを知った。


 この日、名無し、歌子、太郎、タイガは日本に帰国した。


 もう勇者でも魔王でも何でもない。4人はただの凡人に戻った。しかし、4人が力を合わせればクソゲーである人生を攻略できる、と何の根拠も保証もないけれど確信できた。


 凡人でも4人集まればすごい力になる。もっと集まれば世論になり、世界を大いに動かすのだ。

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