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閑話。無課金五万円分

 王国。城の中。タイガと一の会話。


「私は前々から不服に思っていた。本気で戦えばエピック様の圧勝なのに、なぜこんな児戯をしなければならないのか、とね」


 前方を歩く一。彼女に案内されて城の中をゆっくりと歩く。タイガから見て雰囲気が別人に様変わりしていた。


 銀行と学ぶは真似ぶの合成人間。いつもエピックを心酔しており、ミーハーな彼女はいない。


「ゲームとは競い合うものだ。与え合うものではない。あるじ様はリタイヤを望んでおられる。私は失望したんだよ。だから本気を出すことにした」


 返事をしない。無言を貫くタイガ。もちろん仲間になった訳ではない。ただ、一の様子があまりにも変だから心配になり、のこのことついていく。このまま、のじゃロリ様のところまで案内してもらう手はずだ。


「……」


「ゲームとは120%の努力を出し切り、観客に感動を与えるエンターテインメントだよ。相撲の八百長で手を抜かれては困る。手加減をする甲子園球児を応援する野球ファンはいないだろう? みんな全力を出しているからプロ野球ではなくてアマチュアを応援するんだ。私はプロより高校野球派でね」


「……」


「長々と失礼した。つまるところ何が言いたいのかというと、このまま太郎君の勝利では味気ない。面白みに欠けるというものだ」


 ドラゴンは最強で最後の砦だった。タイガの推測ではのじゃロリ様もエピックも直接対決を望まず、間接的に王国軍に指示を出して勝負するだろうと思われた。彼女らは王都解放軍一万七千の兵が王国を占領したらいさぎよく負けを認める、というのがタイガの予想だ。


「その予想は当たっている。エピック様は支配下の王国軍で一万七千の兵を止めようとしているが、残念ながらドラゴンの殲滅戦に期待した守り重視の王国軍では、奴ら、王都解放軍は止まらない」


 結局。のじゃロリ様を倒した太郎もしくは歌子のどちらかがゲームを決める。日本に戻るのはあるじ様ではなくて、太郎か歌子なのだ。


(それがあるじ様の望みなら、我らは受け入れるのみ)


 タイガは覚悟していた。バトロワに負けた敗者がどうなるのか分からない。けれど前回の参加者である勇者が現国王になり、天使が宰相になって、優勝者の名無しが魔王をやっていることから現世に留まるという選択肢もある。間違いない。


 合成人間としては勝負に勝ってほしかったが、無理に日本に戻られるよりは、この世界で幸せに暮らしてほしかった。タイガはあくまでのじゃロリ様の味方だ。


「それが困るんだよね。前回の優勝者の名無しは日本に帰る権利を保留にし、もっと面白い敵を求めた。ルールがくちゃくちゃではこっちの立つ瀬がない」


 一が喋る。もう以前の彼女はどこにもいない。


「……」


 無言のまま、城の作戦室に入る。


「――!?」


 中に入ると、驚きでタイガは初めて口を開く。部屋の中で王様もエピックものじゃロリ様も眠らされていた。


「お前は一体誰だ?」


「怖い顔をしないでくれ。私はゲームマスター。一というメイドに取りついた」


 一が振り向く。ゲームマスター龍神。太郎や歌子、名無しやのじゃロリ様を日本からこの世界に巻きこんだ張本人だった。


「タイガくん、さっき全員が日本に帰れる方法を模索すると言ったよね?」


「さあ、言ったかしら」


「そう思ったはずだ。私は心を読む。まあ、それはさておき。こういうのはどうだい?」


 この世界のラスボスはこう続けた。


「最後に私を倒すことができれば四人全員を日本に戻そう。ただし、私に勝つことができなければこのゲームの真の勝者になりえた、のじゃロリくんだけを日本に戻す」


「それはダメ」


 あるじ様を知らない世界に一人にする。忠臣のタイガにはそんなことできなかった。


「ならば全員で頑張りたまえ。120%の努力を出し切って読者様を楽しませてくれ」


 龍神は続けた。絶望の一言を。


「――王都解放軍と王国軍の長き戦争の終わりに、決着がついたら私は王国民の全員をデリートしようと思っている」

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