課金六十四万円目。VSドラゴン②
「天空」
太郎はケツにつかれたドラゴンから放たれるブレスを、剣技をつかってはじき返す。
大空に飛翔する二つの影。
ハエのように飛び回る竜騎士の後ろをしっかりと追随する細長い影、ドラゴン。
空中戦はうしろを取ったほうが断然有利であり、勝負の行方は、竜騎士を追いかけるドラゴンのブレスがいつ当たるかという時間の問題であるかに見えた。
歌子は逃げ回っているだけで、一度もドラゴンのうしろを取れなかった。
天性の勘を働かせた太郎は、危険なブレスだけを選び、天空で切り捌いた。
うしろから放たれる猛烈な熱気に、体力が急速に減っていく。
「このままじゃジリ貧だ。何かできないか?」
『逃げるだけで精一杯。速度はあっちが上よ』
融合し、攻撃、速さ、守備、魔防に磨きがかかった。とはいえドラゴンの一撃で敗北してしまう。歌子の逃避行は、まだマシに思えた。
太郎は勝つ算段を必死になって考える。
剣と牙がぶつかったのは開戦直後の一度だけ。あとは逃げながら天空をうって致命傷を避けている。このままいけば負けはのがれない。
一か八かの賭けに出るしかない。太郎はそう考えた。
「急ブレーキをかけて半回転し、相手の左わきに突撃する」
『旋回するっての、正気?』
「ああ、ドラゴンは蛇行しながら飛んでいる。その細長い体を横から強襲する」
『できる、かもしれない』
「ならやってくれ」
『二つ問題がある』
一つ、急激な気圧の変化によって太郎の意識が飛ぶ恐れ。
一つ、先読みされたドラゴンにカウンターを食らう可能性。
『太郎の意識が飛ぶ、および、ドラゴンに旋回直後を襲われたら、まず勝てない。それでも行くの?』
「俺に考えがある。信じてくれ」
10分の逃避行。そろそろ体力は限界に近い。一か八かの急旋回に、歌子は出た。
当然、ドラゴンはこれを読んでいる。蛇行しながら身を縮め、左からやってくる竜騎士にブレスを吐いた。
「龍の息吹」
山一つ丸ごと灰と化すブレス。気温はあっという間に千度を超す。
「天空」
太郎の必殺の一撃。ブレスをかき消す。
そのまま旋回し、横っ腹に歌子が体当たりする。
「いけぇえええ!!!」
『もらったぁ!』
が、しかし。
「無駄です」
ドラゴンの左鍵爪が歌子を襲う。天空を放ち終わった無防備な太郎、無理な体勢で急ブレーキをかけた歌子、二人にドラゴンの斬撃を止める手立てはない。ドラゴンの左腕で叩き落された竜騎士は、地面に垂直に落下する。
「『画竜点睛を知る』で、あなたたちが地面に叩きつけられて敗北する姿は見えました。終わりです」
竜騎士に最後のオーバーキルを果たすため、ドラゴンが地面に向かって急転直下する。
未来予知する相手には勝てないのか? 魔王を倒したドラゴンこそが最強なのか?
――否、否否否。
「俺たちは諦めない」
太郎は片方に愛刀を、もう片方に歌子の剣を持って立ち上がった。
竜騎士から融合を解除した太郎。その手に二刀流を持ち、ドラゴンを待ち受ける。
「何!?」
ドラゴンの未来が変わる。確かに彼女は竜騎士を叩き落した。しかし、気絶させたのは、黒竜である歌子だけであって、太郎の未来はまだ分かっていない。竜騎士に勝ったが、太郎にはまだ勝っていない。
「最後の勝負だ、ドラゴン!」
上から降ってくるドラゴンに対して太郎は持てる力のすべてを出し切り、天空を放った。
二刀流、ダブル斬撃の、最強の天空。
「――ダブル天空!」
「龍の息吹」
巨大な力がぶつかり合う。
大気が響き、大地が割れる。
一撃目の天空が息吹を相殺させ、二撃目の天空がドラゴンの体を切り裂いた。
ドラゴンが口から血を吐く。彼女は竜騎士に勝つ未来予知をしていたが、太郎に負ける未来は予知していなかった。
融合し、融合解除したからこそ起きた未来。一つになり、二人に分かれたからこそズレた未来予知。
太郎の天空がドラゴンに直撃し、彼女は意識を失って力なく地面に落下した。
人間姿の十に戻り、気絶を確認した太郎は、勝利を勝ち誇り、吠えた。
VSドラゴン。竜騎士の太郎の勝利。




