課金六十三万円目。VSドラゴン
午後三時数分前。
王都解放軍はイゼルローン砦の前に陣を張り、突撃する準備を終える。一方、王国側は王国兵に陣を張らせ、守りを固める。王国側が総大将から命令された言葉は、「守れ」。時間を稼げば、いずれ勝利するという意味だった。
エピックの狙いはリーダーを倒すこと。魔王を捕縛した今、太郎、歌子、さえ抑えれば勝利は確実となる。戦力を温存する必要はない。初手から思う存分、最大戦力を投入する。
「相手の一万七千の兵に向けて初手、龍。おそらく太郎さんなりタイガなりが邪魔をするはずです。そこで決めてください」
「かしこまりました」
王都の庭園で十がドラゴンの姿に変身する。
「時はきました。決着を付けましょう、太郎さん」
ドラゴンが喋るたびに大気が揺れる。午後三時まで、あと五、四、三、二、一。
ゼロ。時計が三と十二を指した瞬間、ドラゴンが宙に舞い、地震が起きる。巨大な振動に王国兵たちがおそれをなす。
王都解放軍の進軍、対して王国兵の守りを固めた陣。イゼルローン砦と王都の間で戦争が始まる瞬間、空からドラゴンが舞い降り、王都解放軍に向けてドラゴンの息吹を吹く。一瞬にして何百人もの兵を焦土と化すブレスは、太郎の剣技によって防がれた。
「天空」
初手、龍は読んでいた。あとはあの巨大なドラゴンに勝つだけ。
「予定通り、十さんがやってきた。歌子、いくぜ」
「ええ」
精神と時の部屋みたいなエピックの屋敷で三日間、修行した成果を出す。
ABCシステムを発動。太郎と歌子を融合させる。
太郎は戦士として甲冑服を着用し、竜人の歌子は姿を竜へと変化させる。太郎は歌子の背中に飛び乗り、融合を終了させる。
竜騎士の誕生である。
――キン、キン、キン。
中央で王都解放軍と王国軍がぶつかる中。上空で竜騎士とドラゴンの、剣と牙がぶつける。
~~タイガ視点~~
攻城戦の利点は守りを残さなくていいことにある。もともと戦力の少ない王都解放軍はイゼルローン砦に余力を残さず、すべての兵が進軍した。砦を落とされる危険をかえりみれば、むしろ王国側の戦力を分散できるため、イゼルローン砦をねらってほしいくらいだ。
とにもかくにもタイガは砦を空けて王城を目指した。いわゆるネゴシエーター。交渉人だ。
エピックは時間を操る強力なチートキャラだけれど、実は戦闘を楽しむタイプではない。むしろ頭脳戦において彼女を超えることができれば、案外あっさり負けを認める。
タイガは総力戦の落としどころを考えていた。ただ単純にぶつかるのではなく条約を結ぶ。ある程度、戦力が拮抗した時点でのじゃロリ様と妥協案を探る。例えば、のじゃロリ様の勝利になるとしても太郎や歌子の待遇を良くしてもらうなど、もしくは龍神に直接交渉し、日本人を全員戻してもらうなど、今後の方針を話す場を設けようとしていた。
ドラゴンに簡単にやられていればこうならなかった。
たったの三日でABCシステムを理解し、フレンドダブルで融合に成功した太郎と歌子の努力のおかげ。
なんとしても結果を実らせたいとタイガは走っていた。
王国に城門を超えようとしたところ、風が吹き、タイガは警戒態勢をとる。
そよ風から変身した一が出現した。
「おかえり、八」
「やあ、一。あるじ様のところまで行かせてくれない?」
「それはダメ」
「そう、戦わなければならないのね」
タイガが『七人の分身』を発動させようとすると、一は思いもよらない言葉を発した。
「エピック様から伝言よ。もし竜騎士が本気のあなたに勝つことができれば、我々は負けを認めてもいいそうよ」
「何?」
エピックは太郎&歌子の最後の試練として、全力のタイガを所望した。




