課金六十二万円目。最後の修行
チュンチュン。チュンチュン。
男なら一度は羨む朝チュンという現象。隣に裸の女の子が寝ていて、朝のスズメがチュンチュンと鳴く。
酔った頭を奮い起こし、ベッドから上半身を起き上がらせるとなぜか女の子が二人寝ていた。両手に下着姿の女の子が二人。一人は歌子、もう一人は九。
「いやいやいやいや、何このシチュエーション?」
どうも昨日の記憶がない。酔った九にガツガツと酒を注がれ、流れに身を任せてどんどん飲んでしまった。
完全に修羅場だ。
スースーと眠り姫二人は気持ちよさそうに寝息を立てる。周囲を見回すと太郎は自分の部屋なのを確認した。どうやら二人とも紛れ込んでしまった模様。確かにイゼルローン砦は一万七千の兵を収容したので一人部屋の確保がなかなか難しかった。しかし、太郎など幹部クラスは個別に部屋が与えられていたはずだし、捕虜の九は独房で寝る手はずだ。いくらなんでも自由すぎる。
太郎は起き、寝ぐせでふとんを蹴飛ばしている二人にやさしくかけ直す。
歌子は黒の下着に、引き締まったボディが蠱惑的だった。あと一枚取れば完全に裸になる一歩手前。
九はパジャマ代わりにネグリジュを着ており、下着がスケスケ。白のレースをあしらった上品なブラとパンティーを着ている。
どこからどう見ても朝チュンにしか見えない。しかも女二人。完全な修羅場だ。ふとんをかけ直して目のやり場をつくり、太郎は安心する。あとは太郎が着替えるだけ。
そこトントンと扉がノックされる音。
彼女は部屋主の了承を待たずに扉を開けてしまった。
「おはよう、太郎。修業のメニューができた」
仲の良いタイガだった。しかもちゃっかり人間の姿に戻っており、状況を確認して顔を真っ赤にする。
状況とは、下着姿の太郎、部屋のベッドでは歌子と九が仲良く寝ている。なお完全に下着模様。
「違う、これは、違う。誤解なんだ」
みんな仲良く下着。太郎の上半身は真っ裸。己の下戸を恨みつつ、タイガから猛烈な罵倒を受ける。
「こんのバカチンタン!」
説教は午前中いっぱいまで続いた。
~~午後~~
タイガの説教が終わり、王都解放軍は午後の三時に王城へ攻め入ることが決定した。
革命軍というていはなしていても盗賊ではない。公式の軍隊だ。民衆の信頼を得なければ話にならない。
王都解放軍の目的は、魔王に捕まった王様を助けることだ。王国の民草に、王様は魔王に操られているという情報を流した。今は天使ののじゃロリ様が支配しているも、事実、昔は名無しが君臨していた。
夜襲や奇襲をかけると王国民からの信頼がなくなる。なので王都解放軍は公式の場で、午後三時に戦を仕掛けると宣言した。戦もバトロワも今日で決着がつく。四人の内、誰が日本に帰れるかも決まるのだ。
そんな大事な日に、太郎は正座してタイガから説教を受けていた。
なぜ男女が酔っ払い、同じ部屋で寝てしまったのか。幸い、男女不純異性交遊は起きなかったから良かったものの、何か間違いがあれば上層部は崩壊していた。実際、タイガが怒り心頭でおかしくなりそうだった。
とにもかくにも落ち着き修行パートへ。
歌子が質問する。
「あと三時間しかないけれど大丈夫?」
「全然問題ない。私たちはあるじ様からエピックの屋敷を借り受けたわ」
エピックの屋敷は、精神と時の部屋、みたいなもの。
こっちの一時間が一日分に相当し、修行に明け暮れることができる。
「あまりに時間を延ばしすぎると効果がないの。だから、三日にした。午後三時まで、三日間、みっちり特訓できる」
「それはありがたい」
太郎はタイガの指示に従い、歌子と一緒にエピックの屋敷に行き、前より大きくなったトレーニングルームで修業を開始する。
修行を始める前に先生であるタイガから、ドラゴンを倒す説明を受ける。
「この世界は龍神を頂点に龍や竜に神の恩寵が与えられる。だから龍や竜は上位種族として強さを発揮する」
太郎たち日本人をこの世界に召喚したのは龍神である。ドラゴンボールではないが、ドラゴンは無類の強さを発揮する。
タイガは説明を続ける。
「このままやっても十のドラゴンに勝ち目はない。だから私たちも龍神様の恩寵を受けるの」
「どうするの?」
「歌子、ドラゴンボールの影響を受けている世界なら、強くなることは決まっているわ」
――タイガは得意げに言った。「融合するの」
太郎と歌子が融合し、合体する。それがドラゴンを倒す手段だった。




