課金六十一万円目。ドラゴン対策
歌子がイゼルローン砦に帰還し、名無しを除く、全員の無事が確認されて一同は歓声をあげる。
みんな強行軍で疲れていた。黒竜の後を追い、途中から歌子の独断で作戦が変更されて、難攻不落のイゼルローン砦へ進軍を余儀なくされた。馬に乗っていた体力よりも精神力をごっそりもっていかれた。
兵たちは一時的な無事を喜び、各自、豊潤な食糧から好きな料理を選び、ワインを空けて祝った。
半日におよぶ王都への敢行。つかの間の休息を打ち切り、当日中に王城へ攻め入るなど誰がいえよう。戦略的に今日中にエピックに勝利する予定だったが、いくつかの不測の事態に作戦は強引に変更された。
太郎は、今日はお泊りパーティーだと、やれやれと首を振った。仕方なし。こちらは魔王という貴重な戦力を捕虜に捕られた。相手の戦力を見誤っていたのはリーダーである太郎の責任だ。果敢に特攻しても全滅は免れない。
幸い、こっちは攻め戦、相手は籠城、イゼルローン砦ではめを外して酒を飲んでも王国からの奇襲はない、と踏んだ。もちろん相手のエピックが切れ者なのは重々承知している。しかし、イゼルローン砦を落とされたからといって、当日で取り返しに来るはずはない。なぜなら籠城戦となればタイガのいる太郎サイドが有利になるからだ。
魔王だ捕という一抹の不安を残しつつ、太郎は宴に参加した。
ちょうどシャワーを浴びてパジャマ姿になった歌子と出くわした。重い鎧を外し、ご満悦の様子。
「ご苦労様。一緒に食べましょう」
「ああ、今日は飲もう」
同じく装備を外し、寝間着姿の太郎が配下に支持し、最高級のワインを持ってきてもらう。
グラスに注ぎ、チーンと音を響かせ、二人で乾杯した。
四席ある、王都解放軍のリーダー席は、二席が空白だったが、太郎は話を進める。
「名無しが負けたのは大誤算だ」
「ええ、相手のドラゴンを甘く見ていた」
天使サイドは合成人間一人が魔王を凌駕する。太郎サイドはタイガが仲間になってくれているから良かったものの、単純に力比べをしていたら天使が優勝していた。のじゃロリ様の、魔王を超える合成人間を生み出すチート能力はチート過ぎる。
太郎たちは残り三つの障害、ドラゴン、一、エピックの三人を倒さなければならない。いずれも魔王より格上だと考えたほうがいい。
宴会場が大騒ぎする中、リーダー席だけは深刻な雰囲気に包まれていた。料理がおいしくない。ワインでなかなか酔えない。沈黙を保ったまま、淡々とディナーを口に運ぶ。
「おめでとうございまーす!」
陽気な声がかかる。見るとおめかしした九がいた。純白のドレスに真珠のネックレスをつけている。
「なーに暗い顔で食べているんです。私を倒した人が元気ないですね。うへへ、もっと喜んでくださいよ」
執拗に太郎に酒をすすめてくる。かなり顔が赤い。倒した後、一応、捕虜として連れてきたのだけれども、元仲間だということもあり、すぐさま王都解放軍に馴染んだ。彼女の元々の性根の良さも起因しているのかもしれないけれど、すごいくつろぎよう。
太郎は素直に酒を頂いた。
「お前らが強すぎて困ってるんだ」
食事をしながら太郎は歌子にやっとのことでブルを倒したことを伝える。
「レベルMaxの太郎の必殺技が効かない相手があと3人もいると思うと憂鬱だわ」
「そりゃーダメですよ、歌子さん。そんなのでは勝てません。今、八ちゃんが最後の特訓メニューを練っていますから待ってくだしゃーい」
酔っ払いの戯言をスルーする。
酔っ払いの戯言……。
酔っ払いの戯言?
「九、今なんて言った?」
「でしゅからー、ドラゴンに勝てるようになる特訓メニューを考えていますよーって」
「――本当に?」「――本当か?」
歌子と太郎、二人そろって真剣に問いただした。
ベロンベロンに酔っている九だが、どうやらタイガが必死になって攻略法を考えているのは本当のようだった。
魔王に勝った、あのドラゴンに勝つ。絶対に不可能のように思えることを、一体全体どうやって成し遂げるのか。タイガ師匠の腕の見せ所だった。




