課金五十八万円目。VSブル
ゾウと同じ大きさの牛がいた。彼女の名前はブル。合成人間の九が姿を変え、チート能力を発揮する。
「一兎を制限する」
太郎との戦いでブルが制限した選択は、一、戦う、二、逃げる、の二番目。逃げる。これで勝負を逃げることができなくなる。ブルは勝負においてお互いの武器が触れ合うまで避けてはならないという状況下を作った。
そのまま牛の突進。ブルドーザーが突っこんでくる如く猪突猛進してくるブル。
太郎はタイガに合図を送った。
「ここは俺が食い止める。だから、お前は先に行ってイゼルローン砦を無力化してくれ」
「分かった。死なないで」
「ああ」
ブルのチート能力『二兎追うものは一兎を制限する』は二者択一を限定的にするもの。今回、逃げる選択を制限されたので、太郎の選択肢は、戦うの一択だった。
突進してくる巨躯に思いっきり剣を振るってみる。牛の頭に剣がぶつかり、そのまま弾かれる。
「嘘だろ?」
――カキンッ、ガタッ!
剣を弾いたブルは頭を横に払い、太郎を吹き飛ばす。二度、三度、草原をバウンドし、太郎はかなり遠くの距離を転がりながら、何とか停止した。
「マジかよ」
口から少量の血を流しながら起き上がる。レベルMaxのおかげで軽傷で済む。けれども問題はそこではない。問題はブルの防御力の高さにある。
太郎の剣は機械兵器アーベントを一撃で真っ二つにするパワーがある。なのにブルの頭は傷一つつかなかった。ブルは防御にかなりの数値を振った鉄壁要塞なのだ。
(剣の攻撃でダメージが鼻くそほどしかなかった。長期戦は不利、かといって剣術以外はもっと攻撃力が足りない)
太郎の行動パターンは剣術と体術の二つに分かれる。フェイントを混ぜた拳闘士の戦い方が得意なのだ。しかし、今はヤバイ。ブルのチート能力で逃げられず、さらに堅硬な防御を突破できない。
魔法があれば良かったが、剣士の太郎は専門外。力量は完全にブルが上を行っていた。
「太郎さん、もう一回行きますモー」
「お前、実力を隠していたのか?」
「違います。合成人間はみんな強いモー」
口調が違うのはお茶目な九の性格からだろうが。
はてさて、攻略に手間取る。
太郎はこのとき意図していなかったから仕方ないが、真にチートなのは、のじゃロリ様にあった。彼女の合成人間は素でレベルMaxを与えられ、付与された言葉によって各々がチート能力を有した。
言い切ってしまえば、天使サイドは太郎を超える戦士を無尽蔵に生み出すことができた。
「ブル、マジ強い」
「モー」
デカい牛の突進を食らう。今度は跳ね飛ばされないように剣を斜めにし、闘牛士の要領でベクトルを変えて威力を軽減した。
「ぐはっ」
それでも太郎は吹っ飛ばされる。大きな後退を余儀なくされ、防戦一方の試合展開になる。




