課金五十六万円目。初手、龍
王都にて。王様、老天使の大臣、そしてエピック、のじゃロリ様たちが控える中、動揺が走った。
「黒竜があらわれました」
王国の辺境に位置する始まりの村を端に、邪神の黒竜が出現したとの一報が入った。
黒竜は真っ直ぐに王都に向かっているらしい。
戦争間近のこのタイミングで、王国中に災害クラスの不安が広がる。
王様も大臣ものじゃロリ様の命令を待つ。
「なるほど。やりますね」
将軍のエピックが呟く。
国中の人が天使と竜を信仰している。崇拝し、神聖化しているため、言葉を交わしてはならないという誓いを固く守っている。人と人の戦争に神を挟む。この英断ともいえる戦略を用いるとは、エピックはしてやられた顔をする。
「歌子、太郎は最初から王国軍を相手にせず、真っ直ぐ王都に向かう算段でしょう」
こたびの戦は相手の軍を打ち負かすか、将を捕らえるか、はたまた、本丸を占拠するかで勝敗が決まる。太郎たちの取った名無しの特攻はシンプルで良い戦略だ。人民は神に攻撃することはできない。言葉すら聞けないのだから手を出すのはもってのほか。
名無しのノクターンは一直線に何の邪魔も入らずに王都に来れるだろう。
動揺する王城にて、エピックは最善手を選択する。
「初手、龍」
神と人の戦ができぬなら、神と神で戦えばいい。人を超えた領域の怪物、天使の合成した使途を遣わす。
「御意」
クールビューティーのメイド十が合図する。彼女はドラゴンの異名通り、その姿を東洋の龍に姿を変え、大空へと飛翔する。黒竜ノクターンに龍の十をぶつける形だ。
エピックは各地の守り砦へ連絡を取る。
「黒竜の襲来で動ける軍はありますか?」
「返答。各地の王国軍は街の守りを固め、王都まで動ける軍はありません」
「そうですか。分かりました。そのまま守りを固めてください」
人は災害級の危険が迫ると動けなくなる。自分の家を守るだけで精いっぱいになってしまう。
黒竜をブラフだと分かりつつも配下の硬直に痺れを切らせるエピック。結局、王都の守りは今ある最小限の兵力でしなくてはならないと思い知らされる。
一方、王都解放軍は、各地の守りを無視しながら進軍を続けていた。
ゆっくりと空を飛ぶ名無しノクターンに追随する形で全軍を進める。各地の守りは手薄になり、思い通りに何の障害もなく進軍できた。
先頭を走るのは、歌子。ディーヴァとして名をはせた武人は、馬を疾走させる。
「続け。全速力で王都まで走り抜けるぞ」
「おおお!!!」
一万七千の兵が列をなして王国を横断する。




