課金六万円目。エルフ
「奴隷が欲しい」
この日、太郎の何気ない呟きから事件が始まった。
「最低ですね、ゲス野郎、はい」
チュアがゴミムシを見る目で蔑んでくる。
「だって異世界だよ。異世界といえば奴隷じゃん。女の子を自由にできるなんてハーレムの次くらいに男の夢じゃん!」
「勇者は風呂場で他のお客さんの迷惑をかえりみず白い液を飛ばしていたクズでしたが、太郎さん、あなたもそれに劣らぬ考えの持ち主です」
「女子に理解されなくてもいい。男子はハーレムが大好きなんだ。複数の女の子からキャッキャちやほやされるのが夢なんだ。だから奴隷が欲しい。奴隷ってないの?」
太郎は無理を承知で聞く。勇者の知識では、この国では人間の奴隷制度が廃止されている。ただし捕虜は有効。帝国軍からかっさらった捕虜ならば奴隷のように扱うことができる。
「う~ん。今から帝国に行って可愛い女の子をさらってくる? 10歳くらい」
「変態の上にロリコンですか。キモイです、はい」
顔も見たくない、とチュアは手元の魔導書に視線を戻す。さっきから魔導書と格闘しているようで太郎の相手はまったくしてくれない。
幼なじみなのにここまで好感度が低いヒロインも珍しい、いやヒロインですらないんですけどね。太郎は明後日の方角を見つめる。
「はあ……幼なじみ系ヒロインとイチャラブしたかったぜ」
「たぶん一生ないです」
この日から太郎の苦悩が始まった。
異世界転生と言えばハーレムがつきもの。なんかヒロインを救ったりしてチョロインと呼ばれるくらい好感度Maxにして、流石ですお兄様! なんちゃって呼ばれたり。一人、二人、と愛人を増やして最後には全員と結婚する。太郎が読んでいた異世界転生も最後は10人くらいの女の子と全員結婚していた。
だから浮かれた。俺も異世界転生でハーレムだ、ウェーイ! の感覚で訓練やら内政やらをしてきた。しかし、気づいてしまった。まったくおんなっけのないことに。
「おかしい。どうしてだ。こんなはずでは。唯一の幼なじみはガン無視だし。村の可愛い娘は他の男連中とくっついちゃうし。最後は幽霊みたいに浮かんでるだけだし。俺の人生ハーレムルートは超絶ハード」
訓練された村人は順調。内政もうまくいっている。しかし、太郎はモテなかった。どれくらいモテないかというと、バレンタインの日に義理チョコ一つもらえず母親と祖母からだけしかチョコがもらえない男くらいにモテなかった。せめてブラックサンダーくらいくれよ、と心の中で泣き叫んだ。
モテない男の闇は深い。
「ふっはっはっは。奴隷じゃ。奴隷さえ手に入れれば異世界も楽しくなるぜ」
なお女神さまに性的目的で奴隷を買うことを禁止された。
「仕方がない。両想いになれば奴隷だって手が出せる。将来の恋人をつくろう作戦だ。まずは幼女を買い漁る」
太郎は源氏物語に出てくる紫の上の話が好きだった。幼女を引き取り理想の女性を育てるなんて男心をくすぐられる。
チュアは、「女を物扱いして独占欲を満たすなんて最低です、はい」と言っていたが、そんなこともう知るもんか。太郎は奴隷を買うことを決めた。もしくは帝国軍の幼女を捕虜にする。
「勇者も迷惑クズ野郎でしたが、太郎さんを見ていると前世でどうしてモテなかったのか原因が丸わかりです、はい。女心がまるでわかっていない」
「うっさい。前世では女子と話す機会なんてほとんどなかったんだ。どうせ挨拶しても女子には固まった表情で挨拶を返されるような男ですよ」
「なぜ雲上人様はこんなクズを勇者に選んだのか理解不能です。勇者じゃなければチ〇コ蹴ってました」
無視。ケンカ。無視。ケンカ。村長の仲裁。無視。ケンカ。無視。ケンカ。を繰り返す。
そして、とうとうチュアが折れる。
「あーもー勉強の邪魔です。わかりました。太郎さんに奴隷の仕入れ方を教えます、はい」
「まじまじ? まんもすうれぴー(死語)」
「この国では人間の奴隷制度は禁止されております。人間の、ではです。ですから――亜人を奴隷にすればいいのです」
「亜人。いるの?」
「はい、人間と同じような姿をしており、かつ幼女から18歳くらいまで1年で成長し、かつ老化しない人種がいます」
「それは?」
「エルフです、はい」
太郎に衝撃走る。
エルフ凌辱。最高! ※この作品はR15ですので過度の性描写やグロ描写は致しません。留意ください
「エルフ凌辱。最高!」
「キモイです。今すぐ死んでください、はい」
どうやら太郎の心の声が外に漏れてしまったようだ。危うく社会的に抹殺されるところだった。
「ごめん、ごめん。チュアは気が許せるから、つい、冗談をね」
「え、今の冗談だったんですか? 自警団を呼ぶところでした」
お巡りさんこいつです状態だった。太郎は少し反省した。ほんの少しだけ。
次回、エルフが仲間になる。予定