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四十七万円。VS一

 一週間ほどの月日を過ごしただろうか。


 朝、脳が一番記憶力の良い時間帯に、九から戦略を学んだ。講義を終え、自衛する力を八から学んだ。引きこもりと自称する彼女は、外には出ないが、屋敷内のトレーニングルームで懸命に木剣を振るった。夜、慰労を込めて四人で麻雀をした。健康のため、12時には就寝したが、午後から寝静まるまで麻雀に明け暮れた。


「なんだか合宿みたいだ」


 ソシャゲが青春の太郎は体育会系の合宿に参加したことがなかった。漫画やアニメの世界だと思っていた。強化合宿はワクワクする。


 朝、戦略を熟知し、昼に稽古し、夜にみんなで麻雀をする。そのことが楽しかった。


「ずっとこのままが続けばいい。そう思っちまう」


「早まっちゃダメよ」


 夜。物思いにふけっていると八から警告が出る。


「あんたは日本に帰らなくちゃいけない。ちがう?」


「ん、そうだ。その通りだ」


 ファンタジーの世界に来てからクラウドファンディングしたり、戦ったり、拷問されたり、合宿したり、辛いこともたくさんあったが、夢のような生活が待っていた。特に、現代において誰かにここまで育ててもらうという実感がなく、ずっとすさんでいた。荒れるというかゲームに没頭して他のことが目に入らなかった。今は違う。


 成長している。日々、バリバリとレベルアップしています。そう太郎は思う。


 人生は一期一会。太郎が日本に帰ればみんなと別れなければならない。


「もうちょっとだけ合宿したい。麻雀が打ちたい」


 寂しさを口にすると八が、


「会えるよ。自分から望めば、いつでも、誰にでも」


「そうか」


 すると、そこへ、


「あれれ、お邪魔でしたか~笑」


 お調子者の九が茶化す。


「やめなさい、九。太郎さんや八がお困りです」


「ごっめんなさ~い☆」


「早く来なさい」


 九を引っ張っていく委員長タイプの十。


「べ、べ、別に。何の邪魔でもないし!」


 真っ赤になる八。


「はっはっは」


 笑う太郎。


 こんな四人での団らんが何よりも幸せだった。


 翌日。


 約1週間の成果を試す日。


 室内。円形上のコロシアムが用意され、中央で一が待ち構える。


 彼女の能力『学ぶは真似ぶ』で変化した空間。


 殺気立った一が口を開ける。


「ようこそ太郎さん。私は最終試験です。内容は八から聞いていますね?」


「ええ」


 木剣を構える太郎。最後の勝負。太郎VS一の純粋な実力勝負。


「ルールです。私は変身能力を一度しか使いません。つまり、太郎さんは今から私が変身する相手に一対一の決闘で勝利してください」


「分かりました」


 闘技場の観客席では、十、九、八、エピック、のじゃロリ様が楽しそうに喋りながら見守る。


 一は能力を行使した。


「これは?」


「ええ、あなたの相手は、」


 彼女の高い声から男性の低い声に様変わりする。


「あなた自身です。日本人の太郎さん。元のあなたを倒してください」


 対戦相手は、勇者の姿になる前の、日本にいたころの冴えない男子高校生、太郎自身だった。

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