閑話。無課金4万円分
九との株勝負は次回。②に続きます。
閑話。
過去? 未来? のお話。
「やあ、魔王君」
名無しに喋りかけてきたのはボーイッシュな女の子。エピックだった。
名無し改め、魔王、驚く。
「それは秘密のはずっすけど。どこの誰っすか?」
魔王の問いかけに男装の麗人はこうべを垂れる。
「それは失礼した。二度目の魔王君」
「あ?」
殺気を放つ魔王。けれどもエピックは動じない。まるで演劇を披露する宝塚みたいな所作をする。
「君が前回の優勝者であり、二回目のバトルロワイヤルに参加中だということは調査済みですよ。確か、もう一度、戦ってみたい。君の願い事ですね、日本に戻らずに再度、魔王として君臨したのは?」
「せや。日本に帰るチャンスは保留にしてきた」
前回の優勝者は魔王。
魔王は、魔王として今回のバトルに参加している。
勇者 太郎
竜人 歌子
天使 ??
魔王 前回の魔王(名無し)
以下、魔王を名無しと呼ぶ。
名無しの目的は一つ。好敵手と戦う事。
前回のバトルロワイヤルはあっけなさ過ぎた。勇者も天使も弱すぎて王国に幽閉している。
しかし、今回はどうだろうか。太郎に歌子にとダイヤの原石がゴロゴロと転がり、花開くときが近い。
傲岸不遜ともいえる名無し。彼は自らを殺しうる存在が育つのを楽しみに待っている。
「ちゅうこっちゃ。で、お前なにもん?」
「僕はエピック。ただの商人です」
「なぜここにいる?」
「商人の中でも最強の商人、」エピックが矢を構える。「金貸しです」
無数の矢が名無しを襲う。
エピックが放った瞬間、彼女の背後から数十の矢が出現し、最初の矢を追随しながら一斉に名無しを襲撃する。
「竜人舐めんな」
魔王化。魔王と竜人の二つの属性を持つ名無しは黒龍の姿に変わる。邪神ドラゴン、ノクターン。
無数の矢は魔法障壁によって消し炭と化した。
「人の子よ。強いのは分かった。けど自分には勝てないっすよ」
「道化師みたいな口調はキャラ付けですか?」
「手加減や」
ノクターンになった名無しがブレスを吐く。ただのブレス。たかがブレス。されどブレス。
メラゾーマに見えるただのメラのごとく。超強力なブレスがエピックを襲う。
「時は金なり。金は時なり」
エピックが囁き、大地は焦土と化す。小さな山程度なら一撃で燃やすノクターンのブレス。
しかし、しかぁーし、しかし、エピックは生き残っていた。火傷一つ負っていない。
「なんやて?」
「右腕。刺さってますよ、魔王君」
「――!?」
ノクターンの右腕。知らぬうちにエピックの矢が刺さっている。もちろん再生能力があるので致命傷になることはないのだが問題はそこではない。ノクターンはエピックの攻撃を認知できなかった。知らない間に矢が勝手に刺さっていた。
「今日のこの辺にしておきましょう」
ソプラノボイス。男装の麗人は出会った時と同じポーズでこうべを垂れた。
「せやな」
元の人間に戻るノクターン。人型の名無しの右腕に金色の矢が刺さっており、左腕で強引に矢尻を抜き取った。血がたくさん出たが、すぐに再生する。
「お前みたいな奴、なんていうかな、イレギュラーちゃうか?」
「くすっ。ただの金貸しですよ、僕は」
金色の弓に金色の矢を放つ男装の麗人エピック。彼女は異世界転生や異世界転移した日本人ではない。
ならば天使の関係者。そう考えるのが妥当だろう、と名無しは思った。
チートから生まれた更なるチート。エピックは今回のバトロワのかなめになるだろう、と名無しは予想した。
「太郎さんや歌子さんを舐めないことです。育ててばかりいないで魔王君も研鑽を積んでください」
「おおきに」
「では。時は金なり。金は時なり」
忽然と姿を消すエピック。もちろん名無しは視認できなかった。




