課金四万円目。訓練
富国強兵。太郎は内政によって始まりの村を豊かにし強くしようと考えた。
優先すべきは帝国軍100人。チュートリアルをクリアしなければ前に進めない。村人のレベルアップが必須だった。
「訓練だ」
「おおおぉぉぉ!!!」
チュアの魔導書ができるまで、村長の家に彼女を置き、太郎は一人、村人の強化を始めた。
「久しぶりに一人になれた。さて、さっそく始めますか」
継続は力なり。本来、強くなるためには日々の練習が必要だ。しかし、今は時間がない。短期間で帝国軍に勝てるためのウルトラCが欲しかった。
そこで目を付けたのが馬。始まりの村は良質な馬が揃っている。重装鎧の弱点、速さの遅さと魔防の低さを攻めるには騎馬の強化が勝利への最短距離に思われた。
「よっしゃ。練習だ」
「おおおぉぉぉ!!!」
村人を100人くらい集めて始まりの村の周囲をひたすら走った。
騎馬の訓練。走り込み。バタバタバタバタ。
「ついでに剣の練習だ」
「おおおぉぉぉ!!!」
疲れた馬が休んでいる隙間時間を活用して剣の練習をした。
村人の訓練。剣の素振り、模擬戦。キンキンキンキン。
訓練の最中。ちょっと昔の、前世のことを思い出す。
太郎は勉強のできない子だった。勉強への関心・意欲が低かったのだ。勉強嫌いを素で行くような感じだった。
いろいろな本を読んで調べてみると人間は興味のあることしか長く続かないという結果があった。なるほど、と思った。確かに勉強は1時間で飽きてしまうがゲームなら1日中できた。
発売日当日に買ったRPGを徹夜でやり込んでは親によく叱られたものだ。もしゲームのテストがあったら90点以上は取れた自信がある。
結局、人は興味のあることしか頑張れない。嫌々やっても続かない。好きこそ物の上手なれ。
だから太郎は勉強を捨てた。ゲーム会社かソシャゲ会社に就職しようと思っていた。
と、何が言いたいかと言いますと。センター試験は好き嫌い関係なく万遍に勉強しなければならないがその後の人生は好きなことだけをやり続ければ良いということ。
人生やり込みプレイをする努力家が勝つのだ。
村人たちは馬と剣がかなり好きだった。成長補正のおかげか短期間でレベルアップする。
「毎日、馬と剣の修行だ!」
「おおおぉぉぉ!!!」
バタバタバタバタ。キンキンキンキン。バタバタバタバタ。キンキンキンキン。
これが一週間続いた。
一週間後、村長の家に戻ってみると魔導書が完成していた。
「お疲れさまでした」
ねぎらいの言葉をかけてチュアの様子をうかがう。チュアは熱心に魔導書を読んでいた。
「なあ、俺にも魔法が使えたりするのか?」
魔法使いの神様はNOと首を横に振る。どうやら勇者には魔法が使えないようだ。
この世界の魔法は三すくみとなっている。赤の魔法、青の魔法、緑の魔法。赤は緑に強く、緑は青に強く、青は赤に強い。また、覚えられる系統は一つだけでチュアは赤の魔法を覚えた。
本来、人間に魔法を扱うことはできない。魔法は神様だけのものだ。しかし今回、運よく魔導書が手に入った。それもオーダーメイド。チュアの魔法適性を調べてチュアのためだけに書かれた魔導書だ。
「勇者様や。お茶になされますか?」
勇者の親父。村長さんがお茶を出す。ありがたくいただく。
ずずず、とすする。隣も、ずずず、と美味しそうに飲んでいた。
「チュアさんはどうされますか?」
「いりません村長。私、忙しので、はい」
チュアが懸命に勉強している。ノートに魔導書の内容を書き写していた。
ゲームで表現したら、カキカキカキカキ、という感じ。
チュアの訓練。勉強。カキカキカキカキ。
チュアは勉強が得意なようで魔法の勉強に心酔していた。
太郎は思う。自分は勉強を捨てた人間だけれども、別に勉強が嫌いなわけじゃない。中学や高校で習うような勉強に興味を惹かれなかっただけだ。数学、英語、理科、社会、どれも大嫌いだ。
でも世の中は五教科だけじゃない。
チュアのように魔法の勉強とか、自分の好きなものをひたすら勉強すれば良いのだ。
太郎でいったら国語やゲームの勉強だろう。
学校の勉強はもう無理。でも自分の好きな分野の勉強はすごく楽しい。勉強って実は面白い、のだ。
始まりの村がすごい勢いで強くなっていくのを感じた。
NAISEIの方も着手しなくては。とりあえず武器が古びた剣、古びた槍、木の盾だけなので装備品を強化しようと太郎は思った。
今後の課題、内政。
訓練された村人 レベル20
HP:D
攻撃:C
速さ:C
守備:D
魔防:D