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二十四万円目。新しい出発

「さて、では僕と反省会をしようか?」


 貴族の食卓にお邪魔する。長方形の机の端と端で向かい合って食事をする。給仕係は大浴場にいたメイドがそのまま引き継ぎ次々と料理が運ばれてくる。子豚の丸焼き、フォアグラのステーキ、薬味となるキャビアにトリュフを削ったサラダなど、まあ豪華だ。


 エピックは王子様のような恰好をして、日本でいう宝塚みたいな貴族のいでたちで太郎に説教した。


「では太郎。君がなぜ前の世界で負けたか推測できるかい」


「あれ、キャラ変わってない?」


「すまない。いくら勇者様とはいえ君は生徒で僕が先生だ。主従関係を築きたまえ」


「……お、おう」


 太郎はエピックの言うとおりに敬語を使うことにする。バトルロワイヤルに勝利して日本に戻れれば何でもいいので、エピックのいう事を受け入れる。何度も言うが太郎の目的は日本に戻ることだ。


 と、いうことはディーヴァなど他の日本人を倒して世界を統一しなければならない。


「俺が負けた原因は、無双できてなかったから?」


 ABCシステムを理解し、難局を乗り越えられると思っていた。しかし、天使が作ったとされるアーベントは日本のソシャゲにはなかったもので、太郎は初見だった。だから負けた。そんな感じか。


 エピックはナイフとフォークでステーキを切り分けて口に運ぶ。貴族だけあってしっかりとしたテーブルマナーが身に着いている。赤ワイン(のようなもの)を口に含み、うむ、と頷く。


「そうだね。ソシャゲ知識が生かせなかったのは残念だった。けれども負けた本質はそれではない。君は大事なことを見落としている」


「大事なこと?」


「ああ、この世界がソーシャルゲームを元に作られていること。そして、ソーシャルゲームとは何のために作られたと思っている?」


 ソシャゲが作られた理由? 太郎は逡巡し、顧客を楽しませるためだと返答した。エピックはこう切り返した。


「太郎の答えは遊ぶ側だ。作る側を考えてみたまえ。彼らはお金を稼ぐためにソシャゲを作っている」


 と、いうことはどうかだ。この世界はソシャゲ至上主義であり、常に利益を追及している。だから、とエピックは続けた。


「太郎の負けた原因はお金がなかったから。ソシャゲにおいて重課金は必ず廃課金に負ける」


「え、そんな理由かよ!?」


 確かにこの世界はソシャゲに似通っている。負けた相手アーベントは廃課金の極みだったのかも。天使とか天界とか言葉からして金持ちのイメージがある。札束のお風呂とか入ってそう、と言ったら、神様に叱られるだろうか?


 食事の間、エピック様のご高説はいかにお金を稼ぐかに重点を置いていた。この世界は廃課金じゃないと攻略できない。商人こそが世界を牛耳っている。金を稼ぐには資本主義の原則を学ぶしかない。


「だから太郎。商人になりなさい」


 勇者でも村人でも盗賊でもない。第三の道。商人になってお金を稼ぐこと。これがバトルロワイヤルで勝利するのに一番手っ取り早いらしい。


 食事を終えると別の部屋に移り、エピックは十人のメイドを並ばせた。彼女らには①から⑩までのナンバープレートが付いている。


「最初の試練だ。今からメイドのナンバープレートをゲームで奪ってみたまえ」


「ん、商人になる方法を教えてくれるんじゃなかったのか?」


「このメイドは一人一人が最強の能力を有している。対して太郎は無能力。何の戦闘能力を持たない。頭だけで最強の能力者を倒してくれたまえ」


 エピックによるとゲームに勝つことが商人になる近道だそうだ。胡散臭いがやるしかない。


 最強の能力を保有するメイド十人との直接対決。覚悟を決める。太郎は好奇心旺盛に返事をした。


「ああ、やってやる!」

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