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課金二十一万円目。無双のお時間

「思い出した」


 ダンジョン攻略を開始する直前。太郎は独り言をつぶやく。


「どうしたんすか?」


「このダンジョン。見覚えがある」


「頭を抱えて大丈夫っすか?」


「ちょいタンマ」


 心配する名無しをよそに、太郎は必死に思い出す。


 デジャヴュ。過去に体験したような錯覚。しかし、太郎のデジャヴュは錯覚ではなく本当に体験したことだった。


「俺はここのダンジョンを何度もクリアしている」


 ダンジョンタワーと呼ばれる上層部に行けば行くほどモンスターが強くなり、報酬も多くなっていくというイベントを、太郎は日本にいたときに経験していた。これはソシャゲだ。そっくりなのだ。


「間違いない。ステータス表記もくりそつだ。HP。攻撃。速さ。守備。魔防。全部あのソシャゲと同じじゃないか。なぜ気づかなかったんだ?」


 異世界転生し、興奮して大事なことを思い出せないでいた。でもすべて思い出した。これはソシャゲであり、太郎は経験者で、かつ廃課金プレイヤーだ。攻略サイトは毎日チェックしていたし、ゲーム実況者の動画も欠かさず見ていた。


 太郎は確信する。このソシャゲ世界の攻略法を日本では自分が誰よりも詳しい。


 皮肉にも拷問され、苦しい目にあい、ダンジョンタワーの前までやってきてやっと思い出した。まあ、過去を悔やんでも仕方ない。太郎は拷問を受けてソシャゲ世界の住民を殺す覚悟を持った。


 今からソシャゲ知識でチート無双すれば結果オーライだ。


「なんだこれ。ソシャゲと同じじゃないか? なら簡単だ。元廃課金のトッププレイヤーの実力を見せてやる」


 神様からもらったチートは分からない。だが、しかし。太郎には何百時間も費やした経験値がある。


「ABCシステム起動!」


「わお。ナンスか、これ?」


 名無しが驚く。


 太郎が叫んだと同時にABCシステムが発生。ついでにABCリンクを起動させる。


「この世界はロールプレイングゲーム。戦闘は4人同時が限界。逆にいえばシステムが強制的に4人編成をつくる。今、俺と名無しの2人しかいない。だからお助けキャラとして仲間のノンプレイヤーキャラクターを編成することができる」


「ノンプレイヤーキャラクター?」


「うん。プレイヤーが操作できない味方のキャラをそう呼ぶ。だからとりあえずチュアとシンフォを味方に加える」


 太郎がABCリンクを操作し、チュアとシンフォを召喚する。


「おお、すげぇ。でもこれ本人じゃないっすよね?」


「ああ名無し。これはあくまで自動で戦闘を補助してくれるキャラクター。感情はない。ただの人形だ。でもダンジョンタワーを攻略するのに役に立つ」


 ABCリンクの利点は他にもある。例えば経験値を得ることができる点だ。


 本来、太郎がモンスターを倒しても経験値は太郎しか得られない。しかし、4人でパーティーを組み、ABCリンクでチュアとシンフォを味方にしていれば、太郎の得た経験値と同じ量の経験値を、名無し、チュア、シンフォの3人も得ることができる。


 ABCシステムはこの世界ではソシャゲをやりこんだ太郎しか知らない機能だった。


「よし。さっそくダンジョン攻略だ。ちょっといいか? 名無し」


「なんすか?」


「二回行動のスキルを持ってない?」


「ありますよ」


「でかした!」


「なんか照れるっすね。可愛い女の子に褒められると」


「俺は男だ」


「ぐはっ」


 名無しに蹴りを入れる太郎。茶番はそこそこに二回行動のスキルを最大限に利用させてもらう。


 名無しの持つ二回行動は、文字通り攻撃回数をもう一回増やす、自分または味方を再行動にするというものだった。レベリングでは二回行動は必須級。廃課金では当たり前なのだが、初心者や中級者にはお高いスキルとして見られていた。それだけ二回行動は珍しいスキルなのだ。


「自分が二回行動すればいいっすか?」


「いや違う。名無しにはアタッカーをやってもらう」


 太郎の目論見ではアタッカー×1、サポート×3の編成でレベル上げをする予定。


 レベルの高いアタッカーがモンスターを倒し、レベルの低いサポート×3が補助をしながらレベリングするのだ。


 名無しには攻撃に専念してほしい。すると名無しが疑問を口にした。


「二回行動しながらスキルは使えないっすよ」


「大丈夫。俺が使う」


 ここで便利なABCシステムを発動。ABCシステムにはスキル継承がある。名無しの二回行動を太郎に継承させればいい。


「ABCの枠は3つ。補助を加えれば4つ。そのうちの1つに二回行動を継承させる」


 本来のソシャゲであればスキル継承を行えば、元のキャラクターは消える。しかし、名無しはイベントキャラ。絶対に消えることはない。絶対に消えることのないキャラからキャラが消えるスキル継承を行った場合、どうなるか? ここは賭けだったが賭けは成功した。名無しは死なずに、スキルを失うことなく太郎の補助枠にスキル『二回行動』が習得された。


 ダンジョンタワーに挑む前の準備は整った。


 あとはカンストするまでレベリングするのみ。


「よっしゃー! いくぞ、みんな!」


「はいっす!」


 と返事する名無し。


「かしこまっ!」


 と横ピースするチュア。


「かしこまっ!」


 と横ピースするシンフォ。


 ズコーっと、こける太郎。ノンプレイヤーキャラクターは、なぜかパロディに造詣が深かった。


 ――なんでやっ!?

盗賊(太郎) レベル1

HP:D

攻撃:C

速さ:C

守備:D

魔防:D


補助 二回行動


毒耐性◎

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