課金二十万円目。盗賊
朝。宿の一室で名無しから女装の技術を学ぶ。
女装というが太郎の場合、ピーンの拷問で整形されているので、そのままでも十分女に見えた。
名無しから教わったのは三つ。
一つ。声質。
そのまま喋ると男の声なので不審がられる。なので、極力無口の設定にした。また、どうしても喋らなければならない場合、うん、はい、など一言だけ発するようにした。案外バレないものだった。
一つ。服装。
奴隷用の布切れなので目立つ。トラジコメディの役人は奴隷を追っているのだから当然だ。なので、ここは綺麗に着飾ることにした。トラジコメディの市場で名無しに服を見繕ってもらい、着替える。
中世的な服装。女性のシンボルといえるスカートは外せなかった。逆に、スカートさえはけばどこからどう見ても女の子にしか見えない。変装は完璧だ。
「ブラジャーはどうするっす?」
「いえ、ごめんなさい。さすがに男の矜持といいますか? すごく嫌です。遠慮します」
「スカート姿で勃起しないでくださいよ? 目立つっす」
「肝に銘じておきます」
一つ。仕草。
例えば座るとき、膝を閉じるなど簡単なことを教わった。いくら女装しているとはいえ、完璧といえどもスカートの中身は男の下着だ。のぞき見されると不審がられる。スカートの中を見せない方法や歩き方などを教わった。
「よし。完璧っすね。市場に出るっすよ」
一通り練習した後、名無しと太郎はトラジコメディの街に出た。
市場は人で賑わっている。
「ここ、市場はトラジディの傘下ばかりなんす。お金を払うことで守ってもらっているんすよ」
「うん」
市場は野菜や果物、肉や魚などを買い占める人たちでごった返している。東京のアメ横みたいな感じ。
ときおり太郎のお尻を触っていくものがいて、その場で柔道の投げ技をかけてやった。なぜか周囲から拍手された。
「よっ、姉ちゃん、すごいね! こいつをサービスだ」
「お姉さん、かっこいいわね! これもタダであげますよ」
ペコリと太郎はお辞儀する。
市場には懸賞金のついた太郎の張り紙があちらこちらに並ぶ。しかし、誰も太郎だと気づかない。変装は大成功だった。
気の良いおっちゃんやおばちゃんからもらった食べ物を頬張りながら太郎は名無しに聞いてみた。
「盗賊の街だから貧しいのかと思ったがそうでもないな。市場は賑やかで活気がある」
「そうっすね。それもこれもファンタジア家が食料を配給しているからなんでしょう。この街で食いはぐれることはありません」
「なるほど。復讐するとはいえファンタジア家は残しておかないとダメだな」
「市民は盗賊にお金を払う。盗賊は武力で市民を守る。一定の秩序が保たれているのは間違いないっす」
名無しの言葉を受け、民主主義の国で生まれ育った太郎は不思議な気分になる。無政府状態の自然状態であるトラジコメディにこれだけの活気が生まれる。悔しいようだが、ファンタジア家とトラジディにはリーダーの素質があるように思われた。この貴族と盗賊のずぶずぶの癒着状態は必要悪とみなすべきかもしれない。
盗賊も案外悪くない。太郎の場合、悪人だけをやっつける義賊的な盗賊だが、その生き方に見惚れた。
事実トラジコメディでは盗賊こそが光る。
「なあ、名無し」
「なんですか?」
「俺、盗賊にクラスチェンジしようと思う。レベルは20を超えてるし、いいかな?」
「いいんじゃないっすか? 盗賊ならアサシンにもなれますよ」
「分かった。盗賊にクラスチェンジだ。いつまでも村人のままじゃステータスに難がある」
「了解っす」
太郎は盗賊にクラスチェンジする。そして、レベル上げをしに街を出た。
人を殺しまくってもレベルは上がるのだが、今の低レベル状態でトラジディに見つかりたくない。
そこでダンジョンに向かうことにした。
RPGといえば当然のように出てくるダンジョン。盗賊になった太郎のレベル上げの始まり始まり。
盗賊(太郎) レベル1
HP:D
攻撃:C
速さ:C
守備:D
魔防:D
毒耐性◎




