課金二万円目。魔法使い
村に戻った太郎は、勇者の親である、村長のところへ挨拶しに行った。
この始まりの村は人口1000人ほどの小さな村だ。
ライフラインはしっかりしていて下水道や電気がある。けれども車はない。
始まりの村は、馬を育てるのを得意としており、王国に良い駿馬を送っている。
王国の辺境にあり、帝国と隣接しているため、いの一番に狙われた。
王国の王都に応援を頼んだところ、援軍まで時間がかかり、始まりの村だけで帝国に対応してほしい、と連絡をもらった。
「だから義勇軍だけで戦争したんだけど、まったく相手にならなかったぞ」
「おお、勇者様。ついに天啓に導かれたのですね!?」
白髪の老人。彼が勇者の父親だ。曲がった背中。寝ぼけているような眼。しかし、村長を務めているだけあって度胸がある。帝国軍が攻めてきたにも関わらず堂々としていた。
勇者と村長はかなり年が離れている。伏線かもしれない。
熱いお茶を二つもらい、村長が喋り始める。
「ここは始まりの村でございます。竜と天使が争った世界。荒れ狂う竜を邪神と恐れ、翼の生えた雲上人を神と崇めております。神様に選ばれた勇者様、我らに力をお貸しください」
「おう。帝国軍をやっつけてやる。だから村長さん、何か重装鎧に通用するような武器はないか?」
重装鎧は守備が高く、魔防が低い。魔法使いがいれば話は早いのだが。
「申し訳ございません勇者様。我らの村には古びた剣、古びた槍、木の盾しかございません」
「そうか。参ったな。あんたもそう思うだろう? ひとまずお茶を飲もう」
ずずず、とお茶を飲む。隣からもずずずとお茶を飲む音が聞こえた。
前世の記憶が戻った勇者。太郎は異世界転生みたいだなと思った。
ゲームならば序盤でつまずいたりはしない。チュートリアルは絶対に勝つようにできている。負けイベントはまだまだ先のはず。
RPGなら仲間が欲しい。それもとびっきり強い一騎当千の呂布みたいなやつ。
太郎は仲間を募った。
「村長さん。始まりの村で一番強い人いない? もしくは魔法使い」
村長は少し考え、ぽんっと手を叩く。
「そうですな。勇者様の幼なじみに薬剤師を志しております娘がおります。年の頃は同じ18です」
「薬剤師か……戦争に衛生兵は必要だけど、正直帝国軍を相手にはいらないんだよね」
「いえいえ勇者様。彼女に魔法を教えればいいのです」
「え? 魔法って教えることできるの?」
さすがは村長。村で一番の古株だ。何でも知っている。
「はい。雲上人様だけしか使えない魔法を、書物を通して幼なじみに教えればいいのです」
「なるほど魔導書を作れば人間でも魔法を使うことができるのか。あんたはどう思う? 大丈夫か?」
ゲームを進めるには魔法使いがどうしても必要だった。だから神はYESと同意した。
「よし。大丈夫そうだ。最初の仲間は勇者の幼なじみにしよう。ついでに村人だけじゃ正規の軍人に歯が立たないから、訓練して強くなってもらおう」
始まりの村のライフラインを確かめた感じ、石油ランプに燃料が使われていた。ということはガソリンがある。これだけ条件が揃えばチュートリアルの帝国軍100人に勝てそうな気がしてきた。
まずは内政から。村人を強く成ろう作戦を開始した。
村人 レベル10
HP:D
攻撃:D
速さ:D
守備:D
魔防:D