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課金十五万円目。奴隷

 太郎が着いたのはトラジコメディで有数の大貴族の家だった。お城と呼んでも過言ではない。


 ファンタジア家。マダム・ファンタジアという女主人が、この地、トラジコメディに出資をしている。


 トラジコメディで毎日3食の配給が受けられるのはファンタジア家のおかげ。


 盗賊王のトラジディとファンタジア家はずぶずぶの癒着状態だった。


 盗賊たちが好き勝手する傍ら、民を守るはずの帝国貴族ファンタジア家は盗賊のバックにいた。


 そんなファンタジア家は奴隷家業を中心に黒字をあげている。帝国の法律が届かない無法地帯トラジコメディで商品をかっさらって帝国全土に輸出している。


 そんな話を太郎はすべてピーンから聞いた。


 着いた早々、服を着替えさせられ、奴隷の適性検査を受けた。


 ステータスを確認し、一通りの学力を調べられ、健康状態をチェックされる。


 奴隷の価値を決めるための適性検査。まったくもって不快だった。


 しかし、予想以上に待遇がかなり良い。1日の適性検査を終え、くたくたになった太郎に個室の部屋とそれなりの食事が提供された。


 野盗にボコボコにされたときは炭鉱で働かされたり、船で漁に出されたりするのだと思ったが、そんなことはない。奴隷といっても例えば貴族用の奴隷では、教養の高さがあればそれなりの待遇で働かせてもらえる。給料も出る。強制労働に近い。


 奴隷といっても商品なのだ。大事な商品に傷があってはいけない。丁寧に扱われた。


 コンコン。


 太郎の部屋がノックされる。どうぞ、と声をかけると扉からあらわれたのはピーンだった。


「やっほー」


 うすらと化粧し、踊り子の蠱惑的な衣装を身にまとっている。ピーンはさぞ高値がついただろうと予想される。


「奴隷が自由に動き回っていいのかい?」


 と太郎は冗談っぽく声をかける。


「いいって。いいって。マダム・ファンタジアは奴隷に対して寛容なんだよ」


 コミュニケーション能力のある気さくな子。それがピーンの印象。


 しかし、今までの素振りから彼女がただものであるはずがない。


 太郎は思い切って直球で尋ねてみた。


「ピーン・ファンタジア。貴族の娘様が俺に何の用?」


「へえ。ステータスを確認しなくても分かるんだ」


 太郎は見ただけで相手のステータスを調べることができる。


 ピーンと初めて話した時、ピーンの本名を盗み見た。そして、それがマダム・ファンタジアと同じ名前であることを知った。だからピーンがファンタジア家の関係者であることに感づいた。


「最初からおかしいと思った。奴隷馬車の運転手も野盗たちも君に手荒な真似をしなかった。それは恐れているからだ。トラジコメディの権力者ファンタジア家。その関係者。そりゃ、誰も手荒な真似はしたくないはずだ」


「ご明察。その通り、私は大貴族の娘だったよ」


「だった?」


「うん、家出したんだ。それで部下たちに捕まっちった」


 ピーンは簡単に現状を紹介する。


 一人娘のピーンはマダム・ファンタジアとうまくいっていなかった。


 だから家出した。


 しかし、運悪く、顔見知りの部下に捕まってしまった。部下にはマダムから、娘を連れ帰るように指示が出ていた。


「さっきママと話したんだけど、このまま奴隷として貴族の御曹司に花嫁として送り出すって。ママたらすっかり怒っちゃって、もうカンカン」


「そりゃご愁傷様」


「ふふ、私、天性のカンの良さがあるんだけど、なんとなく分かる。君ってすごい人だよね。名前は?」


 そういえば自己紹介がまだだったことに気づいた。太郎は名乗る。


「太郎。ちょっと訳あってトラジコメディを支配する予定の男だ」


「あははは。面白ーい」


 腹を抱えて笑うピーン。


 ムッときた太郎が反論する。


「そんなに笑うなよ」


 冗談ではない。強くなるために、ディーヴァからトラジコメディを支配するように命令された。


「ちょっといいかな」


 ピーンがベッドに座っている太郎の横に座る。良い香りがした。


「太郎に興味がわいてきたよ。キスしてもいい?」


 ゴクッと生唾を飲みこむ。改めてピーンのステータスを確認する。今までの表記とは別に、ピーンにはユニークスキルとして『直感◎』がついていた。


 何も知らないはずのピーンは直感だけで、太郎のポテンシャルの高さを見抜いているのだった。

ユニークスキルの説明。


HP、攻撃、速さ、守備、魔防とは別に、その人だけの特別な能力。

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