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課金十二万円目。真実

 天使の姿をした少女がいた。優しくニッコリ微笑む。しかし、会話することは許されない。


 勇者の生まれた国は雲上人との会話を宗教上の理由から禁止されていた。

 帝国も同様。人は人なのだ、神と対等になることはない。雲上人や邪神ドラゴンと対峙した時、人は、無言のまま、ただただ敬うだけの存在だった。


 天使の姿をした少女が離れていく。手を伸ばしたがまったく届かない。待って、と大声を出し。


 太郎は夢から覚めた。


「あんた! 待ってくれ!?」


 大量の汗。ひどい夢を見ていた。勇者が勇者じゃなくなる夢。


「なんだ……夢か……」


 辺りを見回して夢であることを確認する。太郎は牢屋にいた。二人まで収容できる比較的大きい牢屋。

 簡易ベッドにトイレ、シャワー。始まりの村にある捕虜にした要人を収容する牢屋だと気づく。


「なんで俺はここに?」


 ヒヒドクから復調した太郎はすべてを思い出す。帝国と戦争になったこと。王国の正規軍が援軍にやってきたこと。そして、みんな死んだこと。ディーヴァと戦ったこと。


 すべてを思い出し、どうやら現在、帝国の捕虜になっているのだと推察した。


「あんたが無事ならそれでいい」


 服は綺麗のまま。乱暴にされた跡はない。


 ぐぅ~。


 太郎のお腹が鳴る。部屋の中央のテーブルにはちょうど良い感じのディナーが置かれていた。


 空いた食器。パン、豆のスープ、牛乳の置かれた食器。


 グーパーグーパー。痺れた手足が動くことを確認し、太郎はベッドを抜けてテーブルに座る。


「いただきます」


 空腹にパンをかっこむ。口いっぱい頬張り、豆のスープを流しこんだ。


 むしゃむしゃ。


 太郎はよく食べるのが早いと言われる。とかく注意しているのだが、空腹時はよく噛んで食べることができない。我慢ならないのだ。


 ものの数分でパンと豆のスープを完食した。


「ごちそうさま。早食いすると太るからやめろ、って言いたそうな目つきだな。勘弁してくれ」


 人生で最も幸福なことは食事だ。食べるのが早いと注意するのは野暮なことだと太郎は思った。


 でも、早食いを注意してくれる両親は、もういないのだ。

 前の世界と今の世界は全然別物で、RPG好きのソシャゲ―マー高校生がウェーイしていた頃は二度と戻ってこない。


 time waits for no one(タイム ウェイツ フォー ノー ワン)


 ディーヴァにやられて死んだと思っていたが、ちゃっかり生きていた。


 今、食べられることを感謝し、精一杯生きなければならない。


 感傷に浸る。すると、突如。


 コンコン。部屋の扉がノックされる。


「戦場以外で会うのは初めてですね。初めまして勇者様。君とお話がしたい」


 声の主はディーヴァだった。


「どうぞ」


 捕虜に拒否権はない。快く向かい入れる。


 入ってきたのは2人。ディーヴァと名無しだった。


 軍服を着こみ、豊満な胸を下から支えるように腕組みしたディーヴァ。彼女はこう告げる。


「ここなら人払いができてあなたたち2人とゆっくり話せる。いいかしら?」


「いいですよ。もっとも俺たちは王国の情報なんて何も持ってませんけど」


 太郎が興味なさそうにそっぽを向こうとしたとき、ディーヴァが驚きの一言を打ち明ける。


「私は日本人よ」


「え?」


 衝撃的だった。この世界に『日本人』という言葉はない。それも日本語で言われた。


「どうやら通用するらしいわね。君がクラウドファンディングをしていてぴんときた」


「ディーヴァ? お前はいったい?」


「何も知らないようね。この世界は帝国と王国が争っている。神様同士も争っている。そして、その盤面に登場するのが私たち日本人。この世界は私たち日本人4人が、それぞれの陣営に分かれて覇を競っている世界なの。それでいて最後の1人は何でも願いを叶え、前の世界に戻ることができる。バトルロワイアルよ」

人間界


王国VS帝国


神の世界


天界VS魔界


で争っている。

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