課金一万円目。戦場
「……思い……出した!?」(ネタ)
人、馬、剣、弓矢の入れ混じる戦場。
村人の勇者は前世の記憶を思い出す。
前世の名前は太郎。高校生。ゲーム好きで幼い頃はありとあらゆるRPGをやりこんだ。同人ゲームのRPGも徹底的にやりこんだ。
中学生の時はファンタジー小説にのめり込んだ。『小説家なろう』というサイトで異世界転生の物語を読み漁った。
高校生の時はソシャゲに夢中になった。おこづかいとアルバイトで貯めたお金を、毎月10万円はつぎ込んだと思われる。世間一般からしたら、100万とか1000万とか少ないように見えるかもしれないが、友達からは廃課金の称号をもらった。
太郎はファンタジーが大好きだった。ゲーム、アニメ、漫画、小説、ソシャゲ。それらに出てくるファンタジー世界に住みたい、といつも考えていた。
それが現実に叶った。というか、気づいたら戦場にいた。
「えええ。俺、今、戦ってるじゃん!?」
太郎は右手に剣を構え、馬に乗りながら敵陣に突っこむ最中だった。前世の記憶を思い出し、少し落ち着こうと後続に逆らうように部隊を離れた。
少し気高い丘に登り、戦場を俯瞰する。村人と帝国軍が戦っていた。
状況を整理する。前世の記憶は太郎。今は勇者。勇者は田舎の村出身で帝国軍との戦に出兵している。剣の腕はそこそこ。しかし、将来的に勇者になるには絶望的なスペックの持ち主。
「てかこれ。負け戦じゃん?」
戦況は芳しくない。剣や槍を持った村人が帝国軍に突っこんでいる。帝国軍はいわゆる重装鎧というやつでガチガチに固めている。軽装の村人に勝ち目はなかった。
「重装鎧をした帝国兵が100人ほど。軽装の村人兵が200人。数では勝ってるけど装備は向こうが上。絶対に勝てない」
帝国軍は重装鎧に弓矢を持っている。一方、村人は剣や槍だけ。唯一勝手そうなところは馬という機動力だけだった。
「あんたはどう思う? RPG好き廃課金ソシャゲ―マーの高校生が異世界に転生(?)ぽいことをして活躍できると思うか?」
返事はない。どうやら太郎は一人で状況を打開しなければならないようだ。
「オーケー。オーケー。あんたは何もしない。当然だ。これは勇者の物語。太郎こと俺が主人公を操作して勇者を真の勇者にするんだ。ゲーマーの血が騒ぐぜ」
普通、RPGだとチュートリアルは決まって弱い敵だと相場が決まっている。しかし、太郎にとって帝国兵100人は難敵だった。
太郎は戦場を眺める。正午。晴れ。草原。ちょうど向こうに川が流れている。
「そろそろ行きますか」
タイミングよく村人軍のリーダー的ポジションの人が弓矢に射貫かれて死んだ。
村人たちは混乱する。
勇者は村長の息子。だから村人に人望がある。チャンスとばかりに太郎は草原を駆け抜ける。
「聞けぇえええ、村の者よ。今から俺が指揮する」
「おおおぉぉぉ!!!」
村人たちが賛同する。
さて今からナポレオン的な戦略ゲームに切り替わった。帝国軍は100人。一方、村人は150人。
帝国軍は重装鎧を固めて弓矢を中心に攻撃してくる。一方、村人は騎馬。武器は剣や槍。木の盾。
「まずは機動力を活かす。みんな、川向うまで避難だ」
「おおおぉぉぉ!!!」
太郎が退却すると村人が後に続く。馬で川の橋を渡り、全員が川向うに陣を構える。
「橋を落とせ!」
帝国と村を繋ぐ唯一の橋を壊す。こうすることで帝国軍は橋が渡れなくなった。
機動力のない重装鎧の軍団は川まで近づき、あちらから弓矢を放つ。しかし、十分な距離のある弓矢は盾で簡単に防ぐことができた。
一通り、弓矢を放った帝国軍は、これ以上は無駄だと諦め、引き返していく。
戦争は一応の終結を見せた。
「弓矢のなくなった今がチャンスだ。突撃を再開するぞ」
村人の誰かが叫んだ。太郎は慌てて静止した。
「ダメだ。こんな安物の剣や槍じゃ、あの重装鎧にダメージを入れるのは無理だ。一旦、村に戻って作戦を練り直そう」
チュートリアル。帝国軍との戦争。帝国軍100人VS村人200人。村人50人の犠牲を払い、引き分け。
「ある偉い人が言ってたじゃないか。戦力で相手が上なら逃げたほうがいい。あんたもそう思うだろう?」
勇者(太郎) レベル10
HP:C
攻撃:C
速さ:B
守備:C
魔防:C