消滅
謎の男は苛立った様に手に持った巨大なハンマーをリクトに降り下ろした。
「死ね!!」
(ヤバい!、これは絶対ヤバい、絶対死ぬ!い、嫌だ死にたくない!)
この時リクトは世界がとても遅く見えていた。これが体が本能的にとる死への抵抗というものなのか。しかしリクトの体は既に動けなく、視界が遅くとも回避出来るわけでは無い。
(い、嫌だ! し、死にたく、死にたくない!)
リクトの思考はもうろくに機能していなかった。リクトは咄嗟にその場にうずくまり目を瞑るという愚行に出た。これでは回避も防御も出来るわけが無い。
ハンマーがリクトに触れる瞬間、、、、
カン、と
小気味の良い乾いた音が路地に響き渡った。
「え?」
リクトは恐る恐る目を開け、正面を見るとそこには...
赤髪の男が立っていた。
「な!?誰だよてめぇは!!」
謎の男は赤髪の男に向け、そう訪ねると同時に半分位から折れたハンマーの柄の部分を全力で投げつけた。折れた先の部分はどこに行ったのか。
しかし赤髪の男はハンマーの柄を少しも見ずに、こちらに向かってくる。
「おい、貴様何があった?」
「え?」
この時の「え?」は質問に対しての疑問ではなく、こちらに飛んできたはずのハンマーが消滅していたのだ。
「はぁ!?消えただと!?てめぇ、何しやがった!!」
そう言って男はこちらに走り赤髪の男を殴ろうとするが、
男は消えていた。
「え?」
「おい、貴様、来い」
「え?!あちょっ?!」
リクトは腹を掴まれ、赤髪の男に抱えられた。
「ちょっ!下ろせよ!」
「...」
「おい!聞いてんのかよ!」
「...」
「何か言えよ!!!」
「黙れ」
「...ッ!?」
直後気を失った。