始まり
ーーー退屈だーーー
それはいつからか彼の口癖になっていた。
彼の名は霧崎陸斗、都内の難関学校の私立暝落高校に通うどこにでもいるただの高校生...と言うと少し嘘になるかもしれない
何故ならリクトは高校2年生にして知識が優秀な学者十人でも敵わないほどのレベルだ。尚、身長などは同年代の平均より少し高く、顔は割りと整っているため性格さえ直せば普通にモテる。
彼の思考を具体的に示すならば、百桁の計算を暗算で出来たりする。
(故に退屈だ。)
同級生は理解不能の話しかしないし、先生はリクトより頭悪いし、リクトは自分より頭が悪いのにうるさく騒ぐ猿共に囲まれて生きている。
実際今日もクラスのバカグループAが最近都内で化け物がよく出るとか訳が分からない話をしてた。
(化け物?んなもん存在するかよバカ共が)
リクトはそんなバカしかいない地獄の建物で夕方まで既に知っている事を延々と教えられる退屈過ぎる時間を終え、帰路についていた。
部活には入っていない。入る意味が分からない。
(晩飯.....どうすっかな.....)
リクトはいつもの様に道を歩き、いつもの様に晩飯を考え、いつもの様にこのゴミみたいな世界を生きている。
ー何でこんな世界存在してんだろ。別に終わってもいいし、むしろ自分だけでも先に終わりたいー
リクトが1日こんなことを考えるのは一回どころじゃない。何十回も考えてる。
そのうち人目の無いような暗い路地に着いた。
「ハァ」
ついため息をついた。
「誰でもいいから俺を殺してくれよ」
リクトは一人でそんなことを呟いた。
そしてその返答と言わんばかりに衝撃が体を貫いた
「?!?!?!?!」
リクトは5m位後ろに吹っ飛んだ。咄嗟に「殴られた!」と思ったが、その0.2秒後には後ろの壁に高速で激突していた。
「グハッ!!」
リクトは正面から壁に激突し、内臓が圧迫され呼吸が上手く出来ない。
痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ
思考の全てが痛みで支配される中、リクトの耳に声が聞こえた。
「なら俺がお前を殺してやるよォ!」
そんなことを唐突に言われ声の主を見た。身長は190cm以上で手には巨大なハンマーらしき物を持っている。訳が分からない。
リクトは痛みと恐怖で上手く動かない口を何とか動かした。
「な、で俺、死ぬ、の?」
「アァン!?何言ってっか全然分かんねぇぞ!!!」
「何で、お、俺が死ぬ、の?...」
「ハァ!?お前がさっき殺してくれって言ったからだろ!!!」
「ハ?」
「ハ、じゃねぇよ!!!」
「アガァ!?」
腹を思い切り蹴られ、またも呼吸が詰まり死にそうになる。
謎の男は更にイラついた様に言った。
「お前が殺してくれって言ったから俺がワザワザお前を殺しに来たんだよ!」
そう言って男はハンマーを振り上げた。
(嫌だ、死にたくない!、死にたくない!、死にたくない!)
リクトの頭はその言葉だけで埋め尽くされる。
そしてーーー