プロローグ
「一般的には、聡明で卓越した能力に、高ぶる正義感、悪に屈しないその志。そういう人を、ヒーローって呼ぶんだぞ。分かったかい?」
「普通の人はなれないの?」
「いいや、どんな小さな手助けでもする人間は、きちんとヒーローになれる。お父さんが約束する。だから、悪さなんてせずに、自分の流儀と正義を持って行動するんだ。さあ、瑞樹の正義はなにかな?」
「えーとね」
「あらあら、瑞樹は将来、ヒーローになりたいの? パパからそんなこと教わって。――ママも来たから、さあ、いただきますしましょう」
「いただきます!」
三人が、そう言った。
「パパ、私の正義は、皆でいただきますすること!」
「それはいいな! いいぞ、お前は今日からヒーローだ!」
「ママは、ママが思うヒーローって、どんなの?」
「ママはねえ、あまり過去を振り返らない人がいいわ。ほら、過去ばかりに執着する人って、大抵泣き虫でしょう? でも、過去はきちんと背負うのよ? 無視しちゃダメ。前をきちんと向いて、背中に過去の思いをしょって歩いていくの。瑞樹には、ちょっと難しいかな?」
女の子が、頭を振る。
「わたし、思い出しても泣かないようにする!」
母親が笑った。
「ごちそうさまでした!」
三人がそう言った。
「パパー、今日は私がお母さんの先導する!」
「ん? そうしようとする心は立派だけど、ちょっと危ないから大丈夫だよ。それに、こういうのは、年上のパパじゃないとダメなんだ。神田瑞樹のママは、そういう人なんだよ」
「ごめんね瑞樹。ママの足がもうちょっと良くなったら、瑞樹に先導してもらうからね。それまでは、年上のパパに任せて、ね?」
「はーい」
「パパ―、ヒーローのお話ししてー」
「おお、いいぞー。ヒーローっていうのはな――」